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新年(メンバーに師匠ができる)

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麗奈は、マンションまで歩いていった。   
みんな、親に車で送ってきてもらっていた。
へえ、みんな車持っててお金持ちなんだな。
麗奈は思った。
麗奈に案内されて、新垣の自宅に来ていた。 
彩香は、ベースを担いてきていた。
あすかはバッグに、スティックを入れてあった。

「すいませんね。先生が無理やり言ったみたいで。」

「いいよ。あの先生強引だよね。あんた達の腕見せに来なさいって言われちゃったわよ。」

「なにも知らなくて、すいませんでした。」

4人は、新垣の家に入ってきた。
お嬢様なのか礼儀正しいのか、葉月は土産を持ってきていた。
まぁ、他の3人が常識がなかっただけであった。
正月に、手ぶらで来てる麗奈とあすかと彩香だった。
中には、大人が5人いて。
みんなびっくりしていたが、当然であった。
みんなミュージシャンでバンドメンバーなのだから。
入って、みんな挨拶をして。
リビングで、話しをしていた。

「へえ、普通、4だと、ギター2・ベースとドラムだけどシンセ入れてんだな。」

「やりやすいものな。」

「シンセあると全然、ちがってくるからな。」

「あら、あんた達がギターばかり弾いてるからシンセできなかったじゃないのよ。よく言うわよ。」

「そりゃ、むさ苦しい男の中でボーカルは女の優に決まってんだろうが。」

「話しも済んだし、二次会始めるか。お嬢さんたちは、ブースの外な。」

優に案内されて、よく見かけるレコーディングスタジオのミキサー室に案内された。

演奏は、開始されてた。 
迫力あるサウンドと、どの楽器も正確に音を奏でていて麗奈達とは比べ物にならなかった。
どの人も、とても素敵だった。
吾郎のソロの速弾き・ドラムの音・ベースも他を邪魔せず、時にはメロディーも奏でていた。
なんといっても、優だった。
綺麗な歌声は伸びがあり、声量・音域とも素晴らしかった。
4人はあっけに取られて、ただただガラス越しに拍手をするだけだった。
みんなノセられて来て、器材も用意してきたのをこの時後悔していた。
このバンドに比べたら、プロと小学生の違いだったから・・・・・・・・

6曲くらい演奏すると、吾郎達はスタジオから出た。
麗奈達も、部屋を後にしてリビングに戻っていた。
優はニコニコと微笑んで、みんなにお茶を出すと。

「じゃ、次は愛弟子のバンドに演奏してもらおうかしらね。演奏終わったら辛口トークお願いしますよ。」

「キツイですよ、先生。あんな演奏の後にだなんて、残酷だわよ。」

「あら、貴女達、祭りのトリ飾ったんでしょ?プロやセミプロ押しのけてね。」

「あれも、時間の3時間前に連絡があっただけなので・・・・・・・・  実力じゃないですから。」

「今の貴女達の実力を見せればいいのよ。そして評価してもらえば、これからもっと進歩するわよ。お茶飲んでるから、、早く準備してね。」

4人は肩を落して、スタジオに入っていった。

「おい、いいのかよ、あんなキツイ事言っちゃって。」

「見てればわかるけど、あのバンド。ドラムとベースが足引っ張ってるのね。そこを少し注意してみてね。ギターもまだ頼りないけどね、特訓中だから。」

「ああ ギターはまだまだだな。でも冬休みは12時間くらい練習してるからな。ここで10時間、家で2時間かな。あのギターチューナー使ってないから。知ってるだろ。お前んとこの客なんだから、絶対音感持ってるからな。」

「そろそろ準備できたんじゃないのかしらね?聞いてみましょうかね。」

5人はゾロゾロと部屋に入っていった。

「いつでも初めていいぞ。麗奈、ダメ出しすっからなーーーーー」

「おい、吾郎プレッシャーきついだろう。あんなオドオドした娘だぜ。」

「それがステージとかだと発狂してるからな。不思議だよな。」

曲が、スタートしていた。 
中低音の曲から、低音から高音までの4オクターブ半の曲まで歌いだしていた。
ギターも、確実に進歩していた。
シンセも、まぁまぁだった。
ドラムとベースは、ミスが目立ってしまっていた。
スタジオだと、小さなミスもわかってしまう。
野外は、その点楽なのだが。
麗奈達も5曲歌い、スタジオを後にしていた。

