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早すぎない

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蝉の声も聞こえるようになってきて、夏の訪れを告げていた。
夏祭り実行委員会に行き、ライブの参加の手続きをしていた。

「あ 君たちは、メインステージね 去年以上のパフォーマンス期待してるからね。メインは1回だけだけどね。中学のステージでやられるとみんな行っちゃうから。」

4人は、少しがっかりしていた。  
2回がいいなと思ったからだった。

「わかった わかった 今回は特別に1日目の最初と前回の様にトリを頼むよ。それでいいだろ? 1回目は次があるから、アンコール無しだけどね。君の話し長いから、時間内で収まるかどうか疑問だけどね。」

「す すいません」

「後、二組は、中学の部門で2回づつ演奏してね。オリジナルが一曲でもあるといいんだけどね。そこまでは中学じゃ無理だから、コピーバンドでいいからね。」

部員達は、夏休みは特訓が要求されていた。
3年に許可はもらったが、腕に自信はなかった。
まぁ、ここではあすかが部長みたいなものである。

「はい、みんなその場に座ってね。よく聞いてよ。」

みんなは、教室の椅子に座りあすかの話しを聞き始めた。

「これまで2年も、練習してきたわよね。まだまだだけど、去年の今頃よりもかなり上達しています。1年も出られないからって、練習サボってないで。来年はあの舞台に立つぞと、練習に励んでくださいね。来年は、私達はいないので。2年の部長の許可が出れば、参加は可能ですからね。」

「本当ですかーーー   やったー」

「まぁ、その前に学祭とクリスマスライブありますけどね。去年は今の2年もちょこっと参加しましたからね。ライブって空気でしょ?わかるかな?良い演奏は大事です。でも、それにプラス・アルファーの何かがないとお客様は寄り付きませんよ。今回は1時間のステージです。楽曲が6曲でも十分対応できますからね。それは、マイクパフォーマンスですね。これは、今の2年は知ってるけど、1年は麗奈見てしっかりと吸収してくださいね。普段はこんなだけど、ステージだと別人なのでね。」

「麗奈先輩 そんなに凄いんですか?」

「すっごいよーー  去年は20人の観客から200人以上にしちゃったからね。でも、つまらなかったら、その逆もあるからね。一気に減って、観客0ってこともね。だから、3ステージでのライブは怖いんですよ。メインではセミプロやプロが演奏してますからね。メンバー紹介とか、お客様に感謝とか、祭りを盛り上げる事を言うといいわよ。麗奈の場合考えてないみただけどね。」

「あすかの言う通りね、演奏はまだまだ未熟。でも、精一杯演奏すれば聞くものに届きますよ。謙虚でいればね。俺の演奏を聞けーなんてのは、除外ですね。ある程度、プロとかセミプロになったら、ありなんでしょうけどね。私達は中学生なのでね。中学生らしくね。」

「衣装とかは、制服ですか?」

「お祭りよ。そんなの決まってるわけないじゃないの。動きやすくした浴衣みたいなのでもいいしね。色々それでお客様ひきつけてもいいわよ。」

「先輩達は、どんな格好なんですか?」

「ひ み つ  おしえなーい  だって、真似するからね。でも、普段着ですよ。」

その日も学校で練習をすると、新垣の所で練習をしていた。

「おい、今年もでるのか?祭典のステージに。」

「はい、一応。2日間出ます。」

「2回ってことは、あのちっこい方の会場だな。あははは。」

「えっと、メインステージで2日です。」

「おい、そんな事異例だぞ。いつと、いつに決まったんだ?」

「最初と最後です。まぁ、最初はアンコール無しって言われましたけど。」

「お前ら、みんながバンド名覚えてくれない理由わかってるか?」

「わからないですけど、そんなに有名でもないですし。あまり気にしてないですよ。」

「長すぎんだよな。PrittyGirls にしちゃえばいいんだよ。覚えやすいだろ?」

「そうなんですね。みんなで話し合って決めますね。ありがとうございます。」

「麗奈、ちょっとだけストラト俺にあずけてくれないか?」

「いいですけど、今はそんなに使ってないので。ライブと家だけなので。」

麗奈も彩香のベースもあすかのドラムも取り上げられていた。
彩香は、他のFenderのベースを借りて弾いていた。
2週間預けて、8月の10日にそれぞれ届けられていた。

「吾郎さん、これなんですか?私のじゃないし。違うギターになってるわよ。」

「おいおい、よく見ろよ。同じだよ。色塗ったのさ。擦り傷とか目立ってたしな。それバンドカラーな。みんな一緒だからな。葉月のシンセは塗ると寿命が短くなるからな。ベースやドラムも塗ってあるぜ。お前のクリスマスライブのパンツの色のローズピンクだからな。ギター類は、塗るといいんだぜ。音は格段と良くなるからな。まぁ、あいつにタダでやらせたんだけどな。知り合いがいてな、イヤな顔されたけどな。その塗装で10万くらいだぜ。」

