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吾郎激怒
しおりを挟む麗奈はいつになく怒っている吾郎がとても怖く、9階まで上がっていた。
恐る恐るチャイムを鳴らすと、吾郎が出てきた。
「ちょっと入れよ。」
「失礼します。お邪魔します。ご用件はなんでしょうか?」
「座れ。」
麗奈がソファーに座ろうとすると、吾郎は怒り出して。
「正座に決まってんだろうよ。正座で座れよ。」
麗奈は、カーペットの上に正座して座っていた。
「なんで呼ばれたかわかるか?」
「わからないです。すいません。」
「お前、無理な注文受けてライブキャンセルとか言っただろ。どうなんだよ。」
「はい、ライブとかキャンセルすれば5日で仕上がると言いました。」
「それって、ライブのメンバーを不愉快にさせるんだぞ。お前らのステージの穴を誰が埋めるんだよ。言ってみろよ。」
「考えてませんでした。なんか、急いでたみたいなのでつい口に出てしまいました。」
「ライブの出演交渉とか、お前らのチームはどうするんだよ?裏切るのかよ。お前ら兄弟の為に駆けつけてくれたライブのメンバーも裏切るのかよ。一生ライブのステージには立てないからな。俺が立たせないし。」
「どうしたらいいんでしょうか?」
「ライブもやって、レコーディングもするんだよ。間に合わせろよな。言い切ったんだろ。約束とかスケジュールってのは守らなきゃいけないんだよ。こんなの常識だぜ。寝ないでも死なないからな。やれよな。ライブ手抜いたら、お前ら首にするからな。」
「はい わかりました。頑張ります。すいませんでした。申し訳ありませんでした。」
「わかったら、みんなに伝えろよな。さっさと出ていけよ。」
麗奈は、追い出される様に吾郎の部屋を後にしていた。
「ちょっと、可愛そうじゃないの?」
「常識外れなんだよ。他のバンドに示しがつかないだろうが。」
麗奈は洋子のところに戻ると、みんなまだリビングにいた。
「なんだって?」
「ライブキャンセルは許さない。レコーディングも間に合わせろ。寝ずに頑張れ。寝なくても死なない。ライブ手抜いたら全員クビだって。」
「殺されるな。麗奈いけそうなのか?」
「今から、各自個人練習をして2時頃まで。5日間は、ランニングしないで。ライブやりながら、時間あったら戻ってスタジオですかね。多分、深夜まで毎日だと思います。」
「取り敢えず、グズグズしてても仕方ないから、各自明日までにある程度仕上げちゃおうね。それからだよね。」
その日から、午前2時まで個人練習が始まっていた。
ライブに行くまでの時間は、1階で音合わせをしていた。
麗奈のギターは何回も止まり、メンバーもイライラしてきていた。
「ちょっと、演奏が雑になってきてるから。休憩しましょうか?」
「ああ そうだね。 麗奈厳しんだもの。」
「でも、レコーディング吾郎さん来るから。もっと厳しいと思うわよ。」
「だよね。妥協しちゃだめなんだよね。今日はライブ何回だっけ?」
「多分、2回だと思いますよ。終るのが、2時頃だから。帰って3時ですね。」
「後、5分休憩ね。」
4人は出発の時間ギリギリまで、音合わせをしていた。
何度もダメ出しを出しては、先に進まなかった。
ライブ会場に入っても、出番まで必死に車で練習をしたり楽譜に書き込んでいた。
「おい、どうしたんだよ。今日は車の中で。」
「あ すいません、おはようございます。CDを5日で仕上げなきゃいけないので必死なんです。昨日の夜、メンバーに譜面とデモ渡したので。」
「キッツイなー 」
「はい ライブも、CDもどっちも頑張れって言われて。ライブ手抜いたらクビって言われました。」
「じゃ、そろそろ着替えてメイクしたらどうなんだ?」
「あ ありがとうございます 忘れてました。」
4人は着替えると、メイクをしてもらっていた。
麗奈は、忘れてた弦の張替えをし始めていた。
みんなに挨拶しながら楽屋に入り、それでも譜面を睨んでいた。
「なんのCDなんだよ。」
「なんか化粧品会社のCMで歌手が悪いことしたので流せないからって、昨日言われて急遽です。」
「ああ 大麻か。あいつだな。それでやってるのか?よくすぐできたな?」
「画像は取り直さないと思ったのでそのイメージの曲を作ってあった曲の中から選びました。」
「お前ら出演してる時、楽譜見てていいか?」
「はい 構いませんよ。少しずつ変えていきますけど。みんなで合わせながら。」
「今、何時間練習してるんだ?」
「私は、8時間くらいですね。作った本人なので、割と楽ですけど。」
「じゃ出てる時、見させてもらうね。全員のを。」
「大丈夫ですよ。なにか指摘ありましたら言ってくださいね。」
麗奈達は楽譜を全部渡すと、ステージに上がっていた。
いつもの様にパフォーマンスをして、心地よいサウンドを奏でていた。
6曲歌うと、客席にみんなで手を繋いでお辞儀をしてニコニコしながら袖に引っ込んでいた。
ギターをスタッフに渡してから、感想を聞いていた。
