ヴァレン兄さん、ねじが余ってます

四葉 翠花

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36.何もかも放り出して

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 夕方、見習いたちが学校から帰ってきた。皆、どことなく元気がない。

「ティム君、やらかしたね」

 ヴァレンが静かに声をかけると、ティムがびくっと身をすくませる。

「まあ、あいつから言い訳をもらっているから今回は何も言わないけれど、本当はやっちゃいけないことだからね。わかったかい?」

「は、はい……」

 怯えながらティムは頷く。
 よくわからない様子のアルン、ブラム、コリンが首を傾げるが、誰も何も言わなかった。

「今日は予約も入っていないし、お休みにした。久しぶりにゆっくりしようか」

「最後の晩餐、というわけですか?」

 陰鬱な声でアルンが呟く。

「暗い表現使うねえ、アルン君。俺は島を去る気はないよ。きみたち全員が独り立ちするまでは、ここにいるつもり」

「え……? でも、ローダンデリアは……」

 見習いたち全員が訝しげな顔をする。

「まあ、それはちょっと今考えていることがあってね。それより、今晩はきみたちの好きなことをしよう。何がいいか、次の三つから選んで。一、お勉強。ニ、面白いこと。三、いやらしいこと」

「……すっごく気になるのは、三番ですね。やりたいというより、いったいどんなことだろうという興味本位ですが」

 アルンの言葉に、ブラムとコリンが頷く。
 ティムは一呼吸遅れ、顔を赤くして俯いた。

「アルン君、ブラム君、コリン君の三人は、確かミゼアス兄さんからある程度仕込まれているんだよね。受け入れることもできるんだっけ?」

「いちおう、受け入れる訓練もしましたが……ミゼアス兄さんは道具を使っていました。もしかしてヴァレン兄さんは、突っ込むつもりですか?」

「いや、突っ込まないよ。そもそも勃たないし」

 三人衆がはっとした顔をし、気まずそうにヴァレンから視線をそらした。

「ヴァレン兄さん……まだお若いのに、おいたわしい……」

「おいたわしい……」

 表情を同情の色に染め、アルンがいたましそうな声を漏らすと、ブラムとコリンが唱和する。

「いやいや、ちょっと待って。何を勘違いしちゃってるの? しかも、そんなところで息を合わせないで。俺は小さな男の子に欲情する趣味がないだけ。不能ってわけじゃないから」

「じゃあ、どんなことをするんですか?」

「普通に床入りの勉強を考えていたけれど……何だかもう、どうでもよくなった。遊ぼう。何もかも放り出して、みんなで遊ぼう」

「それが上役の台詞ですか」

 呆れ顔のアルン。
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