上 下
94 / 258
書籍未収録② 勇者とデート編

3.定番のドチンピラさん

しおりを挟む
「ガキのくせになかなかいい女連れてんじゃねーか。ぶつかってきた詫びに、ソイツをちっと貸してもらえねーかな?」

 服屋から出た僕たちにドチンピラさんが因縁をふっかけて来た目的は、なんとメジェールでした。
 メジェールに目を付けるなんて、なかなか度胸のあるドチンピラさんですね。

 まあメジェールは外見だけは可愛いけどさ。
 いや内面も別に悪くは無いけど、見た目に騙されて甘い妄想考えてると、痛い目みるぞ。
 今ちょうど可愛らしい服に着替えたばかりだから、まさかこの子が世界最強少女とは思わないだろうな。

 面倒くさい展開にならないように、なんとか穏便にここを切り抜けたいところだけど、こういう人って話を聞かないもんねえ……。
 こっちが下手に出ているウチに諦めてくれないものかな。
 取りあえず、やんわりとお断りさせてもらうけど。


「メジェールを……ですか?」

「メジェールっつうのか。ソイツのことこちらのテイミッドさんが気に入ったんで貸してくれよ。文句ねーだろ?」

「それはちょっと困るんですけど……」

「ああん? 聞こえねーな。人にぶつかっておきながら、まさか断るなんてしねーよな? このオレが頭下げて頼んでるんだぜ? まったくオレ達を散々待たせやがって、一体何時間着替えてやがるんだ」

 えっ? ひょっとしてお店の外でずっと待ってたの?
 ってことは、僕たちがお店に入る前からメジェールを付け狙ってたってこと?
 ヒマな人たちだなあ。
 まあ店内まで入ってこなかったのは評価するけど。

 因みにテイミッドと呼ばれたのは、1人だけ豪華な服を着てる金髪男だ。
 なんて言ってるし、この金持ちそうな男がリーダー……というか雇い主?
 どういうグループなのか分からないけど、因縁付けてる大柄な3人は、恐らくテイミッドというヤツに従ってるだけの用心棒的な存在だと思う。


「ちょっとアンタ達、アタシいま久々に機嫌がいいの。本っっっ当に運が良かったわね。見逃してあげるから今すぐ消えてちょうだい」

「なんだこのアマ、可愛いツラしてずいぶん生意気言うじゃねーか。テイミッドさんに気に入られてなけりゃ襲って棄てちまうところだぞ」

「せっかくイイ気分なんだから、アタシを怒らせないで欲しいんだけど?」

「このクソアマ、無理矢理拉致られてーようだな。素直にしねーと、この弱そーな茶坊主を病院送りにするぞ?」

「ふーん……そう、死にたいのね?」

 あ、やばい!
 メジェールの殺意が上がっていくのが解析で分かる。
 早くなんとかしないと死人が出るぞ!?


「あの……話がありますので、ちょっと人通りの少ないところに行きませんか?」

「おう坊主、やっとお前達の立場が分かったか。そう素直になりゃオレ達だってやさしくしてやるぞ」

 僕は男達4人を連れて、裏通りの静かな場所に移動する。

「んで坊主、どうすんだ? 金さえ出しゃお前は見逃してやるが? もちろん、金額によるけどな」

「いいですか皆さん、一度しか言わないからよく聞いて下さいね。無茶な言い掛かりをつけるのはやめて、今すぐ立ち去って下さい。じゃないと、痛い目に遭わせますよ」

 僕はやさしーく忠告をした。
 絶対に聞いちゃくれないと思うけど、いきなり叩きのめすのも可哀想だからね。
 念のため、どうすればいいか正解ルートを用意してあげる。

 僕の発言が予想外だったのか、男達は一瞬ぽかーんとしたあと、ようやく意味を理解して顔を真っ赤にしながら激怒した。


「このガキ、何を言い出すかと思ったら、オレ達を痛い目に遭わせるだと!?」

「そーです。今なら見逃してあげるので、速やかに消えて下さい」

「こ、こいつナメやがって……全身の骨1つ残らずへし折ってやる!」

「死ねクソガキ!」


 ま、やっぱりこうなるよね。
 正当防衛って事で、こっちも遠慮無く叩きのめさせてもらうことにしよう。

 ということで、飛び掛かってきたいかつい・・・・男3人を、僕は一瞬で返り討ちにした。
 一応、しばらくは動けないように、全身の骨を2~30本は折ったと思う。
 ハイポーションでも簡単には治らない重傷だ。これくらいやれば、メジェールの気も晴れてくれるのではないかと……。
 こんな重傷でも、メジェールにやられるよりはずっとマシだと思うけどね。

 因みに、エクスポーションはかな~り高価なので、そこらのドチンピラさんだと気軽には使えないんじゃないかな。
 完治するにはエクスポーション数本が必要になりそうだし、治療費節約のため、しばらくは病院通いになるかもね。
 エクスポーションで治すより、病院で治療する方がずっと安上がりなので。

 僕からお金もタカリたかったんだろうけど、逆に痛い出費になっちゃったね。
 これで少しは懲りてくれればいいんだけど。


「な、なんだお前、ボクの護衛をこんなあっさり……」

 にやつきながら様子を見ていた金持ち男――テイミッドは、まさかの展開に顔を青くして怯えだした。
 護衛? チンピラ仲間じゃ無くて護衛なのか。
 手下として雇っているかもとは思ったけど、護衛となると普通の身分じゃ無いな。

 ひょっとして貴族……かな?
 だとしたら、あまり深入りするとちょっと面倒なことになっちゃうかも?
 これ以上は関わらない方がいいな。


「アンタ達ツイてる・・・・わよ。アタシだったら、首の骨折ってるからね」

「メジェール……さすがにそれは死んじゃうよ?」

「上手な折り方があるのよ! ユーリにも教えてあげよっか?」

 まるで得意料理の作り方を教えるかのように、嬉しそうにメジェールが聞いてくる。
 この子ホントに勇者なの? ちょっと怖いんですけど……?


「じゃ、じゃあテイミッドさん、護衛の人は病院に運んでおいて下さい。僕たちはもう行きますので」

 呆然とするテイミッドを置いて、僕たちはまたデートの続きに戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

遺跡に置き去りにされた奴隷、最強SSS級冒険者へ至る

柚木
ファンタジー
 幼い頃から奴隷として伯爵家に仕える、心優しい青年レイン。神獣の世話や、毒味役、与えられる日々の仕事を懸命にこなしていた。  ある時、伯爵家の息子と護衛の冒険者と共に遺跡へ魔物討伐に出掛ける。  そこで待ち受ける裏切り、絶望ーー。遺跡へ置き去りにされたレインが死に物狂いで辿り着いたのは、古びた洋館だった。  虐げられ無力だった青年が美しくも残酷な世界で最強の頂へ登る、異世界ダークファンタジー。  ※最強は20話以降・それまで胸糞、鬱注意  !6月3日に新四章の差し込みと、以降のお話の微修正のため工事を行いました。ご迷惑をお掛け致しました。おおよそのあらすじに変更はありません。  

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。