上 下
31 / 77

第31話 リブート マジック サーヴァント マイスター

しおりを挟む



 奴隷馬車内
 奴隷:アドニス

 あの魔法使いのガキをこっそり監視する。特に動きは見せない。奴隷になったことに絶望でもしてるんだろう。なんとか焚き付けてあの魔法封じの首輪を越えて行使出来る魔法を使ってどうにかここを脱出しないと……

 ……なんだ? アイツの足元なんか仄碧い小さな光が、チラチラしてるぞ……。

 ◆
 並列思考:ケンNo6・アイルス

 先ずは作業する為の分身作成からか。こんな首輪のフック用ストラップの四角輪っかの身体じゃ、定まるものも定まらない。

“クリエイト・サーヴァント・オブジェクティブ・オペレート・セット・オン・マジック・オブジェクト”

 1mmサイズマジック・オブジェクトを使い、視覚情報とマニピュレータの着いた簡易上半身を顕現。

 極小上半身を使って、サンド・グレインのパーツを砂からハイ・ヒート・バリアで瞬間成形して行く。あっと言う間に身長1mmの長方形パーツから成るサンド・グレインが出来上がる。時間にして、十秒弱。

“クリエイト・サーヴァント”

バンッッ!!!

 巨大な手が唱えてる最中に襲って来た。状況確認の為、ストラップ本体から視認すると何事かと奴隷みんながその音の正体に注目していた。さっきのホワイトタイガーの耳と尻尾をつけた奴が左手でサーヴァントもオペレーター・オブジェクトも押さえつけてきていた。

「熱っつ! あ、騒がしてスマン。なんか虫みたいなのが光ってたから……」

 猫かよっ! そりゃ熱いだろうな。石を熱切断したんだし。フレーム歪んでないだろうな……大丈夫か。周りに砂がゴロゴロしててよかった。

『隅っこでやれよ』
『あ、あのウェアホワイトタイガーもどきはマナが見えるみたいだから気をつけろ。コッチは何事もないように装うぞ』

 マスターヘルとオリジナルからツッコミが飛んで来た。忠告遅いよ。チィ。上はいつも制作現場には我関せずだ。早いとこ目につかない場所で済まるか。マナの隠蔽回収を同時に行えば見つかりにくくなるかな。オペレーター・オブジェクトは解除して作ったサーヴァントを作成制御用に使おう。

 見てないことを確認して、壁際へ一気に跳躍、そこで今度はキャリアー・サンド・グレインの作成に取り掛かる。作成したそばから起動する。1分で計一六体作成出来た。それからオプション装備の小型マニピュレーターを前腕内側に作成して取り付ける。

 小型マニは、初めてなんで取付けにちょっと苦労したがなんとかできた。研磨とかしてた頃と比べるとバリア切り出し成形は、本当に楽だ。

 サンド・グレイン十体で1/100mmのソード・アームズの作成にかかる。三百体位作れるかなぁ。石英(砂)しか無いけど、贅沢は言ってられないしなぁ。ソード・アームズにも将来、1/10μmサイズ作るだろうからキャリアーと小型マニのハードポイント作っとこう。何せまだ、マナ自体の大きさが未だに掴めないからなぁ。マナって、どんだけちっちゃいんだよ。

 ボヤきつつ、修練洞窟で作成した精霊クフィーリアとオリジナルのエーテルフィルム・ミックスパターンを持つ人格デミルアの記憶メモリーを解凍。この人格パターンには自由意志を初めから制御してあるから、絶対に反乱は起きない。作ったばかりのサーヴァントに火器管制1、2、索敵、動作制御用に四人格分のインストール準備をする。

 先ずはサンド・グレイン六体へインストールを行う。その後その六体が各サーヴァントへインストールさせる寸法だ。

「おら、休憩だ。降りろ!」

 御者から号令が降って来た。

『作業終了より早く来てしまったな。なに、もう既にオートだ。こちらは問題は無い。進捗はこんな感じだ』

 オリジナルにイメージで簡単な進捗表を送る。
制御用サンド・グレイン 1
キャリアー・サンド・グレイン 15
ソード・アームズ 80


 ◆

「おら、休憩だ。降りろ!」

 あの悪人面が馬車内に号令をかけてきた。程なくして、後ろの扉が開かれた。五人の奴隷が一人ずつ降りて行く。並列思考は、オートで作業に入ったと言って来ていた。後三十秒も掛からず捨てられた並列思考達の捜索部隊を編成し終わるだろう。

 そんな時だ。あの話しかけて来た獣人が再び背後から話しかけて来た。

「おい、魔法を使ってあの御者達の杖を奪えないか?」

『ここで、いきなり反乱を企てると言うのか』
『あいつら皆殺しにする話か?』
『どうするか……人相手にヤリ合うのは嫌だなぁ』
『無視すんな』
『血気盛んなヘルさんにはやって欲しいことがあるから、くだらない殺し合いに参加してないで欲しいわけなんだけどね』

