無限のスキルゲッター! 毎月レアスキルと大量経験値を貰っている僕は、異次元の強さで無双する

まるずし

文字の大きさ
表紙へ
上 下
39 / 258
3巻

3-3

しおりを挟む
 自分は一度死んで生き返った不死身の男だと、勝手に自負していたコンスター。
 怖いもの知らずで生きてきた男にとって、目の前の現実は受け入れがたいことだった。
 このままでは、この城が落とされてしまう……
 ――いいや、まだじゃ! この王城には超強力な退魔の結界が張ってある。一度たりとも魔の者の侵入を許したことのない、無敵の障壁バリアじゃ! いくら魔王と言えど、そう簡単に城に入れるわけがない。
 そう己を鼓舞するコンスターだったが……

「『虚無への回帰ヴァニタス・エフェクト』っ!」

 ドラゴンに乗った少年が何かをつぶやくと、王城を防御する退魔の結界が全て霧散した。

「しょんな、しょんなはずあるわけ……」
「今から我はそこへ行く。愚王よ、心して待つがよい」

 我がもの顔で振る舞ってきた独裁者に、かつてない恐怖が襲いかかる。
 おびえるコンスターなど意にも介さず、少年はドラゴンの背から飛び降りると、歩いて王宮内へと侵入する。

「ヴォルク、ヴォルクーっ! た、頼む、ヤツを、あの魔王を倒してくれえっ」
「ちっ、マジで魔王だったんか? やっかいだが、この王宮内で戦うならオレにも勝機はあるぜ」

 謎の少年を迎え撃つべく、ヴォルクは足早に移動した。



 3.魔王になりきってみる


「よし、今日は魔王らしい演技をしなくちゃな。ガッツリ脅せば相手も抵抗する気なくなるだろうし、戦闘も早めに終わるだろう」

 ゼインの背に乗って移動しながら、魔王のイメージを反芻はんすうする。
 ゼルドナには、本物の魔王のフリをして乗り込もうと思っているからだ。
 今回の戦闘は僕一人で行くことにした。
 リノたちを連れているとめられそうだからね。もちろん、彼女たちに万が一があっても困るし。
 頑張って魔王らしいところを見せてやるぞ。

「ンガーオ!」
「そうだ、ルクも一緒だったね」

 ルクが来たがったので一応連れてきた。伝説の『キャスパルク』は、魔王の威厳を見せるのに充分な存在だし。
 もちろん、ルクには手加減するようにお願いしてある。
 また、魔王のフリをするに当たって、僕の衣装もそれっぽい感じになっている。
 それっぽいといっても魔王なんか誰も見たことないので、おとぎ話に出てくるような格好に雰囲気を合わせてるだけだが。
 衣装はリノたちがわいわいと楽しく作ってくれた。
 どうすれば邪悪な感じになるかとか、魔王に相応ふさわしい雰囲気が出せるかとか、みんなノリノリだったようだ。
 世界を相手に戦うかもしれないのに、危機感ないというか……まあ楽しそうで何よりだけど。
 僕の外見が魔王っぽく見えるかはともかく、ゼインがいるのは本当に大きい。
 僕だけでは、そう簡単には恐怖を与えることはできないだろう。
 だけどこんな巨大なドラゴンで乗り込めば、いやが応でも魔王の存在を信じる気になるはず。
 ゼインが仲間になってくれて本当によかった。
 今回色々とちょっかいを出されたが、諸悪の根源はゼルドナ王で、無理矢理命令されてる兵士も多いはずだ。
 善良な人は傷つけたくないし、被害は最小限に抑えたい。
 こうやって脅しを重視してるのは、魔王の恐ろしさをこれでもかと見せつけ、逆らうのは無駄と思わせたほうが、相手の諦めも早いだろうという目算からだ。
 あとは、『神遺魔法ロストマジック』の『分身体レプリケーション』で僕のコピーを十体作り、そいつらにも戦わせる予定だ。
 ハッタリをかせるため、分身体の体格は最大限に大きくし、顔はのっぺらぼうにした。
 僕と同じ顔が十人もいるとさすがにおかしいからね。
 分身体はベースレベル999の僕と同じステータスなので、かなり強い。
 僕の持つスキルや魔法まではコピーできないが、素のステータスだけでもSSSランク冒険者くらいには戦えるはずだ。
 何せレベル999なので、HPがべらぼうに高い。
 耐久スキルがなくても充分化け物クラスで、余程のことがない限り、まずHPは尽きないだろう。
 その分身体に、『魔道具作製』レベル10で強化した装備を着けさせるので、あの『ナンバーズ』のボルゴスくらいは強いかもしれない。
 分身体には状態異常攻撃は効かないし、ダメージを受けてもひるまないし、怪力で巨体な上にHPも山ほどあるしで、相手にとってはかなり恐ろしい存在だ。
 結構怖がってくれると思っている。
 この分身体たちを、最強の死霊馬『蹂躙せし双角獣デビルバイコーン』に乗せて騎兵隊を作った。
蹂躙せし双角獣デビルバイコーン』は『死霊魔法』レベル10じゃないと召喚できないので、まずび出せる人はいないだろうし、普通は見たことすらないはずだ。
蹂躙せし双角獣デビルバイコーン』は近付くだけで相手を『精神破壊マインドブラスト』しちゃうんだけど、それでは多くの怪我人が出そうなので、今回はその能力は封印することに。
 それでも、この死霊馬はドラゴン並みの体力があるので、まあそこらの兵士が何人集まっても殺せないだろう。
 ゼルドナ王都に近付いたところで突撃準備を整え、この最強の騎兵隊を引き連れながら、僕たちは王都内へ突入した。


 戦闘が始まると、兵士たちが『デスライダー』とか言いながら騒ぎ始めた。
 どうやらたまたま作ったこの騎兵隊が、『デスライダー』というのに似てるらしい。
 多分ゼルドナに伝わる架空の騎士なんだろうけど、おかげで想定以上に怖がってくれてラッキーだ。
 ルクも手加減しながら上手に活躍してくれている。
 そしてゼインの背中からゼルドナ王に宣戦布告。
 王城には悪魔を拒絶する退魔の結界が張られているようだけど、人間の僕には全然関係ない。
 ただ、一応魔王という設定で攻めているので、結界はちゃんと壊してあげないとね。
 僕は『神遺魔法ロストマジック』にある解除魔法ディスペル・マジック――様々な効果を打ち消す『虚無への回帰ヴァニタス・エフェクト』で、結界を全て無効化した。

「今から我はそこへ行く。愚王よ、心して待つがよい」

 そう宣言した後、ゼインの背から飛び降り、ゼルドナ王がいる王宮の正面から中へと入る。
 一階には謁見の間とかあるみたいだけど、さっきゼルドナ王は三階から顔を出してたな。
 恐らく下には降りず、そのまま上の階にいることだろう。
 僕は階段を見つけて二階に上がっていく。
 独裁者で敵の多かったゼルドナ王だけに、王宮内の防犯対策にはかなり力を入れていたようだ。
 あちこちに侵入者撃退用の罠が仕掛けてあるけど、もちろん僕には通用しない。
 そのまま無人の野を歩くが如く、全ての罠を破壊して三階へと向かう。
 三階へ上がると、あとは王様の部屋まで一直線だけど、その通路の途中に怪しげな一角が。
 まあ分かりやすい罠だ。『領域支配』スキルで、隠れているヤツの殺気もガッツリと感知してるし。
 回り道を探すのも面倒だし、そのまま罠に直行してみる。
 そういえば、ゼルドナには名高い将軍がいたっけ。確か獣人で、負け知らずってほど強かったはず。
 かなり残虐な性格で、あちこちの戦いで容赦なく敵を殺してるとか。
 待ち受けてるのは多分その人だな。
 特に気にすることもなく、僕は無防備に通路を歩いていく。
 予想通り、怪しい区画に差し掛かったとたん、後ろに鋼の棒が下りて僕の退路を断った。
 そして、前からは獣人らしき男――身長百八十センチを超える屈強な体格の狼人が現れる。
 ちなみに、獣人の見た目は普通の人間とほぼ変わらないが、頭部の獣耳と手首足首あたりの毛がフサフサしていることで見分けがつく。

「クックックッ、よく来た魔王よ。オレは人類最強のヴォルクだ。せっかく復活したようだが、このオレが魔界へ叩き帰してやる。いや、行くのは地獄かな?」

 やはりその将軍か。
 解析してみると、なるほど強い。全体的なポテンシャルの高さに加え、当然のように『称号』まで持っている。
 その名は『白銀の狼』。
『ナンバーズ』のボルゴスやフォルスさんと同じSSランク称号だ。
 能力を解放すると野獣化ビーストモードとなって、大幅に戦闘力が上がるらしい。

「このエリアでは魔法は全て使えない。つまり、オレとの肉弾戦だ。いくら魔王とて、この狭い空間ならオレには勝てんぞ」

 あっ、ホントだ! いつの間にか魔法封鎖結界が発動してた。
 人間の結界にしては規格外なほど、かなり強い魔力を感じる。多分、増幅装置を使った強化結界だろう。
 対象エリアも極力絞って、その分高出力になっている感じだ。
 ただ、封じているのは『属性魔法』や『光・闇魔法』、『神聖魔法』などの通常魔法で、上位の『界域魔法』とかは問題なく使えるようだ。
 まあ知らないんだろうな。
 ここは通路の幅七メートル、前後の奥行きが十五メートルほど。
 この狭い場所なら自信ありってことか。
 いいだろう。せっかくだから、『呪王の死睨しげい』も魔法も使わずに付き合ってやる。


「行くぞ魔王っ! 時代遅れロートルはもはや用なしだ。尻尾を巻いて地の底へと帰るがいい! 満ちよ月光、獣王進化!」

 ゼルドナが誇る将軍――獣人ヴォルクが『白銀の狼』の能力を発動する。
 すると、灰色の体毛が一気に伸びて、そして全身の骨格もゴリゴリと音が聞こえてきそうなほど大きく変形し始めた。
 基本的に獣人は体毛が濃いが、それはあくまで一般的な人間と比較してであって、本物の獣のように全身が毛におおわれているわけではない。
 顔も、獣耳を除けば普通の人間と同じだ。
 それが、ヴォルクが力を解放したとたん、まるで本物の魔獣のように全身が体毛で覆われ、筋肉も魔獣のそれに変化し、そして顔もヘルハウンドのようにアゴを突き出した獣顔になった。


 これは……『人狼ワーウルフ』だ!


 すでに絶滅したと言われる魔族で、最強魔族『吸血鬼ヴァンパイア』と並ぶほどの力を持っていたという。
 その能力が、『称号』として受け継がれていたんだ!
 伸びた体毛は見るからに硬質なモノへと変化し、ギラギラと銀色に輝き出す。
 なるほど、ヴォルクが自信に溢れているのも分かる。
人狼ワーウルフ』や『吸血鬼ヴァンパイア』は、人間を遙かに超えた存在だ。常人では到底敵うような相手じゃない。
 変身が完了したヴォルクには、すでに人間だった面影はなかった。

「では魔王よ、戦闘開始だ!」

 ヴォルクはそう宣言したあと、ほんの少しかがんだかと思えば、一瞬で間合いを詰めてその両手の爪で攻撃してきた。
 人狼になったヴォルクは、全身が筋肉の塊みたいなモノだ。
 通常の人間では考えられないような動きで攻撃を仕掛けてくる。
 だが僕は、相手の少し先の行動が見える『超越者の目デウスプレディクト』を持っている。
 この程度では僕の虚をくことはできない。

「やるな魔王! しかし、これは避けられるかな?」

 ヴォルクの姿が、一瞬視界から消えた。
 それは上下左右の壁を使って、立体的に攻撃をしてきたからだ。
 コレは凄い!
 壁に飛んだかと思えば、天に着いたり地を蹴ったりと、戦闘のセオリーでは考えられない動きをしている。
 その常識外の動きに、さすがの僕も少し面食らった。
 この狭い空間はヤツの巣穴だ。
 ここなら魔王に勝てると言ったのも、あながちウソではなかった。
 しかし、残念ながら僕には当たらない。
 そして僕の剣がヴォルクをとらえる!


 ザギンッ!


 えっ? なんだこのおかしな感触は……!?

「さすが魔王、人狼になったオレに攻撃を当てたのは、お前が初めてだぜ。だが、オレを斬ることはできない!」

 ヴォルクの銀色の体毛は想像以上に硬くなっていて、それでいてしなやかに衝撃を吸収し、僕の『竜牙の剣ドラゴンソード』でも斬れなかった。
 これはドラゴンを超える強靱きょうじんさだ。
 ここまでとは……
 ドラゴンですら即死だった『呪王の死睨』に耐えられるかどうか、少々実験してみたくなるほどの生命力だ。
 これほどの強敵と戦えることは本当にありがたい。
 ゴーグやヴァクラースにあって僕に足らないモノ――それは戦いに対してのセンスや野性的な勘だ。戦闘本能といってもいい。
 それをしっかり養っておかないと、いくら強いスキルを持っていても十全に活用することはできない。
 僕が成長するためにも、このヴォルクの力を存分に味わいたいところだ。

「これでも喰らいやがれ! 『消滅の咆哮イレーズハウリング』っ!」

 ヴォルクが口を大きく開けて咆哮を上げる。
 これは破壊の振動波だ。立ちはだかるモノを全て粉砕していく。
 まあ喰らっても大丈夫だろうが、あまり手抜きの戦いには慣れたくない。
 なので、しっかり避ける。

「くっ……コレもかわすのか!? さすが魔王と言われるだけあるぜ!」

 ヴォルクは動きのスピードをさらに上げる。もはや残像が見えるほどの速さだ。
 並の動体視力では追えないほど、上下左右を跳ね回り、有り得ない角度から攻撃を仕掛けてくる。
 結界で通常クラスの魔法は封じられてるし、この状況でヴォルクに勝てるのはそうはいないだろうな。
 ちなみに、僕の持つ『蜃気楼の騎士ミラージュナイト』は回避不能の攻撃を出せるが、それは適当な方向を斬っても相手に当たるということではない。
 当たり前だが、ちゃんと相手を狙わなくては当てることはできない。
 いったいどういう現象が起こっているのか、技を使っている僕には分からなかったが、攻撃を受けたメジェールいわく、剣がまさしく蜃気楼ミラージュのように消えて、防御も回避もできなくなるとのこと。
 そういう効果なので、ちゃんと動きを捉えないと、『蜃気楼の騎士ミラージュナイト』をもってしてもヴォルクを斬ることはできない。
 しかし、動きを捉えたら、攻撃を躱すのは不可能だ。
 そして『竜牙の剣ドラゴンソード』で斬れないなら、を使えばいい!
 こういう戦闘は僕にとってもいい経験になるが、あまり長引かせるのも良くない。
 そろそろ決着をつけさせてもらうとするか。
 僕は先日作った聖剣『冥霊剣エリュシオン』をアイテムボックスから取り出す。

「魔王よ、コレで終わりだーっ!」

 人間を遙かに超越した動きでヴォルクは僕の背後に回り、鋭く伸びた爪でこの首をハネにきた。
 きっとこれがヴォルクの最速の攻撃なんだろうけど、残念だが僕には見えている。
 両手を使った必殺の二連撃を躱し、『冥霊剣エリュシオン』でその両腕を斬り落とす。
竜牙の剣ドラゴンソード』では歯が立たなかったが、さすが聖剣、その硬質な体毛ごとすんなりと切断することができた。

「ぐあああっ、そんなバカなっ、オレの身体が斬られるはずがあああっ……」
「自分の肉体を過信したな。覚えておけ、魔王に斬れないモノはない」

 ザシュッ……!
 僕はヴォルクにトドメを刺した。
 ほんの少し迷ったが、これほど残忍で力のある側近は、やはり生かしておくことはできない。
 禍根は断っておかないと。
 ……あ、覚えておけって言葉が無駄になっちゃった。せっかくカッコ付けたのに……


 さぁて、とうとう王様の部屋に到着しましたよ。
 人狼ヴォルクを倒した僕は、目的地の扉に手をかける。
 大人しく待ってたかなあと思ったら、扉を開けた瞬間、いきなり数十発という魔法が飛んできた。
 ま、当然ですよね。

「殺せ殺せ! 魔王を退治せよ! ありったけの魔法を撃ち込んでやれ!」

 ゼルドナ王の声が、大量の魔法で視界を覆われた向こう側から聞こえてくる。
 この魔法なかなか強力だな。そこらの魔道士には使えない上位レベルの魔法だ。
 そうか、ここにいるのは王を守る宮廷魔道士隊だから、外の魔道士たちよりも遙かに強いんだ。
 まあでも、全然効かないけどね。

「どうした、そんなものか? もっと強い魔法をぶつけてこい!」

 僕はえて挑発した。魔王という設定だからだ。少し『威圧』スキルも使ってみた。
 本気でやると全員失神しちゃうかもしれないので、相手が状態異常にならない程度に手加減して威圧する。
 すると、魔王のプレッシャーに恐怖したのか、死にもの狂いで魔法を撃ちまくってきた。
「死ねっ、殺してやる!」とか「消滅しろ!」など、必死な叫び声も聞こえてくる。
 僕は薄ら笑いを浮かべながら、それらの魔法を無抵抗に浴び続けた。
 しばらくすると、魔道士隊の魔力MPが尽きて、魔法の嵐は収まった。
 もはや誰も声を上げる者はいない。
 シーンと静まりかえった部屋を見渡してみると、魔道士たちが絶望のまなざしで僕を見つめていた。
 泣いている人もいるようだ。

「終わりだ……我が国はもう滅ぶしかない……」

 いや、滅ぼす気は一切ないので安心してください。
 むしろ、救いに来たんですけど……って、いま言っても絶対信じてくれないだろうな。
 魔道士たちはすでに抵抗する気力はないようだけど、肝心の王様の姿が見えないな。
 さっきまで声がしてたのに。
 大臣らしき側近の姿は確認できるんだけどね。

「な、何をやっとる! もっと死ぬ気で戦えっ! 誰か、誰かあの魔王を殺すのじゃああっ!」

 おっ、いたいた。玉座の後ろに身を潜めてたのか。
 自分だけ隠れて部下をけしかけるなんて、評判通りの愚王だな。
 さて、どうやって懲らしめようか……あ、まずはコレをやらないと!

