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が幸せになれる、そう言ったのは友人だった
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「お、義父さん、今、電話が」
警察からなんですと、その声も表情もただ事ではない様子に正幸は落ち着いてと呼びかけた。
とうとう、その時がきた、落ち着けと自分に言い聞かせながら、自分が電話に出るからと声をかける。
役者のように振る舞い、欺かなければならないのだ。
「夜の外出ということですが、目を付けられたんですな」
淡々とした説明に正幸は頷くことしかできない、隣で聞いている彼女のことが気になり、時折、視線を送り、様子を見る。
警官に本当に息子なんですかと訊ねた。
「相手が売春婦ということもあって油断したんでしょうね、すぐには身元がばれないように顔を滅茶苦茶にされていますが、血液型、体格、付近の目撃者の証言者から、間違いなく」
遺体を向こうの警察が詳しく調べたいと申し出ていること、その為に遺体を日本へ運ぶのはすぐには無理だという。
「実は、向こうの医療班が遺体を引き取りたいと申し出ているんです、色々と調べたいようなんですがね」
返事を待つ様子に何か理由があるんですかと訊ねると、刑事はちらりと正幸の隣を見て、わずかに声を低くした、正幸は顔をしかめた。
「あちらが詳しく調べたいと申し出ていましてね、正直、こちらとしても断りづらいのです」
「そうですか、でしたら、お手数をおかけすることになるでしょうが」
刑事は、このとき初めて、ほっとした表情になった。
出張先で気が緩んだんでしょう、羽目を外して夜の繁華街に繰り出して不幸な出来事に、日本人だと金を持っていることもあるが、騙されやすいので狙われることも多いという説明に彼女はそうですかと頷いた。
納得しているのか、信じたくないのかどちらにしても顔色はよくない。
マンションに戻ると何か食べたほうがいいだろうと正幸台所に立ち、食事の用意を始めた、時間をかけるだけの余裕はなく、簡単なものだ。
焼きそばにインスタントの卵スープ、切って皿に盛っただけの簡単なサラダで夕食の支度をした。
食後はコーヒーではなく、ココアにしたのは甘い飲み物のほうが落ち着くだろうと思ったからだ。
先に口を開いたのは正幸のほうだ、息子の孝史は浮気をしていたんだ、自分の言葉を信じるだろうかと悩みながらも告白した。
これはオザキから絶対に告げたほうがいいと言われたことだ。
最初は迷った、だが、死亡事実の隠蔽、会社での後々の為にと言われて確かにと思ってしまったのだ。
「本当に、そう、ですか」
まるで、自分を納得させるように頷く彼女に戸惑ったのも無理はない。
「お義父さんとの同居が始まってから、会社の泊まりが増える事もあって」
少しずつ小さくなっていく声に、無言のまま頷いたのは、かける言葉がうまく見つからなかったからだ。
「もう、休みなさい、明日か、いや、これから色々とあるだろうが、できることはわたしがやる、不出来な息子ですまない」
目を覚ました、良かった、もう安心だ。
気がついたぞ、大丈夫だ。
聞こえてくる複数の声に男は自分がベッドに寝かされていることに気づいて驚いた。
仕事が終わり、もうすぐ日本に帰るということになり最後の夜だからと恋人と少し洒落た店で飲んで、ホテルに帰ったのだ。
それが何故と思ってしまう。
起き上がろうとしたが、体が何故か動かない。
「大変な目に遭いましたね、でも手術は成功しました」
奥様をお呼びしますねという言葉に、日本から来てくれたのかと驚いた孝史だが入って来た女の顔を見て、言葉を失った。
化粧、服装のせいかもしれない、だが、女は自分の妻ではなかった。
「孝史さん、よかったわ、元通りになって」
ベッドのそばまで来た女は笑う。
本当によかったわと、耳元に口を寄せて女は言った。
人○○しと、それは憎いという感情が、はっきりと伝わる声だ。
そのライバル社というのが、表向きはともかく、陰では公にできない方法で、それで経営上、うまくいかなくなったんです。
父親の会社の事後処理、財産管理を任されたという男性の話を聞いていた女は信じられなかった。
「父は騙されたという事ですか」
「途相手が悪すぎたんですよ、途中で気づいたとしても会社存続は無理でしょう、あなたの個人財産を差し押さえしたのは社員たちへ配当金といえばいいでしょうが」
「そんな、口座は、あたしのもので個人財産なのに」
「会社の不祥事ということですが、それは表向きです、一切の保証もなければ恨まれるのは娘のあなたですよ」
その言葉に馬鹿馬鹿しい、それこそ逆恨みだわと女は笑いとばした。
「社員の中には外国人もいます、日本で暮らす為なら犯罪者になっても
構わないと考えるしょう、あなたの安全を保障するものと思っていただけませんか」
その言葉に、女は初めて不安げな表情を見せた。
「安全ですか、それって」
「社長が亡くなったんですよ、ところで、取引先の相手会社の社員ですが」
名前を聞かされた女は言葉を飲み込んだ。
「知り合いですか」
言える筈がなかった、新しい恋人だと、まさか、父親が死んだのは、その男が、など話せなかった。
それは自分の顔ではなかった。
男は鏡を見ながら何故と疑問に思い医者に尋ねた、すると、友人が持参した写真を元にと言われて驚いた。
「友人ですか」
その日、病室を訪れた友人と名乗る男性の顔を見て驚いた、どういうことなんだと声が荒くなったのも無理はない。
「大学時代の思い出さないか」
