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9.過去の清算
誰だよ、あの母親呼んだのは
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「久しぶりね」
久々に聞いた母親の声は、記憶の中に残っている声とほとんど変わっていない。
でも、見た目はだいぶ老けた。
私が家を出ることは、丁寧に白髪染めをしていたのに、きっと今はサボっているのだろう。
半分以上が、汚い鼠色をしていた。
私は、息が苦しくてとても声が出せる状況ではなかったので、頷くだけに留めた。
それでも、しんどかった。
その後で、母は私に話したことはできれば忘れてしまいたかった。
でも、そういうもの程、忘れることは難しい。
「あの子がまた暴れて大変なの」
(え、娘が死にかけている状況なのに……?)
母親は、目の前の苦しそうな娘がどうなるかよりも、息子によって脅かされる自分の生活に対する愚痴を、液晶越しで延々と私に聞かせてきた。
その上で、私がこんな状態になったのも
「親を助けないからバチが当たったのよ」
などと、まるで私個人の行いだけが悪いかのように罵倒し続けた。
病院の人が「すみませんこの辺で」と私を気遣ってくれた言葉が聞こえ、それでようやく不快な声が入ってこなくなった。
(どうして、私の親ってこうなんだろう)
いつも弟のことばかり。
いつも自分のことばかり。
そしていつも、私には
「助けてくれ」
と言い、それに応えられないと言えば
「お前はそれでも人間か!」
と罵倒される。
そんな日々の記憶が、よりによってこんな死の直前に蘇るなんて……。
(誰だよ、あの母親呼んだのは……)
それで気づいた。
私は自分のスマホに母親の連絡先がわかるものを入れていない。
ただ、会社に渡した情報にだけは、実家の連絡先はある。
(まさか……)
思い当たる人間の顔は浮かんだ。
でも、すぐ考えるのをやめた。
もう、どうでも良くなっていたから。
もし私が死ぬのであれば、こうして1人なのだと。
それを実感する、数年ぶりの再会よりも、私はあのエッチい「アルストメリー」の世界にどっぷりと浸かりたかった。
久々に聞いた母親の声は、記憶の中に残っている声とほとんど変わっていない。
でも、見た目はだいぶ老けた。
私が家を出ることは、丁寧に白髪染めをしていたのに、きっと今はサボっているのだろう。
半分以上が、汚い鼠色をしていた。
私は、息が苦しくてとても声が出せる状況ではなかったので、頷くだけに留めた。
それでも、しんどかった。
その後で、母は私に話したことはできれば忘れてしまいたかった。
でも、そういうもの程、忘れることは難しい。
「あの子がまた暴れて大変なの」
(え、娘が死にかけている状況なのに……?)
母親は、目の前の苦しそうな娘がどうなるかよりも、息子によって脅かされる自分の生活に対する愚痴を、液晶越しで延々と私に聞かせてきた。
その上で、私がこんな状態になったのも
「親を助けないからバチが当たったのよ」
などと、まるで私個人の行いだけが悪いかのように罵倒し続けた。
病院の人が「すみませんこの辺で」と私を気遣ってくれた言葉が聞こえ、それでようやく不快な声が入ってこなくなった。
(どうして、私の親ってこうなんだろう)
いつも弟のことばかり。
いつも自分のことばかり。
そしていつも、私には
「助けてくれ」
と言い、それに応えられないと言えば
「お前はそれでも人間か!」
と罵倒される。
そんな日々の記憶が、よりによってこんな死の直前に蘇るなんて……。
(誰だよ、あの母親呼んだのは……)
それで気づいた。
私は自分のスマホに母親の連絡先がわかるものを入れていない。
ただ、会社に渡した情報にだけは、実家の連絡先はある。
(まさか……)
思い当たる人間の顔は浮かんだ。
でも、すぐ考えるのをやめた。
もう、どうでも良くなっていたから。
もし私が死ぬのであれば、こうして1人なのだと。
それを実感する、数年ぶりの再会よりも、私はあのエッチい「アルストメリー」の世界にどっぷりと浸かりたかった。
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