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22.女神に愛された賭博師
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「素直に白状したんだ」
命令者の足取りがつかめないということは、捕まった男は事情を知らされていない下っ端だったのだろう。ただ、嘘を言っている可能性もある。
「家族が相当怒ったらしく、男を半裸にして見せしめに町中を引きずり回したそうです。それで逆らう気力も失せたのでは……と」
「うっわ、えげつないなー。でも、まあ……家族にしてみればそれくらい腹立たしいってことか」
本当に下っ端だとしたら、そんなことまでされて耐えるような根性も、義理もないだろう。
「その男が受けていた命令は、ひとつだけでした」
客は蜂蜜酒の入った杯を両手で握りながら、ちらり、とヴァレンの髪に視線を向けた。
当然のことながら、今はもうカツラも取って地毛をさらしている。いつもどおりの赤味がかった金髪だ。
「赤味がかった金髪の子をさらってこい、ということだったそうです」
客の言葉にヴァレンは腕組みをして、しばし考え込む。
「なんか……嫌な感じがするな」
「申し訳ありません……」
「あ、いや、あなたのことじゃなくて。俺にもちょっと引っかかる出来事があって」
つい先ほど客として迎えたエイブは、最初、ヴァレンの髪に執着していた。
今日の様子はまともそうだったが、いきなり身請けをしたいと申し出てきたことだってあったのだ。
執着する理由は、何となくわかった。ローダンデリア家がどうのや、ヴァレンの母との関連だろう。不可解な理由ではない。
しかしヴァレンの中では、どうも喉に小骨が引っかかっているような違和感が残っていた。
「先生にも何かあったのですか?」
「俺の場合はさらうっていうことじゃあ……いや、ある意味そうかも……いや、それよりもあなたの弟さんも髪の色は赤味がかった金髪なの?」
「はい……母譲りです。といっても、先生ほど綺麗じゃなくて茶色に近いですが……。両親には、ここまで詳しいことは話していません。心配させてしまいそうなので……。僕はもう一度、探しに行ってみようと思います」
「……誘拐犯は南方寄りの宿場町で捕まったんだったね。じゃあ、南方が怪しいかもしれないね。例えば、ニアビリとか……ローダンデリアとか」
ヴァレンがかつて育った町と、問題の地の名をあげてみる。仮にエイブが何らかの関わりを持っているとすれば、そのあたりが怪しいと思われた。
ただ、まだ勘の段階でしかない。明言は避け、もっともらしい理由をあげつつ、ぼかしてみる。
「なるほど……確かに、南方は怪しいですね。ニアビリやローダンデリアは、先生の第六感ですか?」
「あー……うん、何となく」
「わかりました、ありがとうございます。先生の賭博の才は神がかっています。まさに、運命の女神に愛された賭博師です。先生がそうおっしゃるのなら、僕もそこに何かありそうな気がしてきました!」
あっさりと受け入れて瞳を輝かせる客に、ヴァレンは苦笑が浮かび上がってくる。
「いや、信頼してくれるのは嬉しいんだけど……俺、賭博師じゃないんだよなぁ……」
命令者の足取りがつかめないということは、捕まった男は事情を知らされていない下っ端だったのだろう。ただ、嘘を言っている可能性もある。
「家族が相当怒ったらしく、男を半裸にして見せしめに町中を引きずり回したそうです。それで逆らう気力も失せたのでは……と」
「うっわ、えげつないなー。でも、まあ……家族にしてみればそれくらい腹立たしいってことか」
本当に下っ端だとしたら、そんなことまでされて耐えるような根性も、義理もないだろう。
「その男が受けていた命令は、ひとつだけでした」
客は蜂蜜酒の入った杯を両手で握りながら、ちらり、とヴァレンの髪に視線を向けた。
当然のことながら、今はもうカツラも取って地毛をさらしている。いつもどおりの赤味がかった金髪だ。
「赤味がかった金髪の子をさらってこい、ということだったそうです」
客の言葉にヴァレンは腕組みをして、しばし考え込む。
「なんか……嫌な感じがするな」
「申し訳ありません……」
「あ、いや、あなたのことじゃなくて。俺にもちょっと引っかかる出来事があって」
つい先ほど客として迎えたエイブは、最初、ヴァレンの髪に執着していた。
今日の様子はまともそうだったが、いきなり身請けをしたいと申し出てきたことだってあったのだ。
執着する理由は、何となくわかった。ローダンデリア家がどうのや、ヴァレンの母との関連だろう。不可解な理由ではない。
しかしヴァレンの中では、どうも喉に小骨が引っかかっているような違和感が残っていた。
「先生にも何かあったのですか?」
「俺の場合はさらうっていうことじゃあ……いや、ある意味そうかも……いや、それよりもあなたの弟さんも髪の色は赤味がかった金髪なの?」
「はい……母譲りです。といっても、先生ほど綺麗じゃなくて茶色に近いですが……。両親には、ここまで詳しいことは話していません。心配させてしまいそうなので……。僕はもう一度、探しに行ってみようと思います」
「……誘拐犯は南方寄りの宿場町で捕まったんだったね。じゃあ、南方が怪しいかもしれないね。例えば、ニアビリとか……ローダンデリアとか」
ヴァレンがかつて育った町と、問題の地の名をあげてみる。仮にエイブが何らかの関わりを持っているとすれば、そのあたりが怪しいと思われた。
ただ、まだ勘の段階でしかない。明言は避け、もっともらしい理由をあげつつ、ぼかしてみる。
「なるほど……確かに、南方は怪しいですね。ニアビリやローダンデリアは、先生の第六感ですか?」
「あー……うん、何となく」
「わかりました、ありがとうございます。先生の賭博の才は神がかっています。まさに、運命の女神に愛された賭博師です。先生がそうおっしゃるのなら、僕もそこに何かありそうな気がしてきました!」
あっさりと受け入れて瞳を輝かせる客に、ヴァレンは苦笑が浮かび上がってくる。
「いや、信頼してくれるのは嬉しいんだけど……俺、賭博師じゃないんだよなぁ……」
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