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ステーキ
しおりを挟む車に6人は乗り込み、行き先を純也に洋子は言うと純也は車を走らせていた。
車は夜の繁華街で停まり、洋子が降りたので4人も降りていた。
純也は、車を駐車場に入れてくるようであった。
洋子の後ろから4人は恐る恐るついていき、ある店の前で洋子は立ち止まっていた。
「じゃ、再出発だから派手に食べましょうね。いいわよね?あすかさん」
「ええ いいですけど、ここってすごく高くないですか? なんか外から見ただけでも凄そうだし、入ったこともないわよ。みんな、あるの?」
「あ 一度かな? ここと同じ様なところ入ったことありますよ。値段とかわからないですけど、ご馳走してもらったので。ライブとかやると、結構有名な人がいて誘われたりしたのよね。純也さんも食べてましたよ。」
「ええ なんでハンバーグ娘の麗奈がこんな高級店に入っているのよ。私達、ステーキって言えばファミレスしかないのにねー そんな有名人とも知り合っているんだ。やっぱり麗奈はみんなから愛されてるよね。勿論、私達からもよ。」
「ほら、いいから入るわよ。」
洋子は店内に入ると店員と話しをしていて、3名程のコックがいるカウンターに導かれていた。
「あすかさん、わからないでしょうから。勝手に注文したけどいいわよね?」
「はい、助かりますよ。メニューなんて怖くて見れないから。」
店内は高級感溢れた作りになっており、カウンターの前には一面鉄板であった。
綺麗に磨かれた鉄板はキラキラと光っていて、綺麗だった。
「みんなお酒飲まないでしょ? 飲まないだったら烏龍茶でいいわよね。」
「もう、なんでも洋子さんにお任せしますから。もうイジメないでくださいよね。」
なんかおどおどしてるあすかが、少し可愛そうに見えてきていた。
「これじゃ、せっかくの鉄板焼も美味しくないから白状しちゃうわね。全部、会社持ちよ。社長から言われたのよ。今日の出来がよかったから、なにかご馳走してやれって言われてたの。あすかさん、ちょっとからかってごめんなさいね。」
「もう、洋子さんったら。絶対許さないからねー なんちゃってね これで心置きなく食べれるわよ。」
純也も、到着して席に着いていた。
鉄板の上には、伊勢海老が乗り焼かれ始めていた。
「うゎ、おおきな海老ね 凄いわよね。」
「そんなに大きいですか? まぁ、突然だったので手配に苦労はしましたけどね。あちこちの店から無理を言って譲って貰ったので、今話題のPrettyGirlsが食べに来ると言ったら快く提供してくれましたよ。その代わりに、うちはいいので提供してくれたお店に色紙のプレゼントしてくださいませんか?」
「そんなのお安いご用ですよね?洋子さん、いいでしょ?無理に調達してくれたんですから。」
「そんなの貴女達で判斷しなさいね。当然だと私は思いますよ。」
洋子は少し笑顔で、あすかに答えていた。
ブラデーをかけられ大きな炎が立ち上がり、みんな仰け反って見入っていた。
「こんなのデビューしてから初めてですののね。いっつもファミレスばかりだし、麗奈は良いとこ行ってるでしょ?」
「えっと、なんか洋子さんと社長と鰻食べたり。ライブの人達と純也さんでステーキとか中華とか、珍しいんはイタリアンでしたけどね。でも、味とかやっぱりわからなかったですよ。男性ばかりで緊張してたし、話しはもっぱら音楽の事ばかりですからね。質問攻めとか多いし。あの焼肉屋の時だって三切れしか食べれなかったもの。」
「まぁ、それだけ麗奈は幅広く活動してるのよね。」
「幅広くじゃないわよ。一筋だから、それなりの人が集まったりしてるのよ。だって、色々なミュージシャンと共演すると得ること多いですよ。自分に足りないものも見えてきたりしますしね。」
「麗奈、あんたまだ欲張って色々吸収してるのね。そこが凄いんだけどね。」
話しをしながら、4人は伊勢海老と鮑を食べていた。
「でも、ここのお料理って凄く美味しいわよね。今度は、私達が本当に稼いだお金で洋子さんと純也さんを招待しなきゃいけないわよね。それに、洋子さんありがとう。素敵な美味しいお店に連れてきてくれて感謝します。」
「いえいえ 私も初めてなのよ。社長は何度か訪れてるみたいですけどね。昔、貴女達をデビューさせるために、色々と引き抜きとかして会社立ち上げるのに接待とかで使ったみたいですよ。会社名も【Pretty】でしょ?貴女達をデビューさせて、一人前にするために作った会社ですからね。普通ならCD売り上げてもレコード会社に50%取られるのも無くなっているのよ。貴女達がどんなに売れてもレコード会社に所属したらグループで1%しかもらえないですからね。それを4等分で分けるんだから、かなり少ないと思うわよ。そして、売れなくなれば放り出されたり。地方巡業に回されたりしてね、吾郎さんには感謝するといいわよ。あの人が発起人ですからね。」
「まぁ、お金はどうでもいいかなって今は思っているの。麗奈見てたらみんな感じたはずだわよ。チャリティーとか凄い数してるものね。でも、吾郎さんには私達感謝してるし、あの人いなければここまでなれなかったから。それぞれの師匠を与えてくれて。時には厳しいけど、そんな時っていつも私達が怠けてる時だものね。まだまだ、子供だなって思っちゃうわよ。」
「そうそう、あすかの言う通りね。葉月もでしょ?なんか、みんな売れてると思ってチャラチャラしてたわよね。地に足が着いてなかっていうか。それでも、麗奈だけはしっかり留まってくれてたから今もバンドが存続できてるのよね。だから、吾郎さんと麗奈にはとっても感謝してるしね。」
