424 / 455
8.神から与えられたのは、罰と……
お前のことを話して欲しい
しおりを挟む
「ランカ……俺の過去は話した」
「うん?」
その王子の言い方に、少々引っかかった。
「だから今度はランカ。お前のことを話して欲しい」
「……え?」
完全に予想を超えたエディ王子の言葉に、私は呼吸をするのを忘れかけた。
「いや、正確には違うのかも……」
「どういうこと?」
嫌な予感がした。
続きの言葉を拒否したくて、耳を塞ごうと手を耳元にやると、エディ王子はその手を押さえた。
「きっと、これを聞く事がお前の傷を抉ることになるかもしれないって、何となく分かってる」
(やっぱり……)
「だが、俺は……いや……俺たちは持っている情報を全て知らないと、またノアに言いように使われる。そんな気がするんだ」
言いたいことは分かる。
理屈も分かる。
今、おそらくエディ王子にとって完全にブラックボックスになっている情報は、私たちがいるホープスターという国のこと。
そのホープスターの中心人物である王に、私の弟の魂が入っているのだとすれば、事はより複雑だ。
「ランカ。俺は、父上からこの国の王と母上の間に生まれた妹と結婚するように言われた」
「は?マジ?」
そんな情報は、もちろんカサブランカには入っていない。
カサブランカの中にあったのは、婚約者がいるということだけ。
真実はずっとエグいものだった。
「それを言われた時だったんだ。カシーを抱けるか、と聞かれたのは」
「それって……」
「俺とカシーの伽の話は、この時に聞いたんだ」
「うーわー…………」
「しかも、カシーを正妃にすることはできないとも……」
それはつまり。
「カシーがエディ王子の子供を妊娠しちゃったら、しばらくエディ王子と伽ができないからって事だよね」
「お前は、そのことを知っていたのか……」
「というより、ここに入ってる」
私は、頭を指差した。
それだけで、もうエディ王子と私は意思疎通ができるようになっていた。
「そうか。カシーはそれを知っていたんだな……」
「伽に関する英才教育はバッチリみたい」
それが、酷く悲しい。
カシーは、その知識が一般常識か否かの区別がつかない年から、無理やり覚え込まされていたのだから。
「そうか……」
それから、エディ王子はしばらくの間考え続けた。
自分の心臓の鼓動を100回ほど聞いてから、エディ王子の次の言葉が放たれた。
「やっぱり、俺はこの国のことを知る必要がありそうだ」
エディ王子は、私の前世の部屋をグルリと見渡した。
「父上は言っていた。このホープスターという国は、アルストメリーよりずっと強大。魔力より武力に優れていると」
「あー……」
魔力がどれほどのものか分からない。
が、前世の世界の技術が、この国に移植されまくっていたとしたら、中世ヨーロッパ風の生き方をしているアルストメリーは確かに文化の差で潰されるかもしれない。
「俺は、この国の王女……つまり、俺の異父妹と子供を作れと言われた」
「…………王様は、妹だって……知っててそれ言ってるの?」
「ああ。でも妹とセックスをするのではなく、俺たちの精子と卵子だけ取り出して、別の女に子供を産ませるとも言っていたが」
「狂ってる」
「俺もそう思う……いや、思っていた」
「どういうこと?」
「うん?」
その王子の言い方に、少々引っかかった。
「だから今度はランカ。お前のことを話して欲しい」
「……え?」
完全に予想を超えたエディ王子の言葉に、私は呼吸をするのを忘れかけた。
「いや、正確には違うのかも……」
「どういうこと?」
嫌な予感がした。
続きの言葉を拒否したくて、耳を塞ごうと手を耳元にやると、エディ王子はその手を押さえた。
「きっと、これを聞く事がお前の傷を抉ることになるかもしれないって、何となく分かってる」
(やっぱり……)
「だが、俺は……いや……俺たちは持っている情報を全て知らないと、またノアに言いように使われる。そんな気がするんだ」
言いたいことは分かる。
理屈も分かる。
今、おそらくエディ王子にとって完全にブラックボックスになっている情報は、私たちがいるホープスターという国のこと。
そのホープスターの中心人物である王に、私の弟の魂が入っているのだとすれば、事はより複雑だ。
「ランカ。俺は、父上からこの国の王と母上の間に生まれた妹と結婚するように言われた」
「は?マジ?」
そんな情報は、もちろんカサブランカには入っていない。
カサブランカの中にあったのは、婚約者がいるということだけ。
真実はずっとエグいものだった。
「それを言われた時だったんだ。カシーを抱けるか、と聞かれたのは」
「それって……」
「俺とカシーの伽の話は、この時に聞いたんだ」
「うーわー…………」
「しかも、カシーを正妃にすることはできないとも……」
それはつまり。
「カシーがエディ王子の子供を妊娠しちゃったら、しばらくエディ王子と伽ができないからって事だよね」
「お前は、そのことを知っていたのか……」
「というより、ここに入ってる」
私は、頭を指差した。
それだけで、もうエディ王子と私は意思疎通ができるようになっていた。
「そうか。カシーはそれを知っていたんだな……」
「伽に関する英才教育はバッチリみたい」
それが、酷く悲しい。
カシーは、その知識が一般常識か否かの区別がつかない年から、無理やり覚え込まされていたのだから。
「そうか……」
それから、エディ王子はしばらくの間考え続けた。
自分の心臓の鼓動を100回ほど聞いてから、エディ王子の次の言葉が放たれた。
「やっぱり、俺はこの国のことを知る必要がありそうだ」
エディ王子は、私の前世の部屋をグルリと見渡した。
「父上は言っていた。このホープスターという国は、アルストメリーよりずっと強大。魔力より武力に優れていると」
「あー……」
魔力がどれほどのものか分からない。
が、前世の世界の技術が、この国に移植されまくっていたとしたら、中世ヨーロッパ風の生き方をしているアルストメリーは確かに文化の差で潰されるかもしれない。
「俺は、この国の王女……つまり、俺の異父妹と子供を作れと言われた」
「…………王様は、妹だって……知っててそれ言ってるの?」
「ああ。でも妹とセックスをするのではなく、俺たちの精子と卵子だけ取り出して、別の女に子供を産ませるとも言っていたが」
「狂ってる」
「俺もそう思う……いや、思っていた」
「どういうこと?」
0
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる