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第17章 ドライヤー

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 再び柏崎のスマホが震える。画面を見た柏崎は、鞄を持って立ち上がった。
「来たみたい」
「ああ」
 玄関に向かう柏崎の後に続き、旭と圭一も廊下を進む。靴を履いた柏崎が振り返った。
「じゃあ、悪いけど」
「おう」
「先輩によろしく」
 会ったこともないのについそう言った旭に、柏崎は「分かった」と返し、軽く手を上げてから出ていった。

 扉が閉じるまで見送った後、圭一が手を伸ばして鍵を閉める。振り返ったその顔は、さっきの話を忘れたように明るく微笑んでいた。
「どうする? もう一回ゲームする?」
「……」
「ん? 嫌?」
「あんまり……今日はもういいかな」
「ふうん。そっか」
 リビングに戻ると、さっきまで気にならなかったテーブルの上の散らかりが目についた。いったん二人で片付けてから、どちらからともなくもう一度ソファや床に座る。
「柏崎くんとこ、仲いいな」
 何となく、思っていたことが口に出た。
「ああ。彼氏と?」
「うん。迎えに来てくれるなんて優しいよな」
「まあな。今日はちょっと邪魔されたけどなあ」
「でも、柏崎くんもこの面子だとちょっとやりにくいかも」
 さっきまでプレイしていたゲームを取り出しながら、「そうだけど」と圭一が呟く。
「でもお前はがっかりだろ」
「まあ……え、何で?」
「だってお前、柏崎のこと好きじゃん」
「そりゃ好きだけど。何でお前いっつもそれ言うの?」
「え? いっつも言ってる?」
 聞き返されて、言われたのは付き合ってた時だっただろうか、と少し考えた。何回か言われたような気がするけど、圭一が覚えていない時期かもしれない。
「まあ、たまに言ってる」
 圭一は取り出したソフトをケースに入れて閉じた。ぱちん、と音がする。
「もし柏崎がいなかったらさ、お前、俺と付き合おうと思ってなかったかもだろ」
「んー……どうかな」
「ていうか俺も、お前のこと好きだって自覚してなかったかも」
「あ、そうなんだ?」
「うん。お前に彼女できて、最初はただ友達を取られたみたいな気がしてた」
「ああ……」
「でも柏崎と同じクラスになって、それで初めてあいつの噂聞いてさ。俺もそうなのかもって思って」
「それで話し掛けた?」
「うん」
 圭一はテレビの下にゲームソフトをしまった。それから旭の方を振り向く。
「彼女と別れてたって聞いて、しかもお前、柏崎となら付き合うかもとか言うから……それから、ずっと告白してしまおうか悩んでた」
「俺が男だってことは気にならなかった?」
「そりゃなったよ。ついこの前まで女と付き合ってたってことは、普通は男なんか相手にしないだろうし」
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