上 下
186 / 258
第7章 新国テンプルム

第353話 不穏な邂逅②

しおりを挟む
 カイダ王都で出会ったエイミーさんと久々の再会をしているとき、なんとエーアストにてお世話になったパルレさんがこの場に現れたのだった。
 なんという凄いタイミング……パルレさんと会うのはエーアストを逃亡して以来だ。

「ご無沙汰しておりました。ユーリさんにはたくさんお世話になったのに、ご挨拶が遅れてしまって申しわけありません」

「そんな、こちらこそ駆け出しの冒険者として、パルレさんには色々お世話になりましたよ」

「私は何もしてませんわ。それより、ユーリさんがエーアストにお帰りになってから、すっかり雲の上の存在になられてしまったので、お会いするのに勇気がいりました。王様にまでなっちゃいましたしね」

 エーアストに帰還後、冒険者ギルドには行ってなかったから、パルレさんと会う機会は無かった。
 顔を出すくらいはしておけば良かったな。申し訳ないコトしちゃった。
 って、挨拶をするためだけに、パルレさんはわざわざこの国まで来たわけじゃないよね?

「テンプルムにはいついらっしゃったんですか?」

「実はたったいま着いたところなんです。今日は王城だけサッと見て帰ろうと思っていたんですが、まさかユーリさんとお会いすることができるなんて……」

「ということは、ご旅行で?」

「いいえ、ユーリさんの国に移住しようと思ってるんですよ。ユーリさんのおかげで父もすっかり良くなりましたし、父と一緒にこの国で新たなスタートをしようと思って来たんです」

 パルレさんの父親は悪徳貴族の策略で病気にさせられ、それを僕が治してあげたのだった。
 パルレさんも、エイミーさんと同じような理由で僕の国に来てくれたんだな。
 パルレさんが受付嬢をしていたあの冒険者ギルドは、元々借金を返すために仕方なく働いていたところだったし、転職することにそれほど不都合はないだろう。
 もちろん、移住に関して問題は一切無いから、速やかに許可してあげたいと思う。


「それにしても女性が多いですね……この方たちはユーリさんのお仲間ですか?」

「え? はいそうです。僕を支えてくれる仲間です」

 そっか、メジェールたちとはパルレさんは初対面か。
 フィーリアのことはもちろん王女だから知ってるだろうけど。
 思えば、あの頃はリノしか仲間がいなかったっけなあ。

「そうなんですか……こんなにいらっしゃったなんて、ああごにょごにょ……」

 ん? パルレさんがモゴモゴと喋ってるけどよく聞き取れないな。
 ふとリノのほうを見てみると、苦笑いしながらパルレさんに手を振っている。これもさっきのエイミーさんのときと同じような雰囲気だ。
 久々の再会だというのに、何か変な空気になってるのはなんで?

「あなたがパルレさんね? ユーリから話だけは聞いてたわ。言っておくけど、わよ。ユーリこいつ、魔導国イオにも信者が3人いるんだから」

「ほかにも3人……? ユーリさんて凄いんですねえ」

「でしょ、結構疲れるわよ。まあよろしくね」

 よく分からないけど、上手くまとまったようだ。


「それじゃあみんなで……」

 話も落ち着いたところで場所を変えようとしたその刹那、凍るような恐怖が背筋を走り抜けた。
 ウソでしょ、この気配はまさか……

「おや坊や、久しぶりだねえ。また門前払いされるのを覚悟で来たけど、まさか坊やが城門前に居たなんて今日はツイてるね。……で、なんだいこの女の群れは?」

 ぎょええええええええええええっっっ!?
 超エロエロボディーのゾディーさんが来ちゃった!
 たとえ王城までやってきても追い返してもらってたのに、こんな状況で鉢合わせしちゃうとは……!

「ヒ……ヒロさん、この方は誰なんでしょう?」

 うおっ、何やらエイミーさんが殺気を放っているような……。
 いや、気のせい、気のせいに違いない。

「あのですね、ゾディーさんは以前僕と合同任務をしたことがある冒険者です」

で冒険者なんですか? まさか、ヒロさんはこういう姿の女性が好みとか?」

 ああ、ゾディーさんは相変わらずおっぱいハミ出した服を着てるから……。
 それを見たエイミーさんが、めっちゃ不機嫌になってる気がするんですが?

「あら……ユーリさんってば、ずいぶん刺激的な方とお付き合いされてるんですねえ……うふふふ」

 なんかパルレさんも怖い……。
 どういうことだ、ネーナと匹敵するほど穏やかなエイミーさんとパルレさんが、ピリピリと空気を凍らせるような殺気を放っている。
 いやそれどころか、ネーナまでそこはかとなく怖いオーラ出してるぞ!?

「おやおや、まさか坊やはこんな田舎娘たちがタイプだったのかい? ほかにも大したことない女ばかりで坊やは趣味が悪すぎる。仕方ないねえ、坊やにはアタシが正しい女の魅力を教えてあげるさね」

「い、田舎娘!? それってあたしのこと? これでもカイダ王都出身よ!」

「私にも言っているようですね。こう見えても、結構都会育ちなんですけど?」

「わたしも入ってますね……一応わたし、元貴族の娘なんですが!」

 うう、バチバチと目から火花を出してるのが見える。エイミーさん、パルレさん、ネーナがこんなに怖かったなんて……。
 3人とも戦闘力は0に近いのに、凄まじい殺気だ。多分ヴァクラースくらいなら殺せる。
 彼女たちのおしとやかな姿が遠い幻のように思えてきたよ……。

「ふん、相変わらずゾディーこの女は人の神経を逆撫でる天才だな」

「殺しちゃってもいいかしら……?」

 ネネとメジェールも負けじと殺気を出し始めた。ほかのみんなもだ。
 こりゃ大変なことになってきたぞ! なんとか穏便におさめ……。


「ヒロ様が部屋にいらっしゃらないと思ったら、大勢集まってこんな所で何をしているのですか!?」

「あっ、貴様は石目のゾディー! おのれ、あれほど追い返してやったというのに、懲りずにまた現れるとは……!」

 ぐわああああっ、アニスさんとディオーネさんまで来たあ。
 なんだこれ、全員集まっちゃったぞ!?
 メジェールたち5人にネネ、久魅那クミナ、ネーナにアニスさんにディオーネさん、そしてエイミーさんとパルレさんとゾディーさんの総勢13人の女性が一堂に会してしまった。

 これは神様のイタズラなのか? いや、呪われてるとしか思えない。
 いったいどうなっちゃうんだコレ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。