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第31話 リブート マジック サーヴァント マイスター
しおりを挟む奴隷馬車内
奴隷:アドニス
あの魔法使いのガキをこっそり監視する。特に動きは見せない。奴隷になったことに絶望でもしてるんだろう。なんとか焚き付けてあの魔法封じの首輪を越えて行使出来る魔法を使ってどうにかここを脱出しないと……
……なんだ? アイツの足元なんか仄碧い小さな光が、チラチラしてるぞ……。
◆
並列思考:ケン・アイルス
先ずは作業する為の分身作成からか。こんな首輪のフック用ストラップの四角輪っかの身体じゃ、定まるものも定まらない。
“クリエイト・サーヴァント・オブジェクティブ・オペレート・セット・オン・マジック・オブジェクト”
1mmサイズマジック・オブジェクトを使い、視覚情報とマニピュレータの着いた簡易上半身を顕現。
極小上半身を使って、サンド・グレインのパーツを砂からハイ・ヒート・バリアで瞬間成形して行く。あっと言う間に身長1mmの長方形パーツから成るサンド・グレインが出来上がる。時間にして、十秒弱。
“クリエイト・サーヴァント”
バンッッ!!!
巨大な手が唱えてる最中に襲って来た。状況確認の為、ストラップ本体から視認すると何事かと奴隷みんながその音の正体に注目していた。さっきのホワイトタイガーの耳と尻尾をつけた奴が左手でサーヴァントもオペレーター・オブジェクトも押さえつけてきていた。
「熱っつ! あ、騒がしてスマン。なんか虫みたいなのが光ってたから……」
猫かよっ! そりゃ熱いだろうな。石を熱切断したんだし。フレーム歪んでないだろうな……大丈夫か。周りに砂がゴロゴロしててよかった。
『隅っこでやれよ』
『あ、あのウェアホワイトタイガーもどきはマナが見えるみたいだから気をつけろ。コッチは何事もないように装うぞ』
マスターとオリジナルからツッコミが飛んで来た。忠告遅いよ。チィ。上はいつも制作現場には我関せずだ。早いとこ目につかない場所で済まるか。マナの隠蔽回収を同時に行えば見つかりにくくなるかな。オペレーター・オブジェクトは解除して作ったサーヴァントを作成制御用に使おう。
見てないことを確認して、壁際へ一気に跳躍、そこで今度はキャリアー・サンド・グレインの作成に取り掛かる。作成したそばから起動する。1分で計一六体作成出来た。それからオプション装備の小型マニピュレーターを前腕内側に作成して取り付ける。
小型マニは、初めてなんで取付けにちょっと苦労したがなんとかできた。研磨とかしてた頃と比べるとバリア切り出し成形は、本当に楽だ。
サンド・グレイン十体で1/100mmのソード・アームズの作成にかかる。三百体位作れるかなぁ。石英(砂)しか無いけど、贅沢は言ってられないしなぁ。ソード・アームズにも将来、1/10μmサイズ作るだろうからキャリアーと小型マニのハードポイント作っとこう。何せまだ、マナ自体の大きさが未だに掴めないからなぁ。マナって、どんだけちっちゃいんだよ。
ボヤきつつ、修練洞窟で作成した精霊クフィーリアとオリジナルのエーテルフィルム・ミックスパターンを持つ人格デミルアの記憶を解凍。この人格パターンには自由意志を初めから制御してあるから、絶対に反乱は起きない。作ったばかりのサーヴァントに火器管制1、2、索敵、動作制御用に四人格分のインストール準備をする。
先ずはサンド・グレイン六体へインストールを行う。その後その六体が各サーヴァントへインストールさせる寸法だ。
「おら、休憩だ。降りろ!」
御者から号令が降って来た。
『作業終了より早く来てしまったな。なに、もう既にオートだ。こちらは問題は無い。進捗はこんな感じだ』
オリジナルにイメージで簡単な進捗表を送る。
制御用サンド・グレイン 1
キャリアー・サンド・グレイン 15
ソード・アームズ 80
◆
「おら、休憩だ。降りろ!」
あの悪人面が馬車内に号令をかけてきた。程なくして、後ろの扉が開かれた。五人の奴隷が一人ずつ降りて行く。並列思考は、オートで作業に入ったと言って来ていた。後三十秒も掛からず捨てられた並列思考達の捜索部隊を編成し終わるだろう。
そんな時だ。あの話しかけて来た獣人が再び背後から話しかけて来た。
「おい、魔法を使ってあの御者達の杖を奪えないか?」