彩香もびっくりしていたが、喜んでいた。
一方あすかは、自分のドラムを叩いていなく見てなかった。
葉月は、自分だけ置いてきボリの感じで肩を落していたのを見て優は笑っていた。

「衣装は何色にする予定なの?」

「えっと、赤か青にしようかなって思ってますけど。明日みんなで買いに行きます。」

「あら、本当は緑か水色もいいんだけどね。今年はジーンズのショートパンツなんかでもいいわよ。それに、水色のタンクトップとかね。」

「そうなんですね。明日みんなと相談して買ってきます。2着は必要なので、汗かくし。」

「じゃ、学校まで行くから一緒に買いに行きましょうね。いいでしょ?」

「はい、私は構いませんが。葉月さんは?」

「こちらかも、おねがいしたいくらいです よろしくおねがいします。」

祭典、4日前に午後の練習をしていると。
優が、入ってきた。

「あ 続けてね。邪魔はしないからね。」

優の目から見ても。去年の学祭からおよそ9ヶ月で別のバンドの様に進歩していた。
ドラムもベースもきっちりとリズムを刻んでいて、良い響きだった。
それ以上に、シンセとギターが上手くなってるのは、仕方なかったが。
練習が終わり、器材を片付けて音楽室の鍵と器具庫の鍵を当直の先生に渡して5人で商店街に歩いていった。

「ほら、予算はいくらなの? 1人いくら予算なのかしら?」

「えっと、5000円くらいです。」

「あら、少ないわね。トリまで演奏するバンドなのに。」

「それでも、去年は1人1890円でしたよ。 今年は奮発しましたから。」

安めの用品屋で、お揃いの薄い水色のノースリブのタンクトップとデニムのハーフパンツを買った。

「そのショートパンツ長いわよ。もっと短いのにしなさいよね。これこれ、若いからこれくらいのがいいわよ。」

「見えちゃいますよ。恥ずかしいし。」

「いいから、これね。文句言うと白にしちゃうわよ。」

4人は仕方なく、デニムのショートパンツ2本とタンクトップを買った。

「こっち こっち 早く来なさいね。」

下着売り場で青のショーツと青のスポーツブラを購入すると。

「麗奈、こっちで計ってもらいなさい。なんかこの頃大きくなってるし。」

店員に計ってもらったら、B65だった。

「ほらね。ちっこいの買うところだったわね。」

「ええ  麗奈がBになったの? でも貧乳だけどね。細いから仕方ないよね。」

店員にマジックを借りて、買った荷物に名前を書かせると。
4人を待たせて優は商店街に消えていき、20分後に戻ってきていた。

「さて、最後の追い込みね。今日から前日まで気合入れて練習するわよ。」

「はい」

麗奈と葉月は、優と帰っていった。  
あすかはそのまま、楽器店に向かっていた。
彩香は、10分程歩いて先生の元に到着していた。
彩香の塗装が、1番苦労したらしい。 
薄くコーティングするのだが。
真ん中から除々に濃くしていく、匠の技術だった。

優は裁縫屋に寄り、みんなの服に。
デザインを刺繍やアップリなどを、させていたのであった。
麗奈はREI  彩香はAYA  葉月はHAZUKI  あすかはASUKAとタンクトップの背中に書かれた。 胸には少し大き目でPRITTY GIRLS  と書かれた。
ハーフパンツにはピンクの蝶があしらわれていた。

前日の午後、優は学校に来て。
みんなに、衣装を渡していた。
後輩達も、集まってきてしまっていた。

「先輩 それっていくらしたんですか?」

「出したのは5000円だけど、後は優さん。あそこのおねえさんが全部ですよ。優さん、ありがとうございます。」

「まぁ、明日は頑張ってね。応援してるからね。」

「はい がんばります。」

4人は楽器は、まだ学校には持ってきて無く。
練習では使っていたが・・・・・・

2年のステージは、12時と14時だった。
麗奈達は、10時なので終わったら後輩が片付けを手伝ってくれ。
器材を持って、中学のステージに駆けつける予定でいた。
最後の学校での練習も終わり、新垣の特訓も終わり。
いつものように、自宅で練習と勉強をした。
明日は早いので、2本のギターの弦を張り替えておいた。
姉の茉莉子も、夏休みで帰郷してきていた。
脇毛の処理もして、ゆっくりと風呂に浸かって明日に備えていた。
ステージは、いつもの特訓から比べると超ラクだった。
8時に会場集合なので、0時には寝ていた。



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