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第7章 新国テンプルム
第344話 法王
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殺気溢れる部屋に入ってきたのは、なんとゲネヴィシュト法王様だった。
確か年齢はまだ60歳そこそこだったと思うけど、髪はすでに真っ白だ。
しかし、その存在感は歴戦の強者である将軍を遙かに凌ぎ、目も活力に溢れている。
そして、さすがの神聖力だ。
僕が出会った中でも、これほど聖なる力が漲っている人はいなかった。
なるほど……やはりただ者じゃないな。非凡な才がなければ、この法王国を統べるなんて到底無理だろうしね。
たとえ古代文明の力がなくても、この人は特別な存在だ。
「テンプルム国ユーリ王殿、私の臣下が大変失礼をいたしました。皆の者、魔導結界を切りなさい。『臣下の誓錠』も外して差しあげるのです」
「し、しかし法王猊下!?」
「よいのです将軍、この方たちはけっして危険な存在ではありません」
法王様の指示で、僕たちの力を封じていた古代文明の結界が解除される。
そして、法王様のあとから入ってきた騎士――恐らく親衛隊の人たちが、僕らに着けられた腕輪を外してくれた。
あれ、この感じだと、法王様の命令で僕たちを罠に嵌めたわけじゃないのかな?
「私が当代の法王ゲネヴィシュトです。此度のことは、私が『魔王ユーリ』という存在に対してよい顔をしておりませんでしたので、それを察した臣下の者が度を超えて用心してしまったようです。本当に申し訳ありませんでした」
「いえ、気にしておりません。自分は他人より少し大きな力を持っているので、警戒されるのは当然です。今までもそうでした。そのことを逆に利用して『魔王』とあえて名乗ってしまったのですが、今さらながら少々短絡的だったと反省しております」
「こちらこそ、『魔王』という名に過敏に反応しすぎました。今ユーリ王を拝見し、自分の愚かさに恥じ入るばかりです」
「いえ、そんな……」
「こんなところでお話しするわけにもいきませんから、神殿へ参りましょう」
「神殿ですか?」
なんだ、謁見の間とかじゃないのか?
また罠があるなんてことは……。
「神の御前では人はみな平等です。ユーリ王とは神の前で対等にお話ししたいのです」
「そ、そこまで気を使っていただけるとは……自分のような者に対し、過分な扱いをしていただき感謝します」
「では参りましょう」
法王様に促されて、僕たちは外の神殿へと移動する。
今までのことから、法王様に対して凄く不安なところはあったんだけど、とても穏やかな人のようで安心した。
今回の罠は、ジークヘルト将軍の勇み足なんだろうな。法王国や世界のことを思って、危険な僕を排除しなくてはならないとつい義憤に駆られてしまったんだろう。
気持ちはよく分かるので、もう気にしないことにしてるけど。
神殿に入り、聖堂内にある神像の前にて僕たちは足を止める。
何度見ても、実際の神様とは全然違うんだよなあ……こんな素晴らしい外見じゃなくて、ただのおじいちゃんだったもんね。
少しボケてた感じもするし……あ、うそうそ、神様ごめんなさい。
「ユーリ王、あなたの奇跡は私も聞き及んでいたのですが、どうにも信じられぬ思いでした。怪しげな者に騙されてはならぬと、我が法王国ではより警戒を強めておりましたが、どうやら全て私の杞憂だったようです」
法王様は、今まで僕やテンプルムを警戒していたことをお詫びしてくれる。
ほかにも、法王国の国民性や、他国にあまり知られていない事情なども丁寧に教えてくれた。
しかし、古代文明については、一切口にしようとしない。
その辺は、まだ他者へは漏らせない法王国の重要機密ということなんだろう。
友好的になってくれたとはいえ、さすがにそこまで秘密を教えてくれはしないか。
それに、どうもまだまだ隠し事があるような気がする。
僕の解析でもイマイチ見通せないな。
法王様は心のコントロールが上手いらしく、一応ウソはついてないようなんだけど、本心を見透かされないような話術を身につけている。
それもさすがというところか。
「私からの話はこんなところです。ところで、ユーリ王は何か目的があってここまで来られたように思いますが? その様子では、罠があることも承知だったようですし」
おっと、逆に僕の心を読まれちゃったようだ。
せっかく法王様に会えたんだし、遠慮なく聞いてみるか。
「法王様、実は異世界からの召喚術が気になっております。極秘の技術とは思いますが、もしよろしかったら、僕にその召喚技術を見せてもらえないでしょうか?」
図々しくも直球でお願いしてみた。
法王国の秘密なだけに、外部の僕に見せてくれるか分からないが、もし牙無魔たちを元の世界に戻してあげるなら避けては通れない問題だ。
僕の言葉を聞いて、法王様も苦悩の色を浮かべる。
「……いいでしょう。我が国の秘法ではありますが、ユーリ王には借りがあります。危険な目に遭わせてしまったお詫びに、その魔導技術をお見せいたしましょう」
やった! まさか許可が出るなんて……!
罠を承知で来た甲斐があった!
「では、そこへご案内いたします」
僕たちは法王様に付いて、神殿をあとにした。
***********************************
『無限のスキルゲッター』の書籍版、電子書籍版も、是非是非よろしくお願いいたしますm(_ _)m
確か年齢はまだ60歳そこそこだったと思うけど、髪はすでに真っ白だ。
しかし、その存在感は歴戦の強者である将軍を遙かに凌ぎ、目も活力に溢れている。
そして、さすがの神聖力だ。
僕が出会った中でも、これほど聖なる力が漲っている人はいなかった。
なるほど……やはりただ者じゃないな。非凡な才がなければ、この法王国を統べるなんて到底無理だろうしね。
たとえ古代文明の力がなくても、この人は特別な存在だ。
「テンプルム国ユーリ王殿、私の臣下が大変失礼をいたしました。皆の者、魔導結界を切りなさい。『臣下の誓錠』も外して差しあげるのです」
「し、しかし法王猊下!?」
「よいのです将軍、この方たちはけっして危険な存在ではありません」
法王様の指示で、僕たちの力を封じていた古代文明の結界が解除される。
そして、法王様のあとから入ってきた騎士――恐らく親衛隊の人たちが、僕らに着けられた腕輪を外してくれた。
あれ、この感じだと、法王様の命令で僕たちを罠に嵌めたわけじゃないのかな?
「私が当代の法王ゲネヴィシュトです。此度のことは、私が『魔王ユーリ』という存在に対してよい顔をしておりませんでしたので、それを察した臣下の者が度を超えて用心してしまったようです。本当に申し訳ありませんでした」
「いえ、気にしておりません。自分は他人より少し大きな力を持っているので、警戒されるのは当然です。今までもそうでした。そのことを逆に利用して『魔王』とあえて名乗ってしまったのですが、今さらながら少々短絡的だったと反省しております」
「こちらこそ、『魔王』という名に過敏に反応しすぎました。今ユーリ王を拝見し、自分の愚かさに恥じ入るばかりです」
「いえ、そんな……」
「こんなところでお話しするわけにもいきませんから、神殿へ参りましょう」
「神殿ですか?」
なんだ、謁見の間とかじゃないのか?
また罠があるなんてことは……。
「神の御前では人はみな平等です。ユーリ王とは神の前で対等にお話ししたいのです」
「そ、そこまで気を使っていただけるとは……自分のような者に対し、過分な扱いをしていただき感謝します」
「では参りましょう」
法王様に促されて、僕たちは外の神殿へと移動する。
今までのことから、法王様に対して凄く不安なところはあったんだけど、とても穏やかな人のようで安心した。
今回の罠は、ジークヘルト将軍の勇み足なんだろうな。法王国や世界のことを思って、危険な僕を排除しなくてはならないとつい義憤に駆られてしまったんだろう。
気持ちはよく分かるので、もう気にしないことにしてるけど。
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何度見ても、実際の神様とは全然違うんだよなあ……こんな素晴らしい外見じゃなくて、ただのおじいちゃんだったもんね。
少しボケてた感じもするし……あ、うそうそ、神様ごめんなさい。
「ユーリ王、あなたの奇跡は私も聞き及んでいたのですが、どうにも信じられぬ思いでした。怪しげな者に騙されてはならぬと、我が法王国ではより警戒を強めておりましたが、どうやら全て私の杞憂だったようです」
法王様は、今まで僕やテンプルムを警戒していたことをお詫びしてくれる。
ほかにも、法王国の国民性や、他国にあまり知られていない事情なども丁寧に教えてくれた。
しかし、古代文明については、一切口にしようとしない。
その辺は、まだ他者へは漏らせない法王国の重要機密ということなんだろう。
友好的になってくれたとはいえ、さすがにそこまで秘密を教えてくれはしないか。
それに、どうもまだまだ隠し事があるような気がする。
僕の解析でもイマイチ見通せないな。
法王様は心のコントロールが上手いらしく、一応ウソはついてないようなんだけど、本心を見透かされないような話術を身につけている。
それもさすがというところか。
「私からの話はこんなところです。ところで、ユーリ王は何か目的があってここまで来られたように思いますが? その様子では、罠があることも承知だったようですし」
おっと、逆に僕の心を読まれちゃったようだ。
せっかく法王様に会えたんだし、遠慮なく聞いてみるか。
「法王様、実は異世界からの召喚術が気になっております。極秘の技術とは思いますが、もしよろしかったら、僕にその召喚技術を見せてもらえないでしょうか?」
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僕の言葉を聞いて、法王様も苦悩の色を浮かべる。
「……いいでしょう。我が国の秘法ではありますが、ユーリ王には借りがあります。危険な目に遭わせてしまったお詫びに、その魔導技術をお見せいたしましょう」
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僕たちは法王様に付いて、神殿をあとにした。
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