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第8章 英雄の育成
第415話 未知の迷宮⑤ -Another side-
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「4段階増幅完了! これで終わりよっ、『激烈攻撃』っ!」
怪物――『双刃の甲冑魔獣』を引きつけていたランゼとサイファは、クリスティが『精神統一』で溜めた力を解放するのを見て、素早くその場を回避する。
そこに衝撃波をまとった矢がうなりを上げて飛来し、怪物の硬質な胴体に大きな風穴を開けた。
「よっしゃあーっ! ナイスとどめ!」
「お見事です、クリスティちゃん!」
ランゼとサイファは無理に接近戦をせず、怪物を攪乱しながら時間を稼いだあと、隙を見てクリスティがとどめを刺す。
これは3人の得意な戦闘パターンであった。
怪物が完全に絶命したのを確認して、ランゼとサイファはクリスティへと駆け寄る。
すでに彼女たちが討伐した『双刃の甲冑魔獣』は10体を超え、そしてその間に多くの生徒や冒険者たちを救出していた。
現在彼らはランゼの魔道具『迷宮案内蝶』によって、迷宮の出口へ向かって移動している。
「怪物の姿があまり見えなくなってきたし、そろそろ全滅したんじゃないかしら?」
「かもな。散らばってたみんなもだいたい助けたし、もうこの辺りは安全かも」
「あとはヒロさんですね。デミトフ君たちがまだ戻ってこないし、みんな無事だといいけど……」
最初に比べ『双刃の甲冑魔獣』との遭遇が減ってきているので、ぼちぼち残りは少ないだろうと推測するランゼたち。
生徒たちに関しても、知ってる顔はみんな助けた。まだどこかで迷ってる可能性もあるが、それも『声真似カエル』で呼び寄せられるだろう。
問題は、奥に残っているアリーシアやデミトフたちだ。
そこにヒロが向かったはずだが、未だに誰も戻ってこない。
ヒロのことだけに、恐らく問題ないと信じているランゼたちだが、しかしさすがに心配になってきた。
まさかヒロがやられたなんてことは……。
ふとそう考えただけで、心臓に針を打たれたように3人の胸はズキリと痛んだ。
自分たちも奥へ行ってみようか。
そう思い始めたとき、奥からこちらへと近付いてくる複数の気配を感じた。
きっとヒロたちだ! よかった……と一安心するランゼたち。
「デミトフ、ゴライアス、無事だったか!」
姿が見えたのは、デミトフ、ゴライアス、ミーティス、ペガル、キリエの5人。
ホッとしたのも束の間、ヒロとアリーシアの姿が見えないことにランゼたちは不安を募らせる。
「ランゼ!? お前たちがなんでこんな所に!?」
間近まで近付いたデミトフは、ランゼたちを見て驚きの声を上げる。
今回のこの遠征にはランゼたちは呼ばれてなかったはずだ。それに、最下層は簡単に来られるような場所ではない。
なのに、何故ここにいるのか?
「みんなが罠にハメられたと知って助けに来たんだ」
「罠だって!? どういう意味なんだそれは!?」
「学院長がみんなを騙してこの迷宮に誘い込んだんだよ!」
「うそ……だろ!?」
衝撃の事実を知ってデミトフとゴライアス、そしてミーティスたちも絶句する。
言われてみれば、この迷宮はおかしなことばかりだった。学院長ジャヴォルを信じていたミーティスたちも、ランゼはウソを言ってないと確信する。
「殺された教師もいるし間違いないぜ。それで、アリーシアとヒロはどうしたんだ?」
「ヒロ……? ヒロ・ゼインのことなら、オレたちは会ってないぜ?」
「会ってないの!? じゃ、じゃあヒロ君はどこに行ったの!?」
ゴライアスの答えにクリスティが動揺する。もちろん、サイファやランゼもだ。
デミトフたちを助けるためにヒロは奥へと向かったのに、何故出会っていないのか?
