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第10章 12月-二人(5)*
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ゆっくりと時間をかけて茂に負担のないように充分に解してから、「いけそう?」と声を掛けると、茂は離れないまま頷く。
「お前は?」
「いけるよ」
「……勃ってる?」
「うん」
そう答えて、高志はそっと指を抜いた。体を起こした茂が、確かめるように高志の股間を軽く触ってくる。
「前と後ろ、どっちからがいい?」
そう聞くと、茂は「前からがいい」と言った。高志は頷き、茂が再びベッドに横たわるのを見ながら、自分も全て脱いで手早くゴムを付けた。
「……怖いか?」
茂の両膝を抱え上げて間に入る。下から見上げてくる茂がわずかに笑って首を振った。
挿入するために位置を合わせる。入口に先端が触れる。もう一度目を上げると、茂の表情からは笑みが消え、体の横で無意識にシーツを握りしめるのが見えた。それでも、高志の視線に気付くと「大丈夫」と言って無理やり笑顔を作る。高志は屈みこんで茂に柔らかく口付けた。
「俺につかまる?」
片手をついて真上から見下ろしながらそう言うと、今度は自然に表情を緩めた茂が「うん」と頷く。少しだけ身を屈めると、再び肩に温かい重みがかかる。この姿勢なら、茂は少し安心するように見えた。そんな健気さに、切ないような愛しさがこみ上げてくる。
「――」
ぐ、と下半身に力を入れる。茂の腕にも力がこもる。慎重に少し進めて、先端が入ったところでいったん止めると、茂が喘ぐように息を吐いた。
「痛い?」
「……大丈夫だって」
そう答えると、茂は体の力を抜いた。腕の力を緩め、浮いていた頭をベッドに降ろす。その様子を見て、高志は更に少し奥まで入れた。茂は目を閉じ、意識して呼吸を繰り返している。少しずつ、ほんの少しずつ、奥に進んでいく。茂の中に入っていく。茂がそれを許すのはただ一人、高志だけだ。
「……細谷」
思わず零れた呼び掛けに、茂が目を開けるが、その先に特に言葉はなく、ただお互いの目を見つめ合う。
そしてそのまま、全てを茂の中に収めた。高志の息も軽く上がっていた。茂の体が馴染むまでしばらく待ってから、徐々に動き始める。茂が苦痛ではない息を洩らす。
この男の体が高志を受け入れている、その奇跡にも思える幸福を高志はその肉体で味わった。高志を包み込む茂のそこは女のそれよりもずっと力強くて、ただその行為に没頭しながら高志は思うままに動いた。眉を寄せてじっと高志を見上げていた茂の口を塞ぐ。お互いに呼吸を弾ませながら、唇を吸い、舌を絡める。
茂が再び高志の首を引き寄せる。唇を気の向くままに合わせたり離したりしながら、細谷、と何度も名前を呼ぶ。上半身は密着したまま、下半身は動ける範囲でゆっくりと動いた。止まることはできなかった。
「……気持ちいい?」
高志の問い掛けに、茂が息を切らせながら頷く。
「イけそう?」
今度は首を振る。
高志が茂の股間に手を伸ばすと、茂は「いい」と言って自分の手でそこを握った。茂の意図を理解して、高志は体を起こし、緩めていた動きを再び速くした。茂が仰け反りながら受け止める。呼吸に混じって時折短い声を漏らす。
茂も快感を得ていることがこの行為の正しさを表しているように高志には思えた。茂が気持ちいいならそれでいい。高志を受け入れることでそうなれるのなら、自分が茂にそれを与えてやれるのなら、それ以上に必要なことなんてない。お互いに求めあって、一緒に快楽を交換しあって、一瞬でも一つになって、お互いの存在を確認しあって。
息を切らせながら腰を動かして、どんどんと高まる快感を味わいながら、自分の下で喘ぐ茂を高志はひたすら見つめていた。茂をもっと自分だけのものにしたくて何度も何度も腰を動かす。気持ち良さで頭がいっぱいになる。肌と肌がぶつかる音がする。もうイきたい、そう思った時に、茂が先に達したのが分かった。それを見て、高志も耐えるのをやめる。
「は……っ」
切なげに見上げてくる視線を受け止めながら、高志はやがて茂の中で果てた。
肉体的な快感と共に、大きな充足感が高志の中を満たしていた。中に入ったまま、茂に体重を預けてその首元に顔を埋める。肩に茂の手が触れる。しばらくそのまま荒い息を繰り返し、少し落ち着いた頃に体を離した。
自分の始末をしてから、高志は茂の体に付着したままのジェルや精液をティッシュで拭い取った。茂はぐったりと横たわったまま、高志にされるままになっている。「大丈夫か?」と声を掛けると、やんわりと目を細めて頷く。
