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第一章 旅立ち
06.花嫁修業の始まり
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ややあって、石造りの堅牢な建物にたどり着いた。ここが職業斡旋所らしい。
中に入り、アデルジェスが窓口にいた男に何かを話しかける。その間、ミゼアスは壁に貼られた求人広告を見ていた。
日雇いの仕事は警備や清掃、運搬作業など肉体労働が多いようだった。あまりミゼアスに向いていそうなものが見当たらない。せいぜいできそうなのは、店番くらいだろうか。
アデルジェスがいない間、一人でいてもつまらない。どうせならその間、自分も何か仕事をしていたほうがよさそうだと探すが、なかなか見つからなかった。
長期の仕事ならもう少し向いていそうなものがあるかもしれないが、この町にそれほど長く滞在するわけではない。やはり日雇いが無難だ。
こうなったら店番でもいいかと思いかけてきた頃、『花嫁修業』という文字が目に入ってきた。思わず食い入るように見てしまう。
『清潔で家庭的な雰囲気の中での、簡単な接客のお仕事です。
親切、丁寧に指導するので初めての方でもご安心ください。
花嫁修業にも最適です』
これだ、とミゼアスは拳を握り締める。花嫁修業にも最適とは、まさにミゼアスが望んでいた理想の仕事である。もう、賃金その他の条件などどうでもよい。ここまで読めば十分だ。
すぐ窓口に向かい、その仕事のことを尋ねてみる。
すると窓口にいた男はミゼアスの顔をじろじろと眺め、何かを考え込む様子だった。
「……まあ、これだけ可愛ければ大丈夫でしょうか。本来は女性を、ということだったのですが、いちおうご紹介はいたします」
あの求人は女性のみだったらしい。しかし、いちおう紹介してくれると言った。道が開けてきたようにミゼアスは感じる。
「何か見つかった?」
アデルジェスが尋ねてきた。もうすでに受付を終えたらしい。
「うん。ジェスは?」
「俺は材木運搬の仕事。木を運ぶのは慣れているから」
「そっか。僕は接客のお仕事」
「そうなんだ」
アデルジェスは喫茶店や食堂の給仕役あたりだろうかと思ったのか、あまり深く追求してこなかった。
「じゃあ、また後でね」
にっこり笑って言うと、アデルジェスも微笑み返してくれた。
アデルジェスを待つ間、自分も花嫁修業ができるのだ。何と素晴らしいことだろう。今すぐ神殿に駆け込んで、舞を奉納してきたいくらい心がわきたってきた。
中に入り、アデルジェスが窓口にいた男に何かを話しかける。その間、ミゼアスは壁に貼られた求人広告を見ていた。
日雇いの仕事は警備や清掃、運搬作業など肉体労働が多いようだった。あまりミゼアスに向いていそうなものが見当たらない。せいぜいできそうなのは、店番くらいだろうか。
アデルジェスがいない間、一人でいてもつまらない。どうせならその間、自分も何か仕事をしていたほうがよさそうだと探すが、なかなか見つからなかった。
長期の仕事ならもう少し向いていそうなものがあるかもしれないが、この町にそれほど長く滞在するわけではない。やはり日雇いが無難だ。
こうなったら店番でもいいかと思いかけてきた頃、『花嫁修業』という文字が目に入ってきた。思わず食い入るように見てしまう。
『清潔で家庭的な雰囲気の中での、簡単な接客のお仕事です。
親切、丁寧に指導するので初めての方でもご安心ください。
花嫁修業にも最適です』
これだ、とミゼアスは拳を握り締める。花嫁修業にも最適とは、まさにミゼアスが望んでいた理想の仕事である。もう、賃金その他の条件などどうでもよい。ここまで読めば十分だ。
すぐ窓口に向かい、その仕事のことを尋ねてみる。
すると窓口にいた男はミゼアスの顔をじろじろと眺め、何かを考え込む様子だった。
「……まあ、これだけ可愛ければ大丈夫でしょうか。本来は女性を、ということだったのですが、いちおうご紹介はいたします」
あの求人は女性のみだったらしい。しかし、いちおう紹介してくれると言った。道が開けてきたようにミゼアスは感じる。
「何か見つかった?」
アデルジェスが尋ねてきた。もうすでに受付を終えたらしい。
「うん。ジェスは?」
「俺は材木運搬の仕事。木を運ぶのは慣れているから」
「そっか。僕は接客のお仕事」
「そうなんだ」
アデルジェスは喫茶店や食堂の給仕役あたりだろうかと思ったのか、あまり深く追求してこなかった。
「じゃあ、また後でね」
にっこり笑って言うと、アデルジェスも微笑み返してくれた。
アデルジェスを待つ間、自分も花嫁修業ができるのだ。何と素晴らしいことだろう。今すぐ神殿に駆け込んで、舞を奉納してきたいくらい心がわきたってきた。
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