「あすかや彩香の言う通りよ。私達、やり始めた時期って変わらないのにね。私なんてピアノやってたから、麗奈より経験は多いかもしれないけど。努力って凄いよね。学生時代から週50時間の練習と毎日朝と夕方1時間走って。私なんてすぐ抜かれちゃったもの。今だってギター弾かない日なんてないでしょ?最初のツアーの時の事また思い出したわよ。バスの中で1人ギターを弾いてる麗奈。遊んでいる私達。注意されてやっと、バスの中で練習し始めたものね。」
「みんな 勘違いしてるし。私ね、このバンドの音が好きなのよ。色々とライブとかやってるけど、殆どソロだし。まぁ、ギター1本あればできるからいいんですけどね。ただの暇人がやってるだけですよ。私の原点はみんなと楽しく演奏すること、それだけです。だから、練習だと、あすかならもっと良い音出せるにとか、彩香なら・・・ 葉月ならってね。要求が多いのかもしれないです。そこは、謝らなきゃいけないと思います。ごめんなさい。」
「なーに、謝ってんのよ。麗奈がいなかったら、とっくに解散してたわよ。麗奈が注意してくれたり、指摘してくれてたからここまで私達がなれたんじゃないの。こっちが謝らなきゃいけないのに。これからも、ご指を・・・・・・ なんちゃってね。でも、このバンドで聴覚良いのは麗奈だから。麗奈が妥協したら、このバンドは解散になるわよ。そこは、わかっていてよね。これからも、ビシビシ指摘してよね。こっちも、麗奈の期待に添える音を奏でるからね。任せなさいよね。」
「おしゃべりはいいですか? お肉ですよ 足りなかったら、焼きますからね。塩とわさび醤油と粒マスタード色々とありますので、試してみてくださいね。つけると色々と味が変わって面白いですよ。そうそう、野菜も焼いていますので。もうすぐ、できますからね。」
「ちゃんと、切ってくれてあって嬉しいわよね。お箸で食べれるし、食べやすいわよ。」
「うんうん 塩も絶品だわよ。なんかお肉の味が引き立ってくる感じ。」
「わさび醤油は、スッキリするわよ。こっちも、美味しいし。」
「粒マスタードも結構いけるわよ。これも中々の絶品だしね。」
4人は楽しく会話をしながらステーキを食べながら、焼き野菜も食べていた。
「お腹いっぱいになりましたか? 女性にしては結構な量のお肉を焼いたんですけど、足りなかったですか?」
あすかと彩香は、もう少し焼いてもらっていた。
「あ じゃ、私も焼いてください。」
「えええ 麗奈がまだ、食べるの? 凄いわよね その痩せた身体のどこに入っていくのかしら?」
「すいません ちょっと、汚れたので別のお皿に盛って頂けませんか?すいません。」
「いいですよ 気にしないでくださいね。」
ステーキが焼き上がると、麗奈はお皿を持ち立ち上がると純也のところまで行きテーブルに置いていた。
「純也さん、男性だから足りないでしょ?遠慮しないでね。」
そのまま、座席に戻り座って烏龍茶を少し口に含んでいた。
確かに、男性にとっては物足りない量だったのを麗奈は見ていて思った。
いつも洋子と純也は遠慮しているので、気にはしていたのだった。
3人は、さりげなく気を配る麗奈にあっけに取られていたが。
まぁ、あの話しはもうしないでおこうと思っていた。
デザートと紅茶と飲み終えると、4人は6枚の色紙にその場でサインをしていた。
「えっと、私達からお願いがあるんですけど、よろしいでしょうか?」
「なんでしょうか? 私達にできることでしたら、なんでも致しますけど。」
「簡単な事です この店の従業員さん全員に色紙を書かせてください いいですよね? 洋子さん」
「もう、いちいち聞かないでくださいよ。あすかさん、あまりイジメないでくださいよね。」
4人は再び12枚の色紙にサインをしてお礼を言うと、お辞儀をして店を後にしていた。
「店長、なんなんですかね?普通、スターだったら気取ったり、サインなんてしないのに、自分から従業員全員にサインさせてくれなんて。」
「だから、本物のスターなんだろうね。会話とか聞いてただろ。みんな思いやりがあって、とても素直だしね。ボーカルの娘の名前REIじゃなくて麗奈だったんだな。あの娘なんか、マネージャーの為にステーキを焼かせたんだから、あんなバンドのマネージャーなんて羨まし過ぎるよな。」
「そうですね、俺も、何枚か持ってますけど。なんか心に飛び込んでくる感じがするんですよね。演奏と歌のバランスってのがとても素晴らしくてね。」
「まだ、自分達はスターじゃないとか、駆け出しのミュージシャンとか自分では思ってるみたいだけど。世間では、とっくに認めてるスターなんだけどなー」
「店長、CDじゃなくってライブだともっと凄いみたいですよ。友達が行ったみたいなんですけどね。あの大人しそうなREIってボーカルいたでしょ? あの娘、ステージだと豹変して暴れまわってるみたいですよ。目指すところが、観客と一体となったステージを目指すとか言ってましたからね。」
「じゃ、俺達もお客様にもっと楽しんで貰うように色々と演出したりしないとな。俺の色紙は店に飾ろうかな。すっかりファンになっちゃったからな。」
「いいんですか? この店、高級感保つために色紙とか飾らないって言ってたのに。」
「あれは、別だよ。他のは金積まれても、飾らないけどな。うちの店に来てくれてありがとうございますだよな。こっちが感謝しちゃうよ。」
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