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書籍未収録⑤ 異世界からの救世主編
6.コピー能力
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「ぬううっ、なんという素早い……いや勘のいいヤツだ。俺様の攻撃をここまで躱しまくるとは信じられぬ」
黒悪魔ザガンと牙無魔の一騎打ちとなってすでに10分以上。
未だ決着付かず、ザガンは必死に爪、魔法、そして『鬼火閃雷』の光線で攻撃をし続けるが、しかし、どういうことか牙無魔には一向に当たらない。
不思議なのは、後方に居る3人からザガンに向かって何も攻撃がないことだ。
それどころか、前衛の剣士――牙無魔に対する支援すら行わない。つまり、目の前の男は純粋にたった1人で戦っている。
何故コイツらは協力しないのだ?
解せないことばかりだが、さらにおかしなことは、時間が経つごとにこの剣士の動きが加速していくことだ。
というより、逆だ。何か自分の身体が不自然に重く感じる。
確かに少々戦闘は長引いているが、ザガンは全然疲労は感じていない。
なのに、不可解なほどに自分の身体にキレがない。
ここで自分が何かの術にハマっていることに、ようやく気付く黒悪魔ザガン。
そう、事実ザガンの能力は大きく低下していた。
その原因は、礼威次の能力――SSランクスキル『羅刹の睨み』の効果だった。
これは魔眼系の上位スキルで、相手をただ見るだけで能力を大きく下げる作用があり、そして一度下げられた力は、スキルの効果範囲から逃れるまで回復することはない。
距離が近くなるほど『羅刹の睨み』の効果は大きくなるが、悪魔と接近戦をするのは危険なので、礼威次は距離をとってじっくりと時間を掛けてザガンを弱体化させた。
見続けることによりどんどん能力が下がるので、長期戦になるほど礼威次のスキルは真価を発揮する。
この悪魔ザガンも、すでに全力時と比べて20%ほどの能力になっていた。
これでは牙無魔についていけないのも当然だ。
しかし、通常の人間ならとっくにパワーが尽きているので、むしろ20%も残っているのは感嘆に値すると言えよう。
因みに、牙無魔とイザヤの戦闘は正々堂々タイマン勝負ということだったので、『羅刹の睨み』は使っていない。
さて、『羅刹の睨み』によってすでに牙無魔は造作もなく悪魔ザガンを倒せる状況だが、ここまであえて決着を付けなかったのは、もちろん目的があるからだ。
そもそも牙無魔が本気になれば、ザガンなどすぐに殺すこともできた。
ザガンが牙無魔に感じていた『素早い』とか『勘がいい』というのは、単純に力が違いすぎただけだ。
なのに戦いを引き延ばしていたのは、1つは悪魔との戦闘経験を積みたかったこと。
本物の悪魔と戦う機会など、そうそうあることではない。
いざ戦ってみて『鬼火閃雷』に対する防御方法など、『聖域』の効果検証も含めて良い経験となった。
魔王軍幹部黒騎士の強さも、どの程度のモノか測ることもできた。
もしここで苦戦するようなら、牙無魔たちはもう一度修業し直してくるところだ。
この悪魔との実戦経験に加えて、もう1つ目的があった。
それは……
「むほおお、解析できましたぞ! 悪魔の技も取れました!」
『聖域』の中でじっとザガンを観察していた弐琉須が歓喜の声を上げる。
「では試しに使ってみますぞ。魔炎召喚、灼き撃て『鬼火閃雷』!」
弐琉須が技を発動すると、なんと悪魔ザガンと同じく、3つの黒炎を召喚した。
そしてやはり同じように、3つの炎がザガンに向かって青白い光線を撃ち放った。
「バカな、コレは俺様の技!? いったいどうやって……まさかコピーしたというのか!?」
そう、ザガンの言う通り、弐琉須はこの悪魔技をコピーして習得したのである。
ザガンが使ったときより弐琉須のは威力が弱いが、それは持っている魔力の差だ。
弐琉須の授かった能力――それは『識る者』というSSSランク称号だった。
この『識る者』の能力は、相手のスキルや特殊技を分析し、完全に解析することによってその能力をコピーできるというモノだ。
ユーリの持つ『スキル支配』に近いが、大きく違うところは、『スキル支配』は人間相手にしか効果がないので、モンスターや悪魔の能力はコピーすることができない。
それに対し、弐琉須の『識る者』は、完全解析さえできればどんな相手の能力でもコピーすることができる。
人間相手は当然として、モンスターや悪魔の能力でも、なんと『称号』でさえコピー可能なのだ。
