21 / 35
20.死を迎えられない体になってから
しおりを挟む
しばらくは、ただぼーっと時が過ぎるのを感じていただけでした。
食欲も湧いて来ず、水もいつ飲んだのか、忘れそうになるほどの時を過ごした気がします。
それからふと、何を考えたのか私はふらりと外に出ました。
オリバーと過ごした泉を、急に見たいと思ったからです。
泉は、オリバーに愛の告白を受けた日と同じ、美しい姿をしておりました。
「オリバー……会いたい……」
私がぽつりと弱音を漏らしたその時でした。
獰猛な獣が突如、私の目の前に現れたのです。
私が何かしらの次の声を発する間も無く、獣はその爪で私の体を引き裂きました。
痛みは感じませんでしたが、血飛沫が宙に浮いているのがわかりました。
私の体は、花畑の上へと落ちていき、花びらを赤く濡らしました。
きっと、その獣は私を食事と考えたのでしょう。
森の奥から、次々と同じような姿の獣が現れ、私の周りを囲みました。
(ああ。私はもう死んでしまうのね)
痛くはありません。
未練はありますが後悔はありません。
そのまま私は、出来事を受け入れるための目を閉じました。
体が、バラバラに千切られる感覚だけは、しました。
しかし、はっと気がつくと。
太陽は登っていました。
獣達の姿は、消えていました。
獣が切り裂いた私の体は、いつの間にか元通りに戻っていました。
傷1つついておりませんでした。
「どうして……」
私は、老いなくなりました。
私は、バラバラに千切られても、元に戻っていました。
その時、1つの仮説が生まれました。
私は……死を迎えられない体になったのではないか……と。
私は自分の意思でも、他のものの介入でも、オリバーの側に行くという手法を奪われてしまったのだと、悟りました。
それから。
何年という時が経ったのか分かりません。
ここには、時を教えてくれるものが太陽と月の動きだけですから。
今日という日が、いつなのか、私には知る術がありません。
もう、何度そんな夜を繰り返したのでしょう。
思い返すのも難しいくらい長い時を経てからのこと。
突然、私の隠れ家に訪れる人間が現れました。
初めてのことでしたので、私は警戒しました。
警戒して、それからその人の顔を見て腰を抜かしそうになりました。
現れたのは、オリバーに瓜二つの男性だったからです。
食欲も湧いて来ず、水もいつ飲んだのか、忘れそうになるほどの時を過ごした気がします。
それからふと、何を考えたのか私はふらりと外に出ました。
オリバーと過ごした泉を、急に見たいと思ったからです。
泉は、オリバーに愛の告白を受けた日と同じ、美しい姿をしておりました。
「オリバー……会いたい……」
私がぽつりと弱音を漏らしたその時でした。
獰猛な獣が突如、私の目の前に現れたのです。
私が何かしらの次の声を発する間も無く、獣はその爪で私の体を引き裂きました。
痛みは感じませんでしたが、血飛沫が宙に浮いているのがわかりました。
私の体は、花畑の上へと落ちていき、花びらを赤く濡らしました。
きっと、その獣は私を食事と考えたのでしょう。
森の奥から、次々と同じような姿の獣が現れ、私の周りを囲みました。
(ああ。私はもう死んでしまうのね)
痛くはありません。
未練はありますが後悔はありません。
そのまま私は、出来事を受け入れるための目を閉じました。
体が、バラバラに千切られる感覚だけは、しました。
しかし、はっと気がつくと。
太陽は登っていました。
獣達の姿は、消えていました。
獣が切り裂いた私の体は、いつの間にか元通りに戻っていました。
傷1つついておりませんでした。
「どうして……」
私は、老いなくなりました。
私は、バラバラに千切られても、元に戻っていました。
その時、1つの仮説が生まれました。
私は……死を迎えられない体になったのではないか……と。
私は自分の意思でも、他のものの介入でも、オリバーの側に行くという手法を奪われてしまったのだと、悟りました。
それから。
何年という時が経ったのか分かりません。
ここには、時を教えてくれるものが太陽と月の動きだけですから。
今日という日が、いつなのか、私には知る術がありません。
もう、何度そんな夜を繰り返したのでしょう。
思い返すのも難しいくらい長い時を経てからのこと。
突然、私の隠れ家に訪れる人間が現れました。
初めてのことでしたので、私は警戒しました。
警戒して、それからその人の顔を見て腰を抜かしそうになりました。
現れたのは、オリバーに瓜二つの男性だったからです。
0
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます
刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる