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養女
しおりを挟む茉莉子の部屋まで来ると、みんな集まっていた。
「凄いところに住んでるわね。これで家賃5万なんてね。」
「麗奈がここ1億で買ったんですもの。大家さんですよ。」
「もう、お姉ちゃん。いっつもそうやってからかうんだから。」
「まぁ本当は事務所の方で10万で貸せって言ってたんですよ、お母さん。でも、麗奈が5万にしてって言ってね。書類作り直してもらってそうなったのよ。私は10万でも安いと思ったんですけどね。」
「お母さん知ってる?麗姉の部屋とっても広いんだよ。ワンフロワーだからね。俺達、ここ改築してる時そこで暮らしてたけど。」
「そんなに広いの?我が家で1番のお金持ちね。」
「でも、振り込まれる給料は10万ですよ。多分ね。使わないから減らないですけど。」
「まぁ、麗奈はギターしか買わないものね。」
「ええ でも、貰い物ばかりですよ。高いのは買えないですからね。ところで、お父さん達、泊まる部屋あるの?なければ、私のところでもいいわよ。明日、事務所がオフにしてくれたので。ゆっくりできるから。」
「あら、茉莉子達新婚さんのところじゃ悪いものね。麗奈のところに泊まりましょうかね。お父さん。」
「でも、麗奈のおかげで結婚式お金かからなかったわよ。全部やってくれたから。」
「あの歌った曲あるでしょ?それを社長さんが凄い気に入ってくれてね。モデルしちゃいましたー お姉ちゃんより早く、花嫁衣装着ましたよ。」
「でも、麗奈。ばかにセンスいい服着てるわね。どうしたの?」
「結婚式とか、わからないでしょ?お姉ちゃんには聞けないしね。だから、優さんに聞いたら。買ってくれたの。」
「もう、麗奈は田中家じゃなくて。新垣家の一員ね。」
「みんな良い人ばかりで、苦労したことないですよ。マネージャー2人も良い人だし。会社の人も。スタッフさんも、メンバーもね。」
「茉莉子姉、お腹空いたけど。なんかないの?」
「幸平、見てたけど麗奈の殆ど食べて2人前食べてたじゃないの。」
「だって、もう7時だよ。夕飯の時間だもの。」
「ご飯ならあるから、みんなでお茶漬けでいいかしら?漬物と明太子くらいしかないわよ。」
「十分だよ。」
「お姉さん、手伝いますよ。」
「うち2人だから、そんな食器ないけどね。まぁ6人ならお茶碗とお椀とどんぶりでいいわね。幸平はどうせどんぶりでしょ?聡もよね?」
茉莉子は出汁を取っていた。
詩織はご飯を盛ったり、漬物を切ったり・明太子を皿に乗せていた。
「っていうか、幸平は自分の持ってくればよかったじゃないのよ。今気がついたわよ。」
「いつも、茉莉子のところに幸平は来てるの?」
「たまに来ますよ。ご飯食べて帰りますけどね。」
「麗奈はこっちに来ないの?」
「色々とやることあるから、忙しいしね。ご飯はマネージャーが全部用意してくれてるので。この前来たのは、色紙を届けに来た時ですよね。」
「お母さん、麗奈は変わってないのよ。手がかからない娘なのよ。用事の時は来るけどね。」
茉莉子と詩織が用意してくれたお茶漬けを、みんなで食べていた。
幸平は、普通体型なのにたくさん食べていた。
聡は結婚式であまり食べれなかったのか、美味しそうに食べていた。
食べ終わると、明日の朝食は茉莉子が用意するからと言われて両親と一緒に帰っていた。
「お母さん、ここって公園があっていいでしょ?毎日、走っているのよ。」
「まだ、麗奈は走っているの?」
「ツアーとかの夜は遅いから走らないけど、後は走ってますよ。だって、体力無いでしょ?ちゃんと体力つけないといけなですからね。3日で6ステージとかあるから。」
10分程歩くと、マンションに着いていた。
エントランスを開けると、エレベーターで3階まで上がっていた。