『ここで、いきなり反乱を企てると言うのか』
『あいつら皆殺しにする話か?』
『どうするか……人相手にヤリ合うのは嫌だなぁ』
『無視すんな』
『血気盛んなヘルさんにはやって欲しいことがあるから、くだらない殺し合いに参加してないで欲しいわけなんだけどね』
『何を、させたいんだ? 気持ちいい事か?』
『いい加減絶対そんなことしないって理解してくれ。ドル師匠と連絡を取って欲しいんだよ』
『クソジジィに連絡なら今は不可能だぜ。本契約のシルバーコードが今は圏外だからな』
『ケンガイ?』
『契約がなくなったわけじゃ無いが、仮契約優先で本契約は現在凍結中だ』
『そんな状態あるの!?』
『あるんだよ』
思考だけの会話でいくら早く済ませられるとはいえ話し込みすぎた。
「無視かよ!」
「あ、あぁ、ゴメ……」
慌てて返事をしたが、時既に遅し。振り返って返事をしようとした、右肩を獣のパワーが入った手で叩かれた。よろけ出す身体は前の人の背に手をつこうとしたが既に前の人は降りてしまっていた。荷台の高さからゴツゴツした石だらけの地面に頭から落ちるのも時間の問題だ。
『“#身体強化__ボディ・ブースト”』
『“思考加速__シンキング・アクセラレーション”』
ヘルとケンからそれぞれ魔法がかけられる。傾いたまま止まったようになる身体。焦っていた気持ちが冷静になるがゆっくり傾いているのは避けられない。仕方ない荷台のヘリを蹴るか、彼を蹴るか……敵をわざわざ増やすことはないな。
『蹴っちゃえば良いのに。こんな危険なトコで押して来た奴だよ? 殺そうとしたも同然じゃないか』
おっと、ケンもアクセルしたか。流石コピー。考える対処は同じ。
『ヘルみたいな事言うなよ、ケン……』
『自業自得って奴だ、正当防衛だし構わないだろ』
『それは、思考停止と同義だ。敵は作らないに越したことはないよ……そうか、ケン。君はここにある思念を取り込んでるんだな? 奴隷達の絶望を乗せたエーテルを!』
『……ノイズをか!』
『強制的に上書きして行くしかないぞ、それ』
『って言うか! もう、ヤバい角度だぞ!』
『大事ない。この角度で良い』
周りを確認。飛び出す方向に人はなし。と、突き飛ばした彼は血相を変えて引き上げようと手を伸ばしてくれてた。そっか。根は悪いやつではないんだな。でもその手を取ったら君も巻き込むし、余計怪我しちゃうから取れないな。
荷台のヘリを思い切り、階段でジャンプする要領で蹴る。飛び出す身体を丸めて一回転して、しゃがんだまま着地する。大事なとこが見えそうになるが気にしてられない。着地の衝撃でちょっと膝を擦りむいた。
周りの人間が驚いてこちらに注目する。
「おぉー!」
「サーカスかー?」
「スゲー」
見ていた人がパチパチと手を叩き、遅れて上がる歓声。
思考加速がそこで解けた。
『ありがと、ヘル、ケン』
『サーヴァント操ってんなら、あれくらいどうにか出来るだろ?』
『まぁ、これくらいは、ね』
『ナイス・チョイスだったよ。二人とも』
ヘルとケンにお礼を言いながら、歓声がまだ上がってたので思わず両手を上げて応えた。彼は荷台の牢屋内でポカンとして見つめていた。
____________________
魔法紹介
◆アイルス作オリジナル・マジック◆
高熱結界
端だけ極細糸状に熱エネルギーを凝縮した結界。
バターみたいに石英やコバルトを切断する。切断
後ガラス転移温度まですぐ冷やせる様に工夫して
ある。そのお陰で研磨の必要がない。
オペレーター・オブジェクト
マジック・オブジェクトにサーヴァントの機能
である、目と手と感覚共有とその操作一式を顕現
させた即席魔法。即席の為、つぎはぎロジック。
今後は簡単に呼び出せるコマンドになる可能性も
ある。
#思考加速__シンキング・アクセラレーション#
ヘイストの思考だけバージョン。アイルスの強み
である観察力を十二分に発揮出来る。
#身体強化__ボディ・ブースト#
筋力と反射神経をどういう原理か良く分からな
いが物理強化出来る。敏捷? 筋力値? 何それ
おいしい? 故にステータス・ブーストではなく
ボディ・ブーストである。ついでに皮膚の結合も、
少しだけ強くしてくれる。
_____
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