僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第二章 南へ

20.やり場のない不満

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 楽しい時間も過ぎ、ミゼアスとアデルジェスは部屋に戻ってきた。ロシュは朝早くに旅立つそうだ。そのうち店にも遊びに来てくれと言われ、二人は頷いて再会の約束を交わした。
 アデルジェスはすっかり酒が回ったようで、顔は赤く、足取りもやや怪しかった。ミゼアスはちびちびと舐めるようにしか飲んでいなかったので、ほぼ素面に近い。

「ミゼアス、好き。大好き。愛している」

 二人きりになると、アデルジェスはミゼアスに抱きついて首筋に口づけを落としてきた。

「もう……酔っているね」

 呆れた声を漏らしながら、ミゼアスは嬉しくもあった。愛を囁かれるのは、どんな状態のときであっても嬉しい。

「ほら、もう寝よう……え?」

 アデルジェスを寝台に促そうとすると、ミゼアスは突然景色が変わったことに驚く。寝台に素早く押し倒されたのだ。

「ちょっ……やぁん……」

 抗議しようとすると、アデルジェスはミゼアスの中心に触れてきた。服越しに甘い刺激が伝わってくる。

「だめっ……やめて……」

 ミゼアスはアデルジェスの手をどかせようとするが、アデルジェスの力に適うはずがない。何度も弄られ、そこは硬度を増していく。

「あぁ……はぁ……」

 手には力が入らず、甘い吐息が漏れ続ける。今日は風呂に入っていないので、性交はしたくない。それなのに、身体には熱がくすぶり、内部にアデルジェスを迎え入れたくてたまらなくなってくる。

「だめっ……だめぇ……」

 いやいやをするように身をよじり、ミゼアスは逃れようとする。しかしアデルジェスは手を止めようとはせず、もう片方の手でしっかり押さえ込んで逃げることを許さない。

「あぁん……やめてぇ……」

 すっかり声が甘くとろけているのが自分でもわかる。ミゼアスはもう、このまま流されてしまってもいいかと思えてきた。
 すると、突然ミゼアスを弄っていた手の動きが止まった。

「……?」

 どうしたのかと様子を伺えば、寝息が聞こえてきた。どうやらアデルジェスは寝てしまったようだ。
 ミゼアスの心にはふつふつと怒りがわきあがってくる。

「……そりゃあさ、やめろって言ったけれど……それはないよね……」

 自らに覆いかぶさって眠るアデルジェスを睨む。だがアデルジェスはのんきに幸せそうな寝顔を晒すだけだ。さらに腹が立ち、ミゼアスはアデルジェスを膝で蹴りつける。

「ごふっ……」

 奇妙な声を漏らし、アデルジェスはミゼアスの上から転がり落ちる。それでも起きはしない。また規則正しい寝息が響き、ミゼアスはやり場のない不満が身体の中を駆け巡るのを感じた。
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