そして、ユーリの『スキル支配』は1人に対して1回しか使うことができないが、弐琉須は何度でも使うことが可能だ。
ただし、ユーリのように一気に『全強奪』することは無理なので、複数のスキルが欲しいときは1つずつ丁寧に分析していかなくてはならないが。
弐琉須はこのコピー能力で、イザヤたちと戦ったときはテツルギの持つ『界域魔法』を、悪魔ザガンのときは『鬼火閃雷』をコピーしたのだ。
さらに『識る者』は相手のスキルレベルもコピーできるので、レベル10のスキルはそのままレベル10で習得できる。
ここもユーリの『スキル支配』と違うところだ。
いいこと尽くめではあるが、もちろん欠点もいくつかある。
1つは分析には時間が掛かるということ。
これはランクが高いスキルほど時間が掛かるという単純なモノではなくて、そのスキルごとに難易度があるようだ。
因みに、能力使用中のほうが分析しやすいらしい。
ほかには弐琉須本人の得手不得手も関係しているようで、例えば『料理』スキルなどは低ランクではあるが、解析完了までには異常に時間が掛かった。
今回ザガンからコピーした『鬼火閃雷』は、そのランクに対してかなり短時間で解析できたので、弐琉須に向いていた能力だと言える。
そしてもう1つの欠点……それは、解析に失敗することがあるということだ。
例えば、同じチームメイトである久魅那、礼威次の能力『空間魔法』と『羅刹の睨み』は、解析に失敗した。
弐琉須の能力が上がればいずれ解析可能になるかもしれないが、現時点ではどうやっても解析ができなかった。
ユーリなら両方とも簡単にコピーできたであろうだけに、『識る者』も万能ではないことが分かる。
ほか、モンスター系のスキルも、現時点では解析失敗することが多いようだ。
その欠点を差し引いても充分有能な称号で、今までに弐琉須は様々なスキルをコピーして身に付けていた。
『神術』や『退魔術』、『神聖魔法』や『結界魔法』も、パスリエーダ法王国にはレベル10まで上げていた人間が居たので、その人たちからレベルごとコピーさせてもらって、そして融合して『神護主』と『神域魔法』を習得していたのだ。
ほかにも『剣術』などの前衛系スキルもコピーして揃っているので、戦士としても弐琉須は充分に強い。
牙無魔が強すぎるので、あえて前衛で戦う必要がないだけだ。
目的であった悪魔のスキルコピーに成功したので、これでもう悪魔ザガンに用は無くなった。
あとはどうやって始末するかだけである。
黒悪魔ザガンと牙無魔の一騎打ちとなってすでに10分以上。
未だ決着付かず、ザガンは必死に爪、魔法、そして『鬼火閃雷』の光線で攻撃をし続けるが、しかし、どういうことか牙無魔には一向に当たらない。
不思議なのは、後方に居る3人からザガンに向かって何も攻撃がないことだ。
それどころか、前衛の剣士――牙無魔に対する支援すら行わない。つまり、目の前の男は純粋にたった1人で戦っている。
何故コイツらは協力しないのだ?
解せないことばかりだが、さらにおかしなことは、時間が経つごとにこの剣士の動きが加速していくことだ。
というより、逆だ。何か自分の身体が不自然に重く感じる。
確かに少々戦闘は長引いているが、ザガンは全然疲労は感じていない。
なのに、不可解なほどに自分の身体にキレがない。
ここで自分が何かの術にハマっていることに、ようやく気付く黒悪魔ザガン。
そう、事実ザガンの能力は大きく低下していた。
その原因は、礼威次の能力――SSランクスキル『羅刹の睨み』の効果だった。
これは魔眼系の上位スキルで、相手をただ見るだけで能力を大きく下げる作用があり、そして一度下げられた力は、スキルの効果範囲から逃れるまで回復することはない。
距離が近くなるほど『羅刹の睨み』の効果は大きくなるが、悪魔と接近戦をするのは危険なので、礼威次は距離をとってじっくりと時間を掛けてザガンを弱体化させた。
見続けることによりどんどん能力が下がるので、長期戦になるほど礼威次のスキルは真価を発揮する。
この悪魔ザガンも、すでに全力時と比べて20%ほどの能力になっていた。
これでは牙無魔についていけないのも当然だ。
しかし、通常の人間ならとっくにパワーが尽きているので、むしろ20%も残っているのは感嘆に値すると言えよう。
因みに、牙無魔とイザヤの戦闘は正々堂々タイマン勝負ということだったので、『羅刹の睨み』は使っていない。
さて、『羅刹の睨み』によってすでに牙無魔は造作もなく悪魔ザガンを倒せる状況だが、ここまであえて決着を付けなかったのは、もちろん目的があるからだ。
