191 / 258
第7章 新国テンプルム
第358話 少女の正体は
しおりを挟む
透明化の魔法を使って少女を尾行してみると、かなり街外れにある家に着いた。
まあ家というよりも、風情のあるお屋敷といったような感じの大きな家屋だけど。
周りは石積みの塀に囲まれていて、金属製の門が出入り口となっている。
テンプルムにもこんなお屋敷があったんだな。
国としては当然国内のことは記録管理してあるけど、僕個人としては、次々に作られる建造物を全て把握しているわけじゃない。
なので、見知らぬ建物も結構あるのだ。
とりあえず、門に付いている『呼び出し金具』を叩いて鳴らしてみる。
……出てこない。少女は今さっき家に入っていったので、誰も居ないということはないはず。
もう一度鳴らしてみる。
……やはり出てこない。
こっそり中に入るのは可能だけど、他人の家に勝手に入るのは、王様といえどもやってはいけないことだ。
犯罪の調査とかならともかく、今回は完全に私的な理由だし。
『超能力』スキルの『千里眼』で中を覗くというのも当然アウトだ。
仕方ない、王城に帰って調べればこの家の情報が分かるし、そのあとでもう一度来てみることにしようか。
いや待て、あの少女が犯罪に巻き込まれている可能性もあるのか?
それなら中を調査する理由にはなるけど……うーん、我ながらこじつけで能力を使うようで、あまり気分は良くない。
周囲から特に危険な気配も感じないし、一度帰ってから考え直すかと思ったところ、金属製の門が開いた。
「忙しいというのに、いったいなんのようでしゅ……お前はさっきの坊主!? どうしてここが分かったのでしゅか!?」
こんな小さな子に『坊主』と呼ばれるのは少し違和感があるけど、開けてもらって助かった。
勝手に調べたりするのは気が進まなかったからね。
「あの……ちょっとお尋ねしたいんだけど、ひょっとしてこのお屋敷ってドマ・ギンガイムさんと何か関係あるのでは?」
「ぬおおっ、な、なにを言ってるのでしゅか!? ここがそんなわけないでしゅ!」
あ、ウソを言ってる。
ってことは、ここがドマ・ギンガイムさんの住んでる屋敷なの?
オークションに剣を出品してたから、もしかしてテンプルムに来てるかもって思ってたけど、まさかこんなところに住んでいたなんて!
うわ、どうしよう、会ってみたいと思ってたんだ!
しかし、どうもこの子は何かを隠しているようだし、なんとか信用してもらわないと、このままじゃ僕はただの怪しい男だ。
ドマ・ギンガイムさんに嫌われたくないし、落ち着いて交渉しよう。
「いきなりお伺いして申し訳なかったけど、僕は怪しい者ではないよ。以前からドマ・ギンガイムさんにお会いしたいと思っていただけなんだ」
「だ、だからここは違うと言ってるでしゅ!」
「でも、ドマ・ギンガイムさんの剣をたくさんここに運んでたよね? あんなに持ってる人なんて、そうはいないと思うよ。キミはドマ・ギンガイムさんのお子さんなんじゃ?」
「だ、そっ、んぐ…………坊主、なぜあの剣がドマ・ギンガイムの物だと分かったんでしゅか?」
お、ドマ・ギンガイムの剣って認めてくれた。
ウソつくのは無駄と観念したのかも。
「ドマ・ギンガイムさんの剣は僕の憧れだから、かな」
「そんな理由で分かったと!? 信じられないでしゅ!」
実は、ドマ・ギンガイムさんの剣を1本だけ持ってるんだよね。オークションに何度か出品されていたので、それを競り落としたんだけど。
開催主である僕が買うのはどうかと思ったけど、どうしても1本だけ欲しかったんだ。剣を作る参考にしたかったし。
その素晴らしい出来を、何度も研究や観察してたから気付けたんだ。
ただ、さっきのミスリルソード30本は、ドマ・ギンガイムさんの剣にしては少々完成度が低く感じた。
量産するために手を抜いたのかもしれないけど。
「うぐぐ、アレは出来損ないの剣だったでしゅのに、一目で見破るとは……」
「ところで、あんなにたくさん持ち歩いて、どうしようと思ってたの?」
「……街の武器屋に売りに行ったのでしゅ」
「え? あんなに重い物を持って町まで行ったの? で、なんで持って帰ってきちゃったの?」
「売れなかったんでしゅ。正確には、安値で買いたたかれそうになったから、仕方なく持って帰ってきたんでしゅ」
「安値? ドマ・ギンガイムさんの剣なのに!?」
「製作者の名前は出さなかったでしゅ」
「ええっ、なんで? ドマ・ギンガイム作の剣だと分かれば、かなりの高値が付いただろうに?」
「アレは失敗作でしゅ。アレの製作者を知られたら、ドマの名前に傷が付きましゅ。お前にバレたのも屈辱でしゅ」
名前に傷が付くだなんて、そんなことないと思うけど……。
いや、至高とも言える剣を作る人だから、納得のいかない剣を他人に見られるのが許せないのかもしれない。
だから製作者を隠すために、この小さな子にお使いを頼んだんだろうな。
と、その気持ちは分からなくもないけど、そもそもなんで売ろうとしたんだ?