が高い、跪け!」

 僕は重力魔法の『超圧重力圏ヘヴィグラビティ』で、この場にいる全員をいっせいに這いつくばらせた。
 脅しも兼ねて、少し強めに掛けてやる。

「ぷぎいいいっ、おひちゅぶされりゅ~」
「ま、魔王の前では、立つことすらできないとは……」

 全員地べたに頬を擦りつけるような状態にさせてから、僕は言葉を続けた。

「ゼルドナ王よ、お前には忠告をしたはずだ。我には手を出すなと」
「ぷひいっ、し、知らんっ、は、配下の者どもが勝手にやったのじゃあっ」
「では、騎士たちがやって来たのは、お前が命じたわけではないと?」
「当たり前じゃ、魔王に逆らう気など毛頭ない」

 ふぅん……王から直々の命令を受けてやって来たって、あの騎士たちは言ってたけどね。
 そもそも下手なウソなんて、『真理の天眼』で見れば全てお見通しだ。

「こやつらの命はやる! だから、わしの命だけは助けてくれ!」
「陛下、そんなご無体な……魔王様、この魔道士たちや兵士、国民どもはいくら殺しても構いません。生涯忠誠をお誓いいたしますから、我らの命もお助けください!」

 う~ん、聞きしに勝る酷い王様だ。シャルフ王と同じ一国の主とはとても思えない。
 そしてこの側近たち。
 忠誠を誓うと言っておきながら、めっちゃくちゃ敵意あるんだけど。
 解析で丸わかりだぞ。
 まあ僕は魔王と思われてるから、素直に従わないのは決して悪いことじゃないけど、この側近たちは我が身可愛さに国民の命まで売り渡そうとしてたからな。
 正義感からの敵意じゃないだろう。
 それに、ドス黒い悪意のような濁った心も、僕の『真理の天眼』スキルでは分かる。
 普通の人からはこんな邪悪な感情は感じないので、少なくともこいつらは善人ではないな。
 王の一番近い場所で甘い汁を吸っていた側近たちだ。
 心のゆがみもかなり感じるし、生かしておくと何を企むか分からない。
 火種は消しておくべきかもしれない……


 非情なようだが始末させてもらう。


 この作戦を遂行する前に、甘い考えは捨てると決意したんだ。
 何せ、これから世界を相手にするのだから、ちょっとした油断が命取りになる。
 僕はともかく、邪悪な側近たちのせいでみんなを危険に晒すことはできない。
 もちろん、罪のない者には危害を加えるつもりはないけど。
 この側近たちは

「では聞こう。我に忠誠を誓えるか?」
「誓います、終生魔王様に従いますぅ~っ」

 答えを聞いたあと、『呪王の死睨』で側近たちを即殺そくさつした。
 最終勧告でも、やはり敵意も悪意も変わってなかったからだ。

「ひっ、ひええええっ」

 側近たちが突然のを見て、這いつくばっている魔道士たちが悲鳴を上げる。

「騒ぐな。こいつらは忠誠を誓うと言っておきながら、内心憎悪を燃やしていた。我にはそれが分かるのだ。よいか、魔王をあざむけると思うな!」
「私たちは、私たちには一切歯向かう意思はございませんんん!!」

 うん、分かってる。仮に歯向かう意思があったとしても、よこしまな心さえなければ問答無用で殺すなどしない。
 そもそも王様に命令されてやったことだろうし、魔王を倒そうとするのも人間として当然の行為だ。さっき攻撃されたことは少しも恨んではいない。
『真理の天眼』で見た限り、全員服従しているのは分かるし、もちろん邪な心も感じない。
 よって、彼らに危害を加えるつもりはないが……

「わしを、わしを殺さんでくれええっ」

 さて、この王様はいったいどうしようか。


しおりを挟む
表紙へ
  ツイッター始めました☆ まるずし@maruzusi です。どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m
感想 677

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。