もう一度恋したら、甘い味がしました。

19 心の変化

あれから、そのことが木が根を張ったように、頭から離れなかった。
あの時とは違う。侯爵様がいる。とそう自分に言い聞かせても、心が落ち着くことはなかった。
そして、そのままベットでモヤモヤを残しながら考えていると、真っ暗だった窓が少し薄暗くなったのが見えた。


「あ…もう、朝か」


今日の午後、問題の種であるお茶会がある。
あの舞踏会より憂鬱。
何しろ、あっちから招待してくるなんて、絶対何かあるはず…
でも、侯爵様のためだ。
行かないといけないという事実にはかわりない。

そう、心に決めたとき、急にガチャとドアが開いた音がした。
え…こんな時間に誰？！
侍女ではないよね？
じゃあ、刺客？！
命の危機を感じとり、鼓動が早くなり、体が熱くなった。
そして、目を閉じ寝たふりをする。
コツコツと足音が豪華なベットの方に近づいてきた。と思ったら、目の前で止まった。

〝え…？誰？！やっぱり刺客？！〝

ギュッと拳を握りしめ、何かされたら倒そうと、とめてあったピンが手のひらにあることを確認する。
が、そのまま謎の男は何をするわけでもなかった。
ただ、目の前に立ちそのままジッとしているのが目を瞑っていても分かってくる。


〝刺客じゃないのかな？〝


目を開けて確認しようとした時、ボソッと謎の人物は呟いた。


「すまない。」


悲しそうなその声の主に心当たりがあった。
驚きパチッと目を開ける。


「え！？！おまっ！起きて？！」


「こ、侯爵様こそなんで？！」

そう、正体はルカエル侯爵だったのだ。
起きていることに驚き、そして声を聞かれたことの恥ずかしさにより、冷血と呼ばれた侯爵は耳と顔を真っ赤にした。

「い、今のは忘れてくれ！」

左手で真っ赤に染まった顔を隠し、片手で待ったポーズ。
気まづさと恥ずかしさで動揺し、視線を背けている姿がとても可愛かった。


「アハハっ！侯爵様って可愛いんですね」


「バカなこと言うな！」


「だって、顔が真っ赤で…」


「死にたいのか？」

普段の態度でそのセリフは怖いと思うが、今はちっとも怖くなかった。
不思議ととても安心した。
まるで、暖かい光に包まれている感じがした。

「椅子に座ってください。今灯りを…」

ベットから立ち上がった時、慣れていないネグリジュの裾が足に引っ掛かり、侯爵様のほうに倒れる。

「キャァ！」

「おい！」

そのまま侯爵様こど倒し、尻餅をつく。

「痛ったー！」

「お前いい加減にしろ」

そう、頭上で声がした。
嫌な予感がして、恐る恐る状況を見ると、完全に侯爵様が庇ってくれたようだ。
侯爵様を下敷にして、うつ伏せていた。

「すみません！」

慌ててどき、謝罪するが侯爵様は何も答えず、怒っているのか、黙ってドアの向こう側に去っていった。
取り残された私はやってしまった！怒らせてしまった！と悲しい気持ちになった。


しかし、ルカエルはエディトリスの見えないドアの向こうで、飛び跳ねる心臓に困惑していた。

何かの病気かもしれない。と疑い、心配したのはまた別の話。