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第7章 現在(1)
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第7章 現在
忘年会は終了し、ゼミ生達はばらばらと店の前に出て、何を待つともなくそれぞれに喋っていた。そんな中、高志は誰に向けるでもなく「じゃあ」と言い、一人先に歩き出した。止める者は誰もいない。少しだけあかりに目を向けると、目が合った。一秒ほど視線を合わせてから前を向く。一緒に歩き出すところを見られない方が良いと思った。後から追いかけてくるだろう。
少し先の自販機の陰で壁に持たれていると、しばらくしてあかりが早足でやって来た。
「すみません、お待たせしました」
「いや」
この時間、ほとんどのカフェは閉まっているか既に満員であると思われたため、少し歩いたところにある公園で話すことにした。あかりが自販機で飲み物を買ってくれるというので、コーヒーを頼んだ。
公園でベンチに並んで座る。街灯のお陰で意外と明るい。人はいなかった。
「さっきは色々とおかしなことを言ってすみませんでした」
あかりが冷静な口調で話し出す。
「藤代くんは、就職決まったの割と早かったですよね」
「ああ」
「私は……結局、就活しませんでした。4月からはアルバイトです」
「……」
「やりたいことがあったので、そちらで頑張ることが私なりの就活なんだと思って、この一年はそうしてきました。でも、もしかしたら」
あかりの吐く息が白い。高志は無言で聞いていた。
「今考えると、同時進行で両方やるべきだったのかもしれません。もしかしたら逃げで自分の道を狭めてしまったのかとも思います。ただ、でもやっぱり、仮に就活したとしても、こんな中途半端な気持ちだったらもっと真剣に頑張っている他の人の方が採用されるでしょうし、結果は同じだったと思うようにしています」
「さあ……就活って運もあると思うけど」
自分は運が良かったと思っている高志はそう言った。
「そうですね。やっぱり、チャンスはあったかもですね」
あかりは頷きながら呟いた。
「私、小説を書きたかったんです」
その言葉で、高志は少しだけあかりの方を見た。
「子供の頃から本は好きだったんですけど、中学生の頃から見よう見まねで物語を書いていました。でもプロになろうとか思っていた訳ではないんですけど……大学に入って文芸サークルに入って、少しだけ、視野に入ってくるようになりました」
周りにそういう人達がいたので、とあかりは言う。
「それで……去年、ある賞に応募したんですけど、小さな賞を取ったんです」
「……へえ」
「もちろん、すぐにプロになれるとかそういうレベルの話では全くないんですけど、少しだけ出版社の方とお話しする機会をいただけました。これからも書いてみなさいと」
「すげえな」
あかりは顔を上げて高志を見ると、首を横に振った。
「私が書いているのはBL小説です」
「BL?」
「ボーイズラブの略です」
高志はその言葉自体を聞いたことはなかったが、大体の内容は推測がついた。そしてあかりがした質問の意味も。
「ああ……それで」
なるほどね、と高志は口の中で呟き、ベンチの背もたれに背中を預けた。
忘年会は終了し、ゼミ生達はばらばらと店の前に出て、何を待つともなくそれぞれに喋っていた。そんな中、高志は誰に向けるでもなく「じゃあ」と言い、一人先に歩き出した。止める者は誰もいない。少しだけあかりに目を向けると、目が合った。一秒ほど視線を合わせてから前を向く。一緒に歩き出すところを見られない方が良いと思った。後から追いかけてくるだろう。
少し先の自販機の陰で壁に持たれていると、しばらくしてあかりが早足でやって来た。
「すみません、お待たせしました」
「いや」
この時間、ほとんどのカフェは閉まっているか既に満員であると思われたため、少し歩いたところにある公園で話すことにした。あかりが自販機で飲み物を買ってくれるというので、コーヒーを頼んだ。
公園でベンチに並んで座る。街灯のお陰で意外と明るい。人はいなかった。
「さっきは色々とおかしなことを言ってすみませんでした」
あかりが冷静な口調で話し出す。
「藤代くんは、就職決まったの割と早かったですよね」
「ああ」
「私は……結局、就活しませんでした。4月からはアルバイトです」
「……」
「やりたいことがあったので、そちらで頑張ることが私なりの就活なんだと思って、この一年はそうしてきました。でも、もしかしたら」
あかりの吐く息が白い。高志は無言で聞いていた。
「今考えると、同時進行で両方やるべきだったのかもしれません。もしかしたら逃げで自分の道を狭めてしまったのかとも思います。ただ、でもやっぱり、仮に就活したとしても、こんな中途半端な気持ちだったらもっと真剣に頑張っている他の人の方が採用されるでしょうし、結果は同じだったと思うようにしています」
「さあ……就活って運もあると思うけど」
自分は運が良かったと思っている高志はそう言った。
「そうですね。やっぱり、チャンスはあったかもですね」
あかりは頷きながら呟いた。
「私、小説を書きたかったんです」
その言葉で、高志は少しだけあかりの方を見た。
「子供の頃から本は好きだったんですけど、中学生の頃から見よう見まねで物語を書いていました。でもプロになろうとか思っていた訳ではないんですけど……大学に入って文芸サークルに入って、少しだけ、視野に入ってくるようになりました」
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「それで……去年、ある賞に応募したんですけど、小さな賞を取ったんです」
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「もちろん、すぐにプロになれるとかそういうレベルの話では全くないんですけど、少しだけ出版社の方とお話しする機会をいただけました。これからも書いてみなさいと」
「すげえな」
あかりは顔を上げて高志を見ると、首を横に振った。
「私が書いているのはBL小説です」
「BL?」
「ボーイズラブの略です」
高志はその言葉自体を聞いたことはなかったが、大体の内容は推測がついた。そしてあかりがした質問の意味も。
「ああ……それで」
なるほどね、と高志は口の中で呟き、ベンチの背もたれに背中を預けた。
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