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ギターがない

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4人は10時過ぎにマンションに着くと、洋子と純也にお礼を言い部屋にもどった。
麗奈は風呂に入り、今でも日課の手首の運動を続けていた。
0時まで練習をして、ベッドに入りぐっすりと眠っていた。
翌朝からまた普段の生活が戻り4人で走って、朝食を食べ1階で演奏をしていた。
昨日よりも、今日・今日よりも明日と 日毎に音は心地よく流れていた。
2時間に1回の休憩を取り、昼食を食べて少し1時まで休憩すると再び繰り返し始めていた。
麗奈のダメ出しも日を追う毎に、少なくなっていて4人はスタジオで楽しそうだった。
4人は、息もピッタリ。
そしてなにより、演奏も完成して30日を迎えていた。

4月の30日  午後10時、ワンボックスがマンションまで到着していた。
普段のワンボックスとは違い、7人乗りだった。
運転手1人と助手席に純也が乗り、中央の席に麗奈とあすかが座っていた。
後ろの席では、葉月と彩香と洋子が少し窮屈そうに座っていた。
まぁそれでも広い方なので、今まで1人1人のキャプテンシートだったので窮屈だったのかもしれなかった。

「あの 休憩の時交代しますから、すいません。」

「麗奈 バカね あんたが倒れちゃ困るんだから、あんたはそこが指定席なのよ。あすかには交代してもらうけどね。」

「わかってるわよ 言われなくたってね。でも、洋子さんも後ろだなんて。この前虐められたからイジメちゃおうかしらね。」

「もう、謝ったじゃないの。全部社長が仕組んだんだのよ。昼食もディナーも全部よ。」

「ところで、洋子さんって謎が多いわよね?私達、洋子さんの事あまり知らないもの。このツアー中に全部聞きだしちゃいましょうね。」

「別に隠すことなどないですよ。最初から、名前は言えないですけどマネージャーやってましたのでね。そこを善人さんに引き抜かれて、会社を辞めてこちらに移動してきたのよ。」

「マネージャーのプロなんですね。流石ですよね。いつも、気配りとか凄いですものね。」

「まぁ、何人か担当してきましたけど。今が1番楽ですよ。昔は買い物とかに走らされたり、遅いと怒られたりしてましたからね。」

「凄い世界なのね。ちょっと遅れったていいじゃないのよね。そんなに急ぐなら、自分で買ってこいって言ってやればいいのに。」

「そんな事できるわけないですよ。煙草の買い置きが無いと怒鳴られたりもしたしね。」

「マネージャーっていなければ、仕事できないのにね。私達なんて業界の事わからないから、洋子さん頼みだしね。でも、食事作らせちゃってるけどね。それは、ごめんなさいね。」

「1人分も5人分も一緒ですし、会社から食費ももらえるので助かってますよ。」

「まぁ、自分だと目玉焼きくらいしかできないけどね。会社で料理禁止でちょっと助かってますけど、いつも洋子さんのお料理美味しいから嬉しいのよ。」

「貴女達、寝なくていいの? だれかはとっくに寝てるわよ。」

「本当だ、はやー 麗奈って、いつもそうなのよね。最初のライブのコンサートの時、いきなり3会場で中学生のステージから急遽メインステージのトリ任された時も、直前まで寝てたしね。あの時は、いつも葉月が【朝だよー】って起こしてたわよね。みんな爆笑して緊張なんて吹っ飛んじゃったけどね。」

「麗奈には、驚かされてばかりよね。色々な曲作ったり、あんなギターテクニック身につけたり、綺麗な透き通った声で歌って。最初は麗奈の演奏に誰もついていけなかったものね。ずっと、麗奈が暴走するとソロ弾いてたしね。」

「最初は、麗奈の影響で吹部に入ったけど。やる気のない先輩や私達を見て退部しちゃってね。怒ったけど、麗奈と一緒に夢を追いかけようって決めたから。なんでも、先頭を走っているのはいつも麗奈だったわよね。良い師匠に恵まれたのも、麗奈が吾郎さんの家に呼んでくれたからだしね。もっと、麗奈みたいに努力しないといけないから、これからは師匠に教えて貰わないと。」

