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第二章 南へ
18.カリナちゃん
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三人で酒を飲みながら和やかに語り合う。
ミゼアスはアデルジェスの少年時代の話をロシュから聞き出して、楽しんでいた。
やはり優柔不断で流されやすいところはずっと変わっていないようだ。浮いた話がろくになかったことにも、ミゼアスは胸を撫で下ろした。
幼馴染の話を何回も聞かされたとロシュが笑って言うと、アデルジェスは恥ずかしそうにロシュを止めようとする。
ミゼアスは笑いながら二人を眺め、アデルジェスもミゼアスのことを気にしていてくれたのだと、心の底からわきあがる喜びに満たされた。
アデルジェスとロシュは学校卒業以来、会っていなかったそうだ。アデルジェスは兵士となり、ロシュは家業を継いで商人の道へと進んだのだという。
「これから南方まで仕入れに向かうところなんだ。小さい頃に一回だけ行ったことがあるんだけれど、陽気な感じで楽しかったよ」
「南方かあ。俺はずっと西側の町ばっかり転々としていたから、そっちには行ったことがないな」
杯を口に運びながら、アデルジェスが思案するように宙を仰ぐ。
「ジェスがこんなに可愛い幼馴染と再会したっていうんだから、俺もなんだかちょっと期待してきちゃったな」
「え? 南方に幼馴染でも?」
いったん杯を置き、アデルジェスは不思議そうな顔をする。
「幼馴染っていうほどじゃないけれど……十年くらい前かな。親父に連れられて行った取引先に、可愛い子がいてね。おとなしくて、お人形さんみたいな子だったよ。照れてろくに口もきけなかったんだけれど、にっこり笑ってくれたんだ」
ロシュは懐かしそうに目を細めて呟く。
「もう十五、六歳くらいになっているかな。ジェスのように何か約束があるわけじゃないし、裕福な商家のお嬢さんならもう結婚していてもおかしくない。まあ、成長した姿を見て目の保養にでもできれば嬉しいな、ってくらいだよ」
穏やかな笑みを浮かべながらロシュは語り続け、ミゼアスの髪に目を向ける。
「確か、その子も金髪だったな。赤味がかった金髪だったけれど。珍しい色だったから、それも印象に残ったな。名前は……そう、カリナちゃんだ」
「カリナちゃん……?」
ミゼアスは思わず呟く。何かひっかかるものがあったのだ。
「え? 何か知っているの?」
不思議そうにアデルジェスが問いかけてくる。
「いや……多分、気のせいだと思う。そんなに珍しい名前ってわけじゃないし、同じ名前の子がいても不思議じゃないものね」
不夜島にも同じ名前の子がいたことをミゼアスは思い出す。
しかし自らも言ったとおり、決して珍しい名前ではない。ロシュの言っている子は、単に同じ名前なだけだろう。
ミゼアスはアデルジェスの少年時代の話をロシュから聞き出して、楽しんでいた。
やはり優柔不断で流されやすいところはずっと変わっていないようだ。浮いた話がろくになかったことにも、ミゼアスは胸を撫で下ろした。
幼馴染の話を何回も聞かされたとロシュが笑って言うと、アデルジェスは恥ずかしそうにロシュを止めようとする。
ミゼアスは笑いながら二人を眺め、アデルジェスもミゼアスのことを気にしていてくれたのだと、心の底からわきあがる喜びに満たされた。
アデルジェスとロシュは学校卒業以来、会っていなかったそうだ。アデルジェスは兵士となり、ロシュは家業を継いで商人の道へと進んだのだという。
「これから南方まで仕入れに向かうところなんだ。小さい頃に一回だけ行ったことがあるんだけれど、陽気な感じで楽しかったよ」
「南方かあ。俺はずっと西側の町ばっかり転々としていたから、そっちには行ったことがないな」
杯を口に運びながら、アデルジェスが思案するように宙を仰ぐ。
「ジェスがこんなに可愛い幼馴染と再会したっていうんだから、俺もなんだかちょっと期待してきちゃったな」
「え? 南方に幼馴染でも?」
いったん杯を置き、アデルジェスは不思議そうな顔をする。
「幼馴染っていうほどじゃないけれど……十年くらい前かな。親父に連れられて行った取引先に、可愛い子がいてね。おとなしくて、お人形さんみたいな子だったよ。照れてろくに口もきけなかったんだけれど、にっこり笑ってくれたんだ」
ロシュは懐かしそうに目を細めて呟く。
「もう十五、六歳くらいになっているかな。ジェスのように何か約束があるわけじゃないし、裕福な商家のお嬢さんならもう結婚していてもおかしくない。まあ、成長した姿を見て目の保養にでもできれば嬉しいな、ってくらいだよ」
穏やかな笑みを浮かべながらロシュは語り続け、ミゼアスの髪に目を向ける。
「確か、その子も金髪だったな。赤味がかった金髪だったけれど。珍しい色だったから、それも印象に残ったな。名前は……そう、カリナちゃんだ」
「カリナちゃん……?」
ミゼアスは思わず呟く。何かひっかかるものがあったのだ。
「え? 何か知っているの?」
不思議そうにアデルジェスが問いかけてくる。
「いや……多分、気のせいだと思う。そんなに珍しい名前ってわけじゃないし、同じ名前の子がいても不思議じゃないものね」
不夜島にも同じ名前の子がいたことをミゼアスは思い出す。
しかし自らも言ったとおり、決して珍しい名前ではない。ロシュの言っている子は、単に同じ名前なだけだろう。
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