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7.呪われしアルストメリー
あの愚弟は、あなたを犯した男じゃないですか
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「あなたのその言い方、まるで私があなたを疑うことを、嫌がっているように見えるんですけど」
私の言葉に対し、ノアは鼻で笑うように
「それは、自意識過剰というものではないですか?」
と反論してきた。
(そうきたか……)
まさかこの場で、自意識過剰というフレーズを耳にするとは。
「私はあなたに、あなたが、私を疑っているのか、と確認をしたに過ぎません。他意はありません」
確認をしただけ、という言葉に妙に力が込められている。
ノアは常に、淡々かつ飄々とした印象が常にあった。
エレガントで、あっさりした滑らかな話し方をしていた。
もし彼が声優をするのであれば、金髪で線が細いイケメンの役が合いそうとすら思った。
そんな彼の声に、乱れた感情が見え隠れするのは、やはり違和感でしかなかった。
「確認する事実と、他意がないことを主張するのは、普通は繋がらないのでは?」
私はわざと、確認と他意を強めて言ってやった。
そうしたことで、ノアは気付いたのだろう。
自分が無意識にしてしまった、ほんの些細なミスに。
「……あなたは……私に何をさせたいです?」
ノアの言葉に、私はチャンスの兆しを掴む。
ニヤリと、私の口角が上がる。
私は、エディ王子を指差しながら
「もし、あなたが私に信頼して欲しいと言うのなら、王子の鎖を外してください」
と言った。
その言葉に、またもやノアは目を丸くした。
「正気ですか?あの愚弟は、あなたを犯した男じゃないですか」
ノアが、カサブランカとしては習慣である伽のことを、わざわざ犯すという言葉を使ったのは、私に向けて言葉だったからだろう。
「憎くはないのですか」
重ねてノアが言った。
確かに、急に目が覚めたときに男の人に組み敷かれている状態は、恐怖だった。
何が起きているのかも分からず、いくら前世の自分の体じゃないとは言え……剥き出しの裸状態にされたまま、事が進められてしまった。
当たり前だった知識が一切通じない世界で、考え方次第ではレイプと認知してもおかしくないことをされた。
それが、この世界に来て最初に私が経験したこと。
普通なら、頭がおかしくなっている。
……憎いのレベルなんて、とうに超えてしまっている。
今の私を動かすのは、憎しみや悲しみといった感情論ではない。
私の中にあるのは、この世界で、どう生き残るかの生存本能だ。
「ふふふ」
私はついおかしくなって笑ってしまう。
ノアが、怪訝な顔で私を見る。
私は言う。
「あんな姿、見ていてかわいそうになる」
と。
ノアは言う。
「随分とあなたは呑気なものの考え方をするんですね」
と。
それからお互いの心を探るために、目を見つめあった。
睨み合った。
探せ。
ヒントを探せ。
今の状態を切り抜けるものなら何でもいい。
仕草1つ見逃すな。
私の生存本能と、私以外の生存本能が、私に体で語りかける。
心臓の鼓動という形で。
どれだけ睨み合ったのかは分からないけど、根負けしてくれたのだろう。
次に口を開いたのはノアだった。
「この手錠を外すことができるのは、私ではありません」
私の言葉に対し、ノアは鼻で笑うように
「それは、自意識過剰というものではないですか?」
と反論してきた。
(そうきたか……)
まさかこの場で、自意識過剰というフレーズを耳にするとは。
「私はあなたに、あなたが、私を疑っているのか、と確認をしたに過ぎません。他意はありません」
確認をしただけ、という言葉に妙に力が込められている。
ノアは常に、淡々かつ飄々とした印象が常にあった。
エレガントで、あっさりした滑らかな話し方をしていた。
もし彼が声優をするのであれば、金髪で線が細いイケメンの役が合いそうとすら思った。
そんな彼の声に、乱れた感情が見え隠れするのは、やはり違和感でしかなかった。
「確認する事実と、他意がないことを主張するのは、普通は繋がらないのでは?」
私はわざと、確認と他意を強めて言ってやった。
そうしたことで、ノアは気付いたのだろう。
自分が無意識にしてしまった、ほんの些細なミスに。
「……あなたは……私に何をさせたいです?」
ノアの言葉に、私はチャンスの兆しを掴む。
ニヤリと、私の口角が上がる。
私は、エディ王子を指差しながら
「もし、あなたが私に信頼して欲しいと言うのなら、王子の鎖を外してください」
と言った。
その言葉に、またもやノアは目を丸くした。
「正気ですか?あの愚弟は、あなたを犯した男じゃないですか」
ノアが、カサブランカとしては習慣である伽のことを、わざわざ犯すという言葉を使ったのは、私に向けて言葉だったからだろう。
「憎くはないのですか」
重ねてノアが言った。
確かに、急に目が覚めたときに男の人に組み敷かれている状態は、恐怖だった。
何が起きているのかも分からず、いくら前世の自分の体じゃないとは言え……剥き出しの裸状態にされたまま、事が進められてしまった。
当たり前だった知識が一切通じない世界で、考え方次第ではレイプと認知してもおかしくないことをされた。
それが、この世界に来て最初に私が経験したこと。
普通なら、頭がおかしくなっている。
……憎いのレベルなんて、とうに超えてしまっている。
今の私を動かすのは、憎しみや悲しみといった感情論ではない。
私の中にあるのは、この世界で、どう生き残るかの生存本能だ。
「ふふふ」
私はついおかしくなって笑ってしまう。
ノアが、怪訝な顔で私を見る。
私は言う。
「あんな姿、見ていてかわいそうになる」
と。
ノアは言う。
「随分とあなたは呑気なものの考え方をするんですね」
と。
それからお互いの心を探るために、目を見つめあった。
睨み合った。
探せ。
ヒントを探せ。
今の状態を切り抜けるものなら何でもいい。
仕草1つ見逃すな。
私の生存本能と、私以外の生存本能が、私に体で語りかける。
心臓の鼓動という形で。
どれだけ睨み合ったのかは分からないけど、根負けしてくれたのだろう。
次に口を開いたのはノアだった。
「この手錠を外すことができるのは、私ではありません」
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