「名前に傷を付けたくないなら、売らなければいいと思うんだけど?」
「……お金が欲しかったのでしゅ」
「お金? ひょっとしてドマ・ギンガイムさんは、何かお金に困ってるのかい?」
「剣の製作にはお金が掛かるでしゅ。いくらあっても足りないでしゅ。っていうか、ド、ドマは関係ないでしゅ!」
そうか……ドマ・ギンガイムさんはお金を必要としてるのか。
僕でよければ力になるけどなあ。
こんな小さな子に大きな荷物を持たせたということは、アイテムボックスも持ってない可能性が高いな。
きっと、剣作り以外に余計なお金を使う余裕がないのかも?
「そういえば、ドマ・ギンガイムさんは剣作りをやめて隠居していたのに、最近また作り始めた理由をキミは知ってる?」
「ライバルを見つけたからでしゅ。生まれて初めて、他人の剣をすごいと思ったでしゅ。そいつに負けたくないから、引退していた刀剣作りを再開した……ということらしいでしゅ」
へ~っ、ドマ・ギンガイムさんほどの人がライバルと思う存在がいたなんて、初耳だ。
まだまだすごい人はいるんだな。
「いま作っている剣は生涯最高傑作になるはずでしゅが、お金が足らなくなったでしゅ。今まで稼いだお金は全て無くなってしまったでしゅ。このままでは完成させることができない……らしいでしゅ」
ええっ、ドマ・ギンガイムさんの最高傑作が、未完成になりそうだって!?
そんなことは世界の損失だ、絶対にあってはならない!
お金程度で解決するなら、僕が喜んで協力するぞ!
「お嬢ちゃんはそれを助けてあげるために、ミスリルの剣を売りに行ってあげたってことだよね? よかったら、その売ろうとしていた剣を僕が全部買おうか? 製作者の名前も内緒にしてあげるよ」
剣の使い道はいくらでもある。
僕は強力な魔装備を作れるけど、兵士や騎士たちには与えていない。何かに悪用されたら困るからだ。
なので、街の装備屋から仕入れることにしている。
ドマ・ギンガイムさんの武器は、通常の物とは比べものにならないほど使いやすいので、大いに役立ってくれるはず。
「ふん、申し出はありがたいでしゅが、お前のような坊主に払えるような金額ではないでしゅ」
「いくらなの?」
「ずばり、白金貨10000枚でしゅ! なんちゃって~でしゅ。アレなら……」
「そんなもんでいいの? じゃあこれで」
僕はアイテムボックスから白金貨10000枚を取り出して、少女の前に山盛りにして置いた。
もちろんこれは国家の予算なんかではなく、僕のポケットマネーだ。
ちなみに、白金貨10枚あれば、1年くらいは楽に暮らしていけると言われてる。
「どっひゃあああああああ~っ、な、なんでしゅかコレ!?」
「え? だって白金貨10000枚って言ったから……」
「じょ、冗談に決まってるでしゅっ、普通は本気にするヤツなんていないでしゅ! さすがのあたいでも、あの剣30本ならせいぜい500枚がいいとこでしゅのに」
「たった500枚でいいの?」
「うんぎゃ、貰えるものは貰っておくでしゅ! す、すごいお金でしゅ、頭がクラクラするでしゅ! っていうか失敗したでしゅ、こんな世間知らずのボンクラ坊主なら20000枚と言えば良かったでしゅ!」
ドマ・ギンガイムさんの力になれるなら、別に20000枚どころかいくら払ってもいいけど、そんな正直な告白を聞いちゃうとなんか躊躇っちゃうな。
というより、この子はいったいドマ・ギンガイムさんとはどういう関係なんだ?
「買ったついでというわけではないけど、キミが誰なのか教えてほしいな。ギンガイムさんのお子さんでいいのかな?」
「え? あ、あたいは、その……」
少女の目が泳いで、オロオロと挙動不審な動きをする。
そこまで隠さないといけない関係なのかな?
まさかお子さんじゃなくて、ドマ・ギンガイムさんの奥さんなんてことは……?
だとしたら、いくらなんでも幼すぎるということで、世間体を気にして隠すのも無理はないけど。
まあ結婚に年齢制限はないから、誰を妻にしようと自由なんだけどね。
でも、こんな子供が奥さんなんてことはまずないだろうし……。
と、少し気まずい時間が流れたと思ったら、空からこの場へと降りてくる存在が。
「小僧、貴様こんなところでドワーフ女と何をしている?」
ゼルマだった。そういえば、ゼルマの家からここはそんなに離れてなかったな。
……て、えっ? 今なんて言った?
「貴様の気配がこの辺りからずっと消えぬから、少々気になって見に来てみれば、ドワーフ女を口説いておったとはな。まさに呆れかえる女たらしよ」
ドワーフ女? この子、ドワーフなの?
そういえば、身長に対して頭部が若干大きめ、手足も少し短く、そして少々ガッシリしてるかも?
ドワーフの少女って初めて見た。
そもそも少女に限らず、ドワーフの女性は人前に出ることが滅多にないと言われてるので、通常見掛けることはまずない。
ドワーフは女性でもヒゲがあるって聞いたけど、この子はまだ小さいから生えてないのかな?
そうか、あのたくさんのミスリルソードは、ドワーフだからか。
ドワーフ族は、ミスリルを大量に所持してるっていう噂だしね。
それにしても、僕がこんな子供を口説いてると勘違いするなんて、ゼルマも……
ちょっと待てよ、ドワーフもかなり長寿な種族だ。エルフとまではいかなくても、人間よりも遙かに長生きする。
この子も外見は少女でも、実は……なんてことが……?
子供だと思ってたので、まともに『真理の天眼』で見てなかったけど、改めてこの少女の能力を解析してみる。
…………………………………………………………………………。
ウ、ウソ……だろ? 僕は自分の目を疑う。
とても信じられないけど、この子、いや、この人が……。
ドマ・ギンガイムさんだったのか!
まあ家というよりも、風情のあるお屋敷といったような感じの大きな家屋だけど。
周りは石積みの塀に囲まれていて、金属製の門が出入り口となっている。
テンプルムにもこんなお屋敷があったんだな。
国としては当然国内のことは記録管理してあるけど、僕個人としては、次々に作られる建造物を全て把握しているわけじゃない。
なので、見知らぬ建物も結構あるのだ。
とりあえず、門に付いている『呼び出し金具』を叩いて鳴らしてみる。
……出てこない。少女は今さっき家に入っていったので、誰も居ないということはないはず。
もう一度鳴らしてみる。
……やはり出てこない。
こっそり中に入るのは可能だけど、他人の家に勝手に入るのは、王様といえどもやってはいけないことだ。
犯罪の調査とかならともかく、今回は完全に私的な理由だし。
『超能力』スキルの『千里眼』で中を覗くというのも当然アウトだ。
仕方ない、王城に帰って調べればこの家の情報が分かるし、そのあとでもう一度来てみることにしようか。
いや待て、あの少女が犯罪に巻き込まれている可能性もあるのか?
それなら中を調査する理由にはなるけど……うーん、我ながらこじつけで能力を使うようで、あまり気分は良くない。
周囲から特に危険な気配も感じないし、一度帰ってから考え直すかと思ったところ、金属製の門が開いた。
「忙しいというのに、いったいなんのようでしゅ……お前はさっきの坊主!? どうしてここが分かったのでしゅか!?」
こんな小さな子に『坊主』と呼ばれるのは少し違和感があるけど、開けてもらって助かった。
勝手に調べたりするのは気が進まなかったからね。
「あの……ちょっとお尋ねしたいんだけど、ひょっとしてこのお屋敷ってドマ・ギンガイムさんと何か関係あるのでは?」
「ぬおおっ、な、なにを言ってるのでしゅか!? ここがそんなわけないでしゅ!」
あ、ウソを言ってる。
ってことは、ここがドマ・ギンガイムさんの住んでる屋敷なの?
オークションに剣を出品してたから、もしかしてテンプルムに来てるかもって思ってたけど、まさかこんなところに住んでいたなんて!
