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第7章 新国テンプルム

第304話 銀竜の名前は

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「へーっ、すっごーい! 綺麗ねー」

「それに可愛い♪」

「これは見事な銀竜ですわ」

「ネネも初めて見た」

 先日テイムした銀竜を見に、『眷女』ガールズ――メジェール、リノ、フィーリア、ソロル、フラウ、ネネを山に連れてきた。
 一度ここまで来てるので、『空間転移スペースジャンプ』で一瞬だ。

空間転移スペースジャンプ』は一度も訪れていない場所でもどこでも転移できるけど、行ったことないところにいきなりジャンプすると危険なので、極力それは控えている。
 今回でいうなら、山の中――土中に転移しちゃってもおかしくないからだ。
 まあでも、ある程度目視で確認できる場所へなら、初めてでもそこそこ正確に転移可能だけどね。

 あのあと夜中にこっそり山への道を作ったので、整備が終わり次第、安全な移動が可能になるだろう。
 そこから先は民間に任せようと思う。

「オレたちも、巣穴からいきなりコイツが出てきたときはビックリしたけど、輝くその姿に思わず見とれちまったからな」

「ブレスや竜語魔法も綺麗デシタよ!」

 ソロルもフラウも楽しそうに話してるけど、アレ喰らったら死んじゃうからね。
 まあドラゴンは熾光魔竜ゼインで見慣れているし、迷宮で冥王竜も見てるし、銀竜程度じゃペット感覚になってるよなあ。

 そうだ、銀竜を飼うということで名前を決める予定だったんだけど、何やらみんなで揉めてたんだよね。
 この銀竜はなんとメスで、みんながいい名前を付けたいというので任せたんだけど、意見がバラバラで全然まとまらなかったようだ。
 結局決まったのかな? 聞いてみよう。

「銀竜の名前ってどうなったの?」

「あ、無事決まったわ。っていうか、意見が合わないからジャンケンで決めちゃった。アタシが勝ったから命名はアタシよ」

 なんだ、勇者はジャンケンも強いのか?
 そういやメジェールって『幸運』スキルを持ってたんだよね。『眷女』になった効果で、僕にもそれが継承されたけど。
『幸運』は非常に珍しいスキルなんだけど、これも勇者の特性なのか、それともメジェールが持って生まれた運なのか。

 しかし、メジェールが名付け親か……そこはかとなく嫌な予感はするな。
 いや、こんな綺麗なドラゴンに無茶な名前は付けないだろう。メジェールを信じてあげないと!

「へえ~……で、なんて名前?」

「銀子!」


 メッッッッッジェェェェェーーーールッッッッッッ!
 お前はなんというネーミングセンスをしてるんだ……!

『銀子』だとぉ!?
 世にも珍しい、この白銀に輝くドラゴンが銀子……?
 メジェールはそれはもう満足げな笑顔をしてるけど、この名前にしたかったと?

 シルバードラゴンから取って『シルラ』とか、白銀の身体から取って『雪』ちゃんとか、それっぽい感じの名前なんていくらでもあるだろうに……。
 今からでも遅くない、この美しい銀竜をそんな名で呼んではいけない。

「メジェール、そういえば僕もこの銀竜の名前を考えたんだけど……」

「銀子! この子の名前は銀子よ! それ以外はもう受け付けないわ!」

 銀子……スマン。
 パパ、力になってやれなかった……。

 って、銀子が嬉しそうにグルロォンって鳴いてる。喜んでるのか?
 人間の言葉なんて分からないと思うけど……。
 まあ銀子が気に入ってるっぽいからいいか。

「参考までに、ほかのみんなが付けようと思ってた名前ってどんなの?」

「あ、私は『モンテスキュー』がいいかなって!」

「わたくしは『リーゼロッテ・グリンバロア・ド・メル・フランソワーズ』がよろしいかと」

「オレは『トンヌラ』が良かったな」

「ワタシは『ゲレゲレ』が可愛いと思いマシタ!」

「ネネは『ポチ』だ」


 よくやったメジェール!!!
 まさかの『銀子』が大正解だったとは……。

 もう二度とこの子たちに名前を付けさせるのはやめよう。


 とりあえず、この山は鉱山として開発を始めるので、やはり銀子は移動させよう。
 ということで、熾光魔竜ゼインの居る場所に、銀子も連れて『空間転移スペースジャンプ』で移動した。

「ほう、なにやら同族の気配を感じたと思ったら、あるじ殿が銀竜を仲間にしておったとは」

「えっ、熾光魔竜ゼインはドラゴンの気配が分かるの?」

「強い怒りなどを発すれば、我にも感じ取ることができる。恐らく、あるじ殿がこの銀竜と戦ったのであろう?」

 あの戦闘で銀子の気配が分かったのか。
 ここからあの山はかなり距離があるけど、さすが最強ドラゴン、鋭い感知力を持ってるなあ。

 それにしても、考えてみたら熾光魔竜ゼインは孤独だよな。
 熾光魔竜ゼインの種族――竜族最強種エンペラードラゴンって、もう生き残りは居ないって言われてるくらいだからね。
 どこかで眠ってるかもしれないけど、それじゃ熾光魔竜ゼインも感知できないだろうし。

 寂しくないのかな?
 まさか、久々にメスドラゴンと出会って、銀子に発情しちゃうなんてことは……。

熾光魔竜ゼイン、寂しいと思うけど、銀子を襲っちゃダメだぞ」

「あるじ殿は我をなんだと思っておるのだ! 別に寂しくなどないから心配無用だぞ。これでも結構楽しんでおるのだ、世の流れというヤツをな」

 なるほど。
 まあ熾光魔竜ゼインは存在としては神に近い部類だからな。
 テレパシーを使えるのも熾光魔竜ゼインくらいだし、今後はもっと敬ってあげることにしよう。


「じゃあ熾光魔竜ゼイン、銀子をよろしく頼むよ」

 銀子を熾光魔竜ゼインに預けて、僕たちはまた国へと戻った。
 チラリと見たら、銀子もまんざらではないように見えた。
 身体の大きさは倍以上違うけど、なかなかお似合いな2人かもしれないな。
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