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10周年 再出発

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その日も遅くまでみんなで合わせて、なんとか形になってきていた。
次の日食事後チューニングしたりしてから、エントランスで善人を待っていた。
エントランスは、先日とは違い和やかな雰囲気で笑い声が耐えなかった。
あすかなどは、掌でソファーを叩いて笑っていた。
善人や優や吾郎が下りてきて、唖然として見ていた。

「おい、お前ら演奏の方は大丈夫なんだろうな?それとも、諦めたのかな?」

「社長心配しないでくださいよ。麗奈に聞いてみればいいですよ。結構いい感じですから。」

「おい、麗奈。本当にあの下手くそができるようになったのか?」

「下手じゃないですよ。やる気が無かったみたいだったから、やり始めたら調子取り戻してますよ。今、60くらいですかね。」

「60で、満足してんのか?お前ら。金もらって聞いてもらうんだぞ。」

「社長、違いますよ。この前聞いて貰った時が1%なら、今は60%まで仕上がってますよ。みんな元に戻っていますから、ライブまでには100%になると思います。」

善人達は、スタジオに入り。2~3曲聞いて。エントランスに出た。

「完璧じゃないか、これで60%なのか?」

「ドラムが3回ミスしてて。ベースは4箇所、音外してましたよ。後、キーボードも音がもっと綺麗にでると思いますけどね。音ズレもしてたし。」

3人は顔を見合わせていた。 
そんな事は気が付きもしなかったからである。
もう大丈夫だと思い、みんなを激励して会社に出勤していた。
そもそも麗奈がいなければ、あのバンド自体は存在しなかっただろうと善人は思った。
目立ちたがり屋ではないが、曲は作り・歌を歌い・楽器演奏もこの頃は完璧だった。
だからこそ、5月の1日の劇場での舞台挨拶にも時間を省いていた。
4月にはスタートするライブも、5月には関東まで近いので1日開けとけば十分だった。

「ねえねえ、あの社長の顔見たー キョトンとしてたわよ。 やったのよね、私達。社長をギャフンっと言わせちゃったわよね。麗奈がいてくれたおかげだよ。」

「違うわよ、あすか。元々の力を出したからでしょ?これから全国でお客様をもっと感動させましょうよ。私達の演奏でね。」

「私達ってミュージシャンだったってことすっかり忘れて、TVとか出たり。そりゃ、そこそこ稼げるかもしれないけどね、いい出会いもできるし。」

「え みんないい出会いとかしてたのね? ちょっとずるくない? なんかそっちは、取り残されてる感じがするわよ。」

「もう、今年で23になるのよ。バンド組んだのが13歳からだからもう10年になるわよね。その間って、なんか楽器が恋人だったでしょ?男性とか優しくされるとついついね。私達も麗奈と一緒だから、そっちは奥手なのよ。考えてみると、良いように使われてた気がするわよ。まぁ、私はだけどね。」

「そうね、彩香の言う通りかもしれないわよね。私達、ここからスタートしない?10周年を区切りとして気を引き締めて、もう一度再出発しましょうよ。」

「お 流石リーダーですよね。言うことが違うわよ。じゃ、リーダーの意見に賛成の人は円陣組んでね。掛け声ね。いつものだよ。」

あすかの肩に麗奈は手を置いた・麗奈の肩に彩香・彩香の肩に葉月、最後に葉月の肩にあすかが手を置き。
右手を円の中心で重ねると。

「再出発と10周年! PrettyGirlsいっくわよー」 

「おー!!」

天に向けて、4本の指は掲げられていた。

「ねえ、ところで再出発の記念に昼食はファミレスでどう? 勿論、このリーダーあすかさんのおごりだよー。今まで、男に散々お金使ってきたからこれからは無いしね。それに迷惑かけて悪いと思っているんだよね。いいでしょ?みんな、そうさせてよ。」

「じゃ、今日はあすかに昼食はご馳走になりましょうかね?ついでに洋子さんと純也さんもだよ。あの人達のおかげだからね。」

「なに言ってるのよ。葉月、純也さんは麗奈の良い人でしょ? 麗奈がご馳走しなさいよね。」

「え あすか 純也さんとはそんな関係じゃないわよ。勘違いしないでよね。純也さんに悪いわよ。」

「あんた、鈍感だから気が付かないだけなのよ。いくら仕事の為だからって寒空の下3~4時間も待ってないわよ。麗奈がいらないなら、横取りしちゃうけどねー」

「凄く良い人で頼りにもなるしね。大事な人には違いないけど、今は恋愛とかは必要ないかなって思っているのよね。純也さんが思ってくれてるのは、嬉しいですけどね。男性の中ではダントツだものね。いつも、側にいて助けてくれるし。」

「麗奈には、今は音楽しか見えてなかったよね。ごめん ごめん 麗奈のハードスケジュールなんて言われるまでこっちはわからなかったものね。休日無しだし、部屋では曲作りしたりして。儲けとか考えないで、チャリティーとかにも出てるしね。あちこちの施設とかも回っているのも聞いているし。コンサートとかお金払わないと来れないけど、孤児院とか老人ホームとかお金無い人や動けない人のところにまで行って色々してるんだよね。」

「よーし 2人に電話して、午前中の練習終わったら6人で食事に行きましょうね。勿論、純也さんには麗奈がかけるのよ。それくらいできるでしょ?」

「あ ええ いいですけど、じゃ、練習する前にかけますね。」

あすかは、洋子に電話をしていた。
麗奈は言われてちょっと恥ずかしいのか、エントランスの隅に行き純也に電話していた。

「さぁ、午前中もう一踏ん張りがんばるわよー」

4人は、再びスタジオに入っていた。
途中で何度もギターは止まり麗奈から強い指摘を受けていたが、みんな真剣に取り組んでいて夢中になっていた。
昼になっても彼女達はスタジオから出てこず、洋子と純也は呆れていた。
洋子は、純也に話しかけて自分は車で出かけていた。
もうかれこれ2時間が経ち、洋子も帰ってきていて純也は熱心な彼女達を見ていた。
洋子はスタジオをノックすると、彼女達はやっと気がついていた。

「あ ごめんなさい 夢中でやってて、忘れてました すいません。」

「あら、食事をご馳走してくれるって呼ばれたけど。もう2時間も過ぎちゃってるわよ。リーダーさん、どうしてくれるの?」

「えっと、今から行きましょうよ。本当にごめんなさい。」

「じゃ、着いてきてね。食事しましょうよ。」

4人は顔を見合わせてキョトンとしていたが、洋子の後に着いていくしかなかった。
洋子は、沈黙のまま公園へと向かっていた。
こっちには店などなにも無いし、どこに連れて行かれるのか4人は不思議そうな顔をしていた。
もう、この季節になると少し暖かく久しぶりの昼間の公園だった。
朝と夕方に走る以外は、あまり活用していないのが現実だったので。
公園には純也がいて、なぜか茉莉子夫婦もそこにはいた。

「ほら、シートあるから座りなさいよ。ちょうど麗奈のお姉さんに会ったって純也から電話あったから一緒にって誘ったのよ。いいでしょ?」

「お姉ちゃん・お兄さん、お久しぶりです。でも、ここでなにするんですか?」

純也は、シートの上にある袋から色々と取り出していた。
サンドイッチ・ポテトフライ・ケンタッキー・飲み物と出していた。

「誘われて、こっちが用意するなんてね。夕飯はご馳走してもらうわよ。あすか。」

「すいません 面倒かけてしまって、申し訳ないです。夢中になっちゃって、ごめんなさい。麗奈が全部悪いんだけどね、ダメ出しばかりだから。」

「でも、こんなご馳走。そして姉夫婦まで誘ってくださってありがとうございます。さっきも言ってたんですよ。洋子さんと純也さんには感謝しきれないって、2人がいなかったから今の私達なんていないですからね。社長さん達には感謝しています。こんな素敵なマネージャーさんを私達につけてくれたことを。」

「麗奈のお姉さん、結婚おめでとうございます。色々と麗奈から聞いていますよ。凄く優しい旦那様と巡り会えて幸せだってね。旦那様は、私達のファンだったのよね。ありがとうございます。ファンの人がいるから、私達も演奏できるんですから。今度のツアーの練習ですけど、よければ昼食後でもお時間あれば聞いて行ってくださいよ。」

「あら、あすかさんでしたよね?ドラムも上手になって見違えたわよ。最初はひどかったものね。彩香さんかしら?ベースもこの頃はしっかりとビート刻んでいい感じで完璧ですよね。最初、聞いた時は心配だったんですけどね。一応、私も音楽関係だったのでそこら辺の音とかわかっちゃってたから。随分努力したのよね。流石リーダーね。」

