275 / 455
7.呪われしアルストメリー
次はあなたの番
しおりを挟む
(さて、この男をどうしてくれようか)
と、本物の悪役っぽく言ってみたいと思ったが、流石に自重した。
課題は、1つ解決したとしてもまだまだ山積みだ。
悠長にエディ王子で遊んでるだけの時間は、ない。
(とりあえず、何から話すのが1番いいのか……)
エディ王子に、カサブランカの体の中身が別人である前提条件は、どうにか伝わっている。
元のカサブランカに戻って欲しいという、エディ王子の目標の醸成にも、おそらく成功はしている。
次に行うことは、彼が目的を達成するための方法を共有すること。
カサブランカの心を探す、という言葉にするだけならとても簡単なこと。
だけど、ふと考えた。
そもそも、エディ王子は一体どこまで情報を知っているのだろうか。
魔人という存在がこの世界にいるということ。
そして自分が、その魔人の一人であるということ。
カサブランカもまた、同じ魔人の一人であるということ。
そして……エディ王子の魂の核が、過去何かをした結果が今であること。
その、何か、のせいで王家が恨まれている……と、いうこと。
(手始めにここからいくか……)
「あのさ……魔人って知ってる?」
「まじん?」
「そう。魔人」
「何だそれは」
(はい。即、玉砕)
よく思い出してみよう。
エディ王子は魔力は使いこなせているはず。
自覚も、あるはずだ。
まあ私も……よくよく考えれば……まだ、いまいち魔人の概念を説明できる自信はないけど、ざっくり言えばこう言うことだろう。
「あのー王子のように魔力を持っている人のことを魔人という……らしいです」
そう私が言った瞬間、エディ王子の表情がガラリと変わった。
視線だけで、誰かを殺せるくらい鋭い目つき。
(んんっ!?)
「この国は、魔力で生活を成り立たせているのが当然のはずだが……そんな話は1度も聞いたことがない……デタラメはすぐにバレるぞ」
(あー…………)
そうだ。
次から次へと押し寄せる、常識外の出来事のおかげで、肝心な小説の軸設定を忘れていた。
そうなのだ。
アルストメリーは、王族ほどではないとはいえ、魔力は皆持っているのだ。
灯りや燃料の素は全て魔力。
他の国にはない、この国独自の仕組み。
つまり、私の説明がそのまま通用するとなると、この国、全員が魔人ということになる。
彼らは皆、自然物を使う魔力を持っていることになるのだから。
でもふとここで違和感がある。
というより、ずっと頭の中でもやっとしていたこと。
何故、王族が自然を司る魔人なのか。
その魔人と同じような、自然を操る力を、何故、この国の民は持っているのか。
(単なる設定上の都合……?)
いや。
この世界は、小説あるあるのご都合主義で作られているわけではなさそうだ、と私は考えている。
ご都合主義だとしたら、ハードモードにも程があるから。
もう1度、情報を頭の中で整理してみることにした。念じるように。
この国の最初は、確かに6人の魔人から始まっているのだろう。
そして、私が知らなくて、プルメリア、ノアあたりは知っているかもしれない過去の何らかの出来事のせいで、今のアルストメリーが出来上がったのだろう。
過去の関わってくるのは……あのビジョン。
ルカという、かつての神を司る少女を襲っているメルキオール……つまり、エディ王子の魂の核なのかもしれない。
そのせいで、王家は恨みの対象になっており、エディ王子がその中心に立たされている。
にも関わらず、エディ王子はその事実を、全く知らなそうだ。恐らく。
(これはこれで厄介だ)
エディ王子は物語の中心人物になるべき人間だろう。
にも関わらず、肝心な情報から爪弾きにされている現状だ。
私の前世での経験上……こう言う場合は大抵、自分の意思には関わらず、そう言う環境を作られているケースを想像した方が解決は早い。
何かの理由で、エディ王子を情弱にした。
これは、意図的にだろう。
(よし、次の課題解決はこっちにするか)
私は、じーっと見てくるエディ王子の視線をあえて気にしないように深呼吸しながら、今までは、まだ起きないでくれ、と願った少女と中の人に近づいた。
そして揺さぶりながら
「お待たせ、次はあなたの番よ」
と囁いた。
少女……アザレアの瞼が、かすかに動いた。
と、本物の悪役っぽく言ってみたいと思ったが、流石に自重した。
課題は、1つ解決したとしてもまだまだ山積みだ。
悠長にエディ王子で遊んでるだけの時間は、ない。
(とりあえず、何から話すのが1番いいのか……)
エディ王子に、カサブランカの体の中身が別人である前提条件は、どうにか伝わっている。
元のカサブランカに戻って欲しいという、エディ王子の目標の醸成にも、おそらく成功はしている。
次に行うことは、彼が目的を達成するための方法を共有すること。
カサブランカの心を探す、という言葉にするだけならとても簡単なこと。
だけど、ふと考えた。
そもそも、エディ王子は一体どこまで情報を知っているのだろうか。
魔人という存在がこの世界にいるということ。
そして自分が、その魔人の一人であるということ。
カサブランカもまた、同じ魔人の一人であるということ。
そして……エディ王子の魂の核が、過去何かをした結果が今であること。
その、何か、のせいで王家が恨まれている……と、いうこと。
(手始めにここからいくか……)
「あのさ……魔人って知ってる?」
「まじん?」
「そう。魔人」
「何だそれは」
(はい。即、玉砕)
よく思い出してみよう。
エディ王子は魔力は使いこなせているはず。
自覚も、あるはずだ。
まあ私も……よくよく考えれば……まだ、いまいち魔人の概念を説明できる自信はないけど、ざっくり言えばこう言うことだろう。
「あのー王子のように魔力を持っている人のことを魔人という……らしいです」
そう私が言った瞬間、エディ王子の表情がガラリと変わった。
視線だけで、誰かを殺せるくらい鋭い目つき。
(んんっ!?)
「この国は、魔力で生活を成り立たせているのが当然のはずだが……そんな話は1度も聞いたことがない……デタラメはすぐにバレるぞ」
(あー…………)
そうだ。
次から次へと押し寄せる、常識外の出来事のおかげで、肝心な小説の軸設定を忘れていた。
そうなのだ。
アルストメリーは、王族ほどではないとはいえ、魔力は皆持っているのだ。
灯りや燃料の素は全て魔力。
他の国にはない、この国独自の仕組み。
つまり、私の説明がそのまま通用するとなると、この国、全員が魔人ということになる。
彼らは皆、自然物を使う魔力を持っていることになるのだから。
でもふとここで違和感がある。
というより、ずっと頭の中でもやっとしていたこと。
何故、王族が自然を司る魔人なのか。
その魔人と同じような、自然を操る力を、何故、この国の民は持っているのか。
(単なる設定上の都合……?)
いや。
この世界は、小説あるあるのご都合主義で作られているわけではなさそうだ、と私は考えている。
ご都合主義だとしたら、ハードモードにも程があるから。
もう1度、情報を頭の中で整理してみることにした。念じるように。
この国の最初は、確かに6人の魔人から始まっているのだろう。
そして、私が知らなくて、プルメリア、ノアあたりは知っているかもしれない過去の何らかの出来事のせいで、今のアルストメリーが出来上がったのだろう。
過去の関わってくるのは……あのビジョン。
ルカという、かつての神を司る少女を襲っているメルキオール……つまり、エディ王子の魂の核なのかもしれない。
そのせいで、王家は恨みの対象になっており、エディ王子がその中心に立たされている。
にも関わらず、エディ王子はその事実を、全く知らなそうだ。恐らく。
(これはこれで厄介だ)
エディ王子は物語の中心人物になるべき人間だろう。
にも関わらず、肝心な情報から爪弾きにされている現状だ。
私の前世での経験上……こう言う場合は大抵、自分の意思には関わらず、そう言う環境を作られているケースを想像した方が解決は早い。
何かの理由で、エディ王子を情弱にした。
これは、意図的にだろう。
(よし、次の課題解決はこっちにするか)
私は、じーっと見てくるエディ王子の視線をあえて気にしないように深呼吸しながら、今までは、まだ起きないでくれ、と願った少女と中の人に近づいた。
そして揺さぶりながら
「お待たせ、次はあなたの番よ」
と囁いた。
少女……アザレアの瞼が、かすかに動いた。
0
お気に入りに追加
568
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
異世界転生したら悪役令嬢じゃなくイケメン達に囲まれちゃいましたっ!!
杏仁豆腐
恋愛
17歳の女子高生が交通事故で即死。その後女神に天国か地獄か、それとも異世界に転生するかの選択肢を与えられたので、異世界を選択したら……イケメンだらけの世界に来ちゃいました。それも私って悪役令嬢!? いやそれはバッドエンドになるから勘弁してほしいわっ! 逆ハーレム生活をエンジョイしたいのっ!!
※不定期更新で申し訳ないです。順調に進めばアップしていく予定です。設定めちゃめちゃかもしれません……本当に御免なさい。とにかく考え付いたお話を書いていくつもりです。宜しくお願い致します。
※タイトル変更しました。3/31
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる