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2.伽の習慣
いつもと違う夜の始まり
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カサブランカはその日、久しぶりに気分が良かった。
ノアが執事として、カサブランカの気分を少しでも高めるために尽くしたからだ。
カサブランカは、ノアが淹れる紅茶の味が好きになった。
寝る前に子守唄を歌ってくれる、ノアの低くて優しい歌声が好きになった。
いつのまにかノアは、カサブランカの精神の拠り所となっていた。
そしてこの日は、ノアが用意したバラの花びらをいっぱい浮かべた花風呂を存分に湯殿で楽しんでから、ノアに与えられたふわふわもこもこのバスローブを着て、部屋に戻った。
この時すでに、ノアはもう当たり前のように、お風呂上がりの飲み物を用意していた。
寝床からは、眠りにつきやすくなるようにと、ノアが調合したという、ラヴェンダーをベースにしたアロマの香りがほんのり香っている。
その香りは、カサブランカにとって心地よいものになっており、その香りを感じるとノアのことを思い出すようになっていた。
「ノア?今日の飲み物はなあに?」
カサブランカは、ノアが用意するとっておきの飲み物が、ケーキよりもずっと大好物になっていた。
「今日はこちらでございます」
とノアが差し出してきたのは、生クリームがとろりと入った、ホットチョコレート。赤い薔薇の花びらがちょんっと1枚乗っている。
カサブランカがすうっと鼻で息をすると、チョコレートの甘くて優しい香りが、体に沁みた。
カサブランカが一口含むと、身体中にチョコレートの香りと、頭がふわふわするような感覚がした。
その感覚は、初めてのものだった。
「カシー様。お味はいかがですか?」
「おいしい……でもね、ノア」
「何でしょう?」
「どうしてかしら……とっても頭がふわふわして、気持ちいいの……」
いつもは、ノアから与えられる飲み物を飲むと、体がすうっとリラックスするような感覚になる。
ところが今日は違う。
内側から、エネルギーが湧き出るような感覚。
まるで、何かで発散したいと思いたくなるような……。
その言葉を聞いたノアは
「そうですか」
と言うと、カサブランカに美しい細工が施された瓶を見せた。
「今日はこの後、こちらで体のお手入れをしましょう」
体のお手入れというのは、お風呂上がりにカサブランカの体にボディーオイルやクリームを塗りマッサージをすること。
これは、寝床での日課。
しかし、この日は……。
「お手入れは……誰がするの?」
普段は、女性のメイドが担当をする。
本来なら、すでに担当者も部屋にいるはずだった。
しかし、今はいない。
「お手入れは、今日から私がいたします」
「え……?」
全身のお手入れというのは、全裸を晒すこと。
ようやく女性の手でされることに慣れてきたのに、男性のノアに全裸をさらすだけでなく、くまなく触られるということに、カサブランカは戸惑った。
ノアの事は、好き。
でも、体を触れられるほど好きかと言われると、それは違う。
触れて欲しいと思っていたのは……。
カサブランカが、エディ王子のことを思い出すと、胸がつきんっと痛む。
まだ、傷は癒えていない。
断らなくては……と思ったのに、ノアはいつのまにかカサブランカの側にきて、頬に触れる。
ノアの手のひらに、すでに何か塗られていたのか……頬にとろりとした液体が塗られる。
そこから、薔薇の香りが漂う。
カサブランカの脳を、その香りが支配し始めた。
その瞬間、
「きゃっ!」
ノアは、カサブランカが身につけていたバスローブを剥ぎ取った。
ノアが執事として、カサブランカの気分を少しでも高めるために尽くしたからだ。
カサブランカは、ノアが淹れる紅茶の味が好きになった。
寝る前に子守唄を歌ってくれる、ノアの低くて優しい歌声が好きになった。
いつのまにかノアは、カサブランカの精神の拠り所となっていた。
そしてこの日は、ノアが用意したバラの花びらをいっぱい浮かべた花風呂を存分に湯殿で楽しんでから、ノアに与えられたふわふわもこもこのバスローブを着て、部屋に戻った。
この時すでに、ノアはもう当たり前のように、お風呂上がりの飲み物を用意していた。
寝床からは、眠りにつきやすくなるようにと、ノアが調合したという、ラヴェンダーをベースにしたアロマの香りがほんのり香っている。
その香りは、カサブランカにとって心地よいものになっており、その香りを感じるとノアのことを思い出すようになっていた。
「ノア?今日の飲み物はなあに?」
カサブランカは、ノアが用意するとっておきの飲み物が、ケーキよりもずっと大好物になっていた。
「今日はこちらでございます」
とノアが差し出してきたのは、生クリームがとろりと入った、ホットチョコレート。赤い薔薇の花びらがちょんっと1枚乗っている。
カサブランカがすうっと鼻で息をすると、チョコレートの甘くて優しい香りが、体に沁みた。
カサブランカが一口含むと、身体中にチョコレートの香りと、頭がふわふわするような感覚がした。
その感覚は、初めてのものだった。
「カシー様。お味はいかがですか?」
「おいしい……でもね、ノア」
「何でしょう?」
「どうしてかしら……とっても頭がふわふわして、気持ちいいの……」
いつもは、ノアから与えられる飲み物を飲むと、体がすうっとリラックスするような感覚になる。
ところが今日は違う。
内側から、エネルギーが湧き出るような感覚。
まるで、何かで発散したいと思いたくなるような……。
その言葉を聞いたノアは
「そうですか」
と言うと、カサブランカに美しい細工が施された瓶を見せた。
「今日はこの後、こちらで体のお手入れをしましょう」
体のお手入れというのは、お風呂上がりにカサブランカの体にボディーオイルやクリームを塗りマッサージをすること。
これは、寝床での日課。
しかし、この日は……。
「お手入れは……誰がするの?」
普段は、女性のメイドが担当をする。
本来なら、すでに担当者も部屋にいるはずだった。
しかし、今はいない。
「お手入れは、今日から私がいたします」
「え……?」
全身のお手入れというのは、全裸を晒すこと。
ようやく女性の手でされることに慣れてきたのに、男性のノアに全裸をさらすだけでなく、くまなく触られるということに、カサブランカは戸惑った。
ノアの事は、好き。
でも、体を触れられるほど好きかと言われると、それは違う。
触れて欲しいと思っていたのは……。
カサブランカが、エディ王子のことを思い出すと、胸がつきんっと痛む。
まだ、傷は癒えていない。
断らなくては……と思ったのに、ノアはいつのまにかカサブランカの側にきて、頬に触れる。
ノアの手のひらに、すでに何か塗られていたのか……頬にとろりとした液体が塗られる。
そこから、薔薇の香りが漂う。
カサブランカの脳を、その香りが支配し始めた。
その瞬間、
「きゃっ!」
ノアは、カサブランカが身につけていたバスローブを剥ぎ取った。
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