21 / 258
2巻
2-1
しおりを挟む第一章 アマゾネス村
1.守護天使誕生
僕、ユーリ・ヒロナダは一度死んだことがある。
凶悪なドラゴンによって命を奪われた女神様を救うために、『神授の儀』という儀式を通じて授かったスキル、『生命譲渡』を使ったのだ。
『生命譲渡』は自分の命を犠牲にして、他者を生き返らせるという能力である。一生に一度しか発動できない超レアスキルを使った僕は、その代償として死んだ――はずだった。
だが、女神様の父親……つまり神様の計らいによって、僕は奇跡的に生き返った。しかも、毎月倍々の経験値をもらえるという素晴らしい加護付きで。
最初は1しかもらえなかったのだが、月日が経つごとに経験値はどんどん増えていって、今では億を超える経験値を授かっている。
僕にはさらにもう一つ、ありがたい加護を授けてもらった。毎月一度だけ、ランダムに出てくる超レアスキルを経験値で取得できるというものだ。
この二つの加護を活用して際限なく強くなれるようになった僕は、悠々自適な冒険者生活を送る気でいたんだけど……とある事件によって大きな戦いに巻き込まれてしまう。
謎の存在――恐らくその正体は悪魔であろうヴァクラースとセクエストロ枢機卿に、愛する母国エーアストを奪われたのだ。
ひょんなことから行動を共にしていた僕と、幼馴染みのリノ、エーアストの王女であるフィーリア様は辛くも彼らの魔の手から逃れた。
こうして、僕らの逃亡者生活が始まったのだった。
国を脱出する前、僕は牢に投獄されていた。しかし幸いなことに、アイテムボックスは所持者当人にしか開けないので、捕まっても中身は没収されなかった。
おかげで、想定外の事態で野に飛び出したにもかかわらず、サバイバルに困ることはない。冒険者活動に使う必需品は、一通りアイテムボックスに入れてあったからね。
残念ながら『炎の剣』などの装備していたものは全部没収されちゃったけれど、それは仕方ない。念のため予備の装備を持っていたので、現在僕たち三人はそれを身に着けている。
『炎の剣』をもう一度作ることは可能だが、それには大量のMPを消費するので、今は作るのを保留にしている。いざというときに、MPがないと困るからだ。
ちなみに、お金に関してはかなりの金額を持っている。ただ、こんな状況ではいくら持っていても無意味だな。せっかく稼いでおいたのに……
とりあえず、差し当たっての問題は食料だ。
一応、携帯食はたくさんあるのだが……まあ美味しくない。栄養は問題ないんだけどね。
それと、真夜中に適当な方向へ全力で逃げ出したので、自分たちが今どこに向かっているのかも正確には分かっていない。
危険を回避するためにも、自分たちのいる場所を把握しておきたいところ。
日の出の位置などから推測するに、隣国アマトーレの方角へ向かっている……と思う。
エーアストはこの世界の最南東に位置する国で、その北にはファーブラ国、北西にカイダ国、そして西にアマトーレ国が存在している。
アマトーレは一応エーアストから一番近い国だが、それでも歩くにしてはかなりの距離だ。
しかし、僕たちには進む以外の選択肢がないので、このまま行けるところまで行ってみるしかない。
「どうですかリノさん、誰か人の気配は感じますでしょうか?」
歩きながら、フィーリア王女様がリノに尋ねた。
「ううん、ぜぇーんぜん探知できない。見渡す限り無人の荒野ね」
忍者の職業に就いているリノは索敵や諜報系のスキルに長けている。彼女が持つスキル『超五感上昇』で、辺りの様子を探ってもらいながら僕たちは進んでいる。
これは五感が超人的に鋭くなるスキルで、そこそこ距離が開いていても、人間が発する微かな音や匂いなどを感知できるのだ。
さらに遠方まで見通せる『遠見』のスキルも併用してもらっているんだけど、未だ人間を発見することができないでいる。
結局僕たちは日が暮れるまで歩き続け、状況は何も進展せずに一日が終わってしまった。
夜は僕の『魔道具作製』スキルで作った簡易テントにて寝泊まりする。もちろん、男女別々にだ。
就寝中モンスターに襲われないよう、『魔道具作製』スキルで『感知魔鈴』を作って設置してある。僕たち以外の存在が近付いてくると、このアイテムが小さな音を鳴らして報せてくれるのだ。
