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第8章 英雄の育成

第379話 ナンバー0の子供

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「ユーリ、今日はよく来てくれた。この縁を作ってくれたのもお前だからな。心から感謝する。ほかの皆もありがとう」

 式がすべて終わり、出席した人たちも帰ったあと、僕たちだけ残ってシャルフ王の部屋にいる。
 もちろん、王妃ミユナーゼ様も一緒だ。

「改めて、シャルフ王ご結婚おめでとうございます。いきなりだったのでビックリしました」

「はは、これまでにも縁談がなかったわけではないが、どうも興味が持てなくてな。臣下たちも世継ぎを諦めてたところだ」

「でもミユナーゼ様には心惹かれたというわけですね」

「一目惚れというヤツだ。オレも初めてのことだからどうすればよいか悩んだぞ。それに色事を見られるのが苦手でな。周りに知られぬよう内密に親交を深めていたのだ」

「フフ、一応順を追って交際を公表していくつもりでしたのよ。でもその前に子を授かってしまって……それで慌てて式の日取りを決めたの」

「ミ、ミユナーゼ様っ、ご懐妊されてらっしゃるんですか!?」

「それは……その……もちろんお喜び申し上げますが、しかしファーブラの教義的に大丈夫だったのでしょうか?」

 えっ……デキ婚だったの!?
 信仰深いファーブラ国のミユナーゼ様が婚前交渉していたなんて、アニスさんとディオーネさんもビックリしている。
 そもそもシャルフ王はそういうタイプには見えなかったから、僕もかなり驚きだ。

「ほほう、ヒゲの王様もなかなかやりムグッ」

 フラウが失礼な発言しそうになったので、僕が慌てて口を押さえる。
 年齢が190歳だけに、どうもフラウは相手を軽く見ているようなフシがあるんだよな。
 悪気はないんだろうけど、少々困ったちゃんだ。

「伯母に妊娠を伝えたら、ちょっと叱られてしまったわ。でも祝福してくれました。アニス、ディオーネ、あなたたちはきちんと順を追って交際を進めなくてはダメよ。私の場合、陛下が強引な方だったから……」

「馬鹿者、それは言うなとあれほど……! まあユーリよ、子ができてからだと体裁が悪いから、お前は気をつけるのだぞ」

「あ、はい、多分大丈夫だと思います……」

 う……なんとなくまた嫌な展開が……。

「そっか、先に赤ちゃん作ってから無理矢理結婚もありよね!」

「でもユーリが全然……そうだ、頑張れば想像妊娠できるかも!」

「でも、わたくし毎日ユーリ様の赤ちゃんを想像してますけど、一向に妊娠しませんわ」

「なんだ、『想像妊娠』なんて方法もあるのか、知らなかったぜ! アマゾネス村ではそんなこと教わらなかったからな」

「ふーむ、ネネもその手は思いつかなかったな」

「えっ、『想像妊娠』でユーリ様の赤ちゃんってできるんですか!? わたし頑張ってみます!」

「わらわにもそのやり方教えてくれ!」

「想像妊娠ならファーブラの教義にも反していませんし、問題ないですわね」

「ミユナーゼ様、よいアイデアをくださってありがとうございます!」

「では、誰が最初に想像妊娠するか競争デスね!」

「「「「「おーっ!」」」」」

 そんなことで結婚するわけないでしょ……。
 でも、本当に気合いだけで妊娠しそうだから困る。
 勝手にお腹が大きくなったあと、みんなから責任取ってと迫られたら……ううっ、想像するだに恐ろしい。
 どうか面倒なことが起こりませんように……。


「本来ならフォルスにも来てほしかったのだが……」

 笑顔だったシャルフ王が少し暗い面持ちに変わり、ため息まじりに言葉を吐き出す。

「やはりまだ行方が分からないんですか?」

「ああ、帝国内でのことだけに、こちらからではまるで手が出ぬ。ヤツのことだから、生きているとは思うが……」

 いくら帝国でも、フォルスさんほどの人材を安易に殺すとは思えない。
 ただ、何かに利用されている可能性は充分にある。
 せめて生きているかどうかだけでも分かれば……。

「それでだユーリ、フォルスが失踪する前の連絡で、ヤツが『ナンバー0』について少し触れていてな」

「『ナンバー0』というと、幻のナンバーズのことですか!?」

「そうだ。フォルスが帝国の秘密を探っているうちに、此度のことは20年前に引退した『ナンバー0』が関わっているのではないかとの報告があったのだ」

『ナンバー0』……確か引退したあと、行方が分からなくなってたはずだ。
 帝国にいたのか!

「我らも独自に『ナンバー0』を調べてみたが、残念ながら消息は分からなかった。だがその子供が、帝国を抜けて別の国で暮らしているらしい情報を掴んだ……なんとファーブラだ」

「ファーブラに!? じゃあその子供は見つけたんですか?」

「いやそれが、ファーブラにいるであろうとは推測されているのだが、それ以外の情報が全く分からんのだ。王都にいるのかそれ以外の場所にいるかも不明だ。性別すら定かではない。一応、歳は十代だということまでは掴んでいるのだが……」

「なるほど……それだと、ほとんど手掛かりなしに近いですね」

「その通り、まさに雲を掴むような状態でな。現状では手詰まりとなっているのだが……お前さえよければ、捜索を手伝ってくれぬか?」

「僕がですか?」

「いや、お前が多忙なことは分かっている。だから無理にとは言わぬ。もしお前がファーブラに行くようなことがあれば、ついでという程度でよいから街を回ってみてほしいのだ。お前の力なら、ひょっとしてと思ってな」

 うーん……さすがの僕でも、手掛かりなしでの人捜しは無理があるな。
 ただ、ファーブラにはどのみち行こうと思っていた。これも何かの縁という気がする。


「分かりました。ファーブラにはちょうどご挨拶に伺おうと思っていたところです。近日中に出発して、観光がてら少し街中を回ってみますよ」

「引き受けてくれるか! まあ何せファーブラも広い。あまり気負わず、可能な範囲を見てくれるだけでいいのだ」

「僕がどこまで力になれるか分かりませんが、なんとか捜索の糸口くらい見つけたいところですね」

「『ナンバー0』の子供ならそれらしき片鱗がきっとあるはずだ。どうやら帝国も探しているらしく、ヤツらよりも先に見つけて保護したい。恐らく、帝国の秘密を知るカギがその子にある」

 帝国の秘密……『亜天使デミエンジェル』のことだろうか。
 その子供が見つかれば、フォルスさんの行方も分かるかもしれない。


「ではシャルフ王、今日のところはこの辺でおいとまいたします。身重のミユナーゼ様にご負担がかかると申し訳ないですからね」

「面倒ごとを押しつけてすまぬなユーリ。頼りにしてるぞ」

「お任せください。じゃあみんな、戻ろうか」

「ミユナーゼ様、お子さんが生まれたらお顔を見に来ますわ」

「是非来てちょうだい。待ってるわ」

 別れの挨拶を済まし、僕たちはテンプルムへと帰った。
 さて、色々と準備が忙しくなりそうだ!

 ***********************************

『無限のスキルゲッター』第2巻の電子書籍版が販売開始されました。
 どうかよろしくお願いいたしますm(_ _)m

 調子の悪かったパソコンですが、買い換えました。
 昨日届いて、現在その設定に悪戦苦闘中です(^^;
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