337 / 455
8.神から与えられたのは、罰と……
3つの悲惨な光景
しおりを挟む
アルフィーが城に帰れたのは、それから10回太陽が沈んだ後。
行きはメルキオールの力であっという間だった距離を、徒歩で帰ることは、体力がそんなにないアルフィーにとって、非常に過酷だった。
とはいえ、アルフィーの武器でもある知識のおかげもあり、並大抵のことであればその知識で解決できてしまったので、まだ良かった。
だが、問題はアルフィーが城に到着してから。
野生動物同士の戦いや、災害で滅んだ遺跡なんかよりずっと悲惨な光景が待ち受けていた。
まず1つ目。
それは、城の周りの惨状。
野生の動物達が引きちぎられた死体がゴロゴロと転がっていた。
確かに、食用として動物の命を貰うことはある。
だが、その時はこんなゴミを捨てるような扱いには決してしない。
丁寧に感謝を込めて、骨は土に還していた。
一体誰がこんなことをしたのか……。
明らかに、人の手ではできないであろう、切り裂かれ方だった。
心当たりがあるとしたら……。
「まさか、メルキオールが……?」
1度だけ見せてもらったことがあった。
風を使い、ナイフのようにあっという間に獣の肉を捌く様子を。
その時メルキオールが用いたのは、かまいたち現象を引き起こす方法。
メルキオール自身は
「かま?イタチ?動物なんていないじゃないか」
と、イタチの仲間と誤解していたが、その現象を人為的に引き起こす方法は、まだこの世界では解明されていなかった。
アルフィーの知的好奇心がその時久し振りに疼いたので、アルフィーはよくその日のことを覚えている。
だからこそ、違和感も同時に覚えているのだ。
少なくとも、その時の獣の断面は、とても美しかった。
決して引きちぎられたかのような、ぐちゃぐちゃな断面ではなかったのだ。
そうなると、メルキオールの仕業ではないかもしれない?
だとすると、一体誰が……。
そんなことを考えながら、城の中に入ったアルフィーは2つ目の悲惨な光景を目にすることになる。
廊下のあちこちに、血が飛び散っているのだ。
もしこれが、1人の血であれば……その人間はすでに死んでいるべき出血量なのは間違いなかった。
「何だ……これは…………」
充満する血の臭いに吐き気が止まらないアルフィーだった。
本当は、ここから逃げ出してしまった方がずっと安全だったかもしれない。
でも……アルフィーには逃げ出す勇気がなかった。
一歩ずつ、慎重に歩きながら、血をたどっていく。
その血は、ある場所へと続いていた。
そこは、神を司る魔人であるルカのリクエストで作った、神のための祭壇の部屋。
普段はルカ以外立ち入ることができない、禁断の空間となっていた。
その空間は、ルカのリクエストによりステラの魔によって、特殊な工夫が施されているらしかった。
具体的にどんな工夫かは、ステラとルカの間だけの秘密になっていた。
だから。
扉が開いている今の状況が、もはや異常事態を指し示していることだけは、アルフィーには分かった。
入ってはいけないと、アルフィーの本能が言う。
でも入らなければ。
確認しなければ。
アルフィーの理性と正義感が警鐘を鳴らす。
そして、しばらく自分の中で押し問答を繰り返してから、アルフィーは禁断だった空間への一歩踏み出した。
そこにあったのは、3つ目の悲惨な光景。
その中心にいたのは……。
「と……トラヴィス!?」
行きはメルキオールの力であっという間だった距離を、徒歩で帰ることは、体力がそんなにないアルフィーにとって、非常に過酷だった。
とはいえ、アルフィーの武器でもある知識のおかげもあり、並大抵のことであればその知識で解決できてしまったので、まだ良かった。
だが、問題はアルフィーが城に到着してから。
野生動物同士の戦いや、災害で滅んだ遺跡なんかよりずっと悲惨な光景が待ち受けていた。
まず1つ目。
それは、城の周りの惨状。
野生の動物達が引きちぎられた死体がゴロゴロと転がっていた。
確かに、食用として動物の命を貰うことはある。
だが、その時はこんなゴミを捨てるような扱いには決してしない。
丁寧に感謝を込めて、骨は土に還していた。
一体誰がこんなことをしたのか……。
明らかに、人の手ではできないであろう、切り裂かれ方だった。
心当たりがあるとしたら……。
「まさか、メルキオールが……?」
1度だけ見せてもらったことがあった。
風を使い、ナイフのようにあっという間に獣の肉を捌く様子を。
その時メルキオールが用いたのは、かまいたち現象を引き起こす方法。
メルキオール自身は
「かま?イタチ?動物なんていないじゃないか」
と、イタチの仲間と誤解していたが、その現象を人為的に引き起こす方法は、まだこの世界では解明されていなかった。
アルフィーの知的好奇心がその時久し振りに疼いたので、アルフィーはよくその日のことを覚えている。
だからこそ、違和感も同時に覚えているのだ。
少なくとも、その時の獣の断面は、とても美しかった。
決して引きちぎられたかのような、ぐちゃぐちゃな断面ではなかったのだ。
そうなると、メルキオールの仕業ではないかもしれない?
だとすると、一体誰が……。
そんなことを考えながら、城の中に入ったアルフィーは2つ目の悲惨な光景を目にすることになる。
廊下のあちこちに、血が飛び散っているのだ。
もしこれが、1人の血であれば……その人間はすでに死んでいるべき出血量なのは間違いなかった。
「何だ……これは…………」
充満する血の臭いに吐き気が止まらないアルフィーだった。
本当は、ここから逃げ出してしまった方がずっと安全だったかもしれない。
でも……アルフィーには逃げ出す勇気がなかった。
一歩ずつ、慎重に歩きながら、血をたどっていく。
その血は、ある場所へと続いていた。
そこは、神を司る魔人であるルカのリクエストで作った、神のための祭壇の部屋。
普段はルカ以外立ち入ることができない、禁断の空間となっていた。
その空間は、ルカのリクエストによりステラの魔によって、特殊な工夫が施されているらしかった。
具体的にどんな工夫かは、ステラとルカの間だけの秘密になっていた。
だから。
扉が開いている今の状況が、もはや異常事態を指し示していることだけは、アルフィーには分かった。
入ってはいけないと、アルフィーの本能が言う。
でも入らなければ。
確認しなければ。
アルフィーの理性と正義感が警鐘を鳴らす。
そして、しばらく自分の中で押し問答を繰り返してから、アルフィーは禁断だった空間への一歩踏み出した。
そこにあったのは、3つ目の悲惨な光景。
その中心にいたのは……。
「と……トラヴィス!?」
0
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる