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第7章 新国テンプルム
第291話 建国しますか?
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シャルフ王から話があると以前から言われていて、今日はそのことについてフリーデンに行く日だ。
みんなも集まったんで、早速『転移水晶』で移動を……と、ちょっと待て、せっかくだから空間魔法の『空間転移』を使ってみるか。
伝説では国家間ほどの距離を移動できたというから、僕の魔力なら多分可能だと思うんだけど……。
でもその伝説の人も凄いよな。普通そこまで空間魔法のレベルを上げられないぞ?
ただ大勢で転移したという逸話は残ってないから、多分術者のみしか移動できなかったとは思うけど。
まあ伝説レベルの話なんで、どこまで真実なのかも分からないんだけどね。
さて、僕は全員一緒に超長距離転移できるかな?
おっと、その前に、一応シャルフ王に許可を取っておこう。
僕は『魔導通信機』を取り出して、シャルフ王へと連絡する。
「ん? なんだユーリ、まだ来ないのか? 迎えの者が待っているぞ」
「そのことですが、直接シャルフ王のところに行っていいですか?」
「迎えの者と会わずに謁見の間に来るということか? どうした、何か迎えの者に問題でもあるのか?」
「いえ、そうじゃありません。指定の待ち合わせ場所には行かずに、いきなり謁見の間に行くということです」
「言いたいことがサッパリ分からんな。ああ分かった、とにかく来い」
「はい、じゃあ行きますね」
僕は『空間転移』を発動した。
いっけ~っ!
シュンッ!
「お? お!? うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
やった、大成功だ!
フリーデン国の王城にある謁見の間に、全員まとめて直接転移できたぞ!
……と、すぐ近くでシャルフ王が、あんぐりと口を開けた驚愕の表情で尻餅をついていた。
あれ、ひょっとして今の悲鳴みたいな声ってシャルフ王?
「お、お、お前、オレの心臓を止める気か! 驚きすぎて、危うくショック死するところだったぞ!」
「え? 直接行くっていま連絡したじゃないですか?」
「ここに直接飛んでくると思うはずがないだろ! まったく、その様子だとまた新しい能力を手に入れて試したかったようだな」
「あ、はい、その通りなんです」
「『転移水晶』なんていう超希少なアイテムを大量に持っていることすらとんでもないというのに、今度はそれすら使わずに転移できるというのか……おい、それはつまり『空間魔法』が使えるようになったということか?」
「まだ覚えたてなんですけどね」
「どうということもないように言いおってからに……いったいお前が最初に授かったスキルはなんなのだ? こうも次から次へと能力を得ていくスキルなど、オレは知らんぞ」
女神様からもらった『女神の福音』は、史上唯一のスキルだろうからなあ。
まあ最初に授かったスキルは『生命譲渡』なんだけどね。
神様から毎月100億経験値も貰ってるし、このことを知ったら驚かれる……いや妬まれるかなあ。
メジェールは全然気にしないって言ってくれたけど、普通は何か思うところはあるよね。
僕はこんなに恵まれてるから、強くなるために日々頑張って人に対して、未だに後ろめたい気持ちは残ってる。
だから、真実をみんなにも話せないでいるんだけど。
「まあいい、お前の強さを気にしてたら日が暮れてしまう。さて、お前に話があると言って呼んだわけだが、単刀直入に言おう。ユーリよ、お前建国して王になれ!」
「………………………………………………はい~っ!?」
な、なんだ!? 突然すぎるぞ!?
話の脈絡が全然分からない!
「王になれと言ったんだ。そのための段取りももうすべてつけてある」
「ぼ、僕が王? 無理無理無理ですよっ!」
「え~すごい! いいじゃん、ユーリやんなよ!」
「ユーリってば、そもそもついこの前までゼルドナの王様だったじゃない。無理じゃないよ」
「そうですわ! ユーリ様がゼルドナの王を降りて残念に思っていたところです。ユーリ様は上に立つべきお方なのですから!」
「ああ、絶対ユーリ殿は王になるべきだ」
「凄いデスねご主人様! 今度こそ本物の王様になるデスよ!」
「ダーリン、ネネも賛成だぞ」
「私もヒロ様が国を持つことには賛成ですが、しかしシャルフ陛下、どの国の王にヒロ様を即位させるおつもりなのですか?」
「いや、既存の国の王になるのではなく、いま言った通り、ユーリには建国してもらいたいのだ」
そうだ、シャルフ王は建国って言ってた。
でもどこに? そんな場所なんてあったっけ?
「エーアストの決戦でお前が魔王軍を討ち倒したあと、近隣諸国――主にゼルドナ、カイダ、アマトーレでお前の話が持ち上がってな。これほど力を持つ人間が、一国民として在野に居られると少々困るというわけだ」
「何故ですか?」
「お前はたった一人で世界規模の戦力だ。もちろん、お前が他国を侵略する事などもうないだろうが、誰の下に付かれても扱いづらいという存在だ。例えばエーアストに居る場合、エーアスト王を通して頼み事をしなくてはならなくなる」
「いえ、そんなことは……」
「自分の価値を知れ。いまやお前を中心に世界は回っているほどなのだぞ」
「ええ~っ!?」
そ、そうなの?
普段生活している限りでは、そんな感じはしないけど?
「実をいうと、この話はお前がカイダ王都を解放した頃からあがっていたのだ。エーアストの魔王軍を討つまでは後回しにされていたがな。それで、期待通りお前が魔王軍を壊滅させたので、お前に国を救ってもらったゼルドナ、カイダ、アマトーレ、そしてお前が管理していたディフェーザが、各々土地を分け与えると言っている。この4国から中心にある土地だ。こう聞けばだいたいお前も分かるだろ」
この4国の中心というと……。
そうか!
「以前僕が住んでいた、山賊のアジトだった辺りの土地ですか!?」
「その通り。そしてオレの国フリーデンも、あの土地からほぼ等距離にある。つまり、この5カ国の中心地に建国してほしいということだ。もちろん、オレからも土地を譲ろう。周辺5カ国がお前の建国に全面協力することを約束する」
あの山賊のアジトは、ゼルドナ、カイダ、アマトーレ、ディフェーザ、フリーデンのほぼ中心に当たる場所にあった。
だから国境争いも複雑なところがあったりして、山賊退治もやりづらかったんだけど、その5カ国の権利が密集している土地を全部僕にくれるってことなのか。
「国境が集まってる場所を与えて、お前にババを引かせるというわけじゃないぞ。確かに難しい位置にあるが、あの辺りは人の往来も多い。そのせいもあって、今まで治安も悪かった。それを、お前が建国してくれることで、安心して人が休める流通の中継国になってほしいのだ」
なるほど……。
確かにあそこは5カ国の商人が行き交う場所だったから、山賊に狙われやすかった。
あのボルゴスがあそこにアジトを構えたのも、国境争いで複雑な地というだけじゃなく、襲ったりするのに色々都合が良かったからだ。
そこに僕が建国することで周辺の治安を改善して、流通を促進させるという計画なのか。
そうか……プランとしては悪くないな。
あの地区を治めるなら、僕のような中立な人間が適しているだろうし、そして山賊に負けない力も持っている。
シャルフ王も含めて他国の王様も力を貸してくれるみたいだし、あとは僕の決断次第か。
さて、どうしようか……。
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ただ大勢で転移したという逸話は残ってないから、多分術者のみしか移動できなかったとは思うけど。
まあ伝説レベルの話なんで、どこまで真実なのかも分からないんだけどね。
さて、僕は全員一緒に超長距離転移できるかな?
おっと、その前に、一応シャルフ王に許可を取っておこう。
僕は『魔導通信機』を取り出して、シャルフ王へと連絡する。
「ん? なんだユーリ、まだ来ないのか? 迎えの者が待っているぞ」
「そのことですが、直接シャルフ王のところに行っていいですか?」
「迎えの者と会わずに謁見の間に来るということか? どうした、何か迎えの者に問題でもあるのか?」
「いえ、そうじゃありません。指定の待ち合わせ場所には行かずに、いきなり謁見の間に行くということです」
「言いたいことがサッパリ分からんな。ああ分かった、とにかく来い」
「はい、じゃあ行きますね」
僕は『空間転移』を発動した。
いっけ~っ!
シュンッ!
「お? お!? うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
やった、大成功だ!
フリーデン国の王城にある謁見の間に、全員まとめて直接転移できたぞ!
……と、すぐ近くでシャルフ王が、あんぐりと口を開けた驚愕の表情で尻餅をついていた。
あれ、ひょっとして今の悲鳴みたいな声ってシャルフ王?
「お、お、お前、オレの心臓を止める気か! 驚きすぎて、危うくショック死するところだったぞ!」
「え? 直接行くっていま連絡したじゃないですか?」
「ここに直接飛んでくると思うはずがないだろ! まったく、その様子だとまた新しい能力を手に入れて試したかったようだな」
「あ、はい、その通りなんです」
「『転移水晶』なんていう超希少なアイテムを大量に持っていることすらとんでもないというのに、今度はそれすら使わずに転移できるというのか……おい、それはつまり『空間魔法』が使えるようになったということか?」
「まだ覚えたてなんですけどね」
「どうということもないように言いおってからに……いったいお前が最初に授かったスキルはなんなのだ? こうも次から次へと能力を得ていくスキルなど、オレは知らんぞ」
女神様からもらった『女神の福音』は、史上唯一のスキルだろうからなあ。
まあ最初に授かったスキルは『生命譲渡』なんだけどね。
神様から毎月100億経験値も貰ってるし、このことを知ったら驚かれる……いや妬まれるかなあ。
メジェールは全然気にしないって言ってくれたけど、普通は何か思うところはあるよね。
僕はこんなに恵まれてるから、強くなるために日々頑張って人に対して、未だに後ろめたい気持ちは残ってる。
だから、真実をみんなにも話せないでいるんだけど。
「まあいい、お前の強さを気にしてたら日が暮れてしまう。さて、お前に話があると言って呼んだわけだが、単刀直入に言おう。ユーリよ、お前建国して王になれ!」
「………………………………………………はい~っ!?」
な、なんだ!? 突然すぎるぞ!?
話の脈絡が全然分からない!
「王になれと言ったんだ。そのための段取りももうすべてつけてある」
「ぼ、僕が王? 無理無理無理ですよっ!」
「え~すごい! いいじゃん、ユーリやんなよ!」
「ユーリってば、そもそもついこの前までゼルドナの王様だったじゃない。無理じゃないよ」
「そうですわ! ユーリ様がゼルドナの王を降りて残念に思っていたところです。ユーリ様は上に立つべきお方なのですから!」
「ああ、絶対ユーリ殿は王になるべきだ」
「凄いデスねご主人様! 今度こそ本物の王様になるデスよ!」
「ダーリン、ネネも賛成だぞ」
「私もヒロ様が国を持つことには賛成ですが、しかしシャルフ陛下、どの国の王にヒロ様を即位させるおつもりなのですか?」
「いや、既存の国の王になるのではなく、いま言った通り、ユーリには建国してもらいたいのだ」
そうだ、シャルフ王は建国って言ってた。
でもどこに? そんな場所なんてあったっけ?
「エーアストの決戦でお前が魔王軍を討ち倒したあと、近隣諸国――主にゼルドナ、カイダ、アマトーレでお前の話が持ち上がってな。これほど力を持つ人間が、一国民として在野に居られると少々困るというわけだ」
「何故ですか?」
「お前はたった一人で世界規模の戦力だ。もちろん、お前が他国を侵略する事などもうないだろうが、誰の下に付かれても扱いづらいという存在だ。例えばエーアストに居る場合、エーアスト王を通して頼み事をしなくてはならなくなる」
「いえ、そんなことは……」
「自分の価値を知れ。いまやお前を中心に世界は回っているほどなのだぞ」
「ええ~っ!?」
そ、そうなの?
普段生活している限りでは、そんな感じはしないけど?
「実をいうと、この話はお前がカイダ王都を解放した頃からあがっていたのだ。エーアストの魔王軍を討つまでは後回しにされていたがな。それで、期待通りお前が魔王軍を壊滅させたので、お前に国を救ってもらったゼルドナ、カイダ、アマトーレ、そしてお前が管理していたディフェーザが、各々土地を分け与えると言っている。この4国から中心にある土地だ。こう聞けばだいたいお前も分かるだろ」
この4国の中心というと……。
そうか!
「以前僕が住んでいた、山賊のアジトだった辺りの土地ですか!?」
「その通り。そしてオレの国フリーデンも、あの土地からほぼ等距離にある。つまり、この5カ国の中心地に建国してほしいということだ。もちろん、オレからも土地を譲ろう。周辺5カ国がお前の建国に全面協力することを約束する」
あの山賊のアジトは、ゼルドナ、カイダ、アマトーレ、ディフェーザ、フリーデンのほぼ中心に当たる場所にあった。
だから国境争いも複雑なところがあったりして、山賊退治もやりづらかったんだけど、その5カ国の権利が密集している土地を全部僕にくれるってことなのか。
「国境が集まってる場所を与えて、お前にババを引かせるというわけじゃないぞ。確かに難しい位置にあるが、あの辺りは人の往来も多い。そのせいもあって、今まで治安も悪かった。それを、お前が建国してくれることで、安心して人が休める流通の中継国になってほしいのだ」
なるほど……。
確かにあそこは5カ国の商人が行き交う場所だったから、山賊に狙われやすかった。
あのボルゴスがあそこにアジトを構えたのも、国境争いで複雑な地というだけじゃなく、襲ったりするのに色々都合が良かったからだ。
そこに僕が建国することで周辺の治安を改善して、流通を促進させるという計画なのか。
そうか……プランとしては悪くないな。
あの地区を治めるなら、僕のような中立な人間が適しているだろうし、そして山賊に負けない力も持っている。
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