そのまま目を閉じ、ほどなく眠りに落ちた茂の無防備な顔をしばらく眺めてから、高志はその体に布団を掛けた。
「お前は?」
「いけるよ」
「……勃ってる?」
「うん」
そう答えて、高志はそっと指を抜いた。体を起こした茂が、確かめるように高志の股間を軽く触ってくる。
「前と後ろ、どっちからがいい?」
そう聞くと、茂は「前からがいい」と言った。高志は頷き、茂が再びベッドに横たわるのを見ながら、自分も全て脱いで手早くゴムを付けた。
「……怖いか?」
茂の両膝を抱え上げて間に入る。下から見上げてくる茂がわずかに笑って首を振った。
挿入するために位置を合わせる。入口に先端が触れる。もう一度目を上げると、茂の表情からは笑みが消え、体の横で無意識にシーツを握りしめるのが見えた。それでも、高志の視線に気付くと「大丈夫」と言って無理やり笑顔を作る。高志は屈みこんで茂に柔らかく口付けた。
「俺につかまる?」
片手をついて真上から見下ろしながらそう言うと、今度は自然に表情を緩めた茂が「うん」と頷く。少しだけ身を屈めると、再び肩に温かい重みがかかる。この姿勢なら、茂は少し安心するように見えた。そんな健気さに、切ないような愛しさがこみ上げてくる。
「――」
ぐ、と下半身に力を入れる。茂の腕にも力がこもる。慎重に少し進めて、先端が入ったところでいったん止めると、茂が喘ぐように息を吐いた。
「痛い?」
「……大丈夫だって」
そう答えると、茂は体の力を抜いた。腕の力を緩め、浮いていた頭をベッドに降ろす。その様子を見て、高志は更に少し奥まで入れた。茂は目を閉じ、意識して呼吸を繰り返している。少しずつ、ほんの少しずつ、奥に進んでいく。茂の中に入っていく。茂がそれを許すのはただ一人、高志だけだ。
「……細谷」
思わず零れた呼び掛けに、茂が目を開けるが、その先に特に言葉はなく、ただお互いの目を見つめ合う。
そしてそのまま、全てを茂の中に収めた。高志の息も軽く上がっていた。茂の体が馴染むまでしばらく待ってから、徐々に動き始める。茂が苦痛ではない息を洩らす。
この男の体が高志を受け入れている、その奇跡にも思える幸福を高志はその肉体で味わった。高志を包み込む茂のそこは女のそれよりもずっと力強くて、ただその行為に没頭しながら高志は思うままに動いた。眉を寄せてじっと高志を見上げていた茂の口を塞ぐ。お互いに呼吸を弾ませながら、唇を吸い、舌を絡める。
茂が再び高志の首を引き寄せる。唇を気の向くままに合わせたり離したりしながら、細谷、と何度も名前を呼ぶ。上半身は密着したまま、下半身は動ける範囲でゆっくりと動いた。止まることはできなかった。
「……気持ちいい?」
高志の問い掛けに、茂が息を切らせながら頷く。
「イけそう?」
今度は首を振る。
高志が茂の股間に手を伸ばすと、茂は「いい」と言って自分の手でそこを握った。茂の意図を理解して、高志は体を起こし、緩めていた動きを再び速くした。茂が仰け反りながら受け止める。呼吸に混じって時折短い声を漏らす。
茂も快感を得ていることがこの行為の正しさを表しているように高志には思えた。茂が気持ちいいならそれでいい。高志を受け入れることでそうなれるのなら、自分が茂にそれを与えてやれるのなら、それ以上に必要なことなんてない。お互いに求めあって、一緒に快楽を交換しあって、一瞬でも一つになって、お互いの存在を確認しあって。
息を切らせながら腰を動かして、どんどんと高まる快感を味わいながら、自分の下で喘ぐ茂を高志はひたすら見つめていた。茂をもっと自分だけのものにしたくて何度も何度も腰を動かす。気持ち良さで頭がいっぱいになる。肌と肌がぶつかる音がする。もうイきたい、そう思った時に、茂が先に達したのが分かった。それを見て、高志も耐えるのをやめる。
「は……っ」
切なげに見上げてくる視線を受け止めながら、高志はやがて茂の中で果てた。
肉体的な快感と共に、大きな充足感が高志の中を満たしていた。中に入ったまま、茂に体重を預けてその首元に顔を埋める。肩に茂の手が触れる。しばらくそのまま荒い息を繰り返し、少し落ち着いた頃に体を離した。
自分の始末をしてから、高志は茂の体に付着したままのジェルや精液をティッシュで拭い取った。茂はぐったりと横たわったまま、高志にされるままになっている。「大丈夫か?」と声を掛けると、やんわりと目を細めて頷く。
そのまま目を閉じ、ほどなく眠りに落ちた茂の無防備な顔をしばらく眺めてから、高志はその体に布団を掛けた。
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