『何を、させたいんだ? 気持ちいい事か?』
『いい加減絶対そんなことしないって理解してくれ。ドル師匠と連絡を取って欲しいんだよ』
『クソジジィに連絡なら今は不可能だぜ。本契約のシルバーコードが今は圏外だからな』

『ケンガイ?』
『契約がなくなったわけじゃ無いが、仮契約優先で本契約は現在凍結中だ』
『そんな状態あるの!?』
『あるんだよ』

 思考だけの会話でいくら早く済ませられるとはいえ話し込みすぎた。

「無視かよ!」
「あ、あぁ、ゴメ……」

 慌てて返事をしたが、時既に遅し。振り返って返事をしようとした、右肩を獣のパワーが入った手で叩かれた。よろけ出す身体は前の人の背に手をつこうとしたが既に前の人は降りてしまっていた。荷台の高さからゴツゴツした石だらけの地面に頭から落ちるのも時間の問題だ。

『“#身体強化__ボディ・ブースト”』
『“思考加速__シンキング・アクセラレーション”』

 ヘルとケンからそれぞれ魔法がかけられる。傾いたまま止まったようになる身体。焦っていた気持ちが冷静になるがゆっくり傾いているのは避けられない。仕方ない荷台のヘリを蹴るか、彼を蹴るか……敵をわざわざ増やすことはないな。

『蹴っちゃえば良いのに。こんな危険なトコで押して来た奴だよ? 殺そうとしたも同然じゃないか』

 おっと、ケンもアクセルしたか。流石コピー。考える対処は同じ。

『ヘルみたいな事言うなよ、ケン……』
『自業自得って奴だ、正当防衛だし構わないだろ』
『それは、思考停止と同義だ。敵は作らないに越したことはないよ……そうか、ケン。君はここにある思念を取り込んでるんだな? 奴隷達の絶望を乗せたエーテルを!』
『……ノイズをか!』
『強制的に上書きして行くしかないぞ、それ』
『って言うか! もう、ヤバい角度だぞ!』
『大事ない。この角度で良い』

 周りを確認。飛び出す方向に人はなし。と、突き飛ばした彼は血相を変えて引き上げようと手を伸ばしてくれてた。そっか。根は悪いやつではないんだな。でもその手を取ったら君も巻き込むし、余計怪我しちゃうから取れないな。

 荷台のヘリを思い切り、階段でジャンプする要領で蹴る。飛び出す身体を丸めて一回転して、しゃがんだまま着地する。大事なとこが見えそうになるが気にしてられない。着地の衝撃でちょっと膝を擦りむいた。

 周りの人間が驚いてこちらに注目する。

「おぉー!」
「サーカスかー?」
「スゲー」

 見ていた人がパチパチと手を叩き、遅れて上がる歓声。

 思考加速がそこで解けた。

『ありがと、ヘル、ケン』
『サーヴァント操ってんなら、あれくらいどうにか出来るだろ?』
『まぁ、これくらいは、ね』
『ナイス・チョイスだったよ。二人とも』

 ヘルとケンにお礼を言いながら、歓声がまだ上がってたので思わず両手を上げて応えた。彼は荷台の牢屋内でポカンとして見つめていた。



____________________
 魔法紹介
 ◆アイルス作オリジナル・マジック◆
 高熱結界ハイ・ヒート・バリア
  端だけ極細糸状に熱エネルギーを凝縮した結界。
 バターみたいに石英やコバルトを切断する。切断
 後ガラス転移温度まですぐ冷やせる様に工夫して
 ある。そのお陰で研磨の必要がない。

 オペレーター・オブジェクト
  マジック・オブジェクトにサーヴァントの機能
 である、目と手と感覚共有とその操作一式を顕現
 させた即席魔法。即席の為、つぎはぎロジック。
 今後は簡単に呼び出せるコマンドになる可能性も
 ある。

 #思考加速__シンキング・アクセラレーション#
  ヘイストの思考だけバージョン。アイルスの強み
 である観察力を十二分に発揮出来る。

 #身体強化__ボディ・ブースト#
  筋力と反射神経をどういう原理か良く分からな
 いが物理強化出来る。敏捷? 筋力値? 何それ
 おいしい? 故にステータス・ブーストではなく
 ボディ・ブーストである。ついでに皮膚の結合も、
 少しだけ強くしてくれる。



_____
お読みいただき、ありがとうございました。
 気に入られましたら、お気に入り登録よろしくお願いします。また感想を頂けましたら、とても頑張れます。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

跼蹐のゴーレムマスター~ビビリ少女ラヴィポッドはゴーレムに乗って~

現 現世
ファンタジー
森で作物を育てながらひっそりと暮らす少女──ラヴィポッド。 彼女はとある魔術を成功させた。 古代に用いられていた、失われた魔術。 『ゴーレム錬成』 主の命令に忠実な自動人形──ゴーレムを作り出す魔術。 臆病な少女は母を探すため、ゴーレムと共に冒険に出る。 体を丸めてガクブルと震える姿から、少女は後にこう呼ばれた。 『跼蹐のゴーレムマスター』と。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...