1 / 1
世界は拍手する、グレーゾーンの犯罪者たちに
しおりを挟む
このままでは自分はいつか死ぬと思った、そう思うと体から力が抜けていくようだ。
逃げ出したいと思っても、ここがどこなのかわからない。
それに逃げたとしても家に帰ることもできない、頼れる人間もいないのだ。
親戚は無理だ、それに友人と呼べる人間は金で繋がっていたようなものだ。
一文無しの自分だと厄介払いされるのは目に見えている。
過去に犯した罪で自分は犯罪者となった今、両親から見放された、新しい国の法律など知らなかった。
少し前に右の肺を取られた、事故で怪我をした青年に移植されたらしい。
肺は一つでも生きられるのだろうか、不安になってしまった自分に人工肺を移植するので心配いりませんと言われて驚いた。
「最近、開発された新しいタイプの臓器ですが、よかったです」
良かった、何がだと思ってしまう、すると試験体、成人男性がいなくて困っていたんですよ、続く言葉に自分はモルモットかと叫んでしまった。
すると医者は首を振った、とんでもないと、そして言葉をつづけた、昨今では動物実験というものは減っているのだという。
臓器や薬品実験の場合、ある程度の成果がでたとしても意味がない、確実な答えが出なければ意味がないというのだ。
マウスやモルモット、犬や猫、大きな個体となれば牛なども実験に使われてきた。
だが人間ではない限り、はつきりとした答えは出てこない。
大丈夫かもしれない、可能性があるという曖昧な答えでは納得できないのだという。
「最近では動物愛護団体の反対意見も厳しくなっていますからね」
まるで、自分は動物以下だと言われているような気がした。
自分は、このままベッドの上で一生を過ごしていくことになるのだろうか。
そんなことを考えていた、ある日のこと、部屋を移動するということを知らされて驚いた。
そこには自分と同じ、いや、年上の男もいた、だが、部屋の出入りを自由にしているし、体の臓器を移植された様子もない、どういうことだろう、不思議に思った。
気になって、どんな犯罪を犯したのかと聞いてみた。
「薬物だよ、ドラッグに手を出したんだ」
「売人をやっていた」
「スリ、強盗まがいのこともやった」
中には海外で犯罪を犯した者もいた。
皆、自慢するように自分の犯した罪を告白するのだ、その様子を見て疑問を抱く、彼らは、ここがどんな場所か知らないのだろうかと思ってしまった。
「あんた、こうしてみるとまともに見えるけど」
一人の青年が不思議そうに尋ねた。
どういうことかと聞くと、薬のせいでおかしなことをいう病人が同室だが、気にしないでとほしいといわれたらしい。
その言葉に笑いたくなった、本気で、そんな言葉を信じているのだろうか。
どうせ、彼らもいずれは自分と同じような目に遭うのだ、そう思っていると、一人の男が声をかけた。
「そんな体じゃ、女ともできないだろう」
すぐには返事ができなかった、今、この男は何を言った、頭がおかしいのか。
「昨日の女は良かったな」
意味が分からなかった。
同室の男達は部屋を出て、数時間、遅いときには一晩中、戻ってこないときもある。
それは女性とセックス、行為をするためだという。
不妊薬の為の実験の為だという、しかも女達は美人で中には有名人もいるらしい。
「おい、それ以上は」
「構わねえだろ、ここから出られないんだ」
男の笑みに男は過去の自分を思いだした。
自分が相手をした女達は若いくて未成年もいた。
それも、ただの性行為ではない、薬を使ったのだ、そのせいで危なく死にかけた女もいた。
あのときは、正直、怖くなり、慌てて父親に電話したのだ。
「おい、あんただって、そのうちできるぜ、とびきりいい女とな」
その言葉にあり得ないだろうと思って、言葉が出てこなかった。
未来がないと悲観していた、これから、どうなってしまうのだろうと思っていたのに男達が女とやっていると聞いて羨ましいと思ったのだ。
死にたいと思っていたのに。
どうせ、ここから出ることはできない、それなら少しでも楽な道を選びたいと思ってしまった。
「移植後の拒否反応もない、歩行訓練を始めてもいいでしょう」
男は、ぽつりと呟いた。
「俺もセックスしたいっていったら、笑うか」
