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番外編「忘れられてるけどうちのダンジョンにも投資してくれていいんですよ? 2」(完)
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3ヶ月後。町のちょっと寂れてた場所にトンテンカンテンと大工の音が響くようになった。
3ヶ月で着工するとか、展開が早すぎておっさんちょっと気持ちついていけてねーわ。会場の作りに関して大工の要望をほぼそのまま採用したため着工まで早くなったのだ。変にこだわらないからこその速さ。完成予想図は伝統的でフツーな感じのデザインだが逆に味があっていいのではとも思う。
噂を聞きつけた冒険者たちがやんややんやと盛り上がっている。
「賞金もでるってよ!」
「下の方だと賞品だけらしい」
「1年に1度だけデケェ大会を開くらしいぞ。賞金額が倍とかなんとか」
「あ! 俺10倍って聞いた!」
「え、5倍じゃねぇの?」
「普通に2倍くらいじゃねぇの? さすがに10倍はさー」
情報が錯綜しているがそれもまぁ楽しみの一つになるだろうから放置。おっさんは一緒にきゃっきゃする気分じゃねぇけどなんかワクワクはするな。ふっ、それ俺の提案なんだぜ? フフフ。
「ギルマスも楽しみにしてますよねー」
「しー、クール気取ってるんだから言わないのが優しさよ!」
「はは、りょーかい」
なんか職員がコソコソにやにや話しているが、あいつらもきっと楽しみなんだろう。ふっ、それ俺の功績なんだぜ。フフフ。
そして闘技場は建設され、開場式が行われた。
開場式には公爵令嬢だけでなく、なんと王太子殿下までご臨席なされた。
不仲で有名な両名の列席は、開場式参加者たちをざわめかせ、新聞記者を喜ばせ、次の日の新聞記事には開場式よりも殿下と公爵令嬢の同時ご臨席の方が大きく取り上げられていた。
俺も出てた、つーか関係者だから席も近かったが、なんか普通に仲良さげだったぞ。
あれで婚約破棄したのか?
破棄後に和解したんか? 和解できるんならはじめから婚約破棄しなきゃいいのに王子バカだなぁ。まぁ恋に溺れたら人間なんてそんなもんか。恋は人をバカにするのさ。なんつってな。ふふふん。
王子の新しい婚約者という令嬢も出席していたが
王子よりもそちらの令嬢と公爵令嬢のが仲よさそうだった。
王子、すでに尻に敷かれる未来が見えるぞ俺には!
同じ男としてあわれを誘うぜ…。
そんなあわれな王子様だが、完全に権威失墜したというわけではない。
次期宰相を決める争いで負けた官僚が、自棄を起こして自領に引きこもったことがある。
精神的にもろいからきっと宰相にはなれなかったんだろうなぁと俺なんかは思うが。それでも宰相候補になるくらいには優秀な奴をひきこもらせておくのはもったいないと思う。
同じように思ったらしい王太子殿下が説得して殿下の側近として召し上げたらしい。
殿下は完全傀儡の王になるんだろうと言われているが、この側近の助力を受けて発言力が高まっている。と上と関わりのあるギルドのお偉いさんが言っていた。
『王政の終わりが近いかと思ったが、そうもならなそうだなぁ』
とか言っていた。地味に王家の権威は残りそうである。国としてはその方が安定すると思うんでひっそり安心した。
王子と公爵令嬢の和解が派手に報じられるくらいには、まだまだ人々の関心は王家にあるしな。
闘技場の戦いはレベル分けされ、挑戦したレベルで優勝すると上のレベルへの挑戦が認められるが、ギルドランクに応じても上のレベルへの挑戦が認められる。
当然上のレベルほど賞品も豪華なんで、強い奴らが挑戦してくるはずである。観客たちも見てて面白いこと請け合いだ。
だが上位冒険者が賞品がっぽがっぽ取り放題になっちゃ困るんで、上位のやつらがダンジョンを潜るよりは稼ぎにならない賞品しかない。
それが基本だが、年に一度だけ行われる公爵杯とかいう大会では、ダンジョンでは得られないうえ
今までは貴族にしか許されていなかったものが賞品としてあがると発表されて、会場はワーッと一気に盛り上がりを見せた。
賞品は、転移魔法の埋め込まれた魔道具だ。
1日1回までだが、魔法の使えない冒険者でも使えるうえに、複数人での使用可能。
有事の際には公爵家で「誰を移送したか」を詮索可能な魔道具らしいが、有事でもなければ詮索しないとのことなのでまぁ大した問題ではないだろう。犯罪に使われちゃあ困るもんなぁ。なお分解、分析して魔法を調べようとすると壊れるらしい。
闘技場が開場されてから、我がギルドの雰囲気が変わった。
金のために金の輪ダンジョンに行くやつだけでなく、レベル上げのためにダンジョンに潜る奴が増えたのだ。
やはり目の前に賞品という名の見えるごちそうをぶら下げたほうがやる気出るんだなぁ。
闘技場での挑戦可能レベルはそのままギルドランクだが、有望な新人が低ランクのまま闘技場で優勝し、上の方まで駆け上っていったとかいう派手な話も出てくるようになった。
我がギルドは今日も今日とて話題に事欠かず大人気だ。ふふふふふ。
闘技場をさくっと作ってくれた公爵令嬢様には感謝しかないなぁ。
まぁ活気が出たせいで俺が忙しくなるのは想定外だったがな!
あ? そのくらい想定しておけだ?