「多分、貴女達くらいだわよ。女性のグループって以外と簡単に解散とかしちゃうからね。それが10年も続いているなんて、やっぱりリーダーがいいのかしらね。私はそう思うわよ。麗奈が安心していられるのもあすかがいるからだし、彩香や葉月がいるからステージでパフォーマンスできてると思うわよ。普通にソロでライブしてても、いつもと違うもの。楽しんでいるけどね。あんなにキレたりしてないしね。それを麗奈もわかっていると思うわよ。」

4人が話しをしていると、最初の休憩で車は停まっていた。

「トイレとかあるから、一応起こそうかしらね。麗奈 休憩よ 起きて」

「あ 寝てたわ じゃ、外に出て空気いっぱい吸って。おトイレ行こうかしらね。」

7人は、車から降りるとトイレまで歩いていた。
いつものようにマイクロバスには大勢の従業員が乗り込んでいて、SAはいっぱいになっていた。
トラックの運転手も交代をし、マイクロバス・乗用車・そして麗奈達の車の運転手もマイクロバスの人と交代していた。

まぁこの頃スケジュールを知っているのは、善人と香織と洋子と純也であった。
勿論、会社では把握していたが。
同行してる人では、4名しか知っていなかった。
これが善人の言う、悪い話しの意味であったとは麗奈自身も気がついてはいなかった。
車はゆっくりと北上していき、早朝の休憩では4人は1時間走ってシャワーを浴びてから車に戻っていた。
道が空いていたのか、今回は昼過ぎには北海道に車が到着していた。
珍しく車は漁港の近くに停まり、海鮮などで有名な店の駐車場に停まった。
ぞろぞろと車から降りて、善人も店に入るので4人も入っていた。
人数が多いので、テーブル6に分かれて座り。
目の前には、刺し身・ウニ・毛蟹など、海産物がたくさん並べられてきていた。
女性が多いこのテーブルではとても食べ切れる量ではなかった。

「ほら、純也さんの出番ですね。たくさん食べてね。私達そんなに食べれないの知ってるでしょ?遠慮しないでね。」

麗奈は、蟹とか不得意だった。 
まぁ食べる機会もあまりなかったのだが、殻から身を出す作業がとても不得手でならなかった。
刺し身とか、ウニとかを食べながら少しぼんやりとしていた。
今までツアーで、こんなことなかったのにと気がついていた。
内緒でもしかして強行ツアーなのかもしれないと、薄々であるが感じていた。
他の3人は疑う気などなく、たくさんたべているので少し可笑しかった。

「なに、麗奈笑っているのよ。たくさん食べなさいよね。」

「だって、おかしくない? ツアー行く前にステーキ食べさせたり、ツアー初日にこんな事って今まであったかしらね? なんかよからぬ事が待ち受けているわよ。きっとね。葉月なら、調べるとわかるでしょ? 私は苦手だから調べることできないけどね。」

「確かにおかしいよね。異常なくらいだものね。今までこんなことなかったしね。」

「あった あった すごいことになってるわよ」

「なになに どうしたの? 葉月 説明してよ」

「1県3箇所 そして、2ステージ まぁ、次の日はオフになっているけどね。騙されたわよね。でも、全部やり遂げてみせるから、麗奈潰れないでよね。」

「洋子さんも純也さんも知ってたのよね? じゃ、罰として、ここのテーブルの全部2人で食べてね 私達、車で待機してますからね。」

4人はニコニコとしながら、洋子と純也を取り残して車に戻っていた。
テーブルに洋子と純也しかいないので、善人はテーブルまで来ていた。

「おい あいつら4人はどこに行ったんだ? 逃げたかー」

「違います バレちゃいましたけどね でも、絶対こんなのやりきってやるって車に戻りました 笑顔でね 大したものですよ 私は、あの娘達のマネージャーになって誇りに思いますよ。善人さん、ありがとうございます。拾ってくださって。そして、彼女達に巡り合わせてくださって感謝しています。」