医者は首を振った、あなたはまだ若い、当然ですよ、彼らに刺激を受けたのですね、いいことです、その言葉に男はほっとした。
笑われる、いや、馬鹿にされると思ったのかもしれない。
「有名人とやったって言ってたけど、嘘だろう、そんなことは」
「口の軽い人がいたものだ」
「いいのか、そんなことを」
「あなたは好みのタイプは、この間の移植手術で相手はとても感謝していました」
配慮しますよと言われて男は言葉を飲み込んだ。
すぐには返事ができなかった。
医者は言葉を続ける、有名人、特殊業についている成功者はストレスが一般人とは比べものにはならなですからねという答えが返ってきた。
「だからこその救済システムなんですよ、救うのは犯罪者だけではないんです」
二週間が過ぎた、男はベッドから起きあがれるようになっていた。
それと同時に部屋を変わることになった。
その日、夕食がすむと医者からっくすが死体ですかと聞かれた。
返事の代わりに心臓がどくんと跳ねる。
できるのかと男は尋ねた。
勿論ですという一言、まるで何でもないことのように平然と答える医者に
案内された部屋には大きな椅子と機械がある。
何だ、これは女はどこだと思い、尋ねようとしたとき腕にかすかな痛みが走った。
椅子に座り、腕と足を個体された男の頭にはヘルメットがつけられた。
しばらくすると男の口から歓喜の声が聞こえてきた。
「うまくいっているようだな」
「性能、よくなっていますからね」
「以前の男達はどうだ」
「新型の奴に切り替えました」
最近のドラッグ、麻薬は効能や性質が変わってきた、中毒状態になっても、ある薬を服用すると精神と体調のバランスが平常になる。
犯罪者の男達に薬を投与した後、仮想の映像世界を見せる、そこで生身の女性と出会うのだ。
女性とのセックスしたという疑似体験は薬と現在のコンピューターの進化のせいで現実だと彼らは思っているのだ、仮想と現実の境目がなくなる。
以前から注目されていた、この実験は医療とコンピューターだけではない、大きな規模で様々な分野から注目されていた。
だが、実験を始めるにあたり、問題があった。
システムに関わる人間は国から選ばれた人間、エリートだ、実験の予算は莫大で無駄は勿論、失敗も許されない、大きなプロジェクトだ。
結果を出すための動物実験を中には否定する人間もいる、体の大きさ、知能が違う生き物を実験体として確実とはいえない。
だから人間を使う、昨今になり問題になってきたのがグレーゾーンの犯罪だ。
それも若者の犯罪者の数が右肩上がりなのは未成年、捕まっても重い罪にはならないという認識があるからだ。
更正してまともになったと思えても再犯率が高いのは頭が痛い、悩みどころだ。
恐喝、カツアゲ、最初に犯す事件は注意、叱責ですむものが多い、だが、スリルを味わいたいと思っているのか残酷な、殺人まで犯すようになった事例が増えてきた。
人工臓器、コンピューターの進歩に伴う仮想世界の進歩、様々な分野の進歩の発展の為に実験は必要だ、だが、その為には犠牲も必要だ。
今、女性の犯罪者に子供を産ませる試みも行われている、日本だけではない、世界には難病の胎児がいる、必要なのは臓器だ、それも胎児、子供の。
世界が手を叩き、称賛する未来は、そこまで迫っていた。
逃げ出したいと思っても、ここがどこなのかわからない。
それに逃げたとしても家に帰ることもできない、頼れる人間もいないのだ。
親戚は無理だ、それに友人と呼べる人間は金で繋がっていたようなものだ。
一文無しの自分だと厄介払いされるのは目に見えている。
過去に犯した罪で自分は犯罪者となった今、両親から見放された、新しい国の法律など知らなかった。
少し前に右の肺を取られた、事故で怪我をした青年に移植されたらしい。
肺は一つでも生きられるのだろうか、不安になってしまった自分に人工肺を移植するので心配いりませんと言われて驚いた。
「最近、開発された新しいタイプの臓器ですが、よかったです」
良かった、何がだと思ってしまう、すると試験体、成人男性がいなくて困っていたんですよ、続く言葉に自分はモルモットかと叫んでしまった。
すると医者は首を振った、とんでもないと、そして言葉をつづけた、昨今では動物実験というものは減っているのだという。