テントの中はそれなりに過ごしやすいが、いかんせんその場しのぎの道具なので、ふかふかのベッドのある宿屋とは比ぶべくもない。
よって、寝心地はイマイチであり、移動の疲れは日々溜まっていってしまう。
一応テント内は魔法処理されているので、外気温に左右されず、快適な温度を保てるのはありがたいけどね。
◇◇◇
そんな旅を続けること数日。
自分たちが考えているよりも方向がズレているのか、街道すら見つけられずに、今日も僕たちは彷徨い歩いている。
まあ見つけたところで、追われている身の僕らとしては、安易にその道を歩くこともできないのだが。
「ふう~……正規の街道じゃないと、ホントになかなか人って出会えないのね。もう六日も経つのに、まったく人の気配がないわ」
疲れたようにリノが呟いた。
「お腹も空きましたわ……」
気丈なフィーリア王女様も、満足に食事もできない状況が続いて弱音を吐き始めた。むしろ、ここまでよく頑張っていると思う。
不味い携帯食を大事にかじりながらさらに何日か進んでいくと、ある日空をバタバタと飛ぶモンスターと遭遇した。
全長およそ四メートルの魔鳥――コープスイーターだ!
それが数羽、こちらへぎこちなく羽ばたいてきた。
コープスイーターは、死んだ旅人などの身体を食い漁る飛行型モンスター。飛ぶのがあまり得意ではなく、今も低空を舞っている。
コープスイーターは襲ってくるでもなく、僕たちの頭上を旋回していた。あそこで僕たちが死ぬのを待っているんだろう。
あの程度ならジャンプで到達できる高さだ。僕は『飛翔』スキルを持ってないので、低空にいてくれるのはありがたい。
地上から遠隔攻撃する手段もないわけではない。ただ、失敗すると逃げられちゃうので、ここは接近して確実に仕留めることに。
久々の鳥肉を食べるためにも、慎重に狙いを定めて一気にジャンプ!
一瞬で上空に現れた僕に、コープスイーターたちは仰天して飛び去ろうとするが、もう遅い。
電撃のように剣を振るい、三羽まとめて斬り落とした。
残りには逃げられたけど、これだけあれば充分。
いくつかの魔物は食用にもなることがある。このモンスターもその一種だ。主食が人の屍肉というのが少し気になるところだけど、今はそんなことを言っている状況じゃない。
しっかりと体力を付けるため、獲ったうちの一羽をリノの魔法で焼いて食べた。
「これ……美味しい」
「ホントですわ! 魔物がこれほど美味だなんて……」
リノも王女様も、コープスイーターが屍肉食であることを気にせずにどんどん食べていく。
空腹こそ最高の調味料。弾力のあるジューシーな肉を、みんな夢中になって口へ運ぶ。
携帯食とは比較にならない美味な食料を、僕たちは充分堪能した。
食べきれなかった分と残りの二羽をアイテムボックスに収納し、僕たちは移動を再開する。
これでしばらくは食事に悩まされることはないな。
こんなサバイバル生活の合間、いざというときのために王女様も自分で身を守れるように訓練してみたら、なんと彼女は『属性魔法』のスキルを習得した。
王女様は神官系の魔法――つまり『神聖魔法』が向いてるんじゃないかと思っていたのに、魔道士が使う魔法のほうに適性があったとは……
しかも、リノよりも圧倒的に才能を感じる。まあそうは言っても、リノには結局、魔道士の才能が全然なかったんだけどね。
王女様はすぐに『魔術』と『魔力』のスキルも習得した。これはなんとも頼もしい。
ただ、王女様が魔法を使うとき、ちょっと怖いんだよな……なんか狂気を感じる。
「ぐふふふふ、跡形もなく消し炭にして差し上げますわ!」って感じで。
このまま魔法が上達していったら、どんな魔道士になるのか不安だ……
◇◇◇
日々僕たちは荒野を進み続ける。
道中コープスイーターと度々遭遇し、その都度ジャンプで仕留めていたら、僕のスキルボードに『飛翔』のスキルが出てきた。
また、『暗視』と『探知』スキルも現れている。毎夜監視や警戒を怠らなかったからかな。
もちろん、経験値を消費してこれら全てを取得する。
皮肉なことに、スキルゲットを目指して活動してたときはなかなか成果が出なかったのに、今では次々と有用なスキルを覚えていく。これは毎日死にもの狂いで過ごしているからだと思う。
やはりスキルを出現させるには、必死の思いが重要なんだろう。
ただ、スキルをゲットしたのはいいものの、現在ストックしている経験値が300万しかなくなった。レベルを上げるのはあと回しだ。
経験値が尽きてしまうと、何かあったときに対応できなくなっちゃうからね。
しかし、経験値が300万しかない、なんて焦ってるけど、本来は300万って結構凄い数字なんだよなあ……僕はたくさんもらいすぎて、完全に感覚が麻痺しちゃっているようだ。
確か、冒険者の総取得経験値の平均が4~500万くらいのはず。300万経験値なんて、容易には稼げない。
僕は取得したスキルを簡単に最大のレベル10にしているけど、それにかかる経験値は最低でも1000万を超える。よほど優秀な人でもない限り、基礎スキル一つすらレベル10にできないのが普通だ。ましてやレアスキルとなると、レベル10にするのは不可能といっても過言ではない。
自分がケタ外れに恵まれていることをもっと自覚したほうがいいな。
ちなみに、『飛翔』は長距離の移動には向かない。飛行できる時間が短いからだ。
それと、浮遊力もそれほど強くないので、重い荷物を持って飛ぶことも難しい。
つまり、僕は『飛翔』を覚えたものの、リノと王女様の二人を抱えながら空を移動するというのは、ちょっと無理ということ。
川の向こう岸に渡る程度とかなら、多少重くてもなんとか可能だと思うが……
とにかく、二人を連れての長距離飛行は絶対に不可能だ。もしそれができれば、移動がだいぶ楽になったんだけどね。
アイテムボックスには生きている人間を入れられないため、リノたちを収納して運ぶという手段も取れない。結局、『飛翔』はコープスイーターを獲るときか、上空から前方を確認するときにしか使っていない。
そんな調子で歩き続けているが、未だに旅人に出会うことはなく、そして当然隣国らしき景色も見当たらない。
まあ、馬車で街道を通っても通常一週間くらいはかかるしね。隣国に辿り着くのはまだまだ先になりそうだ。
そもそも正規ルートからだいぶ外れている可能性もある。このままでは、もはやいつまで歩き続けることになるのか想像も付かない。
せめて人と出会えれば、そこを足がかりに目的地までのルートを検討できるんだけどなあ……
◇◇◇
エーアストを離れ、ひたすら歩き続けて二週間。いつの間にか、神様から経験値がもらえる日になっていた。
経験値残量が少なくて心もとない日々を過ごしていただけに、まさに待ちわびた瞬間だ。
今回もらった経験値は5億3600万以上。ストックしてあった300万を加えると、5億4000万ほどになる。
やはり、倍々にもらえる経験値に上限はなさそうだ。つまり、来月は10億を超える可能性も……?
とにかく、これでようやくスキルの強化ができる。
今回女神様から提示されたスキルは、『眷属守護天使』というSSランクのモノだった。
取得に必要な経験値は1000万。もちろんすぐに手に入れた。
このスキルはちょっと効果が特殊だった。どんなものかというと、僕を直接パワーアップするのではなく、『眷女』という従者を作ることで間接的に僕の能力の底上げをするらしい。
『眷女』という単語がどういう意味なのかは分からなかったが、僕には仲間がリノとフィーリアしかいない。そのため、二人にこのスキルの説明をして、協力を頼んでみた。
そうそう、何日も苦楽をともにしたことにより、僕はフィーリア王女を名前で呼ぶようになってしまった。まあ彼女が「フィーリアと呼んでほしい」と言ったからなのだが。
リノも、今は「王女様」ではなく「フィーリア」と呼んでいる。
ただし、フィーリアは僕を『ユーリ様』と呼ぶし、リノのことは『リノさん』と呼んでいる。彼女がそう呼びたいならそれでいいと思う。
さて、二人は僕の頼みを快諾した。というか、是非『眷女』になりたいと言ってくれた。
『眷女』にすることにより、どんな影響が出るか不安だったけど、二人とも僕を強く信頼してくれた。それで僕に迷いはなくなった。
『眷属守護天使』を二人にかけてみると、劇的なことが僕たちの身体に起こった。
まずは僕だ。なんと、リノとフィーリアの持つ戦闘スキルや基礎スキルが、全て僕にも継承されたのだ。経験値を使うこともなく、そのまま習得できた。
たとえば、リノの持つ『忍術』、『刃術』、『隠密』、『精密』、『遠見』、『解錠』などのスキル。そしてフィーリアの持つ『属性魔法』、『魔術』、『魔力』といったスキルだ。
僕は魔法をずっと習得できなかったが、これによって僕も『属性魔法』が使えるようになった。
いずれもレベル1だったが、嬉しいことに経験値を消費してレベルを上げることは可能だった。さっそく経験値を約1000万使って、『属性魔法』のレベルを10まで上げる。
さらに、同じく継承した『魔術』と『魔力』スキルもレベル10にしたら、この二つが融合して、『魔導鬼』という上位スキルに進化した。
『眷属守護天使』のおかげで、僕はあっという間に世界最強クラスの魔道士になれたわけだ。これで魔法に関しても、そう簡単に後れを取ることはなくなったと思う。
ちなみに、『魔術』の派生スキルとして『連続魔法』と『高速詠唱』というスキルも覚えた。『高速詠唱』は魔法の詠唱時間を短くできるという大変便利なスキルであるため、すぐにレベル10にした。これでレベル10までの魔法を高速詠唱できる。
『連続魔法』のほうはとりあえず保留だ。これは一度の詠唱で魔法を連続で放つことができるというスキルだが、現段階ではあまり必要性を感じなかった。
また、リノから継承された様々なスキルも、それぞれ経験値1000万使って全部レベル10にしてみた。すると、こちらもいくつかのスキルが融合された。
まず、『刃術』と『敏捷』スキルだ。これらは『滅鬼』という上位スキルに進化した。
それと、『忍術』と『隠密』は『冥鬼』という上位スキルになった。
『滅鬼』は近接戦闘にめっぽう強いスキルで、『冥鬼』は暗殺系のスキルらしい。
こうしてリノたちから様々なスキルを継承したことで、僕の能力は飛躍的に強化されたのだった。
一方、『眷女』となったリノとフィーリアには、なんと称号らしき名が付いた。
リノが『妖王妃』という名で、フィーリアが『聖魔女』という名だ。どうやらこの名前を与えられることが、『眷女』である証のようだ。
さらに、僕の各ステータス値の5%が、彼女たちのステータスに加算されるようになった。
5%とはいえ僕のレベルは100なので、リノたちに加算される数値はなかなか馬鹿にならない。
しかも『眷属守護天使』のスキルレベルを上げると、加算される数値の割合も増えるらしい。つまり、今後は僕を強化することで、同時にリノたちの強化もできるということ。
なお、リノたちが『神授の儀』で授かったスキル――リノの『超五感上昇』やフィーリアの『聖なる眼』は、僕には継承されなかった。
『眷属守護天使』で継承できるのは、通常スキルだけみたいだ。それでも、このスキルがもたらしてくれる恩恵は非常に大きいが。
今後は僕のベースレベルを上げると、それに比例してリノたちのステータスも上がることになる。単純に僕のレベルを上げるだけでも、パーティ強化という観点では大きな意味を持つ。
そして恐らく、彼女たちが戦闘スキルや基礎スキルを覚える度、僕にもそれが継承される。僕たち全員がリンクしながら強くなれると思うと、かなり心強いスキルだ。
僕は残った経験値の使い道に悩んだが、経験値を3億以上使ってベースレベルを300まで上げた。
その僕のステータスのうち5%が、『眷属守護天使』によってリノたちに加算される。
このスキルがあれば、リノたちはステータス上げのためにベースレベルに経験値を使う必要はなくなるだろう。今後は経験値をスキルに全振りできるので、彼女たちの成長はグッと速くなるはず。
いいスキルを取得できて大満足だ。
ほか、レベル1のままだった『飛翔』、『暗視』、『探知』をレベル10まで上げた。すると、『探知』が『気配感知』と融合して、『領域支配』という上位スキルに進化した。
これは周囲の索敵もさることながら、相手の殺意や敵意を鋭敏に感知できるようになるスキルらしい。このスキルがあれば、奇襲や暗殺に対し、より迅速に反応できそうだ。不意打ちを喰らうこともそうはないだろう。