「うゎ、そこまで言われたのって初めてだけど。でも、率直な感想聞かせてもらって嬉しいですよ。まぁ、吾郎さん達にはドラムとベースがダメだって最初から言われてましたけどね。こんなになったのも、麗奈がお正月に吾郎さんの自宅に呼んでくれてそれから師匠を持てたことが1番ですよ。」

「それは違うね。あすかさんだっけ?俺も、バンドのファンで最初からのCD全部持っているけどね。1番進歩してるのはやっぱりドラムとベースじゃないかな?最初の頃のはとてもプロになれる腕じゃなかったものね。でも、今は一流のドラマーだからもっと胸張って良いと思うよ。」

「まぁ、うちのバンドの売りはボーカルの歌ですけどね。麗奈にはとても敵わないし、今でもかなり弾き込んでいるから。追いつけないですよ。」

「でも、あすかさん。俺思うんだよね、1個でもどこかのパーツ欠けたらバンドなんてボロボロだろ?みんながいるから麗奈だっていきてくるんだよ、麗奈自身もこのバンドでなければ輝かないしね。そんなのリーダーのあすかさんが1番理解してるだろ?」

「そうですよ。あすか。私はこのバンドで歌いたいし、バンド抜けるなんてこと考えたことも無いし。もっと原点に返ったら良いと思うのよね。最初の学生時代の時の様に音楽って、音を楽しむんでしょ?もっと もっと、私達が楽しんでいれば、お客様も楽しんでくれるわよ。私は今でも、仕事だと思ってないしね。それってプロ意識が無いってんじゃなくってね、楽しいからライブやったり、施設回ったり、曲作っているの。これ仕事だったら、絶対に10年も続いてないものね。まぁ、プロになってからそんなに年数は経ってないですけどね。」

「なんか、忘れてたよね。TVとか仕事 仕事って、やたら稼げるからって出てたけど。それって、私達の道から大きく反れてるしね。私達は、これからミュージシャンとして再出発するんだものね。グループ結成10年 これを区切りとして、新たな旅立ちをしないといけないわよね。」

「あすかの言う通りかもしれないわよね。いっつも、麗奈がいるから 麗奈がいるから大丈夫って安心しててさ、自分を磨かなきゃいけないのにね。私達もスタジオ・ミュージシャンとして呼ばれる様になりたいし、麗奈みたいにね。パートは違うけど、バンドでも競争ですよね。」

「ほらほら、食事済んだんでしょ?休憩もしたし。戻って練習したらどうなのかしら?夕飯はご馳走よろしくね、あすかさん。容赦なくノックするからね。今度は。」

「あ はい7時でいいでしょうか? あ 6時に終わってから1時間走るのでちょっと遅くなるかもしれないですけど。」

「いいわよ、仕事でしょ?体力作りのね。体力つけて、素晴らしいステージをお客様に観せてあげてくださいね。」

「ありがとうございます、お姉さんたちもよろしければどうぞ。まだ、麗奈曰く60%の完成度ですけどね。途中喧嘩してるけど、気にしないで聞いてくださいね。」

「生で私達2人の前で演奏なんて最高だわよ。お邪魔しますよ。」

4人は後片付けをするとゴミなどを持ち、マンションまで向かっていた。
後ろから姉夫婦と洋子・純也が笑いながら歩きだしていた。
4人は再び、スタジオに入るとパイプ椅子を2個置いていた。
茉莉子達はその椅子に座って、演奏を聞き始めていた。
もう1曲目から麗奈のギターは止まり、ベースやドラムに指示を出していた。

「ねえ、間違ってたの?良い音だったと思うけどね。」

「俺達凡人にはわからないのさ、特別な聴覚を持っているからね。あんなのがバンドにいたら地獄だけど、退化しないで、伸び続けるだろうね きっと。」

6時前に練習は終了すると、茉莉子達の姿はそこにはもうなかった。
4人は部屋に戻り着替えをすると、公園を走り出していた。
勿論、いつものように純也は後ろから着いてきていたのだったが。
7時半集合で、一旦部屋に戻り。各自シャワーを浴びてから着替えてエントランスに集合していた。

「じゃ、今日はステーキね。麗奈もだよ。あんたハンバーグしか食べないから太らないんだよねー」

「ステーキなの?あすか。いい店紹介するわよ。勿論、あすかのおごりだけどね。」

「もう、今日はやけに洋子さんに絡まれるわよ。わかったわよ。洋子さんの知ってるとびっきりのお店で再出発のディナーね。」

洋子は、店に電話をしていた。 

その間に、純也は車を回していた。



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