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ヘイト管理
しおりを挟む「ヘイト」、憎しみ、憎悪、反感を持つと言った意味。『ヘイトスピーチ』は、人種、国籍、宗教、性的なパーソナリティへの攻撃的な誹謗中傷を指す。ゲーム内などではヘイト管理と使われ、攻撃された魔物や敵の殴られた回数やダメージで攻撃対象を変更するなどの仕様を言う。
『ヘイト管理』、又は『ヘイト操作』は、何もゲームの中だけではない。江戸時代には、エタヒニンと言う階級の者達を作り、幕府への負の感情をその者達に押し付けると言う政策がなされた。現代でも大陸の大きな二つの国が盟約の為にある小国を悪者にした。更に片方の大国はその小国への悪感情を植え付ける教育を国民にし、情報操作をして人々がそれに踊らされている良い具体例がある。
何処に産まれたかで、ある程度のそう言った悪感情に踊らされる運命を持つとしてもカラクリを知ってしまえば、その運命を変える事は誰にでも出来る。縮図として教育機関で一度害する側害される側を経験するのだから。その時にカラクリを知れるか否かは運としか言いようのない事だろう。
人生において敵を作るのは下策だ。将来的に仲間となって大きな成果が得られたかもしれない未来への道が閉ざされる可能性を自ら絶つ。これを知って、尚、行ってしまう。最早その時点で愚策だろう。
『敵は極力作るな』未来の協力者や伴侶を出逢う前に失いかねないのだから。
◆
01/25 15:30
綾式寮 六号室(楠井自室)
インフルではなく、風邪だった。薬を飲んで寝たら少し楽になった。なのでネットで知りたい単語を検索しまくっていた。
何故って? モテモテになる(予定)なら、バカのままじゃ悲しいから。今から勉強に力を入れても手遅れ? 実は、その事もちょっと違う角度からオカルト実験してみることにした。
具体的には記憶する事が頭の良し悪しの基礎かなと考えられる。その記憶をどう扱うかは次のステージ。ただ、近道をしたい。考える事と覚える事は全く違うプロセスだけど、記憶量が多ければ頭が良いと評価され、考えて閃きが早いとまた頭が良いと評価される。地道に勉強して行かなきゃいけないのは、分かってる。それ以外の近道が本来はない事も。ならば手順のいくつかを飛ばせるならどうしたら良いか?
そこで考えた能力底上げプラン。それは、取り敢えず素早く頭の中へ記憶する事。即ち『速読術』だ。覚えることにかかる時間をひたすら短くする事を第一目標にコレをものにする。初級は数理社向けにキーワードだけを反射神経と脳内高速処理を意識して行う。てにをはとか接続詞は一回読んだら無視。兎に角、速読に対応出来る反応速度を自分の中に作り上げる。ストーリーなんかが加わる古典や現国に適用するのはそのあとだ。
コレと脳味噌の中まで行ける、小さな仲間へ微レ存オカルト実験を発動する。
「免疫細胞、受験関連、モテそうな情報は忘却し辛くしてくれ。後必要な脳力の覚醒の手伝いも頼む」
『主人の幸福が約束されるなら、我々の安住は約束されたも同然。協力しよう』
「……マヂで、聞こえた……ような気がする」
とそんな事があってから、頗る勉強の調子が良い。
◆
03/08 15:00
旧校舎を利用した部活棟二階 男子トイレ
近づくと中から声がして来た。一旦、入り口直前で足を止めて声を伺った。と言うのも会話内容が不穏な空気だったからだ。
「どうなんだよ。晶よぉ? なぁ?」
「gのあのカード持って来いっつったよなぁ?」
「で、でも……」
「でもじゃねーんだよ!」
壁に何かが叩きつけられる音が響き渡った。急いでスマホのカメラを起動してムービーモードで録画する。
「あれは、同じクラスの吉田だな。先輩に絡まれてるのか? ってカズ、何するつもりだ?」
「んー、ノーコメント」
「え?」
「ま、見てなって」
ムービー状態のスマホのカメラを前に向けて、胸ポケットへIn。覚悟を決めて男子トイレに乗り込んだ。
「あれー? こんな所で男同士でイチャイチャですかー?」
「なんだ? てめーは? 脳味噌ウんでんのか、コレがイチャイチャしてるよーに見えんのか!」
「イチャイチャじゃなかったら、何してるんですかー?」
「はぁ? 部外者が出しゃばんな! 痛い目にあいたいのか?」
「あー、ハイハイ、じゃぁ、茶番はやめます」
携帯を取り出して不良先輩達に見せて言う。
「知ってます? 学校っていじめに対してだいたい対応したがらないんですよね。警察も被害が出てからじゃないと動いてくれない」
「ほぉ、そうかい」
と、不良先輩達がポケットから手を出して殴りかかって来た。
「おっととと、話は最後まで聞いた方が良い……」
ゴッ!
咄嗟に左から顎を狙って来た拳に合わせて右を向きながら派手に吹っ飛び、個室の扉に手を突きながら入り口まで俯せダイブする。トイレの床よりはマシだ。
「痛ってぇ~。話してる最中っすよ、しかも顔狙いとか……口の中少し切れたよ」
「何だこいつ、超弱えぇ。おい、その携帯渡せ」
「もう、手遅れっスネ。コレ動画配信っすから。あ、後裁判でもコレ使わせて貰いますね」
「はぁ? フカしてんじゃねーぞ! コラ!」
「脅迫罪、暴行罪、それと、吉田君だっけ? 彼への恐喝罪の現行犯を認めますか?」
「ぐっ……」
「決定だ、配信されてようと構わねぇ、村瀬、コイツ、ボコんぞ!」
「話は最後まで聞いた方がいいって言いましたよ。日本語がわからないんですか?」
「……ボコった後で聞いてやんよ!」
一瞬だけ躊躇った後、拳を振り上げて顔面めがけて来る拳に集中して目を凝らし、親指の付け根にデコピンを右手で横から放って右へ逃げる。スレスレで横切る拳。先輩は一瞬ぽかんとして睨みつけて来る。速読術の視線移動はバカにならないな。
「話を聞く気になっていただけましたかね?」
「……取り敢えず聞いてやる。何の用だ」
殴り掛かってきたワイシャツの下に赤のTシャツを着た先輩は拳は下げたが油断なく左足を前に構えていた。ぶどうの嗜みでもあるのかもしれない。ならば考えてることに持ち込めるかな?
「いえね、世の中は手を出した方が負ける仕組みって知ってますか?」
「何が言いたい?」
「殴ったら負けるんですよ」
「おい、村瀬、オレが黙らせようか?」
ナックルをはめた拳を見せてくるもう一人の先輩。先鋒の赤Tはいなした事で実力を勘違いしてくれたみたいだけどあっちは赤Tと違って武器出した時点で猿並みと認定。後二、三発は覚悟しとくか。全て後ろに自分から吹っ飛ぶけどね。スタントマンのコツとイジメの裁判とかググサーフしてたまたま知ってて良かったわー。
「動画配信は、流石に可哀想なので実は嘘です」
「へっ、なら今、携帯」
「奪って壊したなら、器物損壊罪も上乗せになりますね。やってもムービーファイルはクラウド保存でここにはないですよ。別端末からもダウンロード出来ます」
「ぐぬぅ」
「言うこと聞かないヤツは全て拳で殴り倒していく気で世の中を渡っていくつもりですか? それでは人の皮を被った猿と言われても仕方ありませんよ」
「んだと!」
「今、殴れば負けるって言ったばかりですよ。何故か理解できないなら教えますけど」
「もう、頭来た、見下した態度取りやがって! テメェ無事で帰れると思うなよ!」
「待て! コイツの言ってる意味が理解できてるだろ」
「怖気付いてんじゃねぇ! そんな証拠、クソの役にも立ちゃしねえって思い知らせてやる!」
「上から目線で聞こえてしまっていたのなら、それは謝罪しましょう。僕は先輩方の敵ではありません。先ほどの一発はそれで目を瞑りましょう。話しを聞いてもらえませんか? 悪いようにはしませんよ」
「その頭が切れますって態度が気に食わねえ! だいたい、このタイミングで割り込んで来て晶を助ける為に割って入ったんだろうが!」
「おやおや、吉田君を恐喝していたんですね?」
「文句あんのか!」
「い、いや! 俺は彼から借りようとしてただけだぜ!」
「あぁ!? テメ、裏切んのか!?」
んん? ちょっと予想外。
「吉田君、真偽の程は後にしよう。大丈夫。まずは先輩方の問題から片付けましょうか?」
◆
人物紹介
楠井 和臣(♂15~16) 高一(早生れ) 綾式寮に在住のオカルトマニア。特段取り柄のないフツメン。あるのはオカルトに対する熱意と眼鏡の主人公。微レ存オカルトを扱えると信じて疑わなくなりつつある。
三上 宗吾(♂16) 高一 オカルト研究会所属の和臣の悪友。実はちょっとシスコン。吉田君と同じクラス。今回は殆ど空気。
吉田 晶(♂16) 高一 典型的ないじめられっ子。イジメてオーラと言うのがあるなら出てる。ただし、おばさま達には無茶苦茶可愛がられる。天性のオバサマキラー。容姿は決して悪くないのに同年代の女子には気持ち悪いと罵られる。多分嫉妬からと思われる。それほど可愛いと感じられるのだろう。
村瀬 薫(♂17) 高三 武道を嗜んでいたと思われる。グレ気味目立ちたがり屋でも自分の名前は嫌い。多少理知的左耳にピアス。赤T。バンドしたいけど友達居ないのが彼の不幸。
里原 秀雄(♂17) 高三 ネグレクトの家庭育ち力こそが全てを地でいく野生児のようで都会育ちの自己中心的性格。憧れのキャラクターは北斗の拳のラオウ。
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