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2.ワイアット
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「この子もダメ…この子も…!」
私は書類に目を通しながらそう吐き捨てていた。
「全然ワイアットに釣り合ってない」
忌々しく書類を睨みつけ私はため息をこぼした。
「ワイアットに釣り合う家柄…美貌…そんな女性この世に1人しかいないわ…」
私は頭の中にこの国の姫を想像してから首を振った。
「いえ…あの方はもっと高貴な方と…よねぇ」
たしか公爵家にとても優秀で麗しい方がいたと聞いた気がするわね、まぁ噂だけど…姫様もとても好いているみたいなのも聞いたことあるほどだ。
はぁ、ならワイアットに釣り合う女性は一体どこなの?
「…疲れた」
そう呟き近くにいるメイドに茶を用意させる。
「ふぅ…」
口に茶を入れながらワイアットの婚約者を考える。侯爵家である我が家の後継ぎであるワイアットは高貴な女性と婚約しなければならないだろう。
けれどそんな簡単に見つかれば苦労はない。
それに、ワイアットは学園に通い始めてから人気みたいだし、婚約者希望はたくさんいる。それがいいことなのか悪いことなのか…、困るのはワイアットでも父でもなく私だ。
「姉様」
扉の奥からノック音と共に掛けられた言葉に私は勢いよく反応した。
「ワイアットっ!!」
私は扉に小走りで向かい開けた。
そこには少し涙目のワイアットと父が。
「父様…?一体どうなさったの?」
2人の様子を見て私は疑問を投げかけた。
「それが…ワイアットは婚約をしたくないと言うんだ」
「えぇ?」
「わがままだってわかっています…けれど…僕…」
「ワイアット、泣かないでちょうだい」
「ワイアットは好いている人間が出来たら結婚すると言っている」
「貴方、恋愛結婚がしたいの?」
私は少し顔を歪める。
恋愛結婚…、政略結婚と違い利益をもたらさないそれに私としてはあまり好ましいものではない。
結婚とは家に利益をもたらすためにするものだ。
だから私もいつかそのような相手と結婚する。
そう決まっているのだ、私たち貴族は。
「ねぇワイアット、どうして政略結婚は嫌なの?」
「好いている人とじゃなきゃ嫌です…」
「今は空いている人間はいるの?」
「………い、いません」
「ワイアット…恋愛結婚は難しいものなのよ。貴方が選ぶ人間がもし…あ、あり得ないと思うけれど、平民だったりしたら…」
「…?」
「そ、そんなのダメよ…!絶対高貴な方と結婚しなきゃ!そうよ!私みたいな!!」
自分で言っててつい顔を赤くしてしまう。
まぁけれど事実だろう、だってワイアットに釣り合うのは強いて言うなら私ぐらいだ。
「姉様が?」
「…こ、これはもしもワイアットが私と同世代だったらの話よ?貴方が大きくなるのを待っていたら私行き遅れになってしまうわ…」
「そうなのですか…」
「だから貴方は私以上に高貴な方を見つけなければ…、」
「なぁマルシェル。私としてはそれもいいのではないかと思っているのだよ」
「恋愛結婚をすることですか?けど…ワイアットはこの家の跡取りです。そんな者が恋愛結婚など…。無責任な方なんて嫁いできたら…困るわ」
「けれどワイアットが幸せでなければ意味がない」
「……」
「ワイアットが幸せに生きてくれれば私はそれで良いのだ。けれどな、マルシェル。それはお前にも言える」
「私にも?」
「あぁ、そうだ。マルシェルが好きでもない相手と結ばれるのは親として心が痛い。そこでだ!2人が恋をすればその相手と父が確実に婚約させてやろう!」
「……えぇ?」
私が引き気味なのと対照的にワイアットは目を輝かせている。
「私の全権力を使ってお前たちが望む結婚にしてやるのだ!」
「けれど私、この前の婚約者とは全く愛し合っていませんでしたわ」
「…ワイアットに言われて思ったのだ。結婚とは金のためにするものではないだろうと」
「…父様、2年前と言っていることが違いますわ。2年前は結婚は政略結婚ではなくてはとかなんとか…」
「姉様!いいじゃありませんか…!父様がそうおっしゃっているのですから」
にこにこと微笑みながら言われ私はうーんと考えた。
「けれど私、美貌があって財力のある方しか好きになりません」
私の言葉にワイアットは目を見開き固まった。
「そう、ワイアットのような素敵な見た目じゃなくては惚れませんわ」
そう言いながらワイアットを抱きしめると父様はははっと軽やかに笑ってから私たちを見つめ言った。
「きっとお前たちなら良い相手を見つけられるさ」
「…そうでしょうか」
この前のこともあり、不安がる私を見て父様は優しく私とワイアットを腕で包み込んだ。
「父様」
「幸せになってくれ」
その言葉に私は目を閉じ、父様の考えを受け入れた。
私は書類に目を通しながらそう吐き捨てていた。
「全然ワイアットに釣り合ってない」
忌々しく書類を睨みつけ私はため息をこぼした。
「ワイアットに釣り合う家柄…美貌…そんな女性この世に1人しかいないわ…」
私は頭の中にこの国の姫を想像してから首を振った。
「いえ…あの方はもっと高貴な方と…よねぇ」
たしか公爵家にとても優秀で麗しい方がいたと聞いた気がするわね、まぁ噂だけど…姫様もとても好いているみたいなのも聞いたことあるほどだ。
はぁ、ならワイアットに釣り合う女性は一体どこなの?