ほかの能力強化に関しては、どこか安全な地に着くまで保留としておく。もしくは、必要に応じてその都度スキルレベルを上げる。
ということで、残り経験値約1億をストックして今回の強化を終えた。
◇◇◇
その日の夜。
テント内で就寝中、ふと異様な気配を感じて目を開けると、すぐそばにリノとフィーリアがいた。
「……ん? な、なんだ!? ちょ、リノ、フィーリア、こんな夜中にいったい何して……?」
「ちっ、起きちゃったわ! もう少しで私の『金縛りの術』が完成したのに!」
「わたくしの『睡眠魔法』の効果が弱かったようですわ。やはり、もう少しレベルを上げてからやるべきだったのかしら?」
どうやら僕が眠っている間に入ってきたらしい。正直、少々パニック気味だ。
いったん心を落ち着けて、この状況を整理する。
テントは『魔道具作製』スキルで作ったので、簡単には入ってこられない作りになっているんだけど、リノは『解錠』スキルを持っているため、それで強引に開けて入ってきたと思われる。
先日の『眷属守護天使』で『眷女』となったことでリノたちのステータスがアップしたので、『解錠』技術も上がったのだろう。
それにしても、『領域支配』を持つ僕のテントに忍び込むなんて、ホントただ者じゃないよ。
まあ『領域支配』は殺意や敵意に強く反応するので、相手に攻撃する意志がない場合は、そこまで感知能力を発揮しないみたいだけどね。スキルレベルもまだ1だし。
「ユーリ、もうほかの国に行くのは諦めて、私たちだけで暮らそう!」
「そうですわ、ここで子供をいっぱい作りましょう!」
「二人ともナニ言って……!」
「フィーリア、私がユーリを押さえつけてるから、もう一度『睡眠魔法』をかけて!」
「了解ですわ! 汝、宵闇を迎え……」
リノが僕に飛びかかり、その間にフィーリアが魔法の詠唱を始めた。
フィーリアはまだまだレベルが低いし、こんな状態で『睡眠魔法』なんてかかるわけないでしょ!
「リノ、フィーリア、いいかげんにしなさい!」
僕は力ずくで起き上がり、二人をピシャリと叱りつける。
やりすぎたことに気付き、シュンと大人しくなって正座する二人。
それにしても、フィーリアが『闇魔法』の『睡眠魔法』まで覚えていたとは。
恐らく、僕を状態異常にするため、こっそり練習していたんだろう。うっかり気付かなかったが、『眷属守護天使』の効果で、フィーリアの『闇魔法』は僕にも継承されていた。
僕を襲うためとはいえ、難しい『闇魔法』をこうも簡単に習得するなんて、その熱意と才能には心底感服する。というか、どんだけ本気なんだよ!
『睡眠魔法』で僕を深く眠らせたあと、リノの持つ忍術『金縛り』で、僕のことを動けなくしようとしてたらしい。なんという危険な少女たちだ。
本来なら絶体絶命だったけど、先日僕はベースレベルを300にしていたので、レジスト能力も上がっていた。
おかげですぐ目が覚めて、危機一髪でピンチを回避できたのだった。
食糧問題が解消し、先日経験値をもらって精神的にも余裕ができたので、僕としたことがつい油断してしまった。
まったく、『金縛り』なんて喰らったら、いったい何をされることか……ホントにロクでもないことばっかり考える二人だ。早く『異常耐性』スキルがほしい……
「次こんなことしたら許さないよ!」
「やだユーリ、ごめんなさい、嫌いにならないで……!」
「わたくしも反省しますから、どうかお許しを……」
僕に釘を刺され、涙目になるリノとフィーリア。僕たちは逃亡者だというのに、緊張感ってモノがないよなあ。
まあでも、こういう彼女たちだからこそ、こんな状況でも元気付けられている。
忘れないうちに、フィーリアから継承した『闇魔法』をレベル10にした。『闇魔法』はレベルアップに通常の倍の経験値が必要なので、ストックから2000万ほど消費し、残りは8000万。
フィーリアの行動は大変不純だが、おかげで『闇魔法』を習得できた。一応感謝しておこう。
45
お気に入りに追加
9,089
あなたにおすすめの小説
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。