「俺もですよ 心遣いとか細かくて、どっちがマネージャーかわからない時もありますからね 特に麗奈さんにはいつもお世話になっていますから。」

「まぁ、逃げてないなら良いか。でも、段々プロらしくなってきたよな。このスケジュール熟したら大したものだよ。うちの稼ぎ頭だからな。」

洋子や純也は食べ切れないので、男性陣のテーブルは殆ど残っていないので呼んできてみんなで食べていた。

その頃車の中では、葉月が色々とチェックをしていた。

「そうね どこも3箇所って、ことではなさそうですよね。ただ、人口の多いところは3箇所にしてるみたいですよ。東京・神奈川・大阪・愛知・千葉・埼玉・兵庫辺りかしらね。これだけでも、2週間かかるものね。3ヶ月で終る様になっているけどね。まぁ、2箇所のところは、2県で1週間だし。余裕じゃないのかしらね。私達ならねー」

「気になってるんだけど、関東に近づいてから5月の5日開けてあるわよね。」

「あ その日は、映画の試写会なので。私が行かないと行けないんです。すいません。」

「じゃ、善人さんにお願いしちゃおうか?みんなで行くって。そして、演奏もするってね。トラックとこの車だけでいいでしょ?私が行ってくるわよ。」

あすかは、車から降りて再び店内に入っていた。
善人を見つけると、色々と話し合っていた。

「社長 嘘ついてここまで引っ張ってきたんですよね?ちょっとは、私達の我儘も聞いてくださいよ。これはお願いです。」

「なんだよ 騙したのは悪かったけど、なにをねだるんだよ。金は無いぞ。」

「違いますよ 5月5日の日に私達とトラックを貸してください。試写会で1曲歌ってから返ってきますから。休日いらないですよ。これ以上麗奈ばかりに負担かけたくないし、それにあれは・・・・・・・  あの曲はPrettyGirlsの曲ですから、歌いたいです。お願いします。運転手さん達には、私達から頭を下げてお願いしますから。」

「聞いてみるけどな。試写会の方だって準備とかあるだろうし。」

「はい わかりました、お願いしますね 失礼します。」

「なんなんだよ せっかく休日やったのに、いらないって。まぁ、掛け合ってみるか。」

あすかが戻ってきて、3人は事情を聞いていた。
洋子や純也や運転手も乗り込み、車は漁港から離れていった。
北海道は恒例の函館と旭川で、今回も北の旭川からの出発だった。
夕方ビジネスホテルに到着すると、4人は着替えて走りに出かけていた。
走り終わりシャワーを交代で浴びると、麗奈は少しイライラしていた。
部屋を出て洋子の部屋に行き、善人の部屋に案内してもらっていた。

「社長、ギター触らないと落ち着かないですけど。トラックどこでしょうか?」

「だから、ダメだって言っただろ。それに今回は4本しか持ってきてないんだぜ。盗まれたらどうするんだよ。いくらするんだよ?考えろよ。お前は練習好きだけど、そこも少し直していかないとな。練習がダメだってんじゃないんだよ。休息も必要ってことだからな。わかったら、さっさと部屋に戻どりなさい。」

もうこれからずっとこんな生活かと思うと耐えきれない3ヶ月だと思い、部屋に戻ると葉月に近くの大型楽器店を検索してもらっていた。
案外近くで、歩いても5分足らずのところにあった。
急いで楽器店まで走っていて、4分ほどで到着していた。
かなり大きな楽器店なので、エレキとかギターの場所を店員に聞いていた。
まぁどれでもいいと思っていたが、目についたのはやっぱりGibsonだった。
まぁレスポールは2本あったが、これも中々よかった。

「すいませーん これ以外ってお店で置いてあるギターあるんですか?レスポールでも、ストラトでもいいんですけど。」

「そうですね。うちで1番高いのは倉庫にあって、70万くらいしますけどね。」

「ちょっと、見せて頂けませんか? お願いします。」

「良いですけど、買えないでしょ?ちょっと5分待っててくださいね。」

男は奥にかけていき、もうひとりの男と一緒に来ていた。

「お手数かけました。すいません。ちょっと弾いていいですか?ピックは買いますので、弾かせてください。」

ピックをいつものGibsonのピックを選ぶと、アンプの音量を下げて弾きだしていた。
まぁ最初に買ったレスポールよりも、格段に音質はよかったがVintageとは比べられなかった。