うわ、どうしよう、会ってみたいと思ってたんだ!
しかし、どうもこの子は何かを隠しているようだし、なんとか信用してもらわないと、このままじゃ僕はただの怪しい男だ。
ドマ・ギンガイムさんに嫌われたくないし、落ち着いて交渉しよう。
「いきなりお伺いして申し訳なかったけど、僕は怪しい者ではないよ。以前からドマ・ギンガイムさんにお会いしたいと思っていただけなんだ」
「だ、だからここは違うと言ってるでしゅ!」
「でも、ドマ・ギンガイムさんの剣をたくさんここに運んでたよね? あんなに持ってる人なんて、そうはいないと思うよ。キミはドマ・ギンガイムさんのお子さんなんじゃ?」
「だ、そっ、んぐ…………坊主、なぜあの剣がドマ・ギンガイムの物だと分かったんでしゅか?」
お、ドマ・ギンガイムの剣って認めてくれた。
ウソつくのは無駄と観念したのかも。
「ドマ・ギンガイムさんの剣は僕の憧れだから、かな」
「そんな理由で分かったと!? 信じられないでしゅ!」
実は、ドマ・ギンガイムさんの剣を1本だけ持ってるんだよね。オークションに何度か出品されていたので、それを競り落としたんだけど。
開催主である僕が買うのはどうかと思ったけど、どうしても1本だけ欲しかったんだ。剣を作る参考にしたかったし。
その素晴らしい出来を、何度も研究や観察してたから気付けたんだ。
ただ、さっきのミスリルソード30本は、ドマ・ギンガイムさんの剣にしては少々完成度が低く感じた。
量産するために手を抜いたのかもしれないけど。
「うぐぐ、アレは出来損ないの剣だったでしゅのに、一目で見破るとは……」
「ところで、あんなにたくさん持ち歩いて、どうしようと思ってたの?」
「……街の武器屋に売りに行ったのでしゅ」
「え? あんなに重い物を持って町まで行ったの? で、なんで持って帰ってきちゃったの?」
「売れなかったんでしゅ。正確には、安値で買いたたかれそうになったから、仕方なく持って帰ってきたんでしゅ」
「安値? ドマ・ギンガイムさんの剣なのに!?」
「製作者の名前は出さなかったでしゅ」
「ええっ、なんで? ドマ・ギンガイム作の剣だと分かれば、かなりの高値が付いただろうに?」
「アレは失敗作でしゅ。アレの製作者を知られたら、ドマの名前に傷が付きましゅ。お前にバレたのも屈辱でしゅ」
名前に傷が付くだなんて、そんなことないと思うけど……。
いや、至高とも言える剣を作る人だから、納得のいかない剣を他人に見られるのが許せないのかもしれない。
だから製作者を隠すために、この小さな子にお使いを頼んだんだろうな。
と、その気持ちは分からなくもないけど、そもそもなんで売ろうとしたんだ?
「名前に傷を付けたくないなら、売らなければいいと思うんだけど?」
「……お金が欲しかったのでしゅ」
「お金? ひょっとしてドマ・ギンガイムさんは、何かお金に困ってるのかい?」
「剣の製作にはお金が掛かるでしゅ。いくらあっても足りないでしゅ。っていうか、ド、ドマは関係ないでしゅ!」
そうか……ドマ・ギンガイムさんはお金を必要としてるのか。
僕でよければ力になるけどなあ。
こんな小さな子に大きな荷物を持たせたということは、アイテムボックスも持ってない可能性が高いな。
きっと、剣作り以外に余計なお金を使う余裕がないのかも?
「そういえば、ドマ・ギンガイムさんは剣作りをやめて隠居していたのに、最近また作り始めた理由をキミは知ってる?」
「ライバルを見つけたからでしゅ。生まれて初めて、他人の剣をすごいと思ったでしゅ。そいつに負けたくないから、引退していた刀剣作りを再開した……ということらしいでしゅ」
へ~っ、ドマ・ギンガイムさんほどの人がライバルと思う存在がいたなんて、初耳だ。
まだまだすごい人はいるんだな。
「いま作っている剣は生涯最高傑作になるはずでしゅが、お金が足らなくなったでしゅ。今まで稼いだお金は全て無くなってしまったでしゅ。このままでは完成させることができない……らしいでしゅ」
ええっ、ドマ・ギンガイムさんの最高傑作が、未完成になりそうだって!?
そんなことは世界の損失だ、絶対にあってはならない!
お金程度で解決するなら、僕が喜んで協力するぞ!
「お嬢ちゃんはそれを助けてあげるために、ミスリルの剣を売りに行ってあげたってことだよね? よかったら、その売ろうとしていた剣を僕が全部買おうか? 製作者の名前も内緒にしてあげるよ」
剣の使い道はいくらでもある。
僕は強力な魔装備を作れるけど、兵士や騎士たちには与えていない。何かに悪用されたら困るからだ。
なので、街の装備屋から仕入れることにしている。
ドマ・ギンガイムさんの武器は、通常の物とは比べものにならないほど使いやすいので、大いに役立ってくれるはず。
「ふん、申し出はありがたいでしゅが、お前のような坊主に払えるような金額ではないでしゅ」
「いくらなの?」
「ずばり、白金貨10000枚でしゅ! なんちゃって~でしゅ。アレなら……」
「そんなもんでいいの? じゃあこれで」
僕はアイテムボックスから白金貨10000枚を取り出して、少女の前に山盛りにして置いた。
もちろんこれは国家の予算なんかではなく、僕のポケットマネーだ。
ちなみに、白金貨10枚あれば、1年くらいは楽に暮らしていけると言われてる。
「どっひゃあああああああ~っ、な、なんでしゅかコレ!?」
「え? だって白金貨10000枚って言ったから……」
「じょ、冗談に決まってるでしゅっ、普通は本気にするヤツなんていないでしゅ! さすがのあたいでも、あの剣30本ならせいぜい500枚がいいとこでしゅのに」
「たった500枚でいいの?」
「うんぎゃ、貰えるものは貰っておくでしゅ! す、すごいお金でしゅ、頭がクラクラするでしゅ! っていうか失敗したでしゅ、こんな世間知らずのボンクラ坊主なら20000枚と言えば良かったでしゅ!」
ドマ・ギンガイムさんの力になれるなら、別に20000枚どころかいくら払ってもいいけど、そんな正直な告白を聞いちゃうとなんか躊躇っちゃうな。
というより、この子はいったいドマ・ギンガイムさんとはどういう関係なんだ?
「買ったついでというわけではないけど、キミが誰なのか教えてほしいな。ギンガイムさんのお子さんでいいのかな?」
「え? あ、あたいは、その……」
少女の目が泳いで、オロオロと挙動不審な動きをする。
そこまで隠さないといけない関係なのかな?
まさかお子さんじゃなくて、ドマ・ギンガイムさんの奥さんなんてことは……?
だとしたら、いくらなんでも幼すぎるということで、世間体を気にして隠すのも無理はないけど。
まあ結婚に年齢制限はないから、誰を妻にしようと自由なんだけどね。
でも、こんな子供が奥さんなんてことはまずないだろうし……。
と、少し気まずい時間が流れたと思ったら、空からこの場へと降りてくる存在が。
「小僧、貴様こんなところでドワーフ女と何をしている?」
ゼルマだった。そういえば、ゼルマの家からここはそんなに離れてなかったな。
……て、えっ? 今なんて言った?
「貴様の気配がこの辺りからずっと消えぬから、少々気になって見に来てみれば、ドワーフ女を口説いておったとはな。まさに呆れかえる女たらしよ」
ドワーフ女? この子、ドワーフなの?
そういえば、身長に対して頭部が若干大きめ、手足も少し短く、そして少々ガッシリしてるかも?
ドワーフの少女って初めて見た。
そもそも少女に限らず、ドワーフの女性は人前に出ることが滅多にないと言われてるので、通常見掛けることはまずない。
ドワーフは女性でもヒゲがあるって聞いたけど、この子はまだ小さいから生えてないのかな?
そうか、あのたくさんのミスリルソードは、ドワーフだからか。
ドワーフ族は、ミスリルを大量に所持してるっていう噂だしね。
それにしても、僕がこんな子供を口説いてると勘違いするなんて、ゼルマも……
ちょっと待てよ、ドワーフもかなり長寿な種族だ。エルフとまではいかなくても、人間よりも遙かに長生きする。
この子も外見は少女でも、実は……なんてことが……?
子供だと思ってたので、まともに『真理の天眼』で見てなかったけど、改めてこの少女の能力を解析してみる。
…………………………………………………………………………。
ウ、ウソ……だろ? 僕は自分の目を疑う。
とても信じられないけど、この子、いや、この人が……。
ドマ・ギンガイムさんだったのか!
10
お気に入りに追加
9,089
あなたにおすすめの小説
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。