最初の言葉が、それだった。
「京介、一体」
「これで皆が幸せになれる、を、覗いては」
警察からなんですと、その声も表情もただ事ではない様子に正幸は落ち着いてと呼びかけた。
とうとう、その時がきた、落ち着けと自分に言い聞かせながら、自分が電話に出るからと声をかける。
役者のように振る舞い、欺かなければならないのだ。
「夜の外出ということですが、目を付けられたんですな」
淡々とした説明に正幸は頷くことしかできない、隣で聞いている彼女のことが気になり、時折、視線を送り、様子を見る。
警官に本当に息子なんですかと訊ねた。
「相手が売春婦ということもあって油断したんでしょうね、すぐには身元がばれないように顔を滅茶苦茶にされていますが、血液型、体格、付近の目撃者の証言者から、間違いなく」
遺体を向こうの警察が詳しく調べたいと申し出ていること、その為に遺体を日本へ運ぶのはすぐには無理だという。
「実は、向こうの医療班が遺体を引き取りたいと申し出ているんです、色々と調べたいようなんですがね」
返事を待つ様子に何か理由があるんですかと訊ねると、刑事はちらりと正幸の隣を見て、わずかに声を低くした、正幸は顔をしかめた。
「あちらが詳しく調べたいと申し出ていましてね、正直、こちらとしても断りづらいのです」
「そうですか、でしたら、お手数をおかけすることになるでしょうが」
刑事は、このとき初めて、ほっとした表情になった。
出張先で気が緩んだんでしょう、羽目を外して夜の繁華街に繰り出して不幸な出来事に、日本人だと金を持っていることもあるが、騙されやすいので狙われることも多いという説明に彼女はそうですかと頷いた。
納得しているのか、信じたくないのかどちらにしても顔色はよくない。
マンションに戻ると何か食べたほうがいいだろうと正幸台所に立ち、食事の用意を始めた、時間をかけるだけの余裕はなく、簡単なものだ。
焼きそばにインスタントの卵スープ、切って皿に盛っただけの簡単なサラダで夕食の支度をした。
食後はコーヒーではなく、ココアにしたのは甘い飲み物のほうが落ち着くだろうと思ったからだ。
先に口を開いたのは正幸のほうだ、息子の孝史は浮気をしていたんだ、自分の言葉を信じるだろうかと悩みながらも告白した。
これはオザキから絶対に告げたほうがいいと言われたことだ。
最初は迷った、だが、死亡事実の隠蔽、会社での後々の為にと言われて確かにと思ってしまったのだ。
「本当に、そう、ですか」
まるで、自分を納得させるように頷く彼女に戸惑ったのも無理はない。
「お義父さんとの同居が始まってから、会社の泊まりが増える事もあって」
少しずつ小さくなっていく声に、無言のまま頷いたのは、かける言葉がうまく見つからなかったからだ。
「もう、休みなさい、明日か、いや、これから色々とあるだろうが、できることはわたしがやる、不出来な息子ですまない」
目を覚ました、良かった、もう安心だ。
気がついたぞ、大丈夫だ。
聞こえてくる複数の声に男は自分がベッドに寝かされていることに気づいて驚いた。
仕事が終わり、もうすぐ日本に帰るということになり最後の夜だからと恋人と少し洒落た店で飲んで、ホテルに帰ったのだ。
それが何故と思ってしまう。
起き上がろうとしたが、体が何故か動かない。
「大変な目に遭いましたね、でも手術は成功しました」
奥様をお呼びしますねという言葉に、日本から来てくれたのかと驚いた孝史だが入って来た女の顔を見て、言葉を失った。
化粧、服装のせいかもしれない、だが、女は自分の妻ではなかった。
「孝史さん、よかったわ、元通りになって」
ベッドのそばまで来た女は笑う。
本当によかったわと、耳元に口を寄せて女は言った。
人○○しと、それは憎いという感情が、はっきりと伝わる声だ。
そのライバル社というのが、表向きはともかく、陰では公にできない方法で、それで経営上、うまくいかなくなったんです。
父親の会社の事後処理、財産管理を任されたという男性の話を聞いていた女は信じられなかった。
「父は騙されたという事ですか」
「途相手が悪すぎたんですよ、途中で気づいたとしても会社存続は無理でしょう、あなたの個人財産を差し押さえしたのは社員たちへ配当金といえばいいでしょうが」
「そんな、口座は、あたしのもので個人財産なのに」
「会社の不祥事ということですが、それは表向きです、一切の保証もなければ恨まれるのは娘のあなたですよ」
その言葉に馬鹿馬鹿しい、それこそ逆恨みだわと女は笑いとばした。
「社員の中には外国人もいます、日本で暮らす為なら犯罪者になっても
構わないと考えるしょう、あなたの安全を保障するものと思っていただけませんか」
その言葉に、女は初めて不安げな表情を見せた。
「安全ですか、それって」
「社長が亡くなったんですよ、ところで、取引先の相手会社の社員ですが」
名前を聞かされた女は言葉を飲み込んだ。
「知り合いですか」
言える筈がなかった、新しい恋人だと、まさか、父親が死んだのは、その男が、など話せなかった。
それは自分の顔ではなかった。
男は鏡を見ながら何故と疑問に思い医者に尋ねた、すると、友人が持参した写真を元にと言われて驚いた。
「友人ですか」
その日、病室を訪れた友人と名乗る男性の顔を見て驚いた、どういうことなんだと声が荒くなったのも無理はない。
「大学時代の思い出さないか」
最初の言葉が、それだった。
「京介、一体」
「これで皆が幸せになれる、を、覗いては」
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