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書籍未収録⑤ 異世界からの救世主編
4.真黒の悪魔
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「やはり結界が掛かっていますねえ」
王城の正門前で、弐琉須が簡単な分析結果を述べる。
ユーリやメジェールの解析能力には遠く及ばないが、弐琉須でもある程度の現象分析が可能だった。
「多分、探知を兼ねたダメージ結界ってところじゃないですかねえ。どうも人間が使う結界魔法とは種類が違うので、悪魔……ええと多分『黒騎士』ってヤツが掛けたんだと思いますぞ」
弐琉須は眼鏡を指でクイッとあげながら、分析した結果をみんなに説明する。
弐琉須は自身も結界魔法が使えるので、魔界の結界魔法ということまでも気付いたようだ。
大抵の人間は、この結界に気付くことすらなく接触し、場合によってはそのまま消滅してしまうであろうだけに、弐琉須の分析能力はなかなか優秀と言える。
ただし、分析はともかく、強力な結界の解除は容易ではない。
結界をモノともしないユーリやメジェールが特別なだけで、通常は結界に対抗するには、何かしらのアイテムや多人数による『解除魔法』などが必要となってくる。
このアマトーレ王城についても、黒騎士が張ったであろう結界を解除するのは、牙無魔たちでも不可能だった。
「ダメージ結界か……まあオレたちほど強ければきっと耐えられるだろうけど、あえて喰らってやる必要もないしな。因みに、この中も全部ダメージエリアなのか?」
「いやボクちんの勘では、多分結界の縁だけだと思いますぞ。部外者の排除を目的としているので、恐らくダメージは結界膜に接触したときだけ、中に入ってしまえば特に影響は無いでしょう」
「なら決まりだ。久魅那、またよろしく頼む」
「了解――――――開け『時空通穴』!」
久魅那が詠唱を終えて空間魔法を発動すると、牙無魔たちの前に直径2mほどの黒い穴が出現した。
これは次元を裂いて開いた道だ。異なる2つの座標を繋ぐ『空間次元連結』の上位版で、なんとこの次元の隙間を人間が通って移動ができるのだ。
この『時空通穴』のさらに上位が『空間転移』であるが、まだ久魅那の空間魔法のレベルでは、自身の転移はともかく、複数人――大質量の転移は不可能だった。
それでも、ユーリの『瞬間移動』よりも上の能力ではあるのだが。
久魅那の『時空通穴』によって、4人全員が結界の中――正門の内側へと移動する。
アマトーレ王都の入場門も、この『時空通穴』で簡単にくぐり抜けたのである。
正門から彼らが進んでいくと、王宮前にある中庭で真っ黒な騎士が待ち受けていた。
『黙示録の四騎士』最後の1人――黒滅騎士だった。
牙無魔たちはこの結界のダメージは受けなかったが、侵入してきたことは結界による探知機能で分かっていたので、黒滅騎士が迎え撃つために出てきたというわけである。
ユーリたちを迎撃するため悪魔たちは総出となっていたので、アマトーレには黒滅騎士しか残っていなかった。
それでも、今や蒼妖騎士を超える強さとなったイザヤたちが居れば、王城の警備は問題なしという判断だったのだが、まさかのそのイザヤたちがやられてしまったのだった。
「うーむ……ユーリとかいう者と勇者以外でここまで来れるヤツがいるとはな。人間どもめ、何度戦っても侮れん種族だ」
黒滅騎士は、目の前の牙無魔たちが『勇者』や『ユーリ』でないことには気付いていた。
さすがに『異世界人』ということまでは分からないようだが、想定外の存在に思わず低く唸る。
黒滅騎士は大悪魔バラムにはまだまだ及ばないが、それでも赤牙騎士、蒼妖騎士よりは遙かに戦闘力が高い。
覚醒前の勇者相手だったら、自分でも勝算はあると踏んでいるほどだ。
果たして、目の前のヤツらは『勇者』より上の存在なのか?