「いや、僕たちは最奥の部屋を脱出したあと、とんでもないヤツに追われ……」
とデミトフが説明しようとしたところで、通路奥からゴツゴツと鈍い音が聞こえてきた。
巨大な何かが接近してくるような、重厚な威圧感を感じるランゼたち。
「ああっ、ちくしょうっ! やっぱり追いついてきやがった!」
ゴライアスの言葉と同時に、その気配の主が現れる。
それは『双刃の甲冑魔獣』と似た外見ながら、その身体はおよそ倍ほどもある巨大さで、実に10m近い体長を誇っていた。
通常個体より遙かに硬質な外殻を持ち、スピードもパワーもケタ違いなこの怪物の正体――それは『双刃の甲冑魔獣』をまとめるチーフモンスター『装甲獣の統率者』だった。
デミトフたち5人は最奥の広場から逃げ出したあと、いくらも進まないうちにこの怪物と出会ってしまった。
そしてその場を追われ、脱出ルートを大きく外れて迷宮を彷徨うことに。
そこへ入れ替わるようにヒロが到着したので、デミトフたちとはちょうど行き違いになっていた。
デミトフたちは必死に逃げ回り、なんとか『装甲獣の統率者』を巻いてここまで来たのだが、結局また追いつかれてしまったのだった。
「お前たち、再会の挨拶はそれくらいにしろ! 急いで逃げるぞ!」
ランゼたちの会話を聞いていたミーティスが、慌てて逃走の指示をする。
やっと正規ルートに戻ってきたので、あとは地図通りに行けば脱出できるはず。
……ただし、この怪物が追うのを諦めてくれればの話だが。
どこかで巻かない限り、怪物との追いかけっこは果てしなく続くだろう。
そうなれば、体力的にミーティスたちが先にバテる可能性が高い。
かといって、怪物を巻くためにルートを外れてしまえば、また脱出から遠ざかってしまう。
どうにも解決策は見つからないが、今は逃げる以外の選択肢がなかった。
よって、ミーティスたちSSSランク3人はすぐさまこの場を離れていく。
怪物を引き止めようなどとは微塵も思わない。いや、ここへ来る前に少しは試みてみたのだが、まったく無駄に終わっているのだ。
今さらまた戦って、無駄に体力を使うわけにはいかない。
デミトフたちもそれに倣って走り出すが、ランゼたちはこの場から動こうとはしなかった。
それを見てデミトフが叫ぶ。
「ランゼっ、何してるんだ、早く逃げないと!」
「……いや、アタシたちがコイツを倒す!」
予想外の言葉に驚くデミトフとゴライアス。
「何バカなこと言ってるんだ、そんなことできるわけないだろ!」
「やってみなくちゃ分からないぜ。とにかく、ここでコイツを止めなくちゃみんなが危険だ」
「そうね、こんなのが追いかけてきたら、先に逃げてる人たちもすぐに追いつかれちゃう」
「ここはボクたちがなんとかするので、お二人とも構わず逃げてください」
こんなヤツを野放しにしては、誰が犠牲になるか分からない。
ヒロがどこに行ったのかは不明だが、奥のことはヒロに任せておけば安心だ。自分たちは脱出するみんなのため、ここを守るだけ。
ランゼ、クリスティ、サイファは、強敵と戦う決意を固める。
けっして相手をなめているわけではなく、命を賭して戦う覚悟だった。
「付き合ってられないぜ」
あまりに馬鹿げた発言に、ゴライアスは呆れ果ててその場を離れようとした。
その直後、ランゼが怪物――『装甲獣の統率者』に突進するのを見て、ふと足を止めてしまう。
「行くぜ化け物っ!」
それは今まで見たことないスピードだった。
学校でサバイバルバトルをしたとき――あのときも驚きの成長を見せていたが、今のランゼはそれとは比べものにならないほどの戦士になっていたのだ。
一瞬で『装甲獣の統率者』との距離を詰め、飛び上がりながらその腹部へパンチを打ち込む。
「喰らえっ、『千手の剛拳』っ!」
ランゼが目にも止まらぬ速さで連続パンチを放つと、何故かその数十倍もの打撃音が聞こえ、さらにパンチが当たっていない場所からも火花が散っていた。
そしてどんな攻撃も無効だった怪物が、ランゼのパワーに押されてほんの少し後ずさりしたのだった。
「なんだ、ランゼのこの力……僕たちでは足止めすらできなかったのに!?」
信じられない光景に、逃げようとしていたデミトフも釘付けになる。
ランゼが両手に着けている金色の手袋――『千手の剛拳』は、『魔女の工芸師』の能力で作った魔道具で、自分の打撃に合わせて数十倍もの見えない拳が追加攻撃する効果があった。
これにより非常に高い攻撃力を出せるが、欠点として超接近戦をしなくてはならない。
つまり、ランゼは自分の身を斬らせる覚悟で戦っているのだ。
一瞬動きを止めた『装甲獣の統率者』だったが、すぐに体勢を立て直し、ランゼに向かって鋭い爪で襲いかかる。
それをかろうじてランゼは躱し、バックステップをして一度距離を取った。
そして入れ替わりに、今度はサイファが接近する。
「打ち潰せっ、神具『鋼割りの大槌』っ!」
サイファが手に持つハンマーを見て、デミトフとゴライアスは目を疑う。
果たして、ゴライアスでも持てるかどうかという巨大さだ。それを自身の身体ごとぶつけるような勢いで振り回し、怪物へと叩き付けた。
さすがの怪物もこの衝撃には大きくのけぞり、何物をも弾いていた硬質なボディーに凹みが生じる。
それでも、この怪物にとっては大したダメージではないようだった。
サイファが『英霊憑依』によって喚び出した英霊――それは『烈震の仁王』という異名を持つ超怪力の大男バザラダラだった。
バザラダラはたった1人で体長40mの怪物『山砕く巨爪獣』を討伐した英雄で、彼の超力をその身に宿してサイファは戦っている。
「ランゼ、サイファどいて! 4段階増幅完了、『激烈攻撃』っ!」
溜めが終わったクリスティが、『装甲獣の統率者』に向けて矢を放つ。
その青い光線は一直線に怪物へと吸い込まれていくが、ヒットの直前に硬質な腕によって払われてしまった。
トドメのつもりで放った矢だったが、そう簡単にはいかない相手らしい。クリスティは初めて矢を防がれて、背筋に冷たいモノを感じた。
……自分たちで本当に倒せるのか?