「…疲れた」
そう呟き近くにいるメイドに茶を用意させる。
「ふぅ…」
口に茶を入れながらワイアットの婚約者を考える。侯爵家である我が家の後継ぎであるワイアットは高貴な女性と婚約しなければならないだろう。
けれどそんな簡単に見つかれば苦労はない。
それに、ワイアットは学園に通い始めてから人気みたいだし、婚約者希望はたくさんいる。それがいいことなのか悪いことなのか…、困るのはワイアットでも父でもなく私だ。
「姉様」
扉の奥からノック音と共に掛けられた言葉に私は勢いよく反応した。
「ワイアットっ!!」
私は扉に小走りで向かい開けた。
そこには少し涙目のワイアットと父が。
「父様…?一体どうなさったの?」
2人の様子を見て私は疑問を投げかけた。
「それが…ワイアットは婚約をしたくないと言うんだ」
「えぇ?」
「わがままだってわかっています…けれど…僕…」
「ワイアット、泣かないでちょうだい」
「ワイアットは好いている人間が出来たら結婚すると言っている」
「貴方、恋愛結婚がしたいの?」
私は少し顔を歪める。
恋愛結婚…、政略結婚と違い利益をもたらさないそれに私としてはあまり好ましいものではない。
結婚とは家に利益をもたらすためにするものだ。
だから私もいつかそのような相手と結婚する。
そう決まっているのだ、私たち貴族は。
「ねぇワイアット、どうして政略結婚は嫌なの?」
「好いている人とじゃなきゃ嫌です…」
「今は空いている人間はいるの?」
「………い、いません」
「ワイアット…恋愛結婚は難しいものなのよ。貴方が選ぶ人間がもし…あ、あり得ないと思うけれど、平民だったりしたら…」
「…?」
「そ、そんなのダメよ…!絶対高貴な方と結婚しなきゃ!そうよ!私みたいな!!」
自分で言っててつい顔を赤くしてしまう。
まぁけれど事実だろう、だってワイアットに釣り合うのは強いて言うなら私ぐらいだ。
「姉様が?」
「…こ、これはもしもワイアットが私と同世代だったらの話よ?貴方が大きくなるのを待っていたら私行き遅れになってしまうわ…」
「そうなのですか…」
「だから貴方は私以上に高貴な方を見つけなければ…、」
「なぁマルシェル。私としてはそれもいいのではないかと思っているのだよ」
「恋愛結婚をすることですか?けど…ワイアットはこの家の跡取りです。そんな者が恋愛結婚など…。無責任な方なんて嫁いできたら…困るわ」
「けれどワイアットが幸せでなければ意味がない」
「……」
「ワイアットが幸せに生きてくれれば私はそれで良いのだ。けれどな、マルシェル。それはお前にも言える」
「私にも?」
「あぁ、そうだ。マルシェルが好きでもない相手と結ばれるのは親として心が痛い。そこでだ!2人が恋をすればその相手と父が確実に婚約させてやろう!」
「……えぇ?」
私が引き気味なのと対照的にワイアットは目を輝かせている。
「私の全権力を使ってお前たちが望む結婚にしてやるのだ!」
「けれど私、この前の婚約者とは全く愛し合っていませんでしたわ」
「…ワイアットに言われて思ったのだ。結婚とは金のためにするものではないだろうと」
「…父様、2年前と言っていることが違いますわ。2年前は結婚は政略結婚ではなくてはとかなんとか…」
「姉様!いいじゃありませんか…!父様がそうおっしゃっているのですから」
にこにこと微笑みながら言われ私はうーんと考えた。
「けれど私、美貌があって財力のある方しか好きになりません」
私の言葉にワイアットは目を見開き固まった。
「そう、ワイアットのような素敵な見た目じゃなくては惚れませんわ」
そう言いながらワイアットを抱きしめると父様はははっと軽やかに笑ってから私たちを見つめ言った。
「きっとお前たちなら良い相手を見つけられるさ」
「…そうでしょうか」
この前のこともあり、不安がる私を見て父様は優しく私とワイアットを腕で包み込んだ。
「父様」
「幸せになってくれ」
その言葉に私は目を閉じ、父様の考えを受け入れた。
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