臓器や薬品実験の場合、ある程度の成果がでたとしても意味がない、確実な答えが出なければ意味がないというのだ。
マウスやモルモット、犬や猫、大きな個体となれば牛なども実験に使われてきた。
だが人間ではない限り、はつきりとした答えは出てこない。
大丈夫かもしれない、可能性があるという曖昧な答えでは納得できないのだという。
「最近では動物愛護団体の反対意見も厳しくなっていますからね」
まるで、自分は動物以下だと言われているような気がした。
自分は、このままベッドの上で一生を過ごしていくことになるのだろうか。
そんなことを考えていた、ある日のこと、部屋を移動するということを知らされて驚いた。
そこには自分と同じ、いや、年上の男もいた、だが、部屋の出入りを自由にしているし、体の臓器を移植された様子もない、どういうことだろう、不思議に思った。
気になって、どんな犯罪を犯したのかと聞いてみた。
「薬物だよ、ドラッグに手を出したんだ」
「売人をやっていた」
「スリ、強盗まがいのこともやった」
中には海外で犯罪を犯した者もいた。
皆、自慢するように自分の犯した罪を告白するのだ、その様子を見て疑問を抱く、彼らは、ここがどんな場所か知らないのだろうかと思ってしまった。
「あんた、こうしてみるとまともに見えるけど」
一人の青年が不思議そうに尋ねた。
どういうことかと聞くと、薬のせいでおかしなことをいう病人が同室だが、気にしないでとほしいといわれたらしい。
その言葉に笑いたくなった、本気で、そんな言葉を信じているのだろうか。
どうせ、彼らもいずれは自分と同じような目に遭うのだ、そう思っていると、一人の男が声をかけた。
「そんな体じゃ、女ともできないだろう」
すぐには返事ができなかった、今、この男は何を言った、頭がおかしいのか。
「昨日の女は良かったな」
意味が分からなかった。
同室の男達は部屋を出て、数時間、遅いときには一晩中、戻ってこないときもある。
それは女性とセックス、行為をするためだという。
不妊薬の為の実験の為だという、しかも女達は美人で中には有名人もいるらしい。
「おい、それ以上は」
「構わねえだろ、ここから出られないんだ」
男の笑みに男は過去の自分を思いだした。
自分が相手をした女達は若いくて未成年もいた。
それも、ただの性行為ではない、薬を使ったのだ、そのせいで危なく死にかけた女もいた。
あのときは、正直、怖くなり、慌てて父親に電話したのだ。
「おい、あんただって、そのうちできるぜ、とびきりいい女とな」
その言葉にあり得ないだろうと思って、言葉が出てこなかった。
未来がないと悲観していた、これから、どうなってしまうのだろうと思っていたのに男達が女とやっていると聞いて羨ましいと思ったのだ。
死にたいと思っていたのに。
どうせ、ここから出ることはできない、それなら少しでも楽な道を選びたいと思ってしまった。
「移植後の拒否反応もない、歩行訓練を始めてもいいでしょう」
男は、ぽつりと呟いた。
「俺もセックスしたいっていったら、笑うか」
医者は首を振った、あなたはまだ若い、当然ですよ、彼らに刺激を受けたのですね、いいことです、その言葉に男はほっとした。
笑われる、いや、馬鹿にされると思ったのかもしれない。
「有名人とやったって言ってたけど、嘘だろう、そんなことは」
「口の軽い人がいたものだ」
「いいのか、そんなことを」
「あなたは好みのタイプは、この間の移植手術で相手はとても感謝していました」
配慮しますよと言われて男は言葉を飲み込んだ。
すぐには返事ができなかった。
医者は言葉を続ける、有名人、特殊業についている成功者はストレスが一般人とは比べものにはならなですからねという答えが返ってきた。
「だからこその救済システムなんですよ、救うのは犯罪者だけではないんです」
二週間が過ぎた、男はベッドから起きあがれるようになっていた。
それと同時に部屋を変わることになった。
その日、夕食がすむと医者からっくすが死体ですかと聞かれた。
返事の代わりに心臓がどくんと跳ねる。
できるのかと男は尋ねた。
勿論ですという一言、まるで何でもないことのように平然と答える医者に
案内された部屋には大きな椅子と機械がある。
何だ、これは女はどこだと思い、尋ねようとしたとき腕にかすかな痛みが走った。
