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しおりを挟む扉が閉まった後、私たちは準備を始めた。
まずはドレスから。
私物のドレスは舞踏会で着ていったものと、シンプルなものが1つだけだったけど、侯爵様が準備してくれた部屋のクローゼットには大量のドレスが入っていた。
それも今年の流行のもの。
流行に敏感な令嬢たちは、自信が経営している仕立て屋や、援助しているお店から仕入れているため、私みたいな崖っぷち貴族には手に入りにくい。
ローズバルト邸が支援しているのは国一番の仕立て屋〝ラック・ド・プール〝。
そこは各国の有名なデザイナーが働いていて、上級者貴族が注文しても3ヶ月待ちだとか。
そこの服を100着ほど、一部屋ほどありそうなクローゼットに閉まってあった。
一体いくらだろうと。。。とげっそりしているエディトリスの横でオモチャをもらった子供のようにリジーは喜んでいたのだ。
あのときは必死に着させようとしているのを拒否した為、ずっと口を尖らせていたが、やっと着させることができると喜んでいる様子。
「どれにしますか?!」「緑もいいですね!」
「いや、これかな?」
とまるで自分のことのように、クローゼットから出してはしまい。出してはしまいを繰り返している。
時々、私の方を見て「何か違う」と呟くばかり。
「もう、これでいいじゃない?」
とリジーが積み上げたドレスの山のてっぺんを指差す。
そのドレスは紫をベースにした、比較的露出が低いもの。
それでも、1つ1つ丁寧に刺繍された模様は美しく、上品に見える。
「うーん。そうですね……」
適当な一言に眉間にシワを寄せる。
「お嬢様にはこちらの方が…いや、こっちかな? ムムム…」
再び悩み始めた彼女を見てフーとため息をつく。
ただいつも思うことは1つ!
早くしてほしい……
***
「キャァー! 素敵ですぅ!!! 」
悩んだ末に、深緑のドレスになった。
最初は地味すぎると思ったけど、着たらそうでもなくて、エレガントさと気品が溢れる。
いいかも…
髪も三つ編みにして、くるっと上に丸く丸めて止め、首もとにはパールのネックレス。
その場でクルっと一回転してみる。
うん!素敵!
リジーが感動するのも分かるかも!
するとタイミングを図ったように、「馬車が到着いたしました。」
と扉から声がする。
「じゃあ、行ってくるね!」
「いってらっしゃいませ!」
手を振りながら部屋を後にした。
いざ、悪女の元へ。
**
エディトリスは知らなかった。
ドレスはほとんどが店員のおまかせだが、深緑のドレスだけは侯爵みずから選んだということを。
そして、ドレスの裏地に込められた文字も知らなかった。
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