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第15章 三年次・4月(1)
しおりを挟む 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「やったー、ゆきのカプセルにミスターソイドのフィギュアが入ってたよ! ここに4人で来たかいがあったよ!!」
「良かったですね。コラボメニューの料金ははたこ先輩持ちですし、私も先輩方とスイーツビュッフェ来られて嬉しいです」
ある日曜日、私は硬式テニス部のいつもの3人の先輩方と繁華街のスイーツビュッフェ専門店に来ていた。
このスイーツビュッフェは以前からテレビアニメやゲームとのコラボメニューを展開しており、赤城旗子先輩は最近はまっている少年漫画原作のテレビアニメ『スパイ大家族』のグッズを目当てに私と堀江有紀先輩、平塚鳴海先輩を連れてきたのだった。
4人で1皿ずつ注文したコラボメニューには1皿につきグッズが入ったカプセルが1つ付いてきて、はたこ先輩が欲しがっていたアニメの主人公のフィギュアはゆき先輩のカプセルに入っていたらしかった。
「あのアニメはわたくしも声優の勉強のために見ていますけど、視聴者に一番人気なのは旗子と鳴海のカプセルに入っていたエスニャみたいですわね。転売すれば結構高く売れるかも知れませんわ」
「うちはまなちゃんが当てたレディミッドナイトの方が乳でかいし美脚やしええと思うけどな。それよりこのパスタ美味しいわ!」
「甘い洋菓子が多いのでアクセントにいいですよね。あ、何か向こうの方で騒いでます?」
店舗の入り口近くのテーブルから店員さんとお客さんが言い争うような声が聞こえてきたので、私たちはそちらに目をやった。
「お客様、コラボメニューを複数注文してくださったのはありがたいのですが当店では食べ残しはご遠慮しておりまして。罰金などを頂くつもりはありませんが、今後はこのようなことは控えていただければと……」
「えー、だって私たちビュッフェのメニューは全部食べきりましたよ? コラボメニューは単品注文なのに食べ残しちゃ駄目なんですかぁ?」
「お気持ちは分かりますが、でしたら1人で複数のコラボメニューを注文するのは……」
「仕方ないじゃないですか! コラボメニューはどのグッズが当たるかランダムなのに、20種類以上もあるグッズから目当てのを引き当てなきゃいけない側の気持ち分かりませんか? 私たちに文句言う前にこういうランダム商法を何とかしてください!!」
女子大生かOLさんに見える複数名の女性客は剣や刀をイケメンキャラに擬人化したソーシャルゲーム『美剣ボーイズ』のコラボメニューを大量に注文して食べ残したらしく、これはどうしても目当てのグッズを手に入れたい客側の事情も食べ残しを敬遠する店側の事情も理解できる一件だと私は思った。
「いくら理屈並べても食べ残しはあかん思うけどな。せやけど沢山種類があるグッズを指定できへんのも確かに大変やな」
「難しい話ですわね。……そうですわ、こういったトラブルから新たなお仕事を作れそうですわ! 帰ったら早速準備を始めます!!」
店員さんに怒りながら帰っていった女性客を見てゆき先輩はまた何かお金儲けを思いついたらしく、今回はせめて人のためになる商売であって欲しいと私は思った。
その翌月……
「マルクス中高アメフト部の皆様、本日はこのスイーツビュッフェにお集まり頂きありがとうございます。今回は皆様からビュッフェの料金の半額を頂き、依頼主の女性からは残りの半額とコラボメニューの代金を頂いております。どうぞスイーツビュッフェを半額で楽しんでくださいませ」
「ありがとうございます! でも、それじゃ堀江先輩は儲からないんじゃ?」
「マナの弟君、その点は心配ありませんわ。依頼主が不要なグッズは全てわたくしが引き受け、それを転売すればいくらでも元は取れるという訳です。気兼ねなくお召し上がりなさいませ!!」
「やったー! 部員の皆、今日は皆でビュッフェを食べまくるぞ!!」
「「イエッサー!!」」
『スイーツビュッフェのコラボメニューが原因の食べ残し問題に対処するため近頃都内で広まっている食事代行サービスですが、新たな問題が発生しています。食事代行役として店舗を訪れる男子運動部員のグループが原価割れするほどにビュッフェを食べ尽くす事態が頻発しており、一部の店舗では男性集団客の入店を断る動きも発生しているとのことです』
「キィー! せっかく新しい商売を思いついたのに邪魔されるなんて許せませんわ!! ここは大学の女子レスリングサークルにでも話を持っていくしかありませんわね」
「は、ははは……」
街頭のテレビモニターで流れているニュースを見て商売の改善策を考えているゆき先輩に、私は先輩の何があっても諦めない姿勢にはある意味憧れるなあと思った。