そもそも牙無魔が本気になれば、ザガンなどすぐに殺すこともできた。
ザガンが牙無魔に感じていた『素早い』とか『勘がいい』というのは、単純に力が違いすぎただけだ。
なのに戦いを引き延ばしていたのは、1つは悪魔との戦闘経験を積みたかったこと。
本物の悪魔と戦う機会など、そうそうあることではない。
いざ戦ってみて『鬼火閃雷』に対する防御方法など、『聖域』の効果検証も含めて良い経験となった。
魔王軍幹部黒騎士の強さも、どの程度のモノか測ることもできた。
もしここで苦戦するようなら、牙無魔たちはもう一度修業し直してくるところだ。
この悪魔との実戦経験に加えて、もう1つ目的があった。
それは……
「むほおお、解析できましたぞ! 悪魔の技も取れました!」
『聖域』の中でじっとザガンを観察していた弐琉須が歓喜の声を上げる。
「では試しに使ってみますぞ。魔炎召喚、灼き撃て『鬼火閃雷』!」
弐琉須が技を発動すると、なんと悪魔ザガンと同じく、3つの黒炎を召喚した。
そしてやはり同じように、3つの炎がザガンに向かって青白い光線を撃ち放った。
「バカな、コレは俺様の技!? いったいどうやって……まさかコピーしたというのか!?」
そう、ザガンの言う通り、弐琉須はこの悪魔技をコピーして習得したのである。
ザガンが使ったときより弐琉須のは威力が弱いが、それは持っている魔力の差だ。
弐琉須の授かった能力――それは『識る者』というSSSランク称号だった。
この『識る者』の能力は、相手のスキルや特殊技を分析し、完全に解析することによってその能力をコピーできるというモノだ。
ユーリの持つ『スキル支配』に近いが、大きく違うところは、『スキル支配』は人間相手にしか効果がないので、モンスターや悪魔の能力はコピーすることができない。
それに対し、弐琉須の『識る者』は、完全解析さえできればどんな相手の能力でもコピーすることができる。
人間相手は当然として、モンスターや悪魔の能力でも、なんと『称号』でさえコピー可能なのだ。
そして、ユーリの『スキル支配』は1人に対して1回しか使うことができないが、弐琉須は何度でも使うことが可能だ。
ただし、ユーリのように一気に『全強奪』することは無理なので、複数のスキルが欲しいときは1つずつ丁寧に分析していかなくてはならないが。
弐琉須はこのコピー能力で、イザヤたちと戦ったときはテツルギの持つ『界域魔法』を、悪魔ザガンのときは『鬼火閃雷』をコピーしたのだ。
さらに『識る者』は相手のスキルレベルもコピーできるので、レベル10のスキルはそのままレベル10で習得できる。
ここもユーリの『スキル支配』と違うところだ。
いいこと尽くめではあるが、もちろん欠点もいくつかある。
1つは分析には時間が掛かるということ。
これはランクが高いスキルほど時間が掛かるという単純なモノではなくて、そのスキルごとに難易度があるようだ。
因みに、能力使用中のほうが分析しやすいらしい。
ほかには弐琉須本人の得手不得手も関係しているようで、例えば『料理』スキルなどは低ランクではあるが、解析完了までには異常に時間が掛かった。
今回ザガンからコピーした『鬼火閃雷』は、そのランクに対してかなり短時間で解析できたので、弐琉須に向いていた能力だと言える。
そしてもう1つの欠点……それは、解析に失敗することがあるということだ。
例えば、同じチームメイトである久魅那、礼威次の能力『空間魔法』と『羅刹の睨み』は、解析に失敗した。
弐琉須の能力が上がればいずれ解析可能になるかもしれないが、現時点ではどうやっても解析ができなかった。
ユーリなら両方とも簡単にコピーできたであろうだけに、『識る者』も万能ではないことが分かる。
ほか、モンスター系のスキルも、現時点では解析失敗することが多いようだ。
その欠点を差し引いても充分有能な称号で、今までに弐琉須は様々なスキルをコピーして身に付けていた。
『神術』や『退魔術』、『神聖魔法』や『結界魔法』も、パスリエーダ法王国にはレベル10まで上げていた人間が居たので、その人たちからレベルごとコピーさせてもらって、そして融合して『神護主』と『神域魔法』を習得していたのだ。
ほかにも『剣術』などの前衛系スキルもコピーして揃っているので、戦士としても弐琉須は充分に強い。
牙無魔が強すぎるので、あえて前衛で戦う必要がないだけだ。
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