攻撃力だけでいうなら、3人の中でクリスティが一番高い。
その自分の攻撃が通用しなければ、この怪物を倒す手段がない。
クリスティは奥歯を噛みしめて心を落ち着けると、1つ深呼吸してから改めて勇気を奮い起こす。
ヒロが戻ってくるまで、自分たちがここを守るのだ。
「ランゼ、サイファ、なんとか10分時間を稼いで! コイツは私が倒すわ!」
クリスティの限界パワーを引き出すには、このチャージ時間が必要だった。
そして全魔力も使うことになるので、減った魔力を補充するためクリスティは『完全回復薬』を飲む。
「了解だぜ!」
「任せてください!」
クリスティの言葉を受けて、ランゼとサイファは怪物を攪乱する作戦に出た。
先ほどの攻撃がまったく通用しないなら、2人にはもう怪物を倒せない。まさしくクリスティだけが頼りだ。
とにかく、死ぬ気で時間を稼ぐしかない。2人は必死に動いて怪物を引きつける。
「どうなってんだ!? ランゼもサイファも、そしてクリスティも『ナンバーズ』級の強さじゃねえか!」
ランゼたちのあまりの成長ぶりに、ゴライアスが思わず呆然とする。
自分たちより強いとか、そんなレベルではない。師匠であるミーティスやペガルよりもランゼたちは強くなっているのだ。
あの落ちこぼれだった3人が、自分たちが心底馬鹿にしていたランゼたちが、今や仲間を救うために命懸けで戦っている。
その姿を見て、デミトフも言葉を失っていた。
「くそっ、ホントに手強いヤツだぜ。このままじゃ10分も時間が稼げねえっ」
自分たちだけでは時間稼ぎが難しいと判断したランゼは、ヒロから預かっていたアダマンタイト製のゴーレム5体をアイテムボックスから解き放った。
ランゼとサイファの2人だけでは、どうしても怪物の攻撃が集中してしまう。もっとターゲットを散らさなくては。
……と、ゴーレムを使うことにしたわけだが……。
しかし、ものの十秒で5体のゴーレムはバラバラにされてしまった。
怪物を引きつけるため、ゴーレムにはより接近戦をさせていたのだが、どうやら近付きすぎてしまったらしい。
うるさい小バエを退治した怪物は一気に疾走し、ゴーレムが破壊されて動揺してしまったランゼをその鋭い爪で薙ぎ払った。
「ぎゃうっっ!」
間違いなく即死の攻撃ではあったが、『蒼魂鋼』製の胸当てによってたまたま命拾いしたランゼ。
それでも激しく壁に打ち付けられたダメージは大きく、本来なら重傷で動けないはずだったが、『魔女の工芸師』で作り出したアイテム『救済の山羊』によってそれを避けることができた。
ヤギを模したこの20センチほどの人形は、製作者=ランゼが大ダメージを負ったとき、その半分を引き受けてくれる魔道具だった。
ランゼのダメージを肩代わりし、役目を終えた『救済の山羊』は粉々に砕け散る。
「ランゼちゃん大丈夫!? 無理しないで!」
「ああ、ちょっとミスっちまった。もう大丈夫だから心配しなくていいぜサイファ」
そう答えつつも、さすがのランゼも少し足が震えた。
次に喰らったら、身代わりアイテムがあっても生きている保証はない。クリスティのチャージが終わるまであと5分以上、果たして逃げ切れるだろうか?