『黙示録の四騎士』で一番慎重派の黒滅騎士は、じっくりと牙無魔たちを観察して値踏みする。
まあ万が一の場合は転移石で脱出すればいい。
アマトーレを放棄することになるが、コイツらの情報はそれに見合う収穫となるだろう。
黒滅騎士の思惑は決まった。
「黒騎士さんよ、あとはお前1人だけのようだが、もちろんやるだろ?」
「ふふん、生意気なヤツだ。いいだろう、俺様の力を思い知らせてやる」
黒滅騎士が全身に力を入れると、装備を破壊しながら身体が巨大化していく。
その肌は墨を流し込んでいくようにみるみるうちに黒く黒く変色し、やがて青みがかった黒鉄のようなツヤを放ち出した。
両腕の肘から先は膨れあがり、手の指は3本に変化し、その先には当然鋭い爪が付いている。
首は異常に太くなり、まるで頭部が直接身体に乗っているような状態だ。
顔はミノタウロスに近いが、ただし角は頭部の横からほぼ水平に伸びていた。
そして背には闇のように黒い翼を広げている。
変化したその姿は『黒騎士』という名に相応しい、体長4mになる真黒の悪魔だった。
王城の正門前で、弐琉須が簡単な分析結果を述べる。
ユーリやメジェールの解析能力には遠く及ばないが、弐琉須でもある程度の現象分析が可能だった。
「多分、探知を兼ねたダメージ結界ってところじゃないですかねえ。どうも人間が使う結界魔法とは種類が違うので、悪魔……ええと多分『黒騎士』ってヤツが掛けたんだと思いますぞ」
弐琉須は眼鏡を指でクイッとあげながら、分析した結果をみんなに説明する。
弐琉須は自身も結界魔法が使えるので、魔界の結界魔法ということまでも気付いたようだ。
大抵の人間は、この結界に気付くことすらなく接触し、場合によってはそのまま消滅してしまうであろうだけに、弐琉須の分析能力はなかなか優秀と言える。
ただし、分析はともかく、強力な結界の解除は容易ではない。
結界をモノともしないユーリやメジェールが特別なだけで、通常は結界に対抗するには、何かしらのアイテムや多人数による『解除魔法』などが必要となってくる。
このアマトーレ王城についても、黒騎士が張ったであろう結界を解除するのは、牙無魔たちでも不可能だった。
「ダメージ結界か……まあオレたちほど強ければきっと耐えられるだろうけど、あえて喰らってやる必要もないしな。因みに、この中も全部ダメージエリアなのか?」
「いやボクちんの勘では、多分結界の縁だけだと思いますぞ。部外者の排除を目的としているので、恐らくダメージは結界膜に接触したときだけ、中に入ってしまえば特に影響は無いでしょう」
「なら決まりだ。久魅那、またよろしく頼む」
「了解――――――開け『時空通穴』!」
久魅那が詠唱を終えて空間魔法を発動すると、牙無魔たちの前に直径2mほどの黒い穴が出現した。
これは次元を裂いて開いた道だ。異なる2つの座標を繋ぐ『空間次元連結』の上位版で、なんとこの次元の隙間を人間が通って移動ができるのだ。
この『時空通穴』のさらに上位が『空間転移』であるが、まだ久魅那の空間魔法のレベルでは、自身の転移はともかく、複数人――大質量の転移は不可能だった。
それでも、ユーリの『瞬間移動』よりも上の能力ではあるのだが。
久魅那の『時空通穴』によって、4人全員が結界の中――正門の内側へと移動する。
アマトーレ王都の入場門も、この『時空通穴』で簡単にくぐり抜けたのである。
正門から彼らが進んでいくと、王宮前にある中庭で真っ黒な騎士が待ち受けていた。
『黙示録の四騎士』最後の1人――黒滅騎士だった。
牙無魔たちはこの結界のダメージは受けなかったが、侵入してきたことは結界による探知機能で分かっていたので、黒滅騎士が迎え撃つために出てきたというわけである。
ユーリたちを迎撃するため悪魔たちは総出となっていたので、アマトーレには黒滅騎士しか残っていなかった。
それでも、今や蒼妖騎士を超える強さとなったイザヤたちが居れば、王城の警備は問題なしという判断だったのだが、まさかのそのイザヤたちがやられてしまったのだった。
「うーむ……ユーリとかいう者と勇者以外でここまで来れるヤツがいるとはな。人間どもめ、何度戦っても侮れん種族だ」
黒滅騎士は、目の前の牙無魔たちが『勇者』や『ユーリ』でないことには気付いていた。
さすがに『異世界人』ということまでは分からないようだが、想定外の存在に思わず低く唸る。
黒滅騎士は大悪魔バラムにはまだまだ及ばないが、それでも赤牙騎士、蒼妖騎士よりは遙かに戦闘力が高い。
覚醒前の勇者相手だったら、自分でも勝算はあると踏んでいるほどだ。
果たして、目の前のヤツらは『勇者』より上の存在なのか?
『黙示録の四騎士』で一番慎重派の黒滅騎士は、じっくりと牙無魔たちを観察して値踏みする。
まあ万が一の場合は転移石で脱出すればいい。
アマトーレを放棄することになるが、コイツらの情報はそれに見合う収穫となるだろう。
黒滅騎士の思惑は決まった。
「黒騎士さんよ、あとはお前1人だけのようだが、もちろんやるだろ?」
「ふふん、生意気なヤツだ。いいだろう、俺様の力を思い知らせてやる」
黒滅騎士が全身に力を入れると、装備を破壊しながら身体が巨大化していく。
その肌は墨を流し込んでいくようにみるみるうちに黒く黒く変色し、やがて青みがかった黒鉄のようなツヤを放ち出した。
両腕の肘から先は膨れあがり、手の指は3本に変化し、その先には当然鋭い爪が付いている。
首は異常に太くなり、まるで頭部が直接身体に乗っているような状態だ。
顔はミノタウロスに近いが、ただし角は頭部の横からほぼ水平に伸びていた。
そして背には闇のように黒い翼を広げている。
変化したその姿は『黒騎士』という名に相応しい、体長4mになる真黒の悪魔だった。
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