「あ これ、いくらになるんですか?」

少しだけ、速弾きなどもしたが問題はなかった。 
店員はあっけに取られていたが。

「えっと、ちょうど70万になりますけど。」

「じゃ、カードでいいでしょうか?ケースついてますよね?」

「カードでいいですよ ケースもついていますので。」

「ありがとうございます。弦を買っていきますね それとピックも10個程買わせて頂きます。」

カードで支払いを済ませていた。 
弦も10セット買っていた。

「あ もしかして、あのPrettyGirlsのREIさんですか? 気が付くのが遅くてすいません。」

「いえいえ 練習用のギターを持ってこなかったので慌てて買いに来ただけですから、ありがとうございました。時々、こっちに来ますから。よろしくおねがいしますね。」

麗奈はホテルに向かって、ニコニコと笑いながら歩いていた。

「おいおい、あのうちで1番高いギターが練習用って何者なんだよ。」

「だって、あの娘の使ってるレスポールってVintageだろ。音色が違うんだよな。あの娘、ストラトもVintageだし、アコースティクも2本確かVintageだよ。そりゃ、70万のギターは練習用かな。」

「しかし、ちょっと弾いたけど。凄い速弾きだったよな。あんなの普通プロでもあまりいないのに、、まだ22か23だろ?」

「確か、やり始めたのは中1って聞いてたけどね。努力してるんだよ。」

麗奈は、ホテルに戻ると部屋をノックして葉月に開けてもらっていた。

「なになに、ニコニコしちゃって。それにギター抱えちゃって。」

「だってね。これから休日とかギター触らせないって言うからね。寝られなくて、速攻で楽器店で買ってきたの。あっちのギターは高いからダメだって怒るしね。だから、普通の買ってきたわよ。」

「普通のっていくらしたのよ?」

「無駄遣いかしらね?70万だったけど、毎日イライラよりいいから、いいかなってね。」

「ってか、70万だったら普通にステージで誰でも弾いているでしょ?」

「ええ だから、これはチャリティーとかに活用しようかなって思っているのね。」

「そっか、それならいいわね。見せてみなさいよ。」

麗奈はケースを開けると、ギターを取り出していた。

「前のサンバーストに似てるわよね。でも、ちょっと重い感じかしらね。59年モデルみたいだからね。まぁ、とにかく弦を張り替えてちょっと弾いてから寝るわよ。」

麗奈は、弦を緩めるとニッパで切り出し、新しい弦に素早く張り替えてチューニングしていた。
ニコニコしながら練習用のヘッドホンをつけて、ツインベッドの上に腰掛けて弾きだしていた。
まぁこうなったら止まらないのはわかっているので、葉月は風呂に入っていた。
溜まっていたイライラも解消されて、ニコニコしながら弾いていた。
もう11時半になり、葉月も寝る頃麗奈の肩を叩いていた。

「麗奈 お風呂入れてあるから入って寝なさいね。満足したでしょ?」

「ありがとう 葉月さん 感謝 感謝 じゃ、入ってきますね おやすみなさい。」

麗奈はギターをケースにしまうと、風呂に入っていった。

まぁ、ツアーでも体内時計は変わらなく5時には目覚めて葉月を起こしていた。
あすかや彩香にも電話して起こすと、着替えて下に降りていた。
4人は走り出していた。 
今日からツアーの始まりだった。

「聞いてよ。麗奈ったら善人さんがギター取り上げたから、楽器店でギター買ってきて昨日部屋で3時間くらいニコニコしながら弾いてたのよ。異常でしょ?」

「そりゃ、異常だよね。でも、麗奈ならありえるかもね。善人さんも、まだ麗奈をわかってないよね。恋人がギターだって事をさ。取り上げられれば、何度でも買いに行くからね。」

「だって、麗奈ずっとイライラしてたものね。こっちは、なに怒っているのか、ちょっと近づけなかったけどね。」

「もう、みんなでそんな事言わないでくださいよねー。」


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