僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第二章 南へ

25.享楽の宴

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「ほら、演劇……せっかくだから、しっかり見ないとね」

 耳元で囁き、アデルジェスは後ろからしっかりとミゼアスを抱えなおす。

「んー!」

 アデルジェスが動くと、内部に穿たれたものが角度を変えてミゼアスを襲う。
 先ほどまでと体勢はほとんど変わらない。アデルジェスの膝の上に乗った状態だ。外から見れば違いはほぼわからないだろう。しかし今はアデルジェスを根元まで銜え込み、行き場のない快楽に震えている。
 演劇はまだ続いていた。愛を確かめ合う、ちょうど最高潮の場面のようだ。窓を閉じる音がさらに増えていく。

「んっ……う……ん」

 アデルジェスはミゼアスを抱えたまま動かない。身体の内側にはっきりと存在を感じ取ることはできるのに、それだけだ。物足りなさに身体が疼いた。
 突き上げて、中を抉ってほしい。もどかしさに耐えられず、ミゼアスは自ら腰を揺らそうとするが、押さえ込まれているせいで身動きもままならなかった。

「そんなに腰を押し付けてきて……演劇はいいの?」

 からかうような声をかけ、アデルジェスはミゼアスを片手で押さえたまま、もう片方の手で胸の尖りを弄ぶ。

「んんっ……ふぅ……くっ……」

 目に涙を浮かべながら、ミゼアスは耐え続ける。敏感な部分を弄ばれ、つい内側を締め付けてしまえば、じわじわと愉悦が広がっていく。
 ゆるゆると快楽が全身を蝕んでいくが、ゆるやかすぎて達するには程遠い。じれったくて、おかしくなってしまいそうだった。

「ジェス……お願い……もう……」

 涙声でミゼアスは懇願する。

「駄目だよ。もう少しで終わるだろうから、それからね」

 しかしアデルジェスは残酷にミゼアスの訴えを退けた。緩慢な愛撫を途絶えさせることなく、ミゼアスをさらに追い詰めていく。

「ジェスの意地悪……!」

 苦しく、甘い絶望に満たされ、ミゼアスは涙をこぼした。ただただ声を抑え続け、はがゆい快楽に震える。
 もう演劇の内容など、頭に入ってこない。それでも、かすんだ頭で幕が下りたことに気付くと、やっと上り詰めることができるのだと胸に安堵が広がった。

「終わったね。じゃあ、窓を閉めないと」

 アデルジェスはミゼアスをまだ焦らすつもりのようだ。のんきな声が憎らしい。文句を言おうと口を開きかける。

「ああっ!」

 文句は口から出てこなかった。代わりに喜悦の絶叫が響く。
 アデルジェスがミゼアスを抱えたまま立ち上がり、焦らされ続けて熱の行き場を求めていた身体は、内部を抉られた衝撃で達してしまったのだ。
 ぐったりと虚脱するミゼアスを優しく抱えたまま、アデルジェスは窓を閉めた。

「そんなに気持ちよかった? もう声を出しても大丈夫だから、いっぱい出してね」

 優しく囁くと、アデルジェスはミゼアスを抱えたまま、寝台に向かって歩き出す。

「やぁっ! 今、動かないでぇ……! やぁん……」

 達したばかりの身体に、何度も耐え難い衝撃が響く。アデルジェスが動くたびに振動が伝わり、身体は深すぎる悦楽に呑まれる。
 繋がったまま、寝台にうつ伏せの状態でおろされると、今度は息つく暇もなく後ろから何度も貫かれた。

「だめぇ……! 苦し……やぁっ……ああっ!」

 苦しいほどの快楽に襲われ、ミゼアスは悲鳴混じりの嬌声をあげて身悶える。長い間焦らされ燻ぶっていた炎は燃え上がり、とどまるところを知らない。

「また……あぁっ!」

 再び絶頂に導かれ、ミゼアスは頭の中が真っ白になって何も考えられなくなる。それでもアデルジェスは動きを止めない。

「やっ! あっ、ああっ!」

 ミゼアスは首を振りながら、意味を成さない絶叫をあげ続ける。もう下半身の感覚がわからない。感じるのは、ただ快楽だけだ。
 いつ終わるとも知れない二人だけの享楽の宴は、苦しくも甘美にミゼアスを苛むのだった。
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