確かに、このフロアーには入り口は1個しかなかった。
両親は、いささか驚いていた。
「どうぞ、上がってね。リビングでゆっくりしてね。お風呂沸かしますから。」
麗奈は風呂場に行くと、お湯を張っていた。
「お父さん、お茶がいいかしら? あまり飲まないから、良いのは無いけど。」
急須に茶葉を入れると、ウォーターサーバーからお湯を注いでいた。
両親にお茶を出して、ゆっくりしていた。
「この階全部麗奈の部屋なの?」
「うん でも、あまり使ってないですよ。リビングと寝室と練習室と保存庫と視聴覚室かしらね。後はPCのある作曲する部屋です。4~5部屋くらいは、使ってないですよ。」
「他のメンバーは?どこにいるの?」
「2階に3部屋ありますよ。保存庫いらないし、作曲する部屋もいらないでしょ?視聴覚室もいらないしね。でも、いる時は使っていいって言ってますよ。」
「あんただけ優遇されてて、文句言われないの?」
「文句言われたことないですね。別に部屋変わってもいいし。広すぎるもの。今日、お父さんとお母さんはベッドで寝てね。私はリビングで寝るからいいわよ。」
「麗奈は、芸能人って自覚ないでしょ?」
「それ、注意されました。もっと身だしなみしっかりしろって、言われましたよ。それで、あちこち行って買い物しました。そろそろお父さん、お風呂沸いたわよ。タオルとかバスタオル収納に入っているから、勝手に使っていいわよ。」
父は、風呂に入りに行っていた。
「お母さん、ブラとショーツって揃えないといけないのね。知らなくて、安売りばかり買ってたら怒られちゃったけど。」
「当然でしょ?そんなの常識だわよ。音楽以外は全くダメなんだからね。」
「走るのも、高校のジャージで先日まで走ってましたけど。初めて時計とかもしたしね。もう、ビックリすることばかりだわよ。」
「高校のジャージって何年履いてるのよ。」
「わかんないですね。そうそう、中学の入学祝いのお財布持ってたら笑われました。」
「あれ、まだ使ってたの?」
「貰ったものだから、使わなくても閉まってありますけどね。」
「捨てちゃえばいいのに、あれ安物なのよ。今は、どんなの使ってるの?」
「えっと、買ってもらったから値段とかわからないけど。これですよ。」
「あら、これ高いのよ。良いもの持ってるわね。」
「そうなんですね。さっぱりわからないですけど。時計の時はビックリしましたけどね。60万くらいしたから。そして、いらないって言ったら。70万のギター衝動買いするのにケチケチするなって怒られましたけどね。」
「そんな高いギターも買ったの?」
「練習用ですよ。1番高いのは2000万とかするので。あ でも、貰い物ですから。」
「お金は貯めるんじゃなくて、有意義に使いなさいよ。みんなにご馳走したり、買い物行って、これだれかに似合うなって買ってあげたりね。年中じゃダメよ。」
「はい あまり出歩かないので、考えておきますよ。」
母も交代で風呂に入ると、両親はベッドで寝ていた。
麗奈は着替えを持って風呂に入ると、練習したり作曲したりして0時にリビングで寝ていた。
翌朝も5時に起きると、みんなに電話していた。
洋子には朝食はいらないからと電話を入れてから走っていた。
部屋に戻ると、シャワーを浴びて着替えてから洗濯機を回していた。
テラスに洗濯物を干すと、紅茶を入れてゆっくりとしていた。
7時過ぎに、両親が起きてきていた。
「おはようございます 寝れましたか?」
「良いベッドだから寝すぎたわよ。麗奈は何時に起きたの?」
「私は5時にいつも起きているので、それから走ってシャワーして洗濯しましたけど。お姉ちゃんに電話しますね。」
麗奈は茉莉子に電話すると、茉莉子は起きていた。
8時過ぎに行くと伝えて、両親にも言った。
「じゃ、麗奈の自宅をお父さんと一緒に見学してきますね。」
「なにもないですけど、どうぞ。」
両親は、もう呆然とした顔で帰ってきていた。
「また、ここに寄りますか? それとも、荷物持っていきます?」
「麗奈 この礼服お父さんのとお母さんのクリーニングに出しといてくれないかしらね?」
「あ いいですよ。置いといてくださいね。幸平の時、着るんですものね。」
「しかし、普段着もお洒落になったわね。どっかのお嬢様みたいだわよ。ねえ、お父さん。」
「本当にうちの娘か、信じられないよな。」
「新垣さんは、どこに住んでいるの?」
「確か、1番上ですよ。なにか用事ですか?」
「せっかく来たのに、挨拶もしないで帰れないでしょ?」
「じゃ、案内しますね。」
エレベーターで9階まで上がると、チャイムを鳴らしていた。
優がでてきたので、両親が上京して挨拶を2人にしたいと伝えていた。
「麗奈は、お姉さんのところに行くんでしょ?ご両親とお話しするから、先に行っててくれるかしらね。」
「はい わかりました。じゃ、お母さん先に行ってます。」
麗奈は、一人で茉莉子のマンションに来ていた。
「あら、お母さん達は?」
「えっと、吾郎さん達に挨拶したいって言ったので、連れてったら一人だけ帰されちゃいました。」
「じゃ、先に5人で食べちゃいましょうね。」
ハムエッグ・明太子・漬物・味噌汁・胡麻和えだった。
「お姉ちゃん、料理上手になったわね。この胡麻和え美味しいし。」
「大したもの出してないわよ。材料も時間もないですからね。」
「私、ハムエッグだけはできるわよ。」
「知ってるわよ。毎年正月はハムエッグとパン食べてからレッスン行ってたものね。麗奈は、朝食もっと豪華でしょ?」
「一緒ですよ。この前はね、私のリクエストでざるそばにお昼してもらいました。」
「安上がりよね。普通の芸能人は違うでしょうに。」
「そんなの見てないからわからないわよ。洋子さんのお料理美味しいからいいのよ。」
色々話しながら食事が終わり、コーヒーや紅茶を飲んで再び話しをしていた。
10時になっても、両親は茉莉子の部屋に来なかった。
「遅いわよね。もう2時間したら、昼食になっちゃうのにね。」
「なんか麗奈が悪いことしたんじゃないの? 考えてみなさいよ。」
「うーん 吾郎さんにしつこくレッスンを迫ってたことかなー 嫌がってたけど。それとも、優さんにいっぱいお金使わせちゃったことかなー わからないわ。あ そう言えば、お姉ちゃんや幸平達は新婚旅行とかは?」
「私達は、来年の夏かしらね。結婚式のお金浮いたからハワイね。」
「俺達もハワイにしようかな?結婚式のお金だと、それよりも高いからさー」
「そうなんだ。日本縦断は何回もしてるけど、外国は無いわね。」
「いつか、麗奈だって行けるわよ。稼いでいるんだからね。」
そんな話しをしていると、両親が深刻な顔をして入ってきていた。
「お母さん、私なんか悪いことして怒られたの?」
「ううん 違うわよ。ちょっと、びっくりする話しだったからね。考えさせてくれって言ってきたのよ。まぁ、幸平の結婚式までには結論を出すってね。まぁ、麗奈の事だから隠しても仕方ないわよね。実は、新垣さんから養女にしたいって言われたのよ。勿論、私達との縁とか切らなくてもいいってね。子供ができないから、可愛がってる麗奈を養女として迎えたいって言ってお願いされたのよね。」
「私達には、ちゃんと幸平とか跡継ぎがいるものね。わかる気がするわね。麗奈はどうなの?」
「私、一生お父さんやお母さんの子供ですよね?もし、名字とか変わっても。」
「まぁ、麗奈はお嫁に行くんだからね。どうせ名字は変わるのよ。お母さんやお父さんが2人いるのは嫌?」
「こっちに来て、優さんは。ずっとお母さんが子供を心配してなにが悪いのってずっと言ってたけど。私は、お母さんとお父さんがそのままだったら。名字変わってもいいですよ。お父さん達に任せます。」
「そうね、兄弟とか親の縁が切れるわけでもないしね。新垣さんとこの子供になったからって、今までと変わりなく過ごせるの?麗奈。」
「向こうは親って言っても社長ですよ。そして、師匠ですよ。変わるわけないじゃないですか。そんな事したらバンドもバラバラになっちゃうし、嫌です。」
「お父さん、どうします?」
「麗奈がよければ、俺達はいいよ。麗奈なら、問題ないと思うけどな。こんな話しは早めに返事した方がいいかもな。書類とかもあるから。こっちも用意しないといけないし。」
「お姉ちゃんも変わらないでよ。幸平もだよ。聡さんも、詩織さんもだからね。」
「心配症だよな。俺達兄弟だよ。死ぬまでな。」
「幸平の言う通りよ、私は麗奈のお姉さんなんですからね。」
「ありがとう。」
「じゃ、お父さん。電話かけてやって。向こうも早い返事が聞きたいだろうしね。」
父は少し離れた場所で、電話をしていた。
「先程、伺いました麗奈の父です。新垣さんですよね。」
「はい そうです。少し図々しい要求でしたよね。すいません。」
「いえ、家族で話し合って。麗奈も家族と縁が切れないのなら、名字が変わっても問題ないと言ってました。私達も、同意見です。ただ、娘を家族だからって甘やかさないで、今まで以上にキツく躾けてくださいね。それだけ、お願いできればいいです。娘も、家族だからと過剰な差別されて。バンドがギクシャクするのは嫌だと言ってますので。」
「はい その点は心得ています。私もバンドをやってましたので、わかりますので。」
「こちらの方は、次の上京する時に書類を用意してお渡ししますので。」
「こちらからのお願いばかりで、そちらの要求とかはありますか?」
「娘をよろしくおねがいします。音楽しか知らない娘なので、他はなにもわからないので。」
「承知しました。ありがとうございます。娘さんになにかあったら、私を殴ってください。その様な事が無いように気をつけますので。」
「はい それでは新垣さん。よろしくおねがいします。娘を頼みますね。失礼します。」
父は少し涙声だった。
昨日は姉が嫁ぎ、今日は妹が養女の話しなのだから無理もなかった。
「お父さん・お母さん。いつも連休の時仕事入れちゃってるけど。今度から帰るからね。ごめんなさい。こっちに来てから2回しか帰っていないものね。」
「麗奈の部屋は、そのままにしてあるから。いつでも、帰ってきなさいね。」
「お父さん・お母さん。ありがとう。」
突然の出来事で、部屋は静まり返っていた。
「でも、幸平の結婚式の時はまだ田中だからね。良いでしょ?幸平。」
「名字変わっても、お姉ちゃんに変わりないだろ。いいじゃないか。」
「そ そうだよね。わかってるわよ。ごめんね。」
「謝らなくていいよ。どれだけ、新垣さんに教えてもらったのさ。今のお姉ちゃんあるのは、新垣さんのおかげでしょ?師匠が望んだら、弟子はそれに答えないとね。」
「幸平の言う通りね。お父さんも、そろそろこっちに来なさいよ。」
家族でゆっくり話し始めていた。
もう、12時を過ぎていた。
「お父さん、そろそろ帰らないと行けないわよ。もう、東京って路線が複雑なのよね。迷子になっちゃうわよ。」
「お母さん、お父さん、みんなで送りますよ。東京駅までね。」
7人は、茉莉子の部屋を出て駅に向かっていた。
ここからだと、そんなに複雑ではなく1路線だった。
東京駅に着くと、弁当とお茶と雑誌を麗奈は両親に渡した。
「あら、気が利くのね。ありがとうね。麗奈。」
「2週間後に、またきてねー クリーニング出しておくからね。」
両親を見送ると、5人は帰宅していた。
姉たちと別れて、麗奈はコンビニでサンドイッチを買って帰っていた。
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