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7.呪われしアルストメリー

私の力を使いますか?

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私は咄嗟に、自分の腕で頭を守る体勢にしてしまった。
それだけで、ノアには伝わってしまったのだろう。
私が、彼の魔を知っていることを。

「身体は、嘘をつかないと言いますが……」

ノアはそう言いながら、私との距離を少しずつ縮めてくる。
心臓の音が、どくんどくんとうるさく体内に響く。
その音に、吐きそうになりそうだった。
ノアは、ぴたりと私の前で止まる。
私は、壁に背をつけたまま立ち上がる。
何かされそうになれば、すぐに彼から逃げられるように。

「どうしてあなたは、そんなにも私を警戒するのです?」
「…………警戒しない理由は……ありますか?」
「そうおっしゃるということは、やはりあなたはお気づきなのですね」

彼からは、決定的な言葉を言わない。
何としても、私から引き出したいのだろう。
私が気づいている、彼のことを。
私、ごくりと唾を飲み込む。
どんどん乾いていく喉を潤そうと。
でも、飲み込めば飲み込むほど、私の喉はカサカサに乾いていく。
ノアは、そんな私を楽しそうに見つめている。
手を、私の方に伸ばしたまま。

(どうする……。この場合、何をするのが正しいの……?)

そうして、しばらくノアと睨めっこ状態が続いてから、痺れを切らしたのだろう。
ノアは、私に伸ばしていた手を、そのままエディ王子の頭へと近づけて触れた。
それから、私に、こう言った。

「どうしますか?」
「え?」
「私の力を使いますか?」

ノアは、エディ王子の髪をぐしゃりと握った。
そのせいだろうか、エディ王子の顔が苦しげに歪んだ。

「あなたが愚弟に放った言葉を、私なら全て無かったことにできる……もう、気づいているでしょう」

それは、目の前でカミングアウトしたことを意味しているのだろう。
私がカサブランカではないことを。
ということは。
ノアはその様子を、どこかで見ていたということになる。

(だとすれば……どこで?何のために?)

私は、迷った。
誰を、私の味方にするのかを。
たぶん……味方にする人間を間違えたら、私が、危ない。
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