それでもランゼは、勇気を振り絞って自分を奮い立たせる。
だが、長時間の戦闘による疲労から、ついランゼの足がふらついてしまった。
その隙を見逃さず、『装甲獣の統率者』は必殺の一撃をランゼに繰り出した。
絶体絶命の状況に、思わず目を瞑るランゼ……。
「ぐあああっ」
「デ……デミトフっ!?」
そこに間一髪、デミトフが飛び込んでランゼを突き飛ばした。
ランゼの代わりに怪物の刃を受けたデミトフだったが、ギリギリで致命傷にはなっていなかった。
『狂神の巨人』との戦いでは、怖くて実行できなかった自己犠牲の能力――受けたダメージによって自身の戦闘力が上がる『制裁人』だが、今まさに望み通りのダメージを受けることができた。
「デミトフ、お前アタシのために……?」
「お、落ちこぼれのキミたちが戦ってるのに、僕が逃げるわけにはいかないからね。それに……さっきアリーシアを見捨てて逃げてしまったんだ」
「アリーシアを?」
「そうさ。僕は怖かった……倒れたアリーシアに、手を差し伸べることができなかった。アリーシアを殺したのは僕だ。その償いのためにも、僕は戦う」
デミトフは、自分を見るアリーシアの絶望の目が忘れられなかった。
あの場合は仕方なかったとはいえ、このままでは一生後悔を引きずるだろう。それを償うためにも、この怪物と命懸けで戦うことを誓った。
「へっ、アリーシアのことなら大丈夫さ。ヒロが絶対に助けてくれる」
悲嘆に暮れているデミトフを励ますようにランゼが言う。
「ヒロ・ゼインが? 彼にそんな力があるというのか? 奥にいた巨人は、この世のモノとは思えない怪物だったぞ?」
「ヒロは王様だったんだ。アタシたちもついさっき知ったんだけどな。みんなはヒロのこと『魔王ユーリ』って言ってたぜ」
「『魔王ユーリ』!? 彼が!?」
「ああ、だから絶対に負けない」
『魔王ユーリ』……このイストリア世界における最強の存在。
彼ならば、あの無敵の巨人にも勝てるかもしれない。
「そうだったのか……ふふっ、ならアリーシアも無事かもしれないな。これで僕も心置きなく戦える。いくぞ怪物、『怨敵成敗』っ!」
デミトフは自らの傷を治療したあと、称号の力を解放する。
これによって、デミトフの戦闘力は最大まで上昇した。
ランゼたちほどの戦闘力はないが、戦いのセンスは圧倒的だ。その鋭い動きで、『装甲獣の統率者』を攪乱していく。
「デミトフ、オレも助太刀するぜ!」
デミトフの命懸けの行動を見て、ゴライアスも参戦した。
敵味方問わず攻撃してしまうゴライアスの称号は解放できないが、素の戦闘力も充分高い。
ダメージを与えるような攻撃はできないが、怪物の気を引くことくらいならなんとか可能だった。
少しのミスが命取りになる状況で、必死に時間稼ぎをする4人。
そしてようやくその待ち望んだ瞬間が訪れたのだった。
「みんなありがとう! 私のチャージが終わったわ、すぐにそいつから離れて!」
クリスティの言葉を聞いて、4人はいっせいにその場を離脱する。
それを追おうとした『装甲獣の統率者』に、クリスティの必殺の矢が放たれた。
「6段階増幅完了! これが私の最大パワーよ、『絶壊攻撃』っ!」
1段階――増力攻撃
2段階――強化攻撃
3段階――高威攻撃
4段階――激烈攻撃
5段階――極大攻撃
6段階――絶壊攻撃
4段階の『激烈攻撃』のチャージ時間が1分なのに対し、6段階の『絶壊攻撃』は10分を必要とする。
その威力は、『激烈攻撃』が通常の10倍に対して、『絶壊攻撃』は100倍にもなる。
これは単純に攻撃力が10倍というわけではない。『激烈攻撃』を何発放とうともけっして届かない、究極の威力にまで到達するのだ。
その絶対的破壊力を持った『蒼魂鋼』製の矢が、凄まじい衝撃波をまといながら蒼い閃光となって怪物『装甲獣の統率者』へと飛び込む。
それを超反応で払いのけようとする『装甲獣の統率者』。
しかし、クリスティの全てを込めた矢は、怪物の腕ごとぶっ飛ばしてその黒い装甲を撃ち抜いたのだった。
「や……やったーっ!」
ぐにゃりと身体を歪ませながら崩れ落ちる『装甲獣の統率者』を見て、その場にいた5人は歓喜の声を上げた。
そして無事成し遂げた安堵と、全身を襲う疲労に足が震えながらも、全員がゆっくりと集合する。
ふとランゼに向かってデミトフが手を差し出す。何も言わずにランゼもその手を握る。
小さな英雄となった彼らに、もう言葉はいらなかった。
その後、迷宮内にはしばしの静寂が続いたのち、突如激しく揺れて地鳴りが響き渡った。
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本日コミカライズ第10話が更新されました!
今回はユーリだけでなくリノも大活躍しますので、どうぞご覧になってください。
それと、申し訳ありませんが、次の更新も少し遅れるかもしれません。
しばらくは不定期更新になりそうなので、気長にお待ちいただけると幸いです。
怪物――『双刃の甲冑魔獣』を引きつけていたランゼとサイファは、クリスティが『精神統一』で溜めた力を解放するのを見て、素早くその場を回避する。
そこに衝撃波をまとった矢がうなりを上げて飛来し、怪物の硬質な胴体に大きな風穴を開けた。
「よっしゃあーっ! ナイスとどめ!」
「お見事です、クリスティちゃん!」
ランゼとサイファは無理に接近戦をせず、怪物を攪乱しながら時間を稼いだあと、隙を見てクリスティがとどめを刺す。
これは3人の得意な戦闘パターンであった。
怪物が完全に絶命したのを確認して、ランゼとサイファはクリスティへと駆け寄る。
すでに彼女たちが討伐した『双刃の甲冑魔獣』は10体を超え、そしてその間に多くの生徒や冒険者たちを救出していた。
現在彼らはランゼの魔道具『迷宮案内蝶』によって、迷宮の出口へ向かって移動している。
「怪物の姿があまり見えなくなってきたし、そろそろ全滅したんじゃないかしら?」
「かもな。散らばってたみんなもだいたい助けたし、もうこの辺りは安全かも」
「あとはヒロさんですね。デミトフ君たちがまだ戻ってこないし、みんな無事だといいけど……」
最初に比べ『双刃の甲冑魔獣』との遭遇が減ってきているので、ぼちぼち残りは少ないだろうと推測するランゼたち。
生徒たちに関しても、知ってる顔はみんな助けた。まだどこかで迷ってる可能性もあるが、それも『声真似カエル』で呼び寄せられるだろう。
問題は、奥に残っているアリーシアやデミトフたちだ。
そこにヒロが向かったはずだが、未だに誰も戻ってこない。
ヒロのことだけに、恐らく問題ないと信じているランゼたちだが、しかしさすがに心配になってきた。
まさかヒロがやられたなんてことは……。
ふとそう考えただけで、心臓に針を打たれたように3人の胸はズキリと痛んだ。
自分たちも奥へ行ってみようか。
そう思い始めたとき、奥からこちらへと近付いてくる複数の気配を感じた。
きっとヒロたちだ! よかった……と一安心するランゼたち。
「デミトフ、ゴライアス、無事だったか!」
姿が見えたのは、デミトフ、ゴライアス、ミーティス、ペガル、キリエの5人。
ホッとしたのも束の間、ヒロとアリーシアの姿が見えないことにランゼたちは不安を募らせる。
「ランゼ!? お前たちがなんでこんな所に!?」
間近まで近付いたデミトフは、ランゼたちを見て驚きの声を上げる。
今回のこの遠征にはランゼたちは呼ばれてなかったはずだ。それに、最下層は簡単に来られるような場所ではない。
なのに、何故ここにいるのか?
「みんなが罠にハメられたと知って助けに来たんだ」
「罠だって!? どういう意味なんだそれは!?」
「学院長がみんなを騙してこの迷宮に誘い込んだんだよ!」
「うそ……だろ!?」
衝撃の事実を知ってデミトフとゴライアス、そしてミーティスたちも絶句する。
言われてみれば、この迷宮はおかしなことばかりだった。学院長ジャヴォルを信じていたミーティスたちも、ランゼはウソを言ってないと確信する。
「殺された教師もいるし間違いないぜ。それで、アリーシアとヒロはどうしたんだ?」
「ヒロ……? ヒロ・ゼインのことなら、オレたちは会ってないぜ?」
「会ってないの!? じゃ、じゃあヒロ君はどこに行ったの!?」
ゴライアスの答えにクリスティが動揺する。もちろん、サイファやランゼもだ。
デミトフたちを助けるためにヒロは奥へと向かったのに、何故出会っていないのか?
「いや、僕たちは最奥の部屋を脱出したあと、とんでもないヤツに追われ……」
とデミトフが説明しようとしたところで、通路奥からゴツゴツと鈍い音が聞こえてきた。
巨大な何かが接近してくるような、重厚な威圧感を感じるランゼたち。
「ああっ、ちくしょうっ! やっぱり追いついてきやがった!」
ゴライアスの言葉と同時に、その気配の主が現れる。
それは『双刃の甲冑魔獣』と似た外見ながら、その身体はおよそ倍ほどもある巨大さで、実に10m近い体長を誇っていた。
通常個体より遙かに硬質な外殻を持ち、スピードもパワーもケタ違いなこの怪物の正体――それは『双刃の甲冑魔獣』をまとめるチーフモンスター『装甲獣の統率者』だった。
デミトフたち5人は最奥の広場から逃げ出したあと、いくらも進まないうちにこの怪物と出会ってしまった。
そしてその場を追われ、脱出ルートを大きく外れて迷宮を彷徨うことに。
そこへ入れ替わるようにヒロが到着したので、デミトフたちとはちょうど行き違いになっていた。
デミトフたちは必死に逃げ回り、なんとか『装甲獣の統率者』を巻いてここまで来たのだが、結局また追いつかれてしまったのだった。
「お前たち、再会の挨拶はそれくらいにしろ! 急いで逃げるぞ!」
ランゼたちの会話を聞いていたミーティスが、慌てて逃走の指示をする。
やっと正規ルートに戻ってきたので、あとは地図通りに行けば脱出できるはず。
……ただし、この怪物が追うのを諦めてくれればの話だが。
どこかで巻かない限り、怪物との追いかけっこは果てしなく続くだろう。
そうなれば、体力的にミーティスたちが先にバテる可能性が高い。
かといって、怪物を巻くためにルートを外れてしまえば、また脱出から遠ざかってしまう。
どうにも解決策は見つからないが、今は逃げる以外の選択肢がなかった。
よって、ミーティスたちSSSランク3人はすぐさまこの場を離れていく。
怪物を引き止めようなどとは微塵も思わない。いや、ここへ来る前に少しは試みてみたのだが、まったく無駄に終わっているのだ。
今さらまた戦って、無駄に体力を使うわけにはいかない。
デミトフたちもそれに倣って走り出すが、ランゼたちはこの場から動こうとはしなかった。
それを見てデミトフが叫ぶ。
「ランゼっ、何してるんだ、早く逃げないと!」
「……いや、アタシたちがコイツを倒す!」
予想外の言葉に驚くデミトフとゴライアス。
「何バカなこと言ってるんだ、そんなことできるわけないだろ!」
「やってみなくちゃ分からないぜ。とにかく、ここでコイツを止めなくちゃみんなが危険だ」
「そうね、こんなのが追いかけてきたら、先に逃げてる人たちもすぐに追いつかれちゃう」
「ここはボクたちがなんとかするので、お二人とも構わず逃げてください」
こんなヤツを野放しにしては、誰が犠牲になるか分からない。
ヒロがどこに行ったのかは不明だが、奥のことはヒロに任せておけば安心だ。自分たちは脱出するみんなのため、ここを守るだけ。
ランゼ、クリスティ、サイファは、強敵と戦う決意を固める。
けっして相手をなめているわけではなく、命を賭して戦う覚悟だった。
「付き合ってられないぜ」
あまりに馬鹿げた発言に、ゴライアスは呆れ果ててその場を離れようとした。
その直後、ランゼが怪物――『装甲獣の統率者』に突進するのを見て、ふと足を止めてしまう。
「行くぜ化け物っ!」
それは今まで見たことないスピードだった。
学校でサバイバルバトルをしたとき――あのときも驚きの成長を見せていたが、今のランゼはそれとは比べものにならないほどの戦士になっていたのだ。
一瞬で『装甲獣の統率者』との距離を詰め、飛び上がりながらその腹部へパンチを打ち込む。
「喰らえっ、『千手の剛拳』っ!」
ランゼが目にも止まらぬ速さで連続パンチを放つと、何故かその数十倍もの打撃音が聞こえ、さらにパンチが当たっていない場所からも火花が散っていた。
そしてどんな攻撃も無効だった怪物が、ランゼのパワーに押されてほんの少し後ずさりしたのだった。
「なんだ、ランゼのこの力……僕たちでは足止めすらできなかったのに!?」
信じられない光景に、逃げようとしていたデミトフも釘付けになる。
ランゼが両手に着けている金色の手袋――『千手の剛拳』は、『魔女の工芸師』の能力で作った魔道具で、自分の打撃に合わせて数十倍もの見えない拳が追加攻撃する効果があった。
これにより非常に高い攻撃力を出せるが、欠点として超接近戦をしなくてはならない。
つまり、ランゼは自分の身を斬らせる覚悟で戦っているのだ。
一瞬動きを止めた『装甲獣の統率者』だったが、すぐに体勢を立て直し、ランゼに向かって鋭い爪で襲いかかる。
それをかろうじてランゼは躱し、バックステップをして一度距離を取った。
そして入れ替わりに、今度はサイファが接近する。
「打ち潰せっ、神具『鋼割りの大槌』っ!」
サイファが手に持つハンマーを見て、デミトフとゴライアスは目を疑う。
果たして、ゴライアスでも持てるかどうかという巨大さだ。それを自身の身体ごとぶつけるような勢いで振り回し、怪物へと叩き付けた。
さすがの怪物もこの衝撃には大きくのけぞり、何物をも弾いていた硬質なボディーに凹みが生じる。
それでも、この怪物にとっては大したダメージではないようだった。
サイファが『英霊憑依』によって喚び出した英霊――それは『烈震の仁王』という異名を持つ超怪力の大男バザラダラだった。
バザラダラはたった1人で体長40mの怪物『山砕く巨爪獣』を討伐した英雄で、彼の超力をその身に宿してサイファは戦っている。
「ランゼ、サイファどいて! 4段階増幅完了、『激烈攻撃』っ!」
溜めが終わったクリスティが、『装甲獣の統率者』に向けて矢を放つ。
その青い光線は一直線に怪物へと吸い込まれていくが、ヒットの直前に硬質な腕によって払われてしまった。
トドメのつもりで放った矢だったが、そう簡単にはいかない相手らしい。クリスティは初めて矢を防がれて、背筋に冷たいモノを感じた。
……自分たちで本当に倒せるのか?
攻撃力だけでいうなら、3人の中でクリスティが一番高い。
その自分の攻撃が通用しなければ、この怪物を倒す手段がない。
クリスティは奥歯を噛みしめて心を落ち着けると、1つ深呼吸してから改めて勇気を奮い起こす。
ヒロが戻ってくるまで、自分たちがここを守るのだ。
「ランゼ、サイファ、なんとか10分時間を稼いで! コイツは私が倒すわ!」
クリスティの限界パワーを引き出すには、このチャージ時間が必要だった。
そして全魔力も使うことになるので、減った魔力を補充するためクリスティは『完全回復薬』を飲む。
「了解だぜ!」
「任せてください!」
クリスティの言葉を受けて、ランゼとサイファは怪物を攪乱する作戦に出た。
先ほどの攻撃がまったく通用しないなら、2人にはもう怪物を倒せない。まさしくクリスティだけが頼りだ。
とにかく、死ぬ気で時間を稼ぐしかない。2人は必死に動いて怪物を引きつける。
「どうなってんだ!? ランゼもサイファも、そしてクリスティも『ナンバーズ』級の強さじゃねえか!」
ランゼたちのあまりの成長ぶりに、ゴライアスが思わず呆然とする。
自分たちより強いとか、そんなレベルではない。師匠であるミーティスやペガルよりもランゼたちは強くなっているのだ。
あの落ちこぼれだった3人が、自分たちが心底馬鹿にしていたランゼたちが、今や仲間を救うために命懸けで戦っている。
その姿を見て、デミトフも言葉を失っていた。
「くそっ、ホントに手強いヤツだぜ。このままじゃ10分も時間が稼げねえっ」
自分たちだけでは時間稼ぎが難しいと判断したランゼは、ヒロから預かっていたアダマンタイト製のゴーレム5体をアイテムボックスから解き放った。
ランゼとサイファの2人だけでは、どうしても怪物の攻撃が集中してしまう。もっとターゲットを散らさなくては。
……と、ゴーレムを使うことにしたわけだが……。
しかし、ものの十秒で5体のゴーレムはバラバラにされてしまった。
怪物を引きつけるため、ゴーレムにはより接近戦をさせていたのだが、どうやら近付きすぎてしまったらしい。
うるさい小バエを退治した怪物は一気に疾走し、ゴーレムが破壊されて動揺してしまったランゼをその鋭い爪で薙ぎ払った。
「ぎゃうっっ!」
間違いなく即死の攻撃ではあったが、『蒼魂鋼』製の胸当てによってたまたま命拾いしたランゼ。
それでも激しく壁に打ち付けられたダメージは大きく、本来なら重傷で動けないはずだったが、『魔女の工芸師』で作り出したアイテム『救済の山羊』によってそれを避けることができた。
ヤギを模したこの20センチほどの人形は、製作者=ランゼが大ダメージを負ったとき、その半分を引き受けてくれる魔道具だった。
ランゼのダメージを肩代わりし、役目を終えた『救済の山羊』は粉々に砕け散る。
「ランゼちゃん大丈夫!? 無理しないで!」
「ああ、ちょっとミスっちまった。もう大丈夫だから心配しなくていいぜサイファ」
そう答えつつも、さすがのランゼも少し足が震えた。
次に喰らったら、身代わりアイテムがあっても生きている保証はない。クリスティのチャージが終わるまであと5分以上、果たして逃げ切れるだろうか?
それでもランゼは、勇気を振り絞って自分を奮い立たせる。
だが、長時間の戦闘による疲労から、ついランゼの足がふらついてしまった。
その隙を見逃さず、『装甲獣の統率者』は必殺の一撃をランゼに繰り出した。
絶体絶命の状況に、思わず目を瞑るランゼ……。
「ぐあああっ」
「デ……デミトフっ!?」
そこに間一髪、デミトフが飛び込んでランゼを突き飛ばした。
ランゼの代わりに怪物の刃を受けたデミトフだったが、ギリギリで致命傷にはなっていなかった。
『狂神の巨人』との戦いでは、怖くて実行できなかった自己犠牲の能力――受けたダメージによって自身の戦闘力が上がる『制裁人』だが、今まさに望み通りのダメージを受けることができた。
「デミトフ、お前アタシのために……?」
「お、落ちこぼれのキミたちが戦ってるのに、僕が逃げるわけにはいかないからね。それに……さっきアリーシアを見捨てて逃げてしまったんだ」
「アリーシアを?」
「そうさ。僕は怖かった……倒れたアリーシアに、手を差し伸べることができなかった。アリーシアを殺したのは僕だ。その償いのためにも、僕は戦う」
デミトフは、自分を見るアリーシアの絶望の目が忘れられなかった。
あの場合は仕方なかったとはいえ、このままでは一生後悔を引きずるだろう。それを償うためにも、この怪物と命懸けで戦うことを誓った。
「へっ、アリーシアのことなら大丈夫さ。ヒロが絶対に助けてくれる」
悲嘆に暮れているデミトフを励ますようにランゼが言う。
「ヒロ・ゼインが? 彼にそんな力があるというのか? 奥にいた巨人は、この世のモノとは思えない怪物だったぞ?」
「ヒロは王様だったんだ。アタシたちもついさっき知ったんだけどな。みんなはヒロのこと『魔王ユーリ』って言ってたぜ」
「『魔王ユーリ』!? 彼が!?」
「ああ、だから絶対に負けない」
『魔王ユーリ』……このイストリア世界における最強の存在。
彼ならば、あの無敵の巨人にも勝てるかもしれない。
「そうだったのか……ふふっ、ならアリーシアも無事かもしれないな。これで僕も心置きなく戦える。いくぞ怪物、『怨敵成敗』っ!」
デミトフは自らの傷を治療したあと、称号の力を解放する。
これによって、デミトフの戦闘力は最大まで上昇した。
ランゼたちほどの戦闘力はないが、戦いのセンスは圧倒的だ。その鋭い動きで、『装甲獣の統率者』を攪乱していく。
「デミトフ、オレも助太刀するぜ!」
デミトフの命懸けの行動を見て、ゴライアスも参戦した。
敵味方問わず攻撃してしまうゴライアスの称号は解放できないが、素の戦闘力も充分高い。
ダメージを与えるような攻撃はできないが、怪物の気を引くことくらいならなんとか可能だった。
少しのミスが命取りになる状況で、必死に時間稼ぎをする4人。
そしてようやくその待ち望んだ瞬間が訪れたのだった。
「みんなありがとう! 私のチャージが終わったわ、すぐにそいつから離れて!」
クリスティの言葉を聞いて、4人はいっせいにその場を離脱する。
それを追おうとした『装甲獣の統率者』に、クリスティの必殺の矢が放たれた。
「6段階増幅完了! これが私の最大パワーよ、『絶壊攻撃』っ!」
1段階――増力攻撃
2段階――強化攻撃
3段階――高威攻撃
4段階――激烈攻撃
5段階――極大攻撃
6段階――絶壊攻撃
4段階の『激烈攻撃』のチャージ時間が1分なのに対し、6段階の『絶壊攻撃』は10分を必要とする。
その威力は、『激烈攻撃』が通常の10倍に対して、『絶壊攻撃』は100倍にもなる。
これは単純に攻撃力が10倍というわけではない。『激烈攻撃』を何発放とうともけっして届かない、究極の威力にまで到達するのだ。
その絶対的破壊力を持った『蒼魂鋼』製の矢が、凄まじい衝撃波をまといながら蒼い閃光となって怪物『装甲獣の統率者』へと飛び込む。
それを超反応で払いのけようとする『装甲獣の統率者』。
しかし、クリスティの全てを込めた矢は、怪物の腕ごとぶっ飛ばしてその黒い装甲を撃ち抜いたのだった。
「や……やったーっ!」
ぐにゃりと身体を歪ませながら崩れ落ちる『装甲獣の統率者』を見て、その場にいた5人は歓喜の声を上げた。
そして無事成し遂げた安堵と、全身を襲う疲労に足が震えながらも、全員がゆっくりと集合する。
ふとランゼに向かってデミトフが手を差し出す。何も言わずにランゼもその手を握る。
小さな英雄となった彼らに、もう言葉はいらなかった。
その後、迷宮内にはしばしの静寂が続いたのち、突如激しく揺れて地鳴りが響き渡った。
***********************************
本日コミカライズ第10話が更新されました!
今回はユーリだけでなくリノも大活躍しますので、どうぞご覧になってください。
それと、申し訳ありませんが、次の更新も少し遅れるかもしれません。
しばらくは不定期更新になりそうなので、気長にお待ちいただけると幸いです。
10
ツイッター始めました☆ まるずし@maruzusi です。どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m
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