もう一度恋したら、甘い味がしました。

月見うさぎ

文字の大きさ
上 下
18 / 24

16 事件

しおりを挟む
厨房についた時、近くにいたメイドが振り返って、声をかけた。


「リジー、ちょっとこっち来てー」


「え?今ですか?」


「うん。ちょっと急用でさ。」


「え。。でも今。。。」


お嬢様を置いていくのはちょっと。。という感じで目を向ける。
私は大丈夫!というようにニコッと微笑んだ。


「じゃあ、すぐに戻ってきますからね!」


と告げ、二人はあっという間に去っていった。

さて、どうするかなー。。。
と壁にもたれ掛かって空を見上げる。
鳥が飛んでいてとても青い空。。
そして、鳥が視界から消え、風が吹き木が揺れ音がなり、雲が動く。
かれこれ、10分ぐらい見上げたけど、暇になってきた。


「どうしようかなー。。。。ん?あれはリジーじゃ?」


横をみると僅かに木の隙間から見えたのは数人の侍女とミジー。
どうしたんだろう?
さっきの侍女じゃないし、なんかリジーの様子がおかしいようなー。。。

暇だし、ついていこ。
こっそり物影に身を隠しながらついていった。

〝どこに行くのだろう。。。〝
と考えながら角を曲がろうとしたが、侍女とリジー達が止まっていたので、足に急ブレーキをかけて慌てて壁に身を隠す。

そっと、壁から顔を覗かす。

3人いた侍女のうち一人が前に出て、リジーに近づく。

「あの。。。こんな所で何の用ですか。。?」

その問いかけにイラッとしたのか、チッと舌打ちをして、いきなりドン!とリジーを押す。

「っ!」

壁にぶつかり、腕を強打して、痛そうに事の犯人を見る。


「生意気なんだよ!!急に来たくせに偉そうに!!」


「ベラはね、長年勤めているのに雑用ばっかりなのよ?!」

「いくら奥様の専属メイドに任命されただけで、たかが新人じゃない!!そのくせ、偉そうに命令ばっかりして!」

ん?奥様。。?
私のこと?
そんな風に呼ばれてたんだ。。。
まだ、婚約者なんだけどね、偽のね!偽の!
あ。。罪悪感が心に。。。!


「だって、あの時は。。。本当に大変で、それでお願いしたんです。。」


「はぁ??!大変だぁ?たかが女の世話するだけでしょ?」


「なっ!お嬢様のことを女だなんて、言わないでください!ここでは主なんですよ?!」


「女は女でしょ?ただニコニコして機嫌をとるだけで良いなんて、なんて楽な仕事なのかしら?機嫌を直してもらっただけで、わざわざ家から連れてくるなんて奥様も奥様でバカよね~」

もぉー!あったまきた!
リジーがなんでそんなこと言われないといけないわけ?!


「ベラさん!これ以上お嬢様を侮辱しないでください!だいだいそんなこと言うから色んな人から嫌われるんじゃないですか?
天パのせいだって思っているかも知れませんが、性格のせいだと思います!」


リジーははっきり言って、堂々と胸を張っているけど、ベラは顔を真っ赤にして怒り狂っている。
笑いそうになったのをこらえたけど、周りの侍女はベラのクルクル髪を見て、吹き出す。


「プッ!」


「ナナっ!お前まで!!」


「ご、ごめん。でも。。。アハハハッ。。」


「よくも!」

とナナと呼ばれた取り巻きの侍女に笑われた怒りをリジーにぶつけようと、手を大きく上げる。

あっ!これはヤバい!
すぐさま飛び出しす。

そして、ベラの手がリジーに当たる前に止めようとエディトリスは治ったばかりの右手をおもいっきり突きだした。

そして、バチーン!!

ベラの手は綺麗にエディトリスの手平で止められ、ハイタッチのようになり、綺麗な音がなった。

手を掴もうと思ったら、ハイタッチみたいになっちゃった。。。。!

「え?!お嬢様?!なんでここに?」

「リジー、大丈夫?」

突然の登場にリジーはもちろん、周りの侍女たちも驚いた。
そして、目の前にいる奥様(エディトリス)が自分たちの方を向くと侍女たちはビクゥッ!としたように、青ざめた。

「お、奥様?!?えっと、これはその。。。違う。。。」

「私の大切な侍女を叩こうとして何が違うの?」

「それは。。その。。。。」

不味いと思い、必死に言い訳を考えるが出てこない。
それはそうだ、目撃されてしまっているのだから。
そして、エディトリスは静かに言う。

「真ん中の髪の毛クルクルのあなたがベラね。住んでいる場所は南番地8番。妹、弟と母の四人暮らし。」

「え?!なんでそれを!?」

「右のポニーテールはナナ。病気の両親を支えるために住み込みで働いている。」

「うっ。。」

「最後にショートボブであまり表情を変えないあなたはリナ。スラム街出身でウィン・シュークルートに拾われここで働いている。合ってるかしら?」


「・・・・・何で100人近くいる使用人のうち私たちの情報を知ってるの?」


そりゃあ、ここに来たとき全て覚えろって言われたからねー。。。
あれは大変だったよー。。
覚えてて良かったー!

ここで、全てを聞いて、もうダメだ。もう手遅れなら。と思ったのかベラが逆ギレして叫ぶ。


「ただの嫉妬よ!どうせ、愛されてない婚約者でも、そいつみたいに近づけるチャンスがあったらいいなと思っただけ!
いくら愛のない婚約者の使用人ごときが、気に入られて特別扱いされて上から見下してムカつくのよ!」

下を向いて、黙って聞いていたがもう我慢の限界でキッ!と顔を上げベラを見る。

「だからって、私は許さない。」

その気迫に少しおののくベラだが、言い返す。

「あんたも、本当に愛されていると思う?
勉強も真面目に学べないような貴族令嬢なんか必要ないんじゃない?どうせ、必要なくなったら─────」


と言いかけたところで頬に痛みが走り、言葉を止める。
そして、パチン!と音が鳴ったことに気づいた。
前を見るキッ!とこちらを見るエディトリス。

その気迫に、寒気が走り走りベラは急いでその場を離れた。
そして、後ろから残りの二人もついてくる。

姿が見えなくなったあと、エディトリスはヘナヘナと地面に座り込んでしまった。

「お嬢様!大丈夫ですか?!すみません、
私のせいで。」


「いや、リジーのせいじゃないよ。」


「おい。何やっている?!」


後ろから息を切らしながら来たのはローズバルト侯爵だった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

処理中です...