「この譜面にあげたのは、何時間かかったの?」
「えっと、デモテープと譜面で2時間くらいですね。少しかかっちゃいました。」
「普通、1日作業だぜ。各パート別に凄い細かく書かれてるしな。出来上がるのが楽しみだな。」
「そうですね。今日から徹夜とかもあるので、ちょっとキツイですけどね。今日は次そのまま行きますので失礼します。ありがとうございました。」
麗奈達は、車に乗り込むと各自練習をし始めていた。
「麗奈のあの楽譜通りにやるなんて至難の技だぜ。今回はキーはベースかな。ギターは難しいけど、弾き熟すだろうしな。しかし。通し1日。リード1日。ボーカル1日だから、酷だよな。コーラスも入るのか。」
次の場所でも練習をしていて、メイクを直してもらいそのままステージに上がった。
その日は、帰ると1階で深夜2時まで練習をしていた。
麗奈のダメ出しの数も、減ってきていた。
「そこ ベースもっと歯切れよくね。彩香ならできるから。」
「あ わかったよ。じゃ、もう一回ね。」
こんな繰り返しが続いていた。
明日はレコーディングを、終わらせなければならなかった。
洋子はエントランスに、サンドイッチと飲み物を置いて上に上がっていた。
次の日だけ過酷で、3ステージだった。
終わったのは、夕方4時になり。
4人は、慌てて車に乗り込むとスタジオ入りしていた。
5時から始めて2時までやったが、麗奈が止まったり。
吾郎から、ダメ出しが入っていた。
結局、この日は消化できないでいた。
夕食と夜食は、サンドイッチだった。
次の日は1ステージだったので、しかも2時からだった。
早朝からスタジオ入りしていて、吾郎を呼んでレコーディングを始めていた。
やっと、オッケーが出たのは、昼過ぎだった。
後は、麗奈がどれだけ頑張るかだった。
そのまま、みんなが昼食に行ってる間にリードを入れていた。
吾郎からの細かい指示が出て、何度もやり直していた。
結局、5時に帰ってきてからになった。
それでも感覚を掴んでいたので、8時には終わっていた。
そのまま凛を呼んで、吾郎と凛の見てる前でボーカルを入れていた。
凛は、とにかく細かく指示を出していた。
楽譜に書き込んで色々と試しながらやって、やっと3時半に終了した。
明日、あすか達がコーラスを入れるだけだった。
麗奈はギターを抱えて、フラフラしながら部屋に入っていた。
次の日は、麗奈はぐっすり寝てしまっていた。
今日は2ステージだったので、あすかが起こしにきた。
「あ ごめんなさい 寝てました。」
「時間だから行くわよ。支度してね。」
麗奈は支度をしてギター2本持つと、車に乗り込んでいた。
ライブ会場までも、ずっと寝ていた。
「何時までやったのかしらね?」
「3時半までですよ。その前も遅かったですからね。後はコーラスだけになってますよ。」
「やりきっちゃったんだ。凄いな。じゃ、頑張って仕上げないとね。」
麗奈はライブ会場に着くと、いつもの麗奈に戻っていた。
「おお 終わったのか?」
「ええ 一応、私のところはですね。後は、今日コーラス入れるだけです。」
「凄いな。終わらしちゃったんだ。」
「初日はオーケーでませんでしたけどね。オーケーでたら、深夜の2時過ぎまでかかってリード入れてました。昨日は、ボイトレの先生が細かいので。3時までかかっちゃいましたけどね。」
「そっか、クビにならないな。」
「ちゃんとライブやらないといけないですよ。お客様にも先輩にも失礼ですからね。」
4人は2箇所のライブを熟すと、一目散にスタジオに向かっていた。
3人のレコーディングをずっと見守っていた。
途中で洋子がおにぎりを持ってきてくれて、4人は美味しそうに食べていた。
「もう。ちょっとなんだけどな。麗奈、どこが悪いの?」
「無理に声出そうとしてるからじゃないのかしらね。みんないい声してるから、そのまま歌うと良いと思いますよ。」
「そっか、もっと軽く歌えばいいんだね。」
「そうですね。がんばってくださいね。」
4人は再びスタジオに入ると、先程とは見違える声だった。
何度かダメ出しはもらっていたが、12時には終了していた。
4人は吾郎・凛・エンジニアさんにお礼を言うと、スタジオを後にしていた。
「ねえ、ファミレスで食べていこよ。」
「賛成。打ち上げね。洋子さんも純也さんも来るでしょ?」
6人で入ったがなぜか疲れ切っていて甘いものが食べたくなり、チョコレートパフェを麗奈は頼んでいた。
「甘いものいいわね。私もそれにしよっと。洋子さん達はなんでもいいのよ。」
「こんな夜中に食べたら太っちゃいますから、コーヒーで。」
「俺もコーヒーでいいです。」
「洋子さん、太ってないのに。」
しかし、4人はクタクタだった。
明日も走るのは辞めて、遅くまで寝ることにしていた。
明日は2時から1回のライブだったので、4人は帰ると着替えもせず。
そのままベッドで、寝てしまっていた。
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