「おーーーーい 休み中なにしてたんだーーーー  おっかしいなぁ クリスマスの時より全然合ってなかったよ。練習してたのかな?」

「まず、シンセの娘どうなの?」

「そうですね。休みはピアノを3時間とシンセを4時間練習してましたね。」

「ベースは?」

「3時間くらいやってました。」

「ドラムは?」

「私も3時間か4時間です。」

「じゃ、はっきり言うね。ドラムとベース、全くダメだったわよ。っていうかギターもシンセも大したことなかったけどね。ありゃ、ひどいわね。このままだと、ギターとシンセの2人との距離が離れていくわよ。高校では、もっと上手い人いますからね。このメンバーで行きたいって麗奈は言ってたけど、組めなくなるかもしれないわよ。後、1年もあるじゃなくって。後1年しかないんですからね。みんなしっかりとした指導者を見つけて練習しなさいね。」

「はい。」

あすかと彩香は、少し涙目になっていた。

「おーーーい  お正月から泣かない  お嬢さんたち 練習すればいいじゃないか。協力はしてあげるよ。 おれは中学生では、良い演奏だと思ってたけどね。優が辛口過ぎんだよ。でも、それくらい言わないと。努力しないだろ? 店長、あのドラムなんとかしろよ。」

「休みの日、暇なんだろ? お前の店のブース使ってタダで練習させろや。基礎からみっちりとな。後はベースか ベースは他から近い奴を探してやるから待っててくれよ。すぐに見つかるからな。シンセのお嬢さんは、習ってるのかな?」

「いいえ 幼稚園から小3まで5年間ピアノ習ってただけで、後はペットを3年間習いました。」

「だろ?習わなきゃ、上達しないんだよな。シンセは優に教えてもらいな。これでも、俺達が結成した当時はシンセやってたし、音大出てっからな。毎日、ここに通うといい。月謝取っからな。あははは」

「そうね、私が教えるわよ。基礎ができてるから、麗奈ちゃんほど苦労しないと思うけどね。未だに、コード押さえだけだものね。」

「速弾きはどこで習ったんだ?結構よかったけどな。」

「CD聞いてコピーしながら練習してました。ある程度まで弾ける様になると、後は簡単でしたけど。」

「それも、これからミッチリしごかれるな。吾郎に。こいつについていける奴いないからな。」

「まぁ、店長とも知り合ったし。これからはまけてくれるぞ。」

「先日も弦を4セット頂きました ありがとうございます」

「まぁな、可愛いし努力してるのもわかったからな。従業員には文句言われたけどな。他の奴は定価だし、損してないよ。1年で50万使った上客だぜ。麗奈ちゃんはよ。」

吾郎はしきりに、携帯で連絡を取っていた。

「しかし、リッケンバッカー使ってるなんて以外だよな。ありゃ、弾きにくいしな。調整だって自分じゃできなだろうが。まぁ、これからはタダで調節してもらいな。」

「おい 全部俺に振るなよ。」

「いいじゃねえか、たまには酒おごるからさ。」

「まぁ、しょうがないか。この4人の面倒は見るしか無いみたいだしな。任せな。」

豪華な御節が出されてきて、みんなで食べ始めていた。
男性陣は、酒を飲み始めていた。  
1人が、煙草を吸おうとすると。

「おーーーーい  外で、吸ってこいよ。うちの愛弟子の喉いかれんだろうがよ。」

「あ 大丈夫ですよ 心配なく」

「ダメなんだよ。ボーカルは喉が命なんだからね。せっかくあんな音域あるのに出なくなるわよ。」

玄関のチャイムが鳴り、1人の男が中に入ってきていた。

「おお 集まってるな。久しぶり おめっとうさん」

「初めまして おめでとうございます よろしくおねがいします」

「いつからここは、ロリコンキャバクラになったんだ ははは」

「バーカ さっき言ったろ。おれの愛弟子とそのメンバーだよ。こいつは、ちょっとしたベーシストさ。俺達のグループにも在籍してたけどな。途中で引き抜かれたからな。うまいぞ。こいつのベースはな。ジャンル問わないしな。ジャズ・ロック・ブルースなんでもかな。家も、ここから歩いて10分くらいのところだから、ベースの彼女 どうだ?」

