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9.過去の清算
ますます気に入ったよ。これだから君は好きだよ
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「なんだと!?」
(うん、物語お決まりのセリフをありがとう、王子)
あまりにもセオリー通りの反応ではあったが、むしろ今はそれくらいの方が心地いい。
何故ならば、今から私が、目の前の腹黒クズな元上司に言うことは、一般的に考えればまず、あり得ない推理なのだ。
1つくらいは、普通がある方が落ち着く。
バランスとは、そう言うものだと思う。
「人体を司る……本当にすごい魔ね……ノア。細胞を自由自在に操れるということは、伸びたり縮んだり……取ったりつけたりも容易ってことでしょう。……肉体を維持するありとあらゆるものについて」
私は、全てを言い切ってからようやく呼吸できた。
それは、呼吸の為に考えた内容に読点をつけられる程、私の心に余裕なんかなかった。
だって、この私の仮説が本当に当たってしまったとしたら、私たちは恐らくヤバすぎる相手を敵に回すことになるかもしれないから。
(それでも、怯むわけにはいかない……!)
もう、逃げるには遅すぎる。
私はこの件に深く深く、関わりすぎてしまったのだから。
「例えそうだとして……何故、トラヴィスが私だと?彼は、ステラの体に吸収されたはずだろう?」
私はその言葉を聞き、ふふっと笑った。
その笑いに、ノアは不思議そうな顔をしたので、さらにおかしかった。
「どうして、笑うのかな?」
「いいえ。これで結びつけるのは、ちょっとあなたには酷かもしれないかなとも思ったんだけど」
「だから、何が」
「………………私たち、トラヴィスがステラの体に吸収されたなんて、知らないけど」
私が見たビジョンはただ、トラヴィスが消えたという事実だけ。
どこに消えたなんて、私たちは知らない。
では何故ノアは、即答できたのだ。
トラヴィスがステラの体に吸収されたなんて。
(そんなの、決まってるじゃないか)
「あなたがトラヴィス本人じゃなければそんなこと、知るはずないのよ」
私は、昔ハマってた探偵アニメのように、びしっとノアの顔に指差した。
指が震えて見えたのは、きっと錯覚だろう。
「ノア。あなたこそ、ルカとステラを酷い目に遭わせたトラヴィス本人よ。異議があるならどうぞ」
私は、声が震えないようにわざと大声で言った。
震えなかったけど、ばっちり掠れた。
それから数十秒の空白の時間の後、ノアはまた笑った。
気が狂ったかのような、気持ち悪い笑み。
それから……。
「ますます気に入ったよ。これだから君は好きだよ」
そう言った時には、私がビジョンで見たトラヴィスの顔になっていた。
(うん、物語お決まりのセリフをありがとう、王子)
あまりにもセオリー通りの反応ではあったが、むしろ今はそれくらいの方が心地いい。
何故ならば、今から私が、目の前の腹黒クズな元上司に言うことは、一般的に考えればまず、あり得ない推理なのだ。
1つくらいは、普通がある方が落ち着く。
バランスとは、そう言うものだと思う。
「人体を司る……本当にすごい魔ね……ノア。細胞を自由自在に操れるということは、伸びたり縮んだり……取ったりつけたりも容易ってことでしょう。……肉体を維持するありとあらゆるものについて」
私は、全てを言い切ってからようやく呼吸できた。
それは、呼吸の為に考えた内容に読点をつけられる程、私の心に余裕なんかなかった。
だって、この私の仮説が本当に当たってしまったとしたら、私たちは恐らくヤバすぎる相手を敵に回すことになるかもしれないから。
(それでも、怯むわけにはいかない……!)
もう、逃げるには遅すぎる。
私はこの件に深く深く、関わりすぎてしまったのだから。
「例えそうだとして……何故、トラヴィスが私だと?彼は、ステラの体に吸収されたはずだろう?」
私はその言葉を聞き、ふふっと笑った。
その笑いに、ノアは不思議そうな顔をしたので、さらにおかしかった。
「どうして、笑うのかな?」
「いいえ。これで結びつけるのは、ちょっとあなたには酷かもしれないかなとも思ったんだけど」
「だから、何が」
「………………私たち、トラヴィスがステラの体に吸収されたなんて、知らないけど」
私が見たビジョンはただ、トラヴィスが消えたという事実だけ。
どこに消えたなんて、私たちは知らない。
では何故ノアは、即答できたのだ。
トラヴィスがステラの体に吸収されたなんて。
(そんなの、決まってるじゃないか)
「あなたがトラヴィス本人じゃなければそんなこと、知るはずないのよ」
私は、昔ハマってた探偵アニメのように、びしっとノアの顔に指差した。
指が震えて見えたのは、きっと錯覚だろう。
「ノア。あなたこそ、ルカとステラを酷い目に遭わせたトラヴィス本人よ。異議があるならどうぞ」
私は、声が震えないようにわざと大声で言った。
震えなかったけど、ばっちり掠れた。
それから数十秒の空白の時間の後、ノアはまた笑った。
気が狂ったかのような、気持ち悪い笑み。
それから……。
「ますます気に入ったよ。これだから君は好きだよ」
そう言った時には、私がビジョンで見たトラヴィスの顔になっていた。
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