しゃーねーだろ考えてなかったんだからよ。
ま、しかし毎度毎度、宝石核退治にかつぎ出されるよりはましだよ。
今はもちろん、核を倒しに行ってくれる上位冒険者がたくさんいるぜ。
終
3ヶ月で着工するとか、展開が早すぎておっさんちょっと気持ちついていけてねーわ。会場の作りに関して大工の要望をほぼそのまま採用したため着工まで早くなったのだ。変にこだわらないからこその速さ。完成予想図は伝統的でフツーな感じのデザインだが逆に味があっていいのではとも思う。
噂を聞きつけた冒険者たちがやんややんやと盛り上がっている。
「賞金もでるってよ!」
「下の方だと賞品だけらしい」
「1年に1度だけデケェ大会を開くらしいぞ。賞金額が倍とかなんとか」
「あ! 俺10倍って聞いた!」
「え、5倍じゃねぇの?」
「普通に2倍くらいじゃねぇの? さすがに10倍はさー」
情報が錯綜しているがそれもまぁ楽しみの一つになるだろうから放置。おっさんは一緒にきゃっきゃする気分じゃねぇけどなんかワクワクはするな。ふっ、それ俺の提案なんだぜ? フフフ。
「ギルマスも楽しみにしてますよねー」
「しー、クール気取ってるんだから言わないのが優しさよ!」
「はは、りょーかい」
なんか職員がコソコソにやにや話しているが、あいつらもきっと楽しみなんだろう。ふっ、それ俺の功績なんだぜ。フフフ。
そして闘技場は建設され、開場式が行われた。
開場式には公爵令嬢だけでなく、なんと王太子殿下までご臨席なされた。
不仲で有名な両名の列席は、開場式参加者たちをざわめかせ、新聞記者を喜ばせ、次の日の新聞記事には開場式よりも殿下と公爵令嬢の同時ご臨席の方が大きく取り上げられていた。
俺も出てた、つーか関係者だから席も近かったが、なんか普通に仲良さげだったぞ。
あれで婚約破棄したのか?
破棄後に和解したんか? 和解できるんならはじめから婚約破棄しなきゃいいのに王子バカだなぁ。まぁ恋に溺れたら人間なんてそんなもんか。恋は人をバカにするのさ。なんつってな。ふふふん。
王子の新しい婚約者という令嬢も出席していたが
王子よりもそちらの令嬢と公爵令嬢のが仲よさそうだった。
王子、すでに尻に敷かれる未来が見えるぞ俺には!
同じ男としてあわれを誘うぜ…。
そんなあわれな王子様だが、完全に権威失墜したというわけではない。
次期宰相を決める争いで負けた官僚が、自棄を起こして自領に引きこもったことがある。
精神的にもろいからきっと宰相にはなれなかったんだろうなぁと俺なんかは思うが。それでも宰相候補になるくらいには優秀な奴をひきこもらせておくのはもったいないと思う。
同じように思ったらしい王太子殿下が説得して殿下の側近として召し上げたらしい。
殿下は完全傀儡の王になるんだろうと言われているが、この側近の助力を受けて発言力が高まっている。と上と関わりのあるギルドのお偉いさんが言っていた。
『王政の終わりが近いかと思ったが、そうもならなそうだなぁ』
とか言っていた。地味に王家の権威は残りそうである。国としてはその方が安定すると思うんでひっそり安心した。
王子と公爵令嬢の和解が派手に報じられるくらいには、まだまだ人々の関心は王家にあるしな。
闘技場の戦いはレベル分けされ、挑戦したレベルで優勝すると上のレベルへの挑戦が認められるが、ギルドランクに応じても上のレベルへの挑戦が認められる。
当然上のレベルほど賞品も豪華なんで、強い奴らが挑戦してくるはずである。観客たちも見てて面白いこと請け合いだ。
だが上位冒険者が賞品がっぽがっぽ取り放題になっちゃ困るんで、上位のやつらがダンジョンを潜るよりは稼ぎにならない賞品しかない。
それが基本だが、年に一度だけ行われる公爵杯とかいう大会では、ダンジョンでは得られないうえ
今までは貴族にしか許されていなかったものが賞品としてあがると発表されて、会場はワーッと一気に盛り上がりを見せた。
賞品は、転移魔法の埋め込まれた魔道具だ。
1日1回までだが、魔法の使えない冒険者でも使えるうえに、複数人での使用可能。
有事の際には公爵家で「誰を移送したか」を詮索可能な魔道具らしいが、有事でもなければ詮索しないとのことなのでまぁ大した問題ではないだろう。犯罪に使われちゃあ困るもんなぁ。なお分解、分析して魔法を調べようとすると壊れるらしい。
闘技場が開場されてから、我がギルドの雰囲気が変わった。
金のために金の輪ダンジョンに行くやつだけでなく、レベル上げのためにダンジョンに潜る奴が増えたのだ。
やはり目の前に賞品という名の見えるごちそうをぶら下げたほうがやる気出るんだなぁ。
闘技場での挑戦可能レベルはそのままギルドランクだが、有望な新人が低ランクのまま闘技場で優勝し、上の方まで駆け上っていったとかいう派手な話も出てくるようになった。
我がギルドは今日も今日とて話題に事欠かず大人気だ。ふふふふふ。
闘技場をさくっと作ってくれた公爵令嬢様には感謝しかないなぁ。
まぁ活気が出たせいで俺が忙しくなるのは想定外だったがな!
あ? そのくらい想定しておけだ?
しゃーねーだろ考えてなかったんだからよ。
ま、しかし毎度毎度、宝石核退治にかつぎ出されるよりはましだよ。
今はもちろん、核を倒しに行ってくれる上位冒険者がたくさんいるぜ。
終
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退会済ユーザのコメントです
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