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第21章 圭一の部屋5
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「……圭一」
確かめるために静かに呼び掛けてみたが、返答はない。
圭一を起こさないようにそっとその腕から抜け出し、旭はそのままベッドから降りた。圭一は旭を抱き締めていた姿勢のまま規則的な寝息を立てている。旭はその裸の体にタオルケットを掛けた。
それからもう一度バスルームを借りて、下半身をきれいに洗う。
部屋に戻って電気をつけてみたが、圭一が起きる気配はなかった。その寝顔を見ながら服を着る。圭一の制服は拾い上げて椅子の背に掛けておいた。
――きっと圭一は、ここ数日の睡眠不足を解消できるくらい眠るだろう。
それでも旭の中に不安はなかった。もう圭一が旭とのことを忘れることはないだろうと思えた。仮にまた忘れられてしまったとしても、きっと自分達は大丈夫だ。圭一があのノートを見て半信半疑のまま旭に告白する。旭は全てを圭一に伝える。そうやって、何度でも乗り越えていける気がする。
部屋を出ようとした時、旭は戸締りのために圭一の鍵を借りていくことにした。施錠してからポストに入れておけばいい。
何かメモを残そうと筆記用具を取り出した旭は、ふと思い出し、圭一の枕の下からそっとノートを引っ張り出した。
そこには、新たに数行の文章が書き足されていた。
・旭とモーニングを食べた、旭も初めてらしい、好きみたい
・来年の花火大会に誘うこと
→旭は来年になっても俺と付き合ってるって言ってくれた
・USJに誘うこと
・T町のバス停の向かいのカツ丼屋に行ってみたいらしい、今度誘うこと
・旭もこのノートの存在は知ってる(内容がはずかしいらしい)
――昨日、あれから書き足したのだろうか。
旭が言ったちょっとした言葉を、万が一忘れてしまった時のために。
「――」
旭は自分のペンを取り出し、床の上にノートを広げて余白に書き足した。
それから、ページの開いた状態のまま、圭一の枕元にそっと置いておく。そして鞄を持って立ち上がり、電気を消して静かに廊下に出た。靴を履き、なるべく音をたてないように玄関扉を開閉する。
外に出ると、目に射す陽光はいつかを思い出させた。あの日と同じように、旭は階段ではなくエレベーターで一階まで下りた。降りてすぐのところにある集合ポストのうち圭一の部屋番号の書かれている投函口に圭一の鍵を入れる。
――今から家に帰ったら、授業さぼったってばれるな。
何故か少し楽しくなりながら、旭は考える。
でもまた学校に戻るのもな。ちょっとめんどくさい。
まあいいか、どこかその辺で時間をつぶそう。確かこの先の公園にベンチがあった。腹が減ったから、とりあえずそこで弁当を食べよう。天気がいいから、きっと気持ちいい。
自動扉から外に出て、マンションの外階段を降りる。さっきまでいた薄暗い部屋を思い出せば、外は驚くほど明るい。あの部屋で、圭一は今頃ぐっすりと眠っているだろう。
旭は顔いっぱいに太陽の光を浴びながらひとつ深呼吸し、目的地に向かって歩き出した。
確かめるために静かに呼び掛けてみたが、返答はない。
圭一を起こさないようにそっとその腕から抜け出し、旭はそのままベッドから降りた。圭一は旭を抱き締めていた姿勢のまま規則的な寝息を立てている。旭はその裸の体にタオルケットを掛けた。
それからもう一度バスルームを借りて、下半身をきれいに洗う。
部屋に戻って電気をつけてみたが、圭一が起きる気配はなかった。その寝顔を見ながら服を着る。圭一の制服は拾い上げて椅子の背に掛けておいた。
――きっと圭一は、ここ数日の睡眠不足を解消できるくらい眠るだろう。
それでも旭の中に不安はなかった。もう圭一が旭とのことを忘れることはないだろうと思えた。仮にまた忘れられてしまったとしても、きっと自分達は大丈夫だ。圭一があのノートを見て半信半疑のまま旭に告白する。旭は全てを圭一に伝える。そうやって、何度でも乗り越えていける気がする。
部屋を出ようとした時、旭は戸締りのために圭一の鍵を借りていくことにした。施錠してからポストに入れておけばいい。
何かメモを残そうと筆記用具を取り出した旭は、ふと思い出し、圭一の枕の下からそっとノートを引っ張り出した。
そこには、新たに数行の文章が書き足されていた。
・旭とモーニングを食べた、旭も初めてらしい、好きみたい
・来年の花火大会に誘うこと
→旭は来年になっても俺と付き合ってるって言ってくれた
・USJに誘うこと
・T町のバス停の向かいのカツ丼屋に行ってみたいらしい、今度誘うこと
・旭もこのノートの存在は知ってる(内容がはずかしいらしい)
――昨日、あれから書き足したのだろうか。
旭が言ったちょっとした言葉を、万が一忘れてしまった時のために。
「――」
旭は自分のペンを取り出し、床の上にノートを広げて余白に書き足した。
それから、ページの開いた状態のまま、圭一の枕元にそっと置いておく。そして鞄を持って立ち上がり、電気を消して静かに廊下に出た。靴を履き、なるべく音をたてないように玄関扉を開閉する。
外に出ると、目に射す陽光はいつかを思い出させた。あの日と同じように、旭は階段ではなくエレベーターで一階まで下りた。降りてすぐのところにある集合ポストのうち圭一の部屋番号の書かれている投函口に圭一の鍵を入れる。
――今から家に帰ったら、授業さぼったってばれるな。
何故か少し楽しくなりながら、旭は考える。
でもまた学校に戻るのもな。ちょっとめんどくさい。
まあいいか、どこかその辺で時間をつぶそう。確かこの先の公園にベンチがあった。腹が減ったから、とりあえずそこで弁当を食べよう。天気がいいから、きっと気持ちいい。
自動扉から外に出て、マンションの外階段を降りる。さっきまでいた薄暗い部屋を思い出せば、外は驚くほど明るい。あの部屋で、圭一は今頃ぐっすりと眠っているだろう。
旭は顔いっぱいに太陽の光を浴びながらひとつ深呼吸し、目的地に向かって歩き出した。
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