「教えてもらえるんですか? 兄にしか教えてもらったことがなくて。」

「兄さんいたのか? 名字は?」

「早見です 」

「ああ 知ってる 知ってる 教えてたけどな 俺が厳しくて逃げちゃったけどな。」

「おい、あんまり妹の前で兄さんの悪口言うなよ。」

「ってか、それだけ厳しいってことだけどいいのかな? まぁ、吾郎には負けるけどな。よくお前に弟子ができたもんだぜ。基礎練習の反復だものな。途中で投げ出すぜ。吾郎の愛弟子って、この娘か? 弱そうだな?何ヶ月続いてるんだ?」

「まだ、2ヶ月目だけどな。ここで練習して、帰って復習してるし。根性はあるからな。最初、こいつらなら知らないと思ってスカボロフェアーを楽譜だけで弾かせたけどな。しかも、歌付きだぜ。何十回もダメ出しされてその日は泣きながら帰ったけどな。次の日、出来るようになったのか自信満々できたけど、弾かせなかったけどね。」

「やっぱり、吾郎は鬼じゃねえかよ。初日にセミプロ並のことさせて。」

「根性なかったら、次の日は来ないと思ってたけどな。ちゃんと来てたし。麗奈、弾かせてやろうか?スカボロフェアー」

「いいです 恥ずかしいですから。」

優は奥からアコースティックを出してきて、麗奈に手渡していた。

「下手ですよ。やりますけど。」

演奏をしはじめて、みんなビックリしていた。 
カポなしで、ずっと押さえ続けていた。
エレキでは普通アルペジオとかも無いのに、綺麗な音色をだしていた。
歌は、そんな高音ではないので余裕で歌っていた。
曲を弾き終えて、少しホッとして周りを見ると不思議な感じだった。

「おーーーーい わすれてんぞ  カポタスト  どこいった」

「え なんですか? カポタスト?」

「ああ そんな高音でのアルペジオにはそのフィンガーボードに押さえつけてる道具があるんだよ。知らなかったのか?」

「はい、アコースティック触ったのも。今日で3回目ですから。」

「まぁ、こりゃ簡単な曲だけどよくカポ無しで弾かせたのかよ。やっぱり鬼だわ。」

「よく言いますよ。麗奈が虎の穴だってね。」

「まぁ、弾けちゃったしいいじゃないか。まだまだだけどな。押さえが甘いから音が悪い時があるんだからな。こんなの当然弾けて当たり前だかんな。」

「まぁ、他の3人も覚悟しとくといいわよ。でも、すっごくうまくなって高校に入学できるわよ。後、1年しかないんですからね。」

「ベースきいてないだろ? 聞いてやってくれよ。ここはベースとドラムをちょっと鍛えないといけないからな。」

「おい、そんな大きな声で言っていいのかよ。傷つくだろ。」

「そんなの演奏聞いた時、優が言っちゃったよ。まるで演奏がダメだってね。」

4人は再び、スタジオに入り演奏を始めていた。
ミスしまいと思うと、余計ドラムとベースはミスしていた。
5曲終了して、リビングに戻ってきていた。

「まぁ、重症だな。でも、なんとかするよ。ベースのお嬢さん やる気あるんだろ?」

「はい、がんばります こんなところで演奏すると、ミスがすごくわかって恥ずかしかったです。」

「だよな。野外とは違うからな。ここの器材なら、普通にレコーディングもできるからな。それだけ、音もシビアになってくるんだよな。俺も自由業だから、いつでもいいよ。ただ、みんな親御さんの承諾は得てくれよな。」

「まぁ、俺はボランティアみたいにやってるけどな。本当は教えるのもタダで良いって思ったんだけど、それじゃって月5000円もらってるよ。その代わり、毎日しごいてるけどな。これが面白いんだよな。来た時と帰る時の顔のギャップがさあ。」

「毎日できるなら、毎日教えて貰ったほうがいいし。次の日練習に来れなければ、課題をもらって家でやってくるとかな。」

「統一で月5000円でいいかな。親が堅物なら、みんなで説得するから大丈夫だよ。なんせ、この麗奈の親さえも納得させたからな。俺は。」

「ってか、こいつの親しらねえしよ。自慢すんなよ吾郎。」

「まぁ、貴女達2人は一生懸命練習してるのがわかったから、私達が協力するけどね。その他の人は、聞くに耐えなかったわね。何ヶ月やってたの?あの娘らは?」

「ちょうど、1年4ヶ月ですね。ちょっと、のんびりし過ぎですので注意はしてますけどね。」

「一昨年のクリスマスの時、聞いてたけど。その時貴女達4ヶ月って言ってたわよね。差がありすぎるわよね。」

「なんだ、ちゃんと活動してるんだ。凄いな。」

「この娘達、学祭とクリスマスの商店街でのライブと夏の祭典に出てるのよ。前回は大トリだったものね。中学生でメインステージでトリなんて初じゃないのかしらね?」

「まぁ、あん時は、2日見に行ったけど、こいつらの演奏始まったらメインから客流れちゃったからな。仕方ないよな。麗奈が暴れてっからよお。」

「へえ、こんな大人しいのに暴れちゃうのか。昔の優さんみたいだな。」

「昔の事言わないの。今は先生よ。」

「ドラムも毎日通えよ。学校から近いんだろ?あそこ暇だからブースは余ってるしな。ところで家ではなにで練習してんだ? スティックだけか?」

「家に電子ドラムあるので、それでやってます。」

「じゃ、最初は身体にメトロのリズムを叩き込むところからな。ドラムのテンポ悪かったら、バンドはグチャグチャになるからな。」

「よし、お嬢さんたちは解散して家で話してきなさいね。各自、先生の電話番号は聞いておいてね。住所もよ。」

麗奈も立ち上がり、みんなと出ていこうとすると。

「おい、お前の日課は今日は全然できてないんだよ。さっさとギター持って入れよ。」

「正月も休み無しなのかよ。よく納得してるなあの娘。」

「本人がうまくなりたいって気持ちが強いだけさ。それに基礎ばかりやってて、進歩ないと思ってたけど、先日のクリスマスライブで基礎の重要性もわかったみたいだからな。それからは、今まで以上に真剣にやってるよ。」

その頃、麗奈は放置されて1人でコード移動の練習ばかりしていた。

「どこまで育てるんだ?そこだよな。」

「まぁ、後4年で一人前にはしたいけどな。高校卒業までで5年半。練習量からすると、普通の人の倍以上はしてるしな。練習の質も、ここ2ヶ月はまるで違うから。普通の速度の3~4倍のスピードで成長してると思うけどな。」

「バンド名なんだ?」

「確か 長ったらしい名前だったな  Joiful Prittygirls かな?Prittygirlsにしちゃやあいいのによお。 覚えて貰うのが肝心だからな。」

「ちょっと役すとおかしい名前だよな。 たのしい可愛い少女達って ちょっと考えると笑えるけどな  それなら Pritty Queen なんてのもありだろが。」

「そうだな、ちょっと大人っぽい歌も歌ってるしな。各自名前も名称にしたらいいしな。」

「麗奈ならREYとかな。他は、あまり浮かばないけどな。ボーカルは変えてもいいかもな。」

「なんか俺らで盛り上がってないか? 玩具にしてるよな。」

「しかし、放ったらかしてて大丈夫なのかよ。サボってないか?」

「あいつの部屋見たけどさ。とても女の子の部屋じゃなかったからな。勉強机とベッドとたんすとCDいっぱいの本棚と教本 それとギターしかなかったからな。あいつの母親と部屋言ったけど、出てこなかったし。ヘッドホンしてギター夢中で弾いてたからな。」

「そりゃ、ギターと結婚するわ。あの娘、可愛そうによぉ。」
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