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自主制作

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高校は、中学と違い土日の休みで行った学祭の振替休日は2日間あった。
まぁ、4人にはあまり関係ないことだったのはいうまでもなかった。
学校に通っていた方が、よっぽど楽なのは事実だった。
水曜日に学校に登校すると、4人は人に囲まれてビックリしていた。
麗奈は1番ビックリして、昼休みは屋上まで逃げて1人の時間を過ごしていた。
放課後、部室に行き香織は。

「学祭、お疲れさまでした。まだまだ、年末にかけてイベントがありますので。気を引き締めて行きましょう。出場できなかった人も個人で実力を見ていきます。それから4人は少し体力がないですね。今日から、終わりの1時間は校庭を走って貰います。」

その日から、校庭の他の部活に邪魔にならないように大外を大回りに4人は1時間走った。
運動が以外と得意なのは、やはりあすかと彩香だった。
最初の頃は、麗奈と葉月は一周遅れ以上の差をつけられていた。
麗奈の場合は特に新垣からも指摘されていて、1時間早い就寝を言われた。
家でのギター練習は、1時間くらいとなっていた。
早朝も5時に起きて、1時間のランニングを吾郎に義務付けられていた。
最初の頃は、6時起床が身についていたので目覚ましで起きた。
5時に起きて、ストレッチをしてからランニングを1時間すると。
そのままシャワーを浴びて、リビングで寛ぐことも無く朝食を食べて登校した。
今までやってない運動を、1日に2時間もやると授業中が地獄だった。
眠さを堪えて、授業を受けていた。 
勉強はやる時間が学校と家での1時間なので、無駄にはできなかった。
期末試験も無事終わると、クリスマスライブの会場は発表された。

クリスマスライブは、一駅向こうのショッピングモールで行われる予定だった。
大きなショッピングモールは、地上3階建てであった。
中央に吹き抜けがあり、そこがステージだった。
曲はオリジナルではなくコピーのみでのいつもの様な演奏なので、4人は安心した。
麗奈達は、6時から2時間だった。
毎年の様に演奏をしていたが、観客の数が凄かった。
ホームページで集まった、バンドのファンと2階・3階からお客様は覗き込んだり聞いたりしていた。

大晦日には、たくさんのバンドが出演する大きな駅でのステージだった。
あまり時間もあてられてなかったので、3曲ほど歌った。
【ハピネス】【HOME] 【ありがとう】の3曲を演奏して熱唱した。
初参加なので、当然の時間分担だった。 
親が同伴しない部員は、クリスマスも年越しも参加は出来なかったが。
みんなの家族は来てくれて、17人と香織で新年の挨拶をして別れた。
まぁ、帰ってから今日もレッスンがあるのだが10時でいいと言われていた。
母や姉に1本ずつギターを持ってもらい、家に帰った。
家に着いたのは、2時を回っていて。
風呂に入り、勉強だけして寝た。
8時に起きると、毎朝のランニングをしてシャワーを浴びて。
やっと家族で雑煮を食べると、ギターを担いでレッスンに向かっていた。

10時に新垣の家に行くと、恒例で新垣とメンバーがリビングにいて。
葉月も、もう来ていた。 
みんなに挨拶をすると、リビングに腰を降ろした。
あすか達も集まり、4人集まった。  
新垣は、4人に話しかけた。

「まぁ、中2の時より聞ける様になってきたが、まだまだ下手だな。今年はもう、高2で今後の進路とかもあるだろ? みんなは進路決めてあるのか?」

4人は、顔を見合わせていた。 
練習ばかりで、まだ考えていなかった。
ただ、大学へは行こうとは思っていた。  
あすかは、答えていた。

「そのまま桜花女子大学へ行こうと思っています。」

「大学で、なにを学びに行くんのかな?お前達は、今まで音楽をしてきたんだよな?もっと、上を目指さなくていいのか?」

「音大も考えたんですけど。桜花からは少し難易度が高い偏差値なので。」

「色々と選択はあるけどな。高校在籍中にCD作ったりしてライブ以外でも腕試しとかしてもいいかもな。俺達も高校からアルバムは出していたからな。ここのスタジオならレコーディングも可能だしな。売れなきゃ、プレス代の30万は実費になるけどな。やってみる気あるのか?案外高いけど、スタジオと編集・ミックス・マキシングは俺達がやるからタダだけどな。お前らがやる気なら手伝ってもいいぞ。まぁ、中々OK出さないからキツイけどな。」

4人は話しあって、相談してからあすかが代表で答えた。

「どのくらいの期間でレコーディングって終わるんですか?費用とかもあるので、両親とも相談しないといけないので。」

「期間なんて、お前ら下手だから結構かかるだろうしな。上手い奴なら簡単に録音できるけどな。まぁ、お前らの両親には知らせてあるから。お前らの返事次第だよ。」

それを聞いて麗奈も安心していたが、また親に負担をかけてしまった。
4人は新垣達にお願いして、CD制作をすることにした。
1ヶ月は、個人練習だった。 
曲も2曲に絞られ、所々編曲もされていた。
2月に入り、10回の土・日と祭日にレコーディングは開始されていた。
3月中旬までには、アコースティックやエレキともう1本エレキの音を重ねていた。
4月上旬までに、やっと歌を重ねた。
休憩を挟みながら、何度もダメ出しをされてやっと録音は完成された。
新垣達は、日夜集まりCDを完成させていった。
ジャケットは、顔は出さずPretty Girlsとピンクの大きな文字が斜め横に筆で走り書きされたものだった。
それを、色々と加工されていた。
まぁ、プレスは100枚も1000枚もさほど差が無いので1000枚プレスされて。
店長の店や、知り合いの店・各指導者の知り合いの店から店へと置かれていた。
レコーディング中も、彼女達は上達していた。 

そんな中でも、部活は続いており。
スプリングフェスティバルが、開催された。
まぁ、色々なバンドが野外音楽堂で楽曲を披露する場面であった。
初参加の麗奈達は、5曲を演奏し歌い上げて会場を圧倒させていた。
4人も、CDの事などすっかり忘れていた。
学園内でも噂になり始め、麗奈にもたくさんの友達ができてきた。
ある日、部活に放課後4人は校長室に呼ばれていた。

「貴女達は、歌でバイトをして稼いでいるんですか?」

「ええと 勧められてCDとか制作しましたけど、実費で出してるのでお金は貰ってないです。」

「調べたら、初回プレスは完売して。次に5000枚程出してますけど。それでもお金は貰ってないんですね?」

「あ 校長先生、この娘達知らないですよ。お金とかまだ必要ないので、私達が管理しています。勿論、親御さんの承諾も得ていますよ。」

「まぁ、これから。この様なことをする時は事前に学校に知らせてくださいね。佐藤先生。わかりましたか?」

「はい、以後気をつけます。まぁ、店頭でくすぶると思ってたので。そのままにしてました。申し訳有りません。」

「あら、佐藤先生。ホームページに載ってましたよ。嘘が下手ですね。今回は許しますからね。部活も勉強もがんばってくださいね。」

4人はキョトンとして、校長室から出て部室に向かっていた。
新入部員も新たに、20人入った。  
部費の支給も、学祭の活躍と部員の人数で大幅にもらえるようになっていた。
大部分は、4人のファンであり。
遠く九州から、1人で来てる娘もいた。
流石に上手く、今の4人以外の2年よりもギターは上手かった。
香織は、その1人を個人レッスンし始めていた。
彼女の名は井上美穂であった。 
部活終了後も、香織の家でレッスンを毎日していた。
彼女は、遠くから来たので美穂の2DKのマンションに親の同意を得て住まわせることにした。
両親も、渋々遠くまで行かせたので香織の家だと安心もし。
家賃も、マンションの半分を払った。
まぁ、彼女の事は新垣にも連絡してあり。
新垣も、もう1人ギターが必要と感じていた。
実力は見ないとわからないので、夏祭までに仕上げる様に香織に言った。
麗奈のあの演奏にはついていけないとおもったが、出来るところまでと思っていた。
麗奈達は、相変わらず部活の1時間は校庭を走っていた。 
雨の日は、校舎内の階段を走っていてまるで運動部のようだった。

中間テストも無事終わると、香織は4人に美穂を紹介していた。
一応、4人のレパートリーは練習させていたので一緒に演奏させた。
途中で演奏が止まり、あすかが言った。

「ギター音がちゃんと出てないし、リズムも悪いわよ。しっかりしてね。」

香織がダメ出しする以前に、メンバーから何度もダメ出しを受けていた。

「美穂さん、経験は何年なの? エレキおぼつかないけど。」

「ギターは中1からアコースティックです。中3からエレキを始めました。」

「1年は練習してるのよね? 練習時間は?」

「1日4時間くらいで、週に30時間ちょっとでした。」

「少なすぎるわよ。みんな50時間は週に練習してるからね。このままだと音が狂うから出来るようになるまで参加しないでね。香織先生いいですよね?」

「そうね、まだ早かったわね。少し見たかっただけだから。練習続けてね。」



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