椅子に座り、腕と足を個体された男の頭にはヘルメットがつけられた。
しばらくすると男の口から歓喜の声が聞こえてきた。
「うまくいっているようだな」
「性能、よくなっていますからね」
「以前の男達はどうだ」
「新型の奴に切り替えました」
最近のドラッグ、麻薬は効能や性質が変わってきた、中毒状態になっても、ある薬を服用すると精神と体調のバランスが平常になる。
犯罪者の男達に薬を投与した後、仮想の映像世界を見せる、そこで生身の女性と出会うのだ。
女性とのセックスしたという疑似体験は薬と現在のコンピューターの進化のせいで現実だと彼らは思っているのだ、仮想と現実の境目がなくなる。
以前から注目されていた、この実験は医療とコンピューターだけではない、大きな規模で様々な分野から注目されていた。
だが、実験を始めるにあたり、問題があった。
システムに関わる人間は国から選ばれた人間、エリートだ、実験の予算は莫大で無駄は勿論、失敗も許されない、大きなプロジェクトだ。
結果を出すための動物実験を中には否定する人間もいる、体の大きさ、知能が違う生き物を実験体として確実とはいえない。
だから人間を使う、昨今になり問題になってきたのがグレーゾーンの犯罪だ。
それも若者の犯罪者の数が右肩上がりなのは未成年、捕まっても重い罪にはならないという認識があるからだ。
更正してまともになったと思えても再犯率が高いのは頭が痛い、悩みどころだ。
恐喝、カツアゲ、最初に犯す事件は注意、叱責ですむものが多い、だが、スリルを味わいたいと思っているのか残酷な、殺人まで犯すようになった事例が増えてきた。
人工臓器、コンピューターの進歩に伴う仮想世界の進歩、様々な分野の進歩の発展の為に実験は必要だ、だが、その為には犠牲も必要だ。
今、女性の犯罪者に子供を産ませる試みも行われている、日本だけではない、世界には難病の胎児がいる、必要なのは臓器だ、それも胎児、子供の。
世界が手を叩き、称賛する未来は、そこまで迫っていた。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたと生きた証
よつば 綴
現代文学
余命宣告をされた夫に言った我儘。
1人残されても、寂しくないようにと······。
匿名での感想やメッセージなどはコチラへ💌
https://ofuse.me/e/32936
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

the world of 便器
相間 暖人
現代文学
君達も気を付けて欲しい。
わからない事に興味を持ち調べたくなるという知的好奇心は人類のこれまでの発展においてとても重要な事だと私は思う。
しかしだ、UFOや心霊のように己の好奇心を満たそうと深入りするばかりに良くない事に巻き込まれるなどもよく聞く話だ。
そんなの自分には関係ないと油断している君達に警告しておこう。
やつは虎視眈々とその時を伺っていると。
対極美
内海 裕心
現代文学
同じ、世界、地球の中でも、これほどまでに国によって、情勢、環境、文化は様々であり、平和で人々が日々幸せに生きている国もあれば、戦争して、人々が日々脅えている国もある。
同じ地球に生きていて、同じ人間でも、やはり環境が違えば、違う生き物なのだろうか。
このような疑問に対し、
対極な世界に生きる少女2人の話を、比べながら、その2人の共通点、類似点を紐解き、その答えを追求するストーリー。
MPを補給できる短編小説カフェ 文学少女御用達
健野屋文乃(たけのやふみの)
現代文学
迷宮の図書館 空色の短編集です♪
最大5億MP(マジックポイント)お得な短編小説です!
きっと・・・
MP(マジックポイント)足りてますか?
MPが補給できる短編小説揃えています(⁎˃ᴗ˂⁎)
一寸先は闇
北瓜 彪
現代文学
奇想天外、シュルレアリスム絵画のような非合理な美しさ、異質なホラー……
様々な味わいが楽しめる短編をご提供していければと思っております。どうぞお気軽にお立ち寄り下さい。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる