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私のお姉ちゃん
しおりを挟む「やめてよぉー! 私の、私のお姉ちゃんいじめないで!」
ますます私は泣きながらお姉ちゃんに突撃してお父さんとの間に入ると、お姉ちゃんを抱きしめて守った。
お父さんがなんでお姉ちゃんをいじめるのか分からない。分からないけどお父さんがそれなら私が守るんだ。
「ごめんなさいー! お父さんのバカァあああああ! うああああああああん」
「ミレリア!?」
「お母さんもバカァあああ!」
「ミレリア!?」
うああああんってお姉ちゃんを抱きしめながら泣いていたら、涙がうつったみたいにお姉ちゃんもわぁあああって泣きはじめた。
落ち着いてからも私がお姉ちゃんを離さなかったので、とりあえず2人で一緒に寝た。
寝る前くらいにだんだん頭がスッキリしてきて、この人が私のお姉ちゃんかぁとにまにましてたのは秘密。
明日はなにして遊ぼうかな。おままごとはもう私も大きくなってきたからそろそろやめるとして、追いかけっこ? かくれんぼ? あとは~。
なんて思っていた頃もありました。
こんなに、こんなに隠れがいがあるお屋敷に住んでいるのに、かくれんぼをしてはいけないだなんて!?
「そんなぁ~! かくれんぼしようよ。暖炉に隠れたい。あ、言っちゃったから別の場所ね。うふふふふ」
「貴族はそんなことしてはいけないのよ」
お姉ちゃん。ううん、お姉様に言われた。ええ~。
「でもでも、貴族でも子供でしょ? 子供なのにダメなの? お姉さまは~かくれんぼしたことある?」
「ありませんわ。そんなこと」
「じゃあ! じゃあ~やってみようよ! やれば面白さが分かるって! ね!」
「でも」
「一回だけ! ね! 一回だけなら許してくれるよ!」
もじもじしながら、お姉様が「そうね、一回だけならそうよね。いいわよ」と言っていっしょにかくれんぼをした思い出は今からもう4年前になるのか。
私は今、お姉様とその婚約者の公爵令息と一緒にお茶会中です。
「懐かしいわね。あの青いバラ。あの花が咲いている時期に母が亡くなり、あなたが我が家に来たのよねミレリア」
お姉様のお母様の命日ももうすぐだ。
「はいお姉様。私、一人っ子だと思っていたからお姉様ができてとても嬉しかったの。まさか葬儀の直後に連れてこられたなんて思わなくって。あのときはごめんなさいお姉様」
「いいのよ。あなたは何も悪くないわ。それに、あなたにつられて私も思いっきり泣くことができてよかったと思うの」
「姉妹仲が良くて麗しいことだ。僕はここにいることを学園の男たちに嫉妬で焼き殺されてしまいそうだよ。美人姉妹で人気だからね」
「うふふ。あなたが焼かれてしまったら、私はまた泣いてしまうわ」
「はは、嬉しいね。ではこの茶会のことは自慢しないでいようかな」
うふふあははと仲のいい二人。婚約関係は良好だ。この家を継ぐ姉の婚約者である彼は公爵家の次男で、美形で成績優秀として学園でも有名。
美男美女で絵になるわ~。
「ところでミレリア、君に紹介したい男がいるのだけど会ってみる気はないかな?」
「ええ~。また高位貴族とかですか? 勘弁してください。前も言いましたけど、私、貴族のこのかたっ苦しい生活は結婚でおさらばしたいの。平民のお金持ちあたりがいいです!」
「ははは、平民とまではいかないが、爵位のない騎士でいい男がいるんだよ。子爵家の四男だからいろいろなわずらわしいこともないよ。ただ実績の割に権力がない家でね、うちと縁続きになってくれると王家としてはありがたいんだよね」
公爵家だから王家のなんやかやとも関係があるのね。
「うわぁ、貴族らしいことをおっしゃってらっしゃる~」
「ははははは。まぁいいやつなのは確かだ、会ってみないかい?」
「まぁ騎士なら……」
「よし! ありがとう。きっと気にいるよ」
姉がニコニコしているから本当に悪い話ではないのだと思うけど、姉と結婚したらすぐに爵位継承する方向で話を詰めてうちの毒親たちを追い出し成功させてしまっている未来の義兄の紹介……ちょっと怖いです。
裏とかないよね?
「大丈夫よミレリア。変な人だったら私が対処しますからね。なにかあったらいつでもお姉様を頼ってね」
「お姉様! ありがとうお姉様! 頼れるのはやっぱりお姉様だけね!」
「まかせてちょうだい。私のかわいい妹だもの」
「お姉様! 大好き!」
きゃーってお姉様とキャッキャしてたら、未来の義兄が肩をすくめて
「僕の印象悪くないかい?」
と笑って言いました。
「印象はいいですよ! うちのダメ親が重大事件起こす前にしばいてくれてありがとうございます! でも私も嫌われてたら怖いなっていうか」
「嫌ってはいないさ。嫉妬はしているけどね。僕のかわいい婚約者殿が君のことを大好きすぎてね」
「まぁ。うふふ、ごめんなさい。私の生きている家族で私に優しいのはミレリアだけだから、どうしてもかわいくって。でももうすぐあなたも家族になるのだし、嫉妬なんてしなくていいのよ。あ、愛しているもの、あなたのことも……」
「シェイリーナ!」
ハグする二人。
「あー、あつーい。春なのにあつ~い。私も早く結婚して家出する~」
あははと笑いあった茶会のあと、紹介された騎士の彼と意気投合してあっというまに脱出。
実家の姉夫婦とも良好な平民?生活を送ってます。
平民にしては貴族っぽいのよねぇ……。
まぁいっか。
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お姉様視点、考えてなかったのですが気が乗ったら考えてみます!