(続く)
「やったー、ゆきのカプセルにミスターソイドのフィギュアが入ってたよ! ここに4人で来たかいがあったよ!!」
「良かったですね。コラボメニューの料金ははたこ先輩持ちですし、私も先輩方とスイーツビュッフェ来られて嬉しいです」
ある日曜日、私は硬式テニス部のいつもの3人の先輩方と繁華街のスイーツビュッフェ専門店に来ていた。
このスイーツビュッフェは以前からテレビアニメやゲームとのコラボメニューを展開しており、赤城旗子先輩は最近はまっている少年漫画原作のテレビアニメ『スパイ大家族』のグッズを目当てに私と堀江有紀先輩、平塚鳴海先輩を連れてきたのだった。
4人で1皿ずつ注文したコラボメニューには1皿につきグッズが入ったカプセルが1つ付いてきて、はたこ先輩が欲しがっていたアニメの主人公のフィギュアはゆき先輩のカプセルに入っていたらしかった。
「あのアニメはわたくしも声優の勉強のために見ていますけど、視聴者に一番人気なのは旗子と鳴海のカプセルに入っていたエスニャみたいですわね。転売すれば結構高く売れるかも知れませんわ」
「うちはまなちゃんが当てたレディミッドナイトの方が乳でかいし美脚やしええと思うけどな。それよりこのパスタ美味しいわ!」
「甘い洋菓子が多いのでアクセントにいいですよね。あ、何か向こうの方で騒いでます?」
店舗の入り口近くのテーブルから店員さんとお客さんが言い争うような声が聞こえてきたので、私たちはそちらに目をやった。
「お客様、コラボメニューを複数注文してくださったのはありがたいのですが当店では食べ残しはご遠慮しておりまして。罰金などを頂くつもりはありませんが、今後はこのようなことは控えていただければと……」
「えー、だって私たちビュッフェのメニューは全部食べきりましたよ? コラボメニューは単品注文なのに食べ残しちゃ駄目なんですかぁ?」
「お気持ちは分かりますが、でしたら1人で複数のコラボメニューを注文するのは……」
「仕方ないじゃないですか! コラボメニューはどのグッズが当たるかランダムなのに、20種類以上もあるグッズから目当てのを引き当てなきゃいけない側の気持ち分かりませんか? 私たちに文句言う前にこういうランダム商法を何とかしてください!!」
女子大生かOLさんに見える複数名の女性客は剣や刀をイケメンキャラに擬人化したソーシャルゲーム『美剣ボーイズ』のコラボメニューを大量に注文して食べ残したらしく、これはどうしても目当てのグッズを手に入れたい客側の事情も食べ残しを敬遠する店側の事情も理解できる一件だと私は思った。
「いくら理屈並べても食べ残しはあかん思うけどな。せやけど沢山種類があるグッズを指定できへんのも確かに大変やな」
「難しい話ですわね。……そうですわ、こういったトラブルから新たなお仕事を作れそうですわ! 帰ったら早速準備を始めます!!」
店員さんに怒りながら帰っていった女性客を見てゆき先輩はまた何かお金儲けを思いついたらしく、今回はせめて人のためになる商売であって欲しいと私は思った。
その翌月……
「マルクス中高アメフト部の皆様、本日はこのスイーツビュッフェにお集まり頂きありがとうございます。今回は皆様からビュッフェの料金の半額を頂き、依頼主の女性からは残りの半額とコラボメニューの代金を頂いております。どうぞスイーツビュッフェを半額で楽しんでくださいませ」
「ありがとうございます! でも、それじゃ堀江先輩は儲からないんじゃ?」
「マナの弟君、その点は心配ありませんわ。依頼主が不要なグッズは全てわたくしが引き受け、それを転売すればいくらでも元は取れるという訳です。気兼ねなくお召し上がりなさいませ!!」
「やったー! 部員の皆、今日は皆でビュッフェを食べまくるぞ!!」
「「イエッサー!!」」
『スイーツビュッフェのコラボメニューが原因の食べ残し問題に対処するため近頃都内で広まっている食事代行サービスですが、新たな問題が発生しています。食事代行役として店舗を訪れる男子運動部員のグループが原価割れするほどにビュッフェを食べ尽くす事態が頻発しており、一部の店舗では男性集団客の入店を断る動きも発生しているとのことです』
「キィー! せっかく新しい商売を思いついたのに邪魔されるなんて許せませんわ!! ここは大学の女子レスリングサークルにでも話を持っていくしかありませんわね」
「は、ははは……」
街頭のテレビモニターで流れているニュースを見て商売の改善策を考えているゆき先輩に、私は先輩の何があっても諦めない姿勢にはある意